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作品 - 20120225_632_5893p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


おい、磯野、野球やろうぜ

  New order

水平線から、
投げ出された、
球体が加速する前に、
内ゲバで、
あらゆる人が、
美しく殺しあうように、
応援する、

映画は、はじまったばかりだというのに、
水に浸されて、
コップは投げ出されたまま、
置かれている、
その下で、
私たちは駆けまわる、

革命は、
きっと、殺し合いだから、
愛のある形で、
皆が殺しあう姿を
八月の雨の晴れの中で、
応援しなくちゃならない、

君の彼氏が、
君の顔面を、
革命の形而上学のために、
ぶん殴るとき、
君は、きっと、1メートルはふっとぶ、
でもそれが、革命のための愛だから、
許さなければならない、
救いのために、殴られることが、
一つの罪なら、
もっと多くの花が咲く、
平原で、裸の人達が、
にこやかに、原初の踊りと
喜びを祝っている人達を、
また強く殴らなければならない、

腕に重みがかかり、
払いのけるように、
鈍さが宿るとき、
貴方の、背後で、
天使が、八月の、
風にのって、
貴方の背中に、
キスをする、

おい、磯野、野球やろうぜ、
この革命の季節に、
誰もが甲子園で、
泣きながら、愛しあう者たちでさえも、
殺し合いをはじめるように、
応援するために、
野球をやろうぜ、

おい、磯野、野球やろうぜ、
世界中の誰も彼もが、
バッターボックスにたって、
俺達を打ちのめそうとする中で、
俺はどこも守らないまま、
お前のボールを受けてやるから、
おい、磯野、お前が燃えているのか、
俺が燃えているのか、
そして、泣いているのか、
笑っているのか、もうわからないまま、
お前はボールを、この夜の球場の明かりの中で、
投げて、観客はだれもいなくなったとしても、
俺が受けてやる、

気でも狂ったか、
いや全然、まだまだま足りない、
だから、
球体は、いつだって、
雨の中、一人で加速して、
遠くへ投げられている、

文学極道

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