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作品 - 20120530_040_6123p

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刈りとりの歌

  

罪のつくりかたをしらなかったから、小さく祈る手の中で幸せを噛み砕くことしかできなかった、さつきもつつじも萎れてしまった、季節外れの白い梅が咲いた。藤棚からたわみおちる蔓をひとさし指にからませて、むらさき色の花の名残、棘ほどでもない小さな突起を、まだやわらかな皮膚に留めておくの、木漏れ日のベンチでつちかった緩慢な愛情は、はじまりを求めず、おわりを求めず、ほほえむのではなくにっこりと笑う、刈り取られていく庭石菖にも春紫宛にも花の名前があるのよと言って、形状記憶の悲しい笑顔に種を落とした、サザンカよりもツバキが好きなのと言って、日毎に種を落としていった、にっこり笑ってと無理を言った、雨の降る日は川沿いにアヤメが咲いた、黄菖蒲だってきれいなものよ、傘を持たない二人には、カキツバタはきっと冷たすぎた。泣いてもよかった、涙はどんな花も咲かせないわと言った、罪のつくりかたをしらなかった、僕はそれでも小さく祈る手の中で幸せを噛み砕くことしかできなかったから、来るべくして来たその日には、ほほえむことさえできないでいた。

手向けられた花々を刈りとれ

文学極道

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