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作品 - 20120801_199_6248p

  • [佳]   - かぐら  (2012-08)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


  かぐら

 

 
 
初春の滓のかす
交じる祈りの輪の中で
わたしたち家族は
青い空から降りかすれ 春の雪
そして細雪
わたしたち家族は
冷の一酒を獲得した
森林は万象
ペリエの瓶らしく
その名称ラベルを剥がされ
弱々しいまま
白せきの湯へうずいている


こほっ こほっ
今日
獲得した
身の魚の甘いこと
あなたの肌のあさ黒いこと
おまえは未だ
夜を獲得できないと
おまえはもう片恋を獲得していたと
寿醤へ
やきおの尾をひたして
パクつく私の娘
肌を剥がされ
痛々しいまま
白せきの湯へと
うずいている廃家のようやきお


父さん
またあなたともみじを比べ
池へと苔むす私を ボシャンと落としてしまう


紙一枚
いちげんさんって
面倒もなく
したいことをしている
乳糖のような父と母
少し毛筆の匂いがして良かった
そう思い直すこと
期待に触れ
わたしの指は痺れる
わたしの指は 痺れて する
字義と児戯は錯覚されない
雪から緑色の性欲が発露され
白髪たち何もいえない


父さん
またあなたともみじを比べ
池へと苔むす私を ボシャンと落としてしまう


さあっ 
もう全部すてたんだぞ
初めて新宅に電源が開通し
夕方
まだわたしは姉という存在を灯す
神はまだ
玄関の前で兎のように跳ね
石から歌を捻り出そうと
ひょうきんな猫のふりで終わらなかった
軽すぎる靴についた傷を
愚者と
呼び止めてもらう程の死もないから


雪で痛んだ車の鏡に
安全守りが揺れている
なにも揺れているのは わたしたちだけでないのだ
首の骨のように痛みは鈍く
しかしこの首は歴史の集積であった


父さん
またあなたともみじを比べ
池へと苔むす私を ボシャンと落としてしまう


治らない指
ついに焼けた首の系り
そこを温かい指で撫でられた
わたしたちはことごとく運ばれてゆく
スッと眼球に 安易に被せられた桃色が好きだ


この街ならば
この空気を夕暮れと呼び
血の管の中へ家族は侵入して 弾ける
ふとぶつかっても
砕かれることのない砂糖菓子みたいな旦那の話を
とろんと舌に溶かしながら かゆとしたいと思った
山葵の香りが あなたのしろい耳の苦味が浮かび
宛名のない手紙のように降りそそぐ


ボシャン


わたしたちの存在 降りそそぐ存在と軽く留められる 小さい髪のおりらしさ
あなたには 忘れないでほしかった
万象は 季節の旅行者でしかないのに 黒い星の終わりから進入した
あなたもいたということ その季節の軽さと あなた自身の重さ その目眩が
つづいていってほしかった


また降り出した 雪
また降り出した家族たち 



 

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