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作品 - 20120504_603_6075p

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てんとうむし

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思い出を持たない人間には影がない
海岸の日差しに漂白された肋骨に
てんとう虫が飛んできてとまった
正午の星座だ
畳んだ羽がすこしはみ出している

記憶ならやましいほどあるけど

思い出すことが愛です
おれの国では愛とは思い出すことでした
季節が移って影は伸びる向きを変え
二度と重ならなかった
時間は
因果の関数に引き渡される

時間がゆっくりすすんでいる
おれたちは手をつなごうとしていた
記憶には時間がない
遡ることも切断もできる
そのまま止めておくことだってできた
いまでもずっと止まっている

記憶が思い出になるのはたぶん奇跡のようなことなんだろう

おれはきみの手を握ろうとした

記憶には瞬間と瞬間しかない
そこでは時間が因果に置き換えられている
てんとう虫が飛んだ
薄い羽は風を孕んでいる
砕けた珊瑚の砂浜の日差しに白く洗われた肋骨の先端には
虫の歩いた跡が残った
てんとう虫の肢にはカルシウムが付着しているはずだ

文学極道

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