#目次

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選出作品 (投稿日時順 / 全52作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


Storywriter,Poemwriter,Songwriter,Hatenanikki

  ikaika

#The Sunshine Underground

七日間降り続いた雨が突然止んで、僕は、靴下を脱ぎ捨てて小屋から、原野へ向かって飛び出す。僕は、僕の体を必死になって追い掛け回し、原野を駆け回る。雲の隙間から陽が指してきて、ところどころに陽だまりを作っている。その中で、金魚が数匹泳いでいる。豪雨が残していった水溜りに手を差し入れる。そして、何かを掴んで引っ張りあげる。一人の黒人の男性が、下半身だけを衣で隠した姿で、現れて、僕は、やぁ、こんにちわ、と、挨拶をする。彼は、静かに、頭を下げて、挨拶を投げ返してくる。それから、彼とは友人になって、火の起こし方や、食べられる雑草をとったりしながら、暮らしたが、ある日、僕が眠りに入ると、僕はそのまま、水の中を泳ぐ夢を見る。すると、頭上から誰かの手が差し入れられて、僕の肩を掴んで引っ張り上げる。彼は、白人の若い男性で、僕に向かって、HELLO!と、挨拶してくる。僕は、静かに頭を下げて、挨拶を返す。そして、彼に、火のおこし方や、食べられる雑草について教えてやった。


Ohayou!おはよう!


#Around The World

友人とともに、1934年作の『オズの魔法使い』を見る。夢の世界と、現実の世界との区切りは、白黒の絵とカラー絵に隔てられており、なぜか、現実の世界の描写は、白黒のままで、色がついているのは、夢の世界。ドロシーは恐らく、精神的に不安定なのだろう。彼女の感情の起伏の激しさがそれを物語っている。なるほど、つまり、こういいたいわけか。私が今、見つめている世界は、まさに夢なのだと。現実の世界は、白黒で表されるように、無味乾燥な世界で、美しさ、醜さ、味、そんなものはどこにもないのだと、見終わった後、隣に座る友人に、「はじめまして。」と挨拶をした。


虹彩という夢を!


#Over The Rainbow

麦畑を妻とされている人と手をつないで歩いている。黄金という言葉がふさわしい風景の中を、麦を掻き分けながら進んでいくと、私の小さな家があり、犬が一匹こちらに向かってほえている。土壁の家のところどころにはステンドガラスがあって、紫や緑、赤、黄色、と、色彩を放っている。さらに、進もうとすると、妻とされている人が腕を強く引っ張る。振り返ると震えている。どうしたのか、と、問うと、あそこには、魔女が住んでいる。という、いや、あれは僕らの家じゃないか、と、答えると、二階の窓は開いて、一人の老婆が、箒にまたがって、私たちの上を通り過ぎていった。延々と続く麦畑、黄金のじゅうたんの上を、魔女が飛んでいく姿に見とれていると、妻とされている人は、ほら、いった通りでしょう、と、では、僕らの家は?、と、聞きくと、指をさして、ずっと向こうだと言う。


落下する地平線上を超えて、そのまた向こうまで、そこではもう私は中心ではなく、誰かの中心へ接近する、そう、私が中心でいられなくなる場所まで、永遠に!


#World's End Garden

ここは、光が鳴っているな、ツー.....トット.....ツー.....トット、と、映写機に映し出された私の背中、円錐形の内で青白く照らし出されて、影がスクリーンに大きく写る、影は私の意志や体の動きに対応せず、一人でに歩き始めて、舞台袖へと消えていく。私だけが、未だに、映写機に照らし出されて、青白く、何も映し出さずに、影も作らず、ぼんやりと取り残されたまま、ずっとその場から動くことができない。そして、何かが大きく軋む音だけが、会場に広がって、私は地面に倒れこみ、強く額を打って、嘔吐した。


最後に、嘔吐物の中から無数の蝶が飛び出し、劇場全体を青く染める、


#Reset,Sunset,Emerald

 bird、達が空へ、そして雨が、rain、まずは、喉を切り裂こう、無数のガラス破片が飛び散って、すべてを光に変える、次に、額が裂け、陽が昇った、最後に、真っ二つに裂けた体から、Emeraldが、飛び出して、そして私を包むまでの話を、かなえられる願いことはいつも一つだけで、思い出せばはるか彼方、私達がいまだに姉妹であったころ、アポロンとアテナイの女神の憂鬱のうちに生まれた一つの涙、緑、赤、黄色、そして、あの青の延長線上で鳴り響く、アリアが、地平線上に落下するまで、数え続けられる数々の数式、それら一つ一つに刻み込まれた、秋月の落ち葉、そして、すべては、明暗の点滅のうちに、すべての夜を焼き払う光の中で、爆撃音が、ポーン、ポーンと鳴って、bird、達は、空を忘れた、blue、blue、青よ、青よ、どこへ、どこへ、早朝、世界が吐く吐息の内に隠されてしまった青が、水泡に包まれて、成層圏で破裂するまで、地球儀を駆け回って、花に水をやる誰かの上に、雨が、そして、rainが、このあまりにも晴れ渡りすぎた空の下から、今すぐにでも連れ出して、雨の中へ、Emeraldに包まれて、最後に光が、光に焼き尽くされる頃に、もう一度、世界を、Emerald!


千の滅びの歌

  ikaika

「密猟者」

海綿体の背筋ひとつから光は始まる。無数の鼻腔の内から垂れていく光、手を差し入れよう、 私の右手の血管から噴水のように血が沸き起こり、ちょうど午後に、バルブは閉められ、都市の機能は回復する、 輪廻は再開された、と、私の耳元で多くの人が囁きあう、呼吸と呼吸の間に生産される光、また、手を差し入れよう、 二十日鼠の尻尾が火花を飛ばす、水泡の内に光が見える、さぁ、手に取ろう、そして、左手は壊死する。 夜、夜警が行われる、松明を分けてもらい胸に燈す、母が喜びながら、私の前で火打石を鳴らす、

盗み取られた青ざめた神の群像、淡い透明な松明
夜空にに広がった噛み切ろうとして噛み切ることのできない息
裏口から密猟者が逃げ出していく


「そして、千の滅びの歌」

野ざらしの私の肉体、乳房に似た太陽、もぎ取られた私の果実、 張り裂けた心臓を今日もスケッチする、 筆を握りつぶし、歯で噛み砕く そして、千の滅びの歌、腐臭のする老人たちの死体によって歌われ、水浸しの七日間、野に響き渡る、苔の裏側に隠れてしまった透明な虫たちの声を聞き、地球儀の中に紛れ込んだ蟻の黒い額で見られる夢を思い、そして、私の閉じたはずの瞳は閉じられずに遮光幕に覆われたまま顔の輪郭を超え、あらゆる山脈や都市を超え、砂浜にたどりついて波にさらわれる、再度、千の滅びの歌、腐臭のする老人たちの死体によって歌われて、埋葬される透明な瞳が最後にゆっくりと瞬きをする、その直後、カモメが一匹、砂浜に書いたお前の名をすぐに消せ、と鳴き、遠くに去っていく、


瞳の奥に最後に宿った記憶―淡い透明な松明が放たれ透明な家々が一斉に燃え上がる、燃え落ちた後、水浸しになった地平線を黄ばんだ歯に、大きな鷲鼻の密猟者が一人、超えていく姿を見た、


Nuits sans nuit

  ikaika

告発された、私の世界が、
ゆっくり夜に飲み込まれる、
瞳の奥で水平線が反転し、
真昼が醜く嘔吐する、
超えようとする昔日の石段の陽光が、
額から滑り落ちて、
握られた私の冷えた微熱、

夜なき夜を巡る、
子午線が海面から、消えてなくなる、
そして、蒸発した、
という始まりから、
流れ出た、貴方の唇から、流れ出た、
貴方、という呼称の中に、
纏められぬまま纏められた、
幼き乳房、の沸き立つ、
平野上で、
私は、G線上を歩く、
刻まれたステップの内に、宿った、

戸口は閉められ、
告発された、
夜の闇の中で、
告発された私の世界が、
落日を経験しないまま、
断崖から見下ろす、少年の怒りに満ちた眼に、
一瞬の雷光、
手は離された、
繋がれることなく、
ただ、汗は握られていた、
貴方の、いや、私の冷めた微熱を宿した額から流れ出た汗が、
唯一握られていた、
そして、青ざめた、
一気に青ざめた世界が、
告発によって
晒された、


すべてが醜く青ざめていた中で、
線は途切れた
開かれてしまった平野を目の前にした、
挨拶が燦燦とうんざりするほど降り注いでいた、


Station

  いかいか

#砂浜、足跡を消し去って、

 砂浜を歩いている。私が自分の名を砂浜に刻んでいる。そして、波が、文字をさらっていく。そして、また書く。また、さらわれる。カモメが一匹、私に向かって、「砂浜に刻んだその名を消せ」と言う。

#放火魔の右目は青い、

 一人の放火魔が今まさに処刑されようとしている。多くの民衆は、彼の姿よりも、彼の頭上にあるギロチンを凝視して、固唾を呑んでいる。放火魔の右目―青く、海を連想させる―から波が起こり。民衆を飲み込む。一匹のネズミが彼の右目に噛み付く。黒服の処刑人達はざわめき。彼の背中に一つの烙印をおす。彼は燃え続ける。彼は永遠に燃え落ちない。そして、誰も彼に触れることができない。青い右目、ネズミの口で青く輝く。そして、ネズミの舌は青く苦い。

#展覧会で喪服の人々は、

 絵の展覧会で喪服の人々は、一人の画家の肖像画の前で泣き叫び。別れを惜しんでいる。肖像画の瞳は遠くを見つめ、喪服の人々の事すら見ていない。彼の座る椅子の下でネズミは、ネズミ捕りにかかりもがいている。其の光景をキャンバスに描いていく画家が一人。彼のキャンバスは未だに白紙のままで何も描かれていない。

#今日、夜の農場で、娘と父は

 若い娘が一人、怒り狂いながら泣き叫んでいる。そして、彼女は農場の空き地を指差して。「今日、父があそこから這い出て、私を犯しにやってくるわ!」、と、罵りまじりに言って、また泣き叫ぶ。そして、父は、夜、一人、地面から這い出て、狂った娘を抱く。壁にかかった一枚の絵の中で子供たちが笑っている。

#君の見た夢の中、だが、

 暗闇の中で犬が椅子を押している。外は雷が鳴り、それ以外は何も音を立てない深夜。犬、それでも尚、椅子を押し続け、部屋の中をぐるぐる回っている。子供たち、扉を開けて、犬を蹴飛ばして、椅子を粉々に打ち砕く。犬が痛みを叫んでも彼らはやめない。そして、大人たちが、犬を解放し、椅子を新しく与える。犬、また、椅子を押し、部屋の中をぐるぐる回る。そしてまた、子供達にぶたれ、椅子は打ち砕かれ、大人たちがすべてを元に戻す。犬、今日もまた、同じように。

#カモメの後ろで、人々は、

 灯台守の座る椅子が盗まれ。打ち砕かれて捨てられているのが見つかる。多くの村人が疑われる。青い舌のネズミ。隅に居場所をみつけ居座る。喪服の人々が、ギロチンを囲むが、殺されるべき人は未だ着ていない。誰も来ない事を問題とする判事、怒り狂って、盗まれた容疑で灯台守がギロチンに。子供達、それを見て喜ぶ。青い舌のネズミの舌はまだ苦い。そして、カモメが一匹、灯台守の頭上を越える。
 


あらかわようこ

  いかいか

おわりがたがやされて
ひらかれてしまった
はじまりはいまだたがやされずに
とじられている
わたしたちのおうこくのたはたのように


どこかとおくをみつめる
しっちたいにあつまった
はなばなのむれよ


わたしたちのおうこくのかなしいつきよ
そしてたいようよ
わたしたちのこのゆきのおうこくに
きょうかいせんを
わたしたちのひめいは
ひつじたちのあし
わたしたちのかなしみは
ひつじたちのゆめ


ひつじたちがさんどねて
さんかいころぶ
あさはそうやって
うみだされて
はじまりはとじられる
よるはひつじたちのまばたき
ろっかいとんで
よるはうみだされて
たがやされたまま
ずっとひらかれたままになる


わたしたちのおうこくのゆめ
それはひつじたちのむれのつめたさ
わたしたちのこえ
ひつじたちのようもうにからまって
おちることをしらない
わたしたちのからだ
それはひつじたちのかなしみ


おわりとはじまりを
たべるひつじたちの
けだまから
ひる
わたしはせーたーをつくって
ふゆにそなえてひとりきる


荒地

  いかいか

荒地


さようなら私たちの懐かしい荒地
実りを知らない荒地の春
私たちの残り香だけが香る
私たちの稲の家は
荒地の春に燃やされて
私たちは駆けていく
どこまでも遠くへ

例えば、例えば、と、
子供の様に聞く
それは私たちが知らなかった春
何れ会うことになるでしょう
あなたたち
私たちの乳母は未だに
狼の群れの中で
炎の晩をしているのだから
私たちは出て行ける
そして雨が、雷が
私たちの荒地を打つでしょう、
雨が止まる瞬間、
私たちは待ちましょう、
どこまでも長い時間の中で、
どこまでも下っていく時間の中で、


そして原野へ

私たちの野に開かれた田畑
夜、田畑につみあがる子供たちが降りてこない
私たちはそしてまた出て行くでしょう
私たちの背骨から生える
多くの原野よ
私たちの春を知らない
春の友人たちよ、
湿地帯を越えられない多くの友人たちよ
あなたたちが醜く引いた線も
いつかは雪に覆われて
この世から消えてなくなるでしょう
だから私たちは駆けていくでしょう
この荒野という緑の極地から
戦うために私たちの乳母が知らない原野へと
さようなら荒地へ逃げる春の友人たち


揺れ

  いかいか

たった一冊の詩集を読むために
僕は朝早くから肘をつき
頭を垂れる

7インチLPから流れる"揺れ"と共に挿入される小鳥のvoiceが部屋に充満し
Vibrationする異次元空間へ平面からの逸脱をそれは朝もやの中からの起床
起立させられた音階のすべてにはにかみSmileする君の顔からまた新しいVibs
の波紋が部屋中の壁にぶつかり"拡散する"砕け散る波の集合が僕を覆った時に
Coffee makerから湯気立ち上りすべてをもやの中に帰した喚起の声がアンプ
から開放され縦横無尽に"世界を駆け巡る"すべての方程式の中で呼吸し圧力の重さ
の中で僕は俺へと変わる"Vibration"する文字

すべては"揺れ"の奥へ


舞妓の葬式

  いかいか

年老いた舞妓が齧る、
骨の音は、
いつまでたっても、
小さな音だろう、
僕が、遥か昔、
伊勢神宮で嗅いだ、
古代の人々の裸足の土の香りは、
今にも、私の隣の家の畑を耕してしまいそうだ、
そういえば、僕は葬式を散歩するのが日課だ
例えば、別れたばかりの恋人たちが好む雨の中を、
サンドバックを引きずりながら、
砂煙を上げて噴水に投げ込むまでに、
どれだけのカップル達が
アメリカンフットボールの試合の用に、
タッチダンすることができるだろうか、
もし、幽霊だけで結成されたチームがあったら、
間違いなく優勝するだろうが、
彼の足が生えてこないかどうかを審判はきっと気にして、
審判の足はさらに増える
そうこうしているうちにホイッスルが鳴らされて、
チアガールじゃなくて舞妓達が踊り始めたら、
恐らく僕の勝ちだろう、と、
毎晩、舞妓達が塗り上げる肌色は、
きっと彼女達の熱い闘志を隠すもので、
彼女らがボールを投げあいながら、のしかかりあいながら
押し合いへしあいしながら、
グッドモーニングアメリカ、と、ラジオで叫ぶことを
夢見ることは間違いだろうか?
深夜、壊れたラジオなんてのは使い物にならないのだから、
葬式と一緒に火葬場で燃やすことを僕は強く推薦したい、

京都に住んでいた時、
友人の友人が舞妓だったが、
彼女が僕に言った事といえば、
長唄の一つでも歌えるようになったら、
本能寺で遊びましょうと、
つまり、僕に燃え落ちろってわけか、


便所の落書きがなく日に

  いかいか

便所の落書きが泣く日に、
君たちが止まらない季節に、
燃え盛る冬が、
いつの間にか収穫を終え、
無数の積雪を納屋に積み上げるかのように、
私たちはどこへも行けない、


私は君たちの熱い鼓動の季節を感じることはできるが、
君たちの冷えた体を震わせるぐらいの感覚しか持っていない、
もうすぐしたら、
死者達も聖者もこの世からいなくなる、
そういう季節がやってくる、
私たちは静かに神話の中で寝入り、
ゆっくりと今を忘れながら、
何度も何度も、夢の中で、
ノートの端に書き続けるだろう

物語が神話へ熟すとき、
それは破裂して、
二人の人間を狂わすだろう、
その間に生まれた子供たちは、
盗人となって、
ムーサの前で
やはり何度も何度も
追い出された流刑の地を思い出すだろう


神話の中で暴れ狂う一人の男を
先日、古事記を読み直しながら考えた、
物語の中での彼の位置は一体どこにあるんだろうかって、
彼が根の国に降りていくまでに、
多くの人たちが傷ついたり
もしくは、彼を忌み嫌いつつ、
彼は母を求め、降りていく
彼は世界を統べることよりも、
母という女を求めて
暗い死の世界へ降りていくときに、
何を思ったのだろうかと、


便所の落書きが陽だまりの中で、
散乱し、錯乱している、
この季節に、
君たちの鼓動はやはり熱いが、
君たちの体は冬の寒さに凍えたかのように冷たく震えている、

もうすぐしたら、
すべてが神話へ熟して、
一気に破綻するだろうから、
そんなに慌てなくてもよい、と
私が眺める私がいない世界は囁いたまま
静止し、
なだらかに誰かの瞳を反射して、
どこまでも切り開かれた田畑の上を、
照らすばかりだ


死者の記憶=世界

  いかいか

死者の記憶のほの暗い洞窟、
松明をともして、
夜半に出かける、
首九つの村の中で、
女達が生み出すのは、
まるで顔のない人間たち、
引き剥がされた、
引き剥がされた、
と、
私の友人は悲しく言うが、
それはもうだいぶ前の話、

顔のない誰かの音楽を
僕らはやっている、
彼は百年前に死んだというが、
まるで酸素の様に、
その記憶だけが
世界に満たされている、
神童と呼ばれた頃の顔は、
すでに引き剥がされて、
女たちは
村九つで、
首をひとつ植え替える、

借り入れるの季節、
女たち、
皆、農夫になって、
歩き出し、
田畑を切り開く、
そして、
首十の村で、
八つの顔を挿げ替える、

贈与、
された、
死者の洞窟の奥で、
私が見た記憶の中で、
もっとも鮮明だったのは、
あのおかしな文化人類学者の詩、
彼の顔は引きがされてはいないが、
ひどくゆがんでいる、
闘牛のせいだろう、

首ひとつ、
田畑が三つ、
家四つ、
植え替えの季節、
男たちは、
裸のまま、
サンダルを片方、
そう、昔、あの男がやったように、
岩の上に置いて、

顔なしの祝祭、
皆して、
女たちを刈り取る、
男たちは植え替えられて、
静かに寝静まる、
納屋の奥で、
馬が見届ける、
ぼんやりとした
便器の上で、
蛙が雨を待っている、
鉄の老人は、
胸を締め付けられて、
今にも飛び出しそうだ、
そう森の奥から、
はじめて降る雨が、
酸素をかき消す、
紛れ込んだ野鼠の尻尾が発火し、
水中で炎がともる、
そしてここで、
私は始めてどもる、

今日は
重力が晴れている、
まるで、
追い落とされた
最後の生き物たちが、
簡単な会話をすませて、
家を焼くように、
そう、今日は祝祭、
村一つ
首二つ、

生きている人間はもういない、
皆、死んでしまっているのだから、
あの懐かしい腐臭がする、
そう、まだ私たちが、
野兎を追いかけて、
悶絶しながら、
射た弓が
返し矢となって、
胸をいるように、

腐臭は記憶なのだから、
それをすって、
記憶になるまで、
私たちは何も知らない、

今日は雨が降っている、
世界と切り離された批評家の運命を、
笑うには最適だ
毒を飲め、

首七つ、
村一つ、
刈り取られる、
植え替えられる、
鉢の中で、
にこやかに笑っているのは、
私の知っている人だったり、
私だったり、


朝の陀羅尼

  いかいか

朝の陀羅尼、


朝の団欒の中で、
私たちの産卵は始まる、
どこまでも
うつぼ舟の中で眠ったままの
黒くたれるもの、
それが読経の春に、
呼び覚まされて、
この黒く一人でたれるものを切り裂く、


神産みの朝、
あんとくてんのうが、
再度生まれなさる、
そのために、
禍津日神は微笑みかけて、
私たちのスサノオを殺す、
それが僕が夢見る
永遠だということを、
こっそりこの日、開示しよう、


僕の逆行する視線や
翻る瞳で見る瞼の裏側に
広がる銀河鉄道の悲しい話や
それ以上に、
この朝の陀羅尼が
僕の田畑を締め付ける、
納屋に積みあがるのは労働の垂れる唾液、


おお、ザネリ、ザネリ、
カンパネルラ、カンパネルラ
さいごに、ジョバンニ!
君らの黒いものを、
この僕の視線で死滅させてやろう、
そして、
やはりまたどこかで黒いものが
たった一人で垂れる音が聞こえ始める、


裂ける背骨の木々の音、
山水画の山脈から流れる川
立ち上る隠喩の蒸気、
ガンジスの沐浴を、
すべての聖者達に
かの川の灰の汗を浴びせたまえ、
エノラ・ゲイの陽光を、
いままさに、
僕らは夜の夜明けの中にいる


手垢だらけのバイブル、
もしくは、ボロの法衣、
そして、手を合わせる恐ろしい数の人々、
裸なのは
私の唯一の戦争、


都市が老いて行くのは
この限りなく済んだ陀羅尼のせい
私たちが鼻歌を口ずさむように、
地球を転がすものならば、
あんとくさまが、
草薙の剣を振りかざして、
世界の花嫁を車窓から追い出す、
さようなら、
黒い花嫁、
君がこれから行くのは、
あの飛来する最前線、
切り開かれなかった田畑の上を、
麦をまきながら
永遠に生まれないはずの子供を抱きながら、
まるで母親のように、
そして、
最後の入水が僕らの晩餐だ、
それは日の出からさす夜の肉体、
たった一羽の小鳥を打ち落とさないための受難のとき


星遊び 

  ポチ



 汗だくのアフリカで、裸になった友人から手紙が来た頃、僕の机の上では、数冊の本が同時に開かれたまま文字たちが飛び出している。友人の手紙が僕にこう言う「星に上がるのさ」と。彼が一緒に送ってきた人形はマヌケにも「Eureka!Eureka!」としか言わない。僕の祖父は、そう叫びながら家を焼いたんだよ、と彼が口にするまで、僕の部屋の扉は開かない。これはまじないなんだよ、ずっと昔からのまじないんだよ。
 
 星へ上がる

 星へ上がった人たちの瞳は青いから、とてもきをつけないといけない。僕がずっと昔に祖母に言われたことを信じていないから、青い瞳は、その人が死んだ後に、固まって青いものになるんだよ、と、静かに友人に語るけど、友人の瞳は黒いままで燃えているのさ。燃えたものは、白く冷えて土に上がる。上がってから、下がって、また黒くなるのさ。

 まじない

 まじないはいつも夜に、そして昼に、朝にはできるだけ控えて、そういう君はいつまでたってもそれをやめようとしない。まじないは、いつだって聞き分けがないから、耳をつけたまま走ったあの人のように、砂浜で首をかられるのさ、かられた首は笑ってアフリカに落ちる。落ちた首を君が拾って、またまじないをかけたら、それは星へ落ちるんだろう。君はそうやって何度も何度も夢を見た。


Eureka

名前を与えられなかった、
あなたや、わたしが、
くだけちったまま、
たまげる、
たまげるってのは、魂削るって書くんだよ、と、
知らない人が言付けて、
わたしは旋舞し、
あなたは戦舞し、
何度も何度も、
同じようにして、
見たままの、
開かれたもので、
同じように、
そしてや、また、から、
引き出された、
退きだされた、
靴や、
帽子を、投げ打って、
廻っては巡るままの、
呼吸の仕方や、
知らなかった、
場所に、
かえる、
そして蛙が、
帰らない内に、
私たちが
帰らない家に、
ことづけをして、
わたしたちや、
わたしは、
ゆっくりと、
渡っては、
渉り、
口笛を吹きながら、
屋根を葺いて、落ちた、
と、言われるままに、笑ったり、
下がったり、
転んだままで、
転ばないままの、
いしを、いしを、
渡して、
わたしや、
わたしたちの、
あおいままの、
ことばで、
いえへ帰るまでに、
孵らない、そして、
やっぱり返らない、
はだしで、見て

星へ上がらない、まじないを、
何度も、


アフリカ

  ポチ

発汗性にとんだ衣類をまとった多くの観光客が、サングラスの奥から黒い太陽を見上げている。私も同じ仕草で彼らの間に入ろうとするが、この慣れない仕草は、私のナショナルなものをすぐさま拒絶する。ガイドからいくつかの質問と注意を受けた後、私の隣人たちはぞろぞろと歩き始める。彼らの列はまさに、断層で、その隙間隙間で私たちの先祖は眠っているのだ。バスの中でも、光をさえぎる―遮られたものが、バスの中に散らばる、それをガイドは摘み上げるようにして、小話をしているが、私の隣人たちは、外ばかりを見て文明間の些細な戯言と、もう忘れ去られてしまった古い記憶を思い出すかのように語りだしているのだ。新聞紙には、見慣れない文字が並び、それらが僕の瞳の上でただただ踊っているだけだが、それが楽しい。時には、空中に舞い、紙面に突っ伏したり、中には、私のほほや唇を引っ張る―これを熱烈な歓迎いや洗礼といわずにして何と言えばいいだろうか―。
 野蛮なものがとても新鮮に食卓並んでいるかのようだ。まるで礼儀作法をしらない子供たちが、待ちきれずに、フォークとナイフを打ち鳴らして、出来事の到来を待っているかのように、激しい日差しは恐らく前菜として、ずっとこの後に続く料理のすべてを決定する。大人と子供の境目を悠々と笑顔で越えていく人たちが、レンズを覗き込んで、一瞬の画家になろうとしているのを見る。一人の隣人が立ち上がり、私に、カメラを渡して、合図をする。合図されたことが、ひとつの出来事として、カメラに刻まれる。僕はカメラの記憶を思い出そうとして、この熱っぽい額に手を当てて、深い深い炭鉱にもぐらなくてはならない。炭鉱からは、昔刻まれた地熱が、古い記憶としてあって、私はそれらにツルハシをつきたてる。黒い鉱石が割れて出てきて、熱が沸き起こる。草原の向こう側からは、知らない人たちの足音が聞こえるが、一向に風景は、私たちの隣人のために用意された何の変哲もない草原で、そこからは、香りがしない。炭鉱では、男たちの大きな声が上がる。大きな見たこともない鉱石を口にくわえた猫が大男たちをよけて逃げ始める。それを追うのはもちろん、あの黒ずんだ顔の男たちに決まっている。
 汗ばんだ者たちが、洗い流されないように、未だバスの陰でうろついているのが見える。うろついたものたちが、私の隣人たちのカメラに滑り込んでいく。押されたシャッターの一音の中で、砕けた顔が広がったまま、微笑んでいるのを注意深く観測する。白くもなく、黄色くもない肌の運転手が、ミラーでそれらを見ている。ミラーに写る顔が、汗ばんでいなかったのは、すでに、運転手が遠くまで走って行ってしまったからだ。私たちは、気づいてはいないがおいてけぼりを食らったのさ。私の隣人たちはそれに気づかない。何度も、何度もシャッターを押し続けている。ガイドは盛んに、いくつかの指示を出す。持ち寄られたものが、塊となって、謀っている。謀られた者たちが、汗ばんで、突然、口を閉じればすぐさま汗は消えてなくなり、頭上からは、ザングラス越しの黒い太陽のみが残る。黒点の一つ一つを背負った蟻が、私たちの世界に汗を運んでくるのだが、これは、未だ科学の世界では一切語られてはいない。僕が、夢遊病だった頃、アフリカの大地は、水浸しだったというのに、今では、スイスの酪農家が羊を放牧させながら、アフリカでアルプス山脈を見上げている。もちろん、そこで、羊たちは、また猫に追われるのさ。僕のイメージがアフリカを壊して作り直す。それは、まさに土砂降りの雨だ。雨の中を、魚たちが泳いでいる。ここは、一端の魚市場となって、多くの人たちで賑わい始めるが、私の隣人たちはそこまでは来れない。僕は飽き飽きしているのさ、自分の空想に。
 海を見たことがない女の子について僕がいえることといえば、海がないのなら、作ってしまえばいいということにしかすぎない。なんでもいいよ。そこの辺のケーキでも作るボールに水を浮かべて、手をつければいい。そうすれば、そこにはもう海があることぐらい、まるで、隣の部屋から、知らない女性の友人が現れて、君と私は昔背中合わせだったんだよ、と語りだすだけで、月面に水が沸くのさ。それをアポロは汲むことを忘れたから、いまだに、宇宙船を送っている寸法さ。さて、そろそろ、僕の空想の、頭の中の本を閉じよう。実はまだまだ、多くの本があって、それらは誰にも語っていないけれども、僕は何度もいうように、自分の空想に飽きているのさ。
 昨日、友人に手紙を出した。赤いポストの奥に手を差し込むと、少し汗ばんだ。きっと、それは僕がアフリカに少しだけ触れたからに過ぎない。

 


  祝祭

 雨季

 手のひらの上に、雨が降る、雨季の中に湿度、友人の下で、野が眠る、寝返りを打つ、ニシキヘビは私、と、彼女が言う、彼女の天気は晴れ、君たちは結婚しないでしょう、と、笑って、言う、隣で、友人が、寝返りを打って、その下で、静かで小さな虫たちが

 乾季

 貴方は歴史、彼女が言う、友人の寝起き顔が、こちらを見ている、君たちは結婚しないでしょう、と、笑って、いう、歴史には本が必要でしょう、と、いって彼女が布団に入ってまるまる、寝起きの友人、僕たちは結婚する、と、笑っていう、

 森

 私たちはやがて、森、知らない言葉で話し始めるわ、と、彼女が言う。ヨーク、トーラム、テチュン、ナキャン、君たちは結婚しないでしょう、と、笑って、いう、歯を磨く友人の隣で、手を洗う彼女、友人が、鏡に向かって言う、僕たちは結婚する、と、言って笑う、手を洗う彼女が、友人の手を洗い始める

 川

 私たちは何も食べない、彼女が机に座って言う、おなかをすかした友人が、ナイフとフォークを持っている、君たちは結婚しないでしょう、と、笑って言う、彼女が、からっぽの皿に彼女のおしっこをたらす、おなかをすかした友人、彼女のからっぽの皿に彼のよだれをたらす、友人、僕たちは結婚する、と、笑って、いう

 トイレ

 ここは、私たちの寝室、と、彼女が言う、トイレのなかの友人、扉にかけられたカレンダーをめくりながら、天気を書き込んでいく、君たちは結婚しない、と、笑って言うと、トイレの中の友人が、水を流す、トイレから出てきて、僕たちは結婚する、と、笑って、いう
 


  祝祭

私は、カーディガンに、
ルビをふる、
魂から、零れ落ちる、
台詞のない、
幽霊が、
服を着て、町を歩いている、

この寒さ、
耳を、凍えさせる、
防寒具はもう昨夜のうちに、
作者の、こだまする、
魂から、
温暖な、地方へ逃げ去った、

あれから、作者は、
体を動かしながら、
笑った、
笑いの中に、
一筋も、凍えるものが、なにもないのなら、
私たちはいつだって、
魂を、ここに捨て去ることだってできるはずだ、

昼下がり、カーディガンが、
月をたたく、
あの、光線を送り続ける、
葡萄の、果実を、
唇で、開き、
天気を、再度呼ぶために

(降らせる)
カーディガンに、ルビを降らせる、
都市の、荒廃した姿を、
思い浮かべながら、
ずっと遠くまで、
詩人のいない、世界で、
口笛を、ふくように、

この寒さ、
耳を、口を、瞳を、
覆うようして、
言葉が始まる


今日、私の日本語から一切のかなしみがほろびる

  祝祭

南西から、
深い雨が、
始まった、
長い、乾期の、
終わり、
ここは、沼地の、
中にできた、
ひとつの、瞳、

―砂で、
瞳を洗うようにして、
清められるもの―

唇を、
噛み切った、
言葉の、
始まりから、
多くの夢を見た、
人たちの、
声に、
口を開くようにして、
耳を開いて、

私たちは繰り返す、
ふるいまじないを、
新しい言葉で、
日曜日がくるたびに、

(一つの、祝祭が、投げ込まれた、
 ここからは、多くの野が、
 水浸しにされて語られ始める)

不思議と、
明るさが、
増した、
私たちは、
この世に、
落ちた、
千の亡霊を、
一人残らず、
すくうようにして、
唇を、
噛み切る、

この世を、
渡る、
一つの、
端が、
均衡を、失い、
消えかかっているのを、
見つめている、

瞳が、手を、
映し出した、

今日、私の、日本語から、
一切のかなしみがほろびる、

(ここで、ルビを降らせる)

真新しい黒いカーディガンや、
白い、シャツに、
降る、ルビの、数々が、
開かれて、
落ちていく、

そして、
発話が、
始まって、静まった、

息は白く、
かなしみは、もはや、
遠い、

今日、私の日本語から、
ほろびた、悲しみの、一切が、
体に宿る、

千の、
亡霊の、
首が一斉に、とび、

私は、
唇を噛み切るようにして、
言葉を、
かなしみに分け与える、


ラピダ

  いかいか

(散文の雨)


女は唇から言葉を吐き出して、身を震わせてから犬のように町に消えていった。消えたことが、ありのまま残り実った。果実は収穫され、男の口に含まれて、歯の間で荒く噛み砕かれ果汁を出し尽くすと喉の奥に最後の墓所を見出した。墓所は、爛れた神々の陰部のように開き、女の唇から再度言葉を奪ったまま煙をはき、煙から二十日鼠と人間が生まれ両者は接吻と不似合いな性器を見せびらかしながら岩でお互いの領土を隔ててしまった。海上の出来事は、すぐさま大陸に上がり足を生やし人間の間を駆け回った(まるで二十日鼠のように)。ビルケナウへ向かう猫の足取りは軽く、まるで僕らの描く何の面白みもない散文のようだ。そして、唇からは汚濁。流れ出したものがとまらずに、口々にあらゆることを押し流し、創世の七日間のように、あらゆる細部も大枠も放り出され、言葉すらも流された。墓所は開く、何度も、爛れた神々の陰部のように。


散文の雨(反転)

  いかいか

散文の雨(反転)


(ハツカネズミは故郷を思い出し、
   オレンジを切る手から逃げる)


セーターをたたんだ、冬からは遠く、夏からは遠く、
ひらがなのセーターはちぢんだまま、
知らぬ人に送り、
返りを待って、踵を打つ、

水平に、
体は、横にならずに、
口から七日間の雨、
傘を差したまま、
燕は巣をつくり、
軒先では、蛙が、
セーターを着込む、
オレンジを切る手から、
ハツカネズミが、
故郷を思い出して、
季節に返る、


朝がまぶしくはなかった、
カーディガンを洗う、
蛙と一緒に、
回る洗濯機の中で、
泳ぐ、緑の、
一匹が、手のひらに、
つかまるまで


ふじさん

  いかいか

まばたきなき、

 散乱するのは、まばたきではなく、いつも朝食。狼たちは南下し、薪を火にくべる―私たちが手を温める(そこ、底は)―災厄を、
「火はない、あるのは、まばたきのみ」と、線世界に設定された、父がくる、母が来る、英語からも遠く、日本語からも遠い、故郷が、
国境線を(国を教える)、君に分け与える、詩のない世界を、歩く、人の背中から切断する―批評が乳房を満たし、貴方の頭に垂らした―、(
まばたきが、この世からは遠くにあることを、まばたきがこの世にはないこと、振り下ろす)
―キナキタバマ、と、黒い瞳をもたなかった彼は、同時に、彼女ももたずに、砂を洗いながら、キナキタバマは夢見を見る。
キナキ、タバマ、と別れたままの、瞳が、「まばたき」をせずに、水しぶきをあげる―神話を洗い流そう、創世の洪水で―
キナキ、タバマは、まばたきをしないための、灰を拾う―かまどを掃除する、隠れ住むために、煮えた鍋の地平線上で、コロンブスが、
卵を割る―eggは、ニワトリから早く逃げ出したから、殻―残り火の平原、ノコリ、ビー、と、喜ぶ、
 
 わかれ、横臥する人

 羊たちの雨を飲む―神々が天気を開き、私たちがそれに滑り込む―、骨を、投げる、
別れからは遠く、涙を、千に砕き、横臥する、人に、垂らすのは、神々の、天気、
繰り返し、ここは墓石の庭、昼に人は横切り、夜に、入る、
アボガドをむしる、緑の宇宙船、UFOの刺客、横臥する人を横切る、

 誰にでも読める平易な物語で

 物語のない、物語が読みたい、ことばをくちをうごかさないで、
真っ暗な部屋ではなく、真っ白でもない部屋で、「くちをうごかさないことばを」と、
白い人はいうが、


夢日記

  いかいか

 ひとつのスピーチが終わった。会場にいた、コロン達がざわめく。男が一人、壇上に上がり、ステップを刻む。僕はそれを、観衆の中で見ているが、男はずっと僕を見つめたまま踊っている。男が踊っている時、男の口は一つの言葉を声なく言い続けている。隣にいたコロンの女性が私の手を引いていく。小屋の中には、三人の黒い肌をした子供がおり、「貴方の子供よ」と言う。「肌の色が違うじゃないか。」と僕が言うと、女は裸になって陰部を見せる。ここを舐めれば、貴方も黒くなる、と言って笑う時の歯が白い。

 架空の小説の話を考えながら歩いていると一人の少年がやってきてとおりゃんせを歌っている。今時の子供でもこんな歌を歌うのか、と思いながら、その子供を見ると、一つ目だ。片目がつぶれ、まるで小泉八雲のように、覚えたての歌を歌うようにして、彼とすれ違う。少し歩くと、20歳を超えた女がはしってやってきて、「私の夫を知りませんか?一つ目の!」というので、「一つ目の少年ならさっきみましたよ。」と言う。「それが夫です。」「でも、年はまだ10歳ぐらいだと思うんですが、、、」女はそれを聞いて怒る「あれは一つ目なので私の夫なんです。」と。

 友人の結婚式にきている。花嫁はなぜか、顔を伏せている。花嫁が泣きながら、「私は今から双子になるんです」と言っている。友人も延々と泣いている。
「この、まさに今、妻となろうとしている人は、双子になるんです」と。すると、彼女のスカートの下から小さな女の子が出てきて挨拶する。「私がこの
今から結婚する女の姉です」と、そして、友人にキスをする。友人は泣きながら嫌々そうにそれを受け入れる。彼の花嫁はそれを見て泣き喚く。

 ニューシネマパラダイスで唯一泣ける場面があるとするなら、「ここは俺の公園だ!」と喚きながら忌み嫌われる彼の真剣さとその光景の陽気さ。このことを、目の前にいる女性に話す。女性が立ち上がって、乳房を出し、「小さいでしょう」と突然言って笑う。

 周りには白人ばかりがいる。ここはどこの国ですか、と聞くと、「日本だよ。」と日本語で返ってくる。君は、スコットランド出身だろう。その黄色い肌、がまさにそうだよね、と、隣の女性が言う。目の前では、同じ黄色い肌をした老人が、浮世絵を描いている。

 女性と映画館に来ている。上映されている映画では、陽気な田舎で人々が歌を歌いながら田植えをしている。隣に座った夢の中で恋人である女性が、「クリムトは口笛がふけないそうよ」と言う。「へーそうなんだ」と軽く答える。女性が突然泣き始める。「口笛がふけないってことは、カモノハシを見たことがないからなのよ。」と。映画の中では、未だに田植えが続いている。

 来た事もないレコードショップでレコードを掘っていると、店員からこれがいいよ、とレコードを紹介される。それは見たこともないレコードでジャケットにはなぜか、デリダの写真が貼ってある。「これは何のレコードなんですか」と聞くと「HIPHOPさ、それもデルタブルース以前のね。年代ものだよ。プレス数かって少ない」と言われる。


01

  いかいか

(ハツカネズミは影絵を抜け出しパリで求婚する。)

 

 巣の中には、二人の娘が残り。一人は赤い髪の毛を結ぶことを当の昔に忘れてしまったかのように放り出したままぼんやりと外を見ている。もう一人は、黒い髪の毛を幼馴染のように優しく手の指くるくると回しながら床を見ている。二人がいる部屋にはいくつもの絵が飾ってありどれもこれも肖像画で一人の男性の顔が描かれている。男性の顔は旱魃で喘いだ土地のように深い皺で満ちており今まで一度も水の恵みを受けたことのないような乾ききった肌に大きい黒い瞳がその土地に雨が降らないようにまるで監視するかのように鋭い目つきでこちらを睨んでいる。

 瞳をめぐる物語をしよう。瞳がまだ開いていないころ、月の裏側には水銀の海があった。それは決して、観測されえない地図として、私たちの手元にあった。水銀の海では、多くの人々がいまだ分かれない形で留まったまま深く潜っていた。潜っていた瞳は、開かれないまま水銀に浮いていた。瞳を与えられた、人の中に、瞳を開いた人がいた。それは、初めて重力の喜びを知った思い出として、いつまでも私たちのまぶたの裏にある。瞼の裏に地図を描くこと―地図は鉛筆とコンパスでは示されない海を眺めていた―。初めて開いた瞳を閉じたとき、そこにはいくつもの影絵が見えた。暗闇の中で動く無数の影が踊っているのを、何がそれらを照らしているのか僕にはわからなかったが、優しく神が僕の肩を噛んだ。そしてその記憶を忘れた。

 

 (二匹のハツカネズミは求婚するために逃げたオレンジを探すために穴倉から外へ出る)

 

 男の乾いた土地を渡る風の間を二匹のハツカネズミが歩いていく。二匹の足取りは重く、足はあっちこっちへと方向を定めずに行ったりきたりを繰り返し、一向に先に進まない。雨の降る気配はなく、二匹の舌は最初の乾きを感じてからすでにもう、ゆっくりとこの土地の印を刻み始めていた。小さく裂けて、ひび割れていく舌の上に、またひとつ土地が開かれようとしている。男の目がその土地を見てさらに鋭さを増し、少しだけ喜び満ちる。農奴達が遠くからやってきて、二匹の舌の上で開墾を始める。男の瞳はそれを見つめている。一人の農奴が舌の上で死に、舌のひび割れた大地に帰っていった。その農奴の焼かれた骨をやさしく包む二匹のひび割れた大地に、男の瞳が閉じられた最初の月にようやく雨が降る。ハツカネズミは一匹となり、すべてを忘れる。初めての雨にハツカネズミの毛は濡れ、丹念に雨粒に折りたたまれていく。

 祝祭を祝う人々の群れの中に、一人の神が姿を現し、髪の毛を洗っている。神の髪の毛を洗う女たちがひそひそ声で、「今日、この方は結婚される。」と言っているのが聞こえる。「人間の男と、、、。」。神はその話を聞いていないかのような姿で髪の毛を洗っている。ところが、その神は男で、まさにこの男神は今から人間の男に抱かれるために、髪の毛を清めているのだと、僕はそれを見てひどく安心すると同時に、言い知れぬ恐怖に打ちのめされ、吐き気を催す。

 

 (ハツカネズミは一匹になりお互いのことを忘れる)


 スターバックスの緑の香り。アメリカの赤も、日本の白も、グアテマラの水色も、含まれていない緑の中に、一人椅子に座り、外のとおりを眺めている。椅子の一つ一つから湯気が沸き立つのは、使われている木材がすべて亜熱帯のジャングルから切り出されてきたものだろうか。息を吸い込む。隣に座る男女が笑顔で話している。二人の会話の甘い香りが鼻に入って、耳で噛み砕かれて言葉になる。外は突然の雨、多くの人が走り出し駅に向かっている。水は歩道をすべり排水溝へと行き着く間に、駆け出された足に踏まれるのではなく、その足を包むようにして、少しだけ地面から浮かばせる。雨が人々の足をやさしく包んで、少しだけ空中へ押し上げるとき、僕らは気づかないうちに重力を信じなくてすむ。

 ブレードランナーのように、と、昨日友人が話していたことを思い出す。その友人は、ワーグナーをなぜか信じている。それを日記に書き始めようとするがうんざりする。

 

 つまらないやめた


遠い国で中国女と出会う夢を見た。そこがどこの国かはわからなかったが、女はいかにもなアジア人のとんがった目つきで服を脱いでベッドに横たわっている。それを見て、僕はその女の肩に「狐が憑いている」と突然思う。女から離れて、椅子に座ると、女はそのまま眠りこけてしまう。すると、女の右手が突然上がり、手招きをしはじめる。扉が開く。男が入ってきて、中国女の布団にもぐりこむ。女が大きな声で言う。「この狐憑きめ!」と男を罵って、男は逃げ出すかのようにして退散する。


祝祭前夜

  残念さん

 一日目

 妊婦の腹が引き裂かれ、光が漏れた。多くの人たちがそれを見つめ。頭のおかしくなった、アリス気取りがこけて階段で頭を強く打ったまま頭蓋骨が割れまた光が漏れる。光、光、と、数を数える。あちこちで、誰も彼もが腸を引き裂いたり、頭を打ちつけながら光が漏れることを望んでいる。
 そして静かになった。後には、腐乱していない新しい死体ばかりが並び。すべての死体からは光が漏れている。眼球を失った空洞からも、引き裂かれた腹や頭からも、僕はこういう光景の中にいるのが一番落ち着く、と、思うと、背後から誰かに強く殴られる。何度も殴られていく内に、僕の頭からも光が漏れ始める。あ、光、だと、また光の数が増えたと喜んでみるが鈍い鈍器の音が止まらない。それが嬉しかった。

 二日目

 文字の読めない女の子が物語を求めて歩いているのを見る。彼女は、文字が読めない、ことを物語るための物語がほしいという。そんな物語はもうこの世にはないよ、と告げる。それでも、彼女はほしい、といい、僕の後ろでニヤニヤ笑っていた男がその女の子に物語を教えてあげよう、といって、彼女に「不幸」や「悲惨」という言葉を教えては書かせる。それを見て周りの人々が、手をたたき始めて次に「誠実」や「切実」の言葉を教える。これで物語を作れるだろう、と男が笑って言う。周りの人々は彼女が男に習った単語を使って物語を物語るのを聞いてなき始める。男は、それを見て、周りの泣いている者達を全員殴り始める。お前らはいつだってこんな物語がほしくて、ずっと飢えていたんだろう、と、男が笑いながら、自分にアルコールをかけてライターをつける。燃える男が大きな声で言う。「これで、さらに物語がつくれるだろう」と言って。文字の読めない少女は男に習った言葉で男の物語を作る。そして、まるで男などいなかったかのように、皆その話を聞いて泣き始める。

  三日目

 掟の門をくぐることができない。門の内側にいる人々の光が見える。もうすでに、葡萄は破裂して、流れ出ているばかりだと言うのに、雪の中を裸足で踊る。踊る人たちの間から喜びばかりがもれて、楽しい、と、掟が降りてくる。掟が、門をくぐる。次から次へと倒れていくのは人ではなくて、葡萄の木だと気づいたとき、街路樹には人々が実り。口々に、収穫を待っている、と微笑んでいる。
 渋谷、新宿、と、籠を背負って収穫していく。笑顔で挨拶しながら、都市の気候は温暖だから、と、隣の女性が言う。駅の構内、列車に乗る人々の靴があさってには売り払われ、誰もがもう踊らなくていいと、彼女が囁いて、街路樹に実った一人の男性が微笑みながら収穫を待っている。手を差し出して、男を摘む。

 四日目

 肌が焼けて、白くは無かった。蛙が実をむき、秋が焦げる。鉄道沿いに並んだ花火。笑い焦げる人。ここからは、もうどうでもよくなった、と、思いながらテレビが投げつけられ、次に、燃やされた服が飛んでくる。偽りでも、物語がほしい、と言った少女から、ずっと遠くに来た気がする。すがすがさしさばかりが残り、後は晴れ渡る何かが僕を押し広げる。唇は石灰を含み、体が螺旋上に翻る。裂けた、と、声がして、光が漏れる。
 ブロードウェイで踊るタップダンスのことをなぜか思い浮かべる。ハイヒールが蹴りあげられて、遠くに飛んでいったのを思い出したり、しながら、物語を一つ残らず世界の外へ追いやって、ようやくわけもわからないなにかが飛び込んできてから窓を開く。


 
 


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  いかいか

2009-10-20

ひとつ、ふたつ、みっつ、と転がるようにして指折り数える。何を数えているかは誰にもわからない事。指折り数えながら、折れていったことの多くが、よみがえって挨拶をするかのようのして、今は去っていく。その事は悲しくもなければ、嬉しいことでもないが、何故か清々しい。昨日、山道を抜けて神社にいった。といっても、この山道を知っている者はほとんど誰もいない。この道は役目を終えてしまっているのが分かる。木々が倒れ、道は途中から分からなくなっている。それでも、出口に近づけば、一応の道はあって、なぜ、そこだけ残されているのか、もしくは、今後もずっと残っていくためにそうあるのかもしれない。境内は、秋祭りも終わり、しまいこまれた神輿の蔵に、本殿。出張神主が時々やってきていろいろしている。古い人々の名前が刻まれ、再建もしくは、補修のために寄付をした人々の名前がある。埃だらけの名前の中に、聞いたことあるような、無いような名前がいくつか。石を手に取る。放り投げる。落下して音を立てる。また、知らないことが増え、知っていたことを忘れる。石段を降りるとき、村が一望できる。家々には、家々の、そして、道々には道々の、と、くだらないことを考え始めるが、それらすべてが何の意味も持たないことを確認してから、下る。

2009-09-29

 白さが駆け足で巡る。女たちの戦いばかりか、そこには何の香りもしない空間がありそれを引き裂くための奇声も喜びもない。集いあった患者の親族たちが談話室で話を待っている。僕も祖母の白内障の手術の終わりを待って談話室に居座っている。片手にはボルヘス。暇つぶしに読んでいたが、三十分程度で手術が終わり、大きな眼帯をした祖母が奥の手術室と病棟を隔離した扉から出てくる。祖母の瞳は回復して昔と同じような光を反射させて世界を見るだろうが、ボルヘスは暗闇へ降りていった作家だった。ボルヘスに与えられた暗闇は、膨大な書物に覆われた暗闇。祖母はすぐさま病室に帰ると寝てしまったので、私もそれに応じて帰宅した。帰宅途中、何気なく車を運転しながら思い浮かんだ物語を書こうとするが嫌になる。更級日記を読みたくなるが読み始めると止まらなくなりそうなので無理やり抑える。それにしても、病院ってやつは、ああも無駄に清潔感を出そうとしてことごとく失敗しているのだろうか。そもそも、なぜ、白が基調なのか理解できない。ナース服の女性はそらいいものですけど、なぜに白なんだ。真っ赤を基調とした病棟とナース服の看護士達が点滴するような、そういう今までにないボケ老人に色で刺激を的な病院希望です。

2009-09-09

秋月を喜ぶ。甘露を受ける杯はないが、散歩する足並みはいつにもまして軽やかだ。まるで夢の世界を闊歩するかのようにして、町並みを朝へと見送る間だけの心踊る時間。懐かしい感じがするが、これはきっと何かの錯覚だろうというのは分かっている。昼間の戯言を洗い流すかのようにして、影ばかりがこの土地を支配していることが心地よくどこまでもいける気がする。裸足の辱め、を都市では受けるが、真夜中の田舎は誰も人がおらず、裸足で歩いてもすれ違う人々の顔が気にならない。

 都市構造を分断する―秋月の沈む海原を想起し、いろいろと考え込むが思考はすでに言葉になることをやめて夜の明るい風景を楽しんでいる―幽霊の歩幅。歩くたびにスニーカーがずれ、ハイヒールがずれ、服もずれ、薄らぼんやりと立ち尽くす若い女や男の幽霊。けばけばしい化粧が必死で人間であることを訴えようとして失敗しているような、そんな陽気な夜を考える。また、躯の多くから光が漏れ、幼い子供たちが、その光を採取し、小さく歓喜し、人の死を、血の、肉の腐敗からは遠い場所で楽しむかのような。墓場は寝室と同じで、朝になればハムエッグを焼いて、フライパンを叩き鳴らす神々によって幽霊たちは起こされ、一日の始まりだと言わんばかりに瞼をこすりながら、幼い子供が学校に行くのを嫌がるようにして、だらだらと列を作り食卓に着くような。

 怪奇を反転させる。躯から漏れる光―そこには血もなく、腐敗した肉も、死臭もなく、この世界の生物学的、微生物学的、時間的な、ものとは違う世界を想定して―を採取し、観測する子供の情景をよく考える。彼らはこの世界とは違う世界で、その世界には死の醜さはなく、ただただ、満月の夜に珊瑚礁が一斉に卵を産卵するような一種の神秘的な光景として。採取された光は決して魂でもなく、死者の遺産でもなく、単に蛍が光りそれを見て今僕らが喜ぶような者として。死後、発光する何かを生み出す死者の世界。これは僕が考えた空想でもあり、現実の死からの逃避であるとか、腐敗や醜さを伴っていない死は存在しないのだからそういう風に描くのはだめだ、という批判であるとか、そういったこともどうでもいい。

2009-09-08

また、公民館に夜通し火がともっている。誰か死んだということだ。人々が集まり、告別式の間読経が聞こえてくる。寝ぼけた感じで聞いている。ちょうど、『ソラリスの陽のもとに』を読み終えたところに。車のサイレンとともに、死者が連れ去られる。今日、夜の散歩の途中に墓場に行った。静まり返っている墓場の中に新しいものが入る、と、思いながら墓石を眺めるが何も応答はない。先祖の墓に前でタバコをプカプカしているが何も起こらないばかりが、起こらないことが当たり前のようにして徹底されたこの空間で、人々は埋葬された後の生を生きていく。墓場の前に広がる田畑では稲刈りが始まり、騒々しさが戻ってきているというのに、相変わらずここは何も語らないための空間として口を閉ざしたまま暗闇の中にある。
 人知れず、夜出歩く時、月明かりばかりが地表を照らし、何もかもがうすらぼんやりと見える。だから秋月の散歩は楽しい。影から影へ比喩や隠喩が飛ばない。この風景を見ているだけで感動できる。この感動を決して言葉にしないための言葉を用いて表現するそれが「感動する」であったり。

2009-08-19

昨日の夕方から公民館では、葬式の準備が行われ、いつものように儀式がはじまり。夜通し、公民館に明かりがともる。親族の誰かが、死者と共に一夜を過ごす。公民館の目の前にある我が家。我が家の私の部屋も明かりが消えることはなく、夜通しオーウェルの『1984』を読む。死者と競うようにして、明かりを消さないこと、なんて、くだらないルールを自分に設けてよむ。朝早く、父がおき、朝ごはんと犬の散歩にいくので、それよりも早く家を出て散歩。

2009-08-16

 今日も、いつもの散歩。外に出ると、祭囃子が聞こえる。あぁそういえば、盆踊りか、と、それでは、と思い。一人墓地に向かって歩く。家々に帰る多くの祖霊達の騒ぎ声や足音が聞こえそうになるがすべて、祭囃子にかき消されていってしまう。生きている人々は、寺の境内に集まり、死んだものたちは家々に帰り、墓地には今この時期、一体何が残っているのだろうか。この張り詰めた死者達の共同体、疎外された一つの記憶。墓石を一つ一つ見ながら墓地の中を歩く。時折、電灯の明かりを受けて、輝くものから、ずっと暗い影の中でじっとしているものまでのすべてが規格化されたモノとして直立している。墓場の墓石を一つの社会と考えれば、まさに、モダン建築さながらの機密性と厳格なプライバシーに貫かれていて、一切の他のものをその内に引き入れまいと強固に閉じられた石の扉。この扉を開くためには、墓石に名前を刻まなければならないが、それは、常に他者―未だこの世に残った者たち―の仕事で、死者自らは開くことができない。まるで、丁寧に手紙を折りたたむようにして、私たちは死者を規格化された家が立ち並ぶ疎外された共同体へ追いやる、または、そこで意味を与える。新しい村の始まりを告げなければならない、と、多くの人は黒い服を着て集い、このふるい共同体で積み上げられた彼ら彼女らの記憶から昼を抜き取るようにして夜の体に備えるために洗い流す。

2009-08-15

 うつらうつら、と夜の散歩。右足を出せば、勝手に左足がついてくるものだから、この不都合な動作にうんざりしつつ、煙草を意味もなく吸っている。吐く息も白くならない季節なもので、調子に乗り友人に電話などしてみるが、話の内容は相変わらずだ。蛇が目の前を横切ろうとしている。とりあえず、踏んでみるか、と思い、思いっきり踏んでみる。足をかまれそうなるが、このままかませてしまおうかと思い、蛇をじっと見つめている。どうせ毒蛇の類ではないのだから、せいぜい歯型の一つでももらっておけば明日の話のねたにはなるんじゃないかと、くだらないことを考えるが、そこまでしてねたがほしいかと思い、しかたなく、蛇の首裏をつかんで、田んぼに放りなげる。蛇の夜間飛行なんて、ちっとも面白くないなと、イブをそそのかしたように、俺もそそのかしてくれることを少しは期待したい。その期待は、蛇の放物線と一緒に田んぼに落下して、どうせ実らないままなんだろうぬぁ、と、くだらないことを考えて散歩を続ける。


防波堤(連作)

  いかいか

01

霧の、静かな日、
ゆれるものは、
すでになく、

02

息の低い日、
断末魔への、
愛情が、人知れず遠のく、
揺れることへの、
ためらいが、
魂を早産する、

03

空を飛んで、立法する、
そしてやさしい数学
のはじまり

04

憂鬱の有袋類、
やわらかくなった、
危機、

05

雨の危篤、
古い物語の、

遮った、
ばかりの、
手から、

06

唇の天気、
サンダルを
足に上げる、
机から、
転ばない
椅子

07

怪談前夜、
言葉の喪した、
世界、


HAVEN made in japan

  

暴力の限り娼婦どもを犯せ、天使どもが酒場で酔っ払っている間に!

 冗談じゃない。どいつもこいつも朝からいかれたまま昼を食い散らかしてやがる。俺達の優しい神様の慈悲なる銀行につめこんだままの腐敗が今にもながれだしてきちまいそうだ。この世界は今じゃ、ろくでなしどものに埋もれてボンベなしじゃいきちゃいけない。ここは、高原病の行き着く最果てにちがいない。病人の奴らは、皆祈ってやがるのさ。青白い顔で、私達を救いたまえ、ただ私達は何も背負いたくありませんが、と、そいつらの頭にしょんべんがひっかかる。とうとう、神様もいかれちまったわけだ。手は痙攣し、天国が壮大な密造酒の工場に生まれかわっちまったって寸法なのさ。
 そして、暴力的に俺達は脱獄する。これは一種の美学なんだと、柵を越えるときに、俺達は一列に並んで射精する。綺麗に、明日にじゃなく、俺達の目の前にある希望と言う名の奈落にむけて!奈落から匂って来る腐った香り。希望ってやつは腐った臭いがしやがるんだ。つまり、それに集る蝿どもの多いこと!祈る奴の青ざめた顔は、感情に整形されたくそくだらない面!
 俺達には悪魔も天使も未来も過去も希望も絶望も味方しやがらねぇ!便所は、この世界でもっとも清潔だ。何もかもが渦を巻いて流されていくとき、それは処女の女どもが、目の前で同じ処女の女が犯されるのを見て、苦痛と快楽に引き裂かれながらも最後は、事実に押しつぶされちまうように!
 女の性器を指で開くようにして、地獄を開く。乾ききった死体には蛆もたからないのさ、お前らのじっめぽい魂や感情にはいつも蛆がたかってやがる。
 糞くらえだ!日本製のくだらない天国の中で、特に名指しされた爆発と轟音のど真ん中で、糞をたれる野郎どもを。
 
世界は、
今、必死になって、
肩パットの、
モヒカン連中と
死闘を繰り広げている、
ブイブイ言わす、
バイクの、石油で、
頭を洗われた、
子供の、背中で、
百の、瞳が、
いっせいに、
目を覚ます、


JIGOKU made in japan

  

 やさしいにほんごの、からだからあふれたわたしたちのたましい

 ゆうやみはいくつものよるをたべて、ずっとおおきくなったまま、あしもとでねむって、そしてからだをおこすときに、なる、おとがあっしゅくされてへやにひろがるとき、へやじゅうにちらばったあかるいへいきがわたしたちのことばをこなごなにしていく、これはよみにくいことばだから、このからだはもうずっとむかしに、ことばからうまれた、はずだから、と、ことばがひきさかれて、からだが、うまれる、いっぱいのからだのなかに、あなたのからだや、しらないひとのからだがあって、そのうちいくつかは、もうすでにしんでいる、あなたのからだがことばからたちあがるとき、わたしたちのやさしいにほんご、のからだから、たましいがあふれて、もうとまらないから、たましいの、ない、からだには、ことばがないから、からからになった、ことばに、からだをかえす、たましいは、ことばのなかでねむって、いつまでも、ねむって、ろくにおきないまま、ずっとねむっている


 私達の、やさしい、日本語の、
 身体から、夜があける、
 たましいの、溢れた、ままの、
 からだに、ずっと、
 言葉が眠りますように、
 と、そして、貴方の、身体
 が、やさしい、ことばで、
 みたされたまま、たましいを、
 


 


砂遊び

  

「プクータ、瞳を洗いなさい」
「お母さん、外がうるさいよ、
 それは、夕立が挨拶をしにきてるからだよ」
「メキシコを下ると三半規管が、
 見る夢の話をして、タールシャ」
「ハイビスカスに秘められた、
 逆さづりのプルーストの、
 失われた靴下が歴史にのかって
 干からびているのを見たかい?」
「雨が降らないんじゃなく、この土地が
 雨をずっと昔に拒絶しちまったのさ、
 もう、雨はいいや、俺たちには、乾きが
 ちょうどいいって具合に、
 だからどいつもこいつも、死んでも、
 すぐに生き返ってきちまう」
「ジャルシュ、お前が最後に聞いたのは、
 かかあのいびきだってな?」
「ああそうさ、それもとびきりでかいやつさ。
 おかげで、最後の言葉なんてかき消されちまったよ。」
「そいで、かかあの最後の言葉もいびきだって話じゃねぇか」
「ああそうさ、あいつはそのせいで、神様にどなられちまうって、
 いまだにびくついてやがるんだ。最後の言葉が祈りでも、なんでもなく
 いびきだって、天使どもに笑われちまうって死んでも悩んでやがる」
「砂浴びのパーシャがやってきたぜ」
「あいつは砂ばかり浴びているから、嫁にいけねぇんだ」
「でもよ、あいつもとうとう死んでから妊娠したって話だぜ」
「相手は誰だよ。」
「首なしのジャータらしいよ。ある日、自分の首を球にして、友人たちと、
 蹴り合いしているときに、勢い余って思いっきり蹴った馬鹿がいてよ、
 草むらにおちたやつの首を犬がひろっちまって、消えちまって以来、
 首なしよ。」
「首なしでも子供がつくれるってか。生まれてくる子供も首なしなのかねぇ。」
「首はあるって話よ。ただ、その首がくせもので、首と体が離れてやっこさんの
 体の中にあるってわけ、そいで、世紀の大手術ときたもんで、この乾ききった
 街で死んでいる一番の名医がつなぎあわせようとしてるのさ。」
「映画も土埃を吸い込んじまって、どこもかしこも砂嵐だらけときてやがる。
 お空のお星さまにお願いしな、と、昔は親父に教えられたもんだが、今じゃ
 お空のお星様に砂をくれてやれってもんで、みんなして夜中に、砂の投げ合いと
 きたもんだ」
「ろくでもない街にはろくでもない幽霊どもしかいないのさ。とにかく乾き、乾き、
 それが全部を干からびしちまう、俺たちの生もそして死も全部さ、虚無も時間も
 希望も天国も地獄も干からびちまって俺たちをいつまでたっても迎えにきやしない」
「街の名前はなんだったけか?」
「それも砂が飲み込んじまったよ」
「今日も、肺の中で、砂がざらざら音を立ててやがる。肺病みのマクリルは、死んで
 どいつもこいつも皆まとめて肺病みみたいになって喜んでるよ。」
「俺たちは皆あいつに教えを受けなくちゃいけないってか。どうやったら、息つぎが
 できるかどうかって。酒場であいつがテーブルの上で、司教様を気取って皆に説教
 してるのを見るのはもうんざりだぜ。それにあいつをたたえやがる小娘どももだ。
 どうせ、いくらたたえようが、いくら吐き出そうが逆さになろうが砂は溜まる一方
 だってのによ」
「耐えるのです。私が生前病んでいた肺病みの苦痛と比べればどうってことはないのです、と
 あいつが言うたびに、皆瞳を輝かせてやつを見上げてやがる」
「まぁ、こんなくだらない俺たちの話も、俺たちみたいにすっからかんで、砂に埋もれるか、砂と
 ともに風に乗って、どこかの街を埋め尽くすぐらいの役にしかたたないもんな。」
「やめちまおうぜ。やめたところで、砂が吹くだけだがな。」
「そういやお前の名前はなんだっけ?」
「とっくの昔の砂嵐にもってかれちまったよ。そんなもの」

「プクータ、瞳を洗いなさい。」
「おかあさん、外がまださわがしいよ。」
「幽霊たちが騒いでいるのよ。」
「いつになったら静かになるの?」
「砂がこの町も私たちのまだ生まれていない子供たちもその未来も
 何もかも埋め尽くしたらね」


どぐされ放浪記

  Q

押し迫った、庭園に、私達の庭師は、

 庭園の、暗さは、何度も、目をこする事で、徐々に明るさにみたされていった、
 「何度も、こすると目が真っ赤になるね」
 「とてもじゃないけど、この通りの多さにはうんざりしてしまうね」
 「もう憶えきれないわ。明日も、明後日も、憶え切れないまま、多くの通りを歩くのよ。」
 「目が真っ赤になって、はじめて、庭園は、明るさの中に、」
 「私達が目をこするたびに、彼は、庭園を横切る」
 「この壁の高さに、貴方の額は汗ばんだ」
 「何度もそうやって、犬達が雨季を運んでくる」
 「噴水は、斜面を転がって、扉をたたいた」
 「そう、その音は、私達に手をふらせる」
 「彼に向かってね」
 「帽子をかぶらない日は、季節が言葉を失ってから」
 「口笛は、湿度の子供達を寄せる」
 「窓辺には、花の名前が一切出てこない本を」
 「この庭に生えるすべての草木の、中に、庭師はいつだって埋もれたままだから」
 「彼は知らないよ、花の名前も木の名前も」
 「遠来が聞こえるのは、彼が腰を曲げて石をひろったからかしら」
 「片方の目だけがいつだって赤い。」
 「そのせいで、花は恥らわずに咲ける」
 「庭園の、明るさは、彼の、両目と比例して、」
 「まるででたらめな数式で、子供が答えを勝手に導きだしてしまうようにして」
 「暗くなる」
 「暗くなる前に、また目をこする」
 「赤くなる。何度も」

 午後は、煙で、くだをまいて、

 イスタンブールのロックはそれは過激で、地球をぐるっと一周してもちっともかいわくならないくらい嫌なやつなんだ
 そんなやつのなかに、混じって、時々、行進がはじまるんだってさ、
 征服されたり、されなかったり、そんなことはどうでもよくて、どこかの王朝がぶん殴られるよりも、安く、俺達の、
 酒は安いときてる、
 朝から、飲みまくるのは、くだをまいて、いっその事を、さけをやめるためのなんだが、
 そうやって飲んでいるうちに、どうしようもない奴らが集まって、酒をやめようと飲み続けるもんだから、まったく
 やめることができないときてやがる
 カウンターの向こうで、若いバーテンが、どんどん強い酒をぶんがてきやがる、それを受け止めては臭い息を吐きながら、
 飲みつくす、若い女の給仕は毎度毎度、金の勘定をまちがったふりをして、おこづかいをためて、酒の飲まない男に、
 「酒飲みはしんでしまえ!」と愚痴りながら貢いでやがる
 外では、鶏が雨の中うんざりするほどないてやがる、朝でも、昼でも、夜でもないってのによ、
 もうあいつは狂っちまってるから、
 おかげで、俺達は安心していつまでたっても酒が飲める

 ぷー子ちゃん出勤

 ぷー子ちゃん、ぷー子ちゃん、便秘のままベッドに横ならないで、いっそのこと枕を抱いてランドセルをせおえばいいんだよ、
 ぷー子ちゃんは、醜いブタだから、恥ずかしがりや、照れくさそうに、先生に怒られてパンツを見せて笑顔、
 だからいつだって、スカートは天上に張り付いたまま落ちてこない
 ぷー子ちゃんの机は、お父さんの手袋でいっぱい、教科書なんてひとつもはいってない、
 教科書が無いから、勉強は、床に教えてもらう、
 テストの時、床がこっそり答えを教えてくれるから、ぷー子ちゃんは、いつだって30点!
 ねぇねぇ、ぷー子ちゃん背中に背負ったランドセルの中に、
 明るい日本語がたくさんつまっていて、それらすべてが、
 理科の実験で気体になっちゃったから、言葉がはなせないんでしょ?
 だから、家庭科の時に、言葉を縫い合わせなくちゃいけない
 国語の時間は、いつだって外国語の練習だから、
 大きな口をあけて、手を上げて
 


多くの、死の、帰りに

  Q

足音の多くが、
冬を蹴散らした、
君の、首は、黒い、
またずっと、長く、
手は白い、
そのうち、
君の友人も、
この輪に加わるだろうから、
今から、準備しなくちゃいけない、

夜は、叫びの中で、ずっと短い、
夜は、孤独の中で、ずっと浅い、
夜は、明るさの中で、ずっと脅えている、

王座だけが、優しさに包まれている、
長い間、王を失った、
彼の、瞳は、母の、乳で洗われ、
父の、体毛で、しごかれ、
もうむちゃくちゃだ、

砂漠は、歴史の中で、一度も、
孤独じゃなかった
―いいえ、一人じゃなかった、
砂嵐の中に、影がばら撒かれて、
夜の間に、それらは温められて、
昼に、冷たく倒れた、

多くの、死の帰りに、
ずっと、道は満たされていて、
それは長い、
長いようで、短い、と、
彼女は言うけど、
それは、瞳では語らない、
言葉、
口は、灰を、
涎に変えた、
その晩に、肺に、
魂が集って、
ずっと動かない、

そしてまた、
多く、の、死の帰りに、
うんざりするほどの、
体を浴びる、
彼の体、
彼女の体、
知らない誰かの体、
立ち上る、蒸気が、
この世界を、満たして、
大きな、寝息をたれはじめるのが
聞こえる、

夜につがれた、
水は、朝には、
もう水にかえることがない、
そこには、少しばかりの、
白さがまじって、
祝福を受けてしまっている、

金色に、群がる、
羽虫の中に、
一匹だけ、
知らない、蟻のような、
彼、
もしくは、彼女の、
ような、
そして、その周りだけが、
異様に、明るい、

よくしらない、
ものが、ずっと、
目の前を、ゆっくりと、
飛び回っている、
その数を、もう数え切れなくなる頃に、
不思議と、体は、
起き上がる、

聞け、誰かに、
彼の名前を、
彼女の名前を、
私の知らない言葉で、
私の名前が呼ばれる、
そして、飛び跳ねて、
机から落ちる、時の、
名前の、叫びが、
耳を、熱くさせて、
言葉を隠してしまう、

多くの、死の、帰りに、
体は凍える、
温めるには、眠り、
誰もいないことへの、
眠り、

遠くで、女子高生の、ぱんつが、見える、
それは白い、
もうそればかりみてしまう、


祖母

  Q

夕餉、蜂飼いの、裾に下る。読経は、三陸を削り、降灰は、積雪を、頭にとどめる。六道、と、口にする、人の、側から離れる。衆生は一切の、有情の、君から下は、すでになく、君から上は、畜生の、そして、餓鬼の、いぬ間に、人知れず、くぐる、対岸の、魂、塊は、落下し、重たいものが、自然に浮かんだ、肩幅は、蟷螂を、膝から遠くへやる、腕は、岸を目指し、多くの人を見遣る、喪は、口に、口は喪に、白髪は今日に、明日に、黒くなり、パチパチと、骨と拍手が三度なる、貴方は、恐れをなさず、功徳の一切を、路肩に落とし、有為の花を、喉仏に宿す、遠方から人が着き、隣から、着流しが崩れる、骨は、鳳仙花の、ように、ふくらみ、紫陽花は、胸に、飛来する、口篭る、ままの、頬から、一本の、線が引かれ、寒さは一気に引く、目は浄土の、土の香りを嗅ぎ、足は、涅槃の、瞼につく、わたしたちは、見送るが、あなたはもう、みえないばかりか、体からは煙を吐き出し、煙突のない、家で、静かに篭る、白いのはあなたではなく、わたしたちが白くなったのだ、と、仏間に置かれた、果物がつげる、骨は塩をたれ、たれた塩は、舌の上で、酸味を広げようやく寝そべる、昨日、靴を捨てた、私の靴を、裏山で燃やした、煙が、目に入る、私は、「だから」、貴方達の言葉にいつもうんざりする

黒点から頭文字を奪って、貴方に名づける。名付け親になった、鰐の額に、カンザスの土地の名を与える。貴方は抑揚から、起床し、歯磨きを怠らない。瞼からは、伽藍建築が零れ落ち、それを無数の僧が拾う。蟻は、受胎し、マタイの福音からの引用が、雨を、耕す。降雨、と、口癖のように、頭文字は話し、私は、黙秘を貫く。天蓋と孤独を、風土に分け与える。一月の風は、声を酸化させる


 即興する、嘔吐物の、頂点から、石弓を引く、大和の呪いだ、と、神々は雨垂れ、に似た、うな垂れの中で、うるさく頭をたたくものだから、昨日からはなすことをやめた、例えば、ここからまじめに求められるような文章を書いたって、石を積み上げる小僧の首に届かないでしょう、と、貴方は言う、じゃ、例えばをはじめてみようかと思うが、すぐにいやになる。それは、こんなかんじで、「床下にたどりつくと、土の匂いが手足を伝って鼻まで這い上がってくるのがわかる。彼らは、鼻腔の奥にかすかにのこっている外の香りに異常に反応するのだ。その反応を僕はこめかみで処理しようとして、眉間にしわを寄せるが、その様子を見て、友人が尻をつつく。早く行けと、彼はいう。懐中電灯に照らされるいくつもの柱には蜘蛛が陣取って、僕らをやりすごそうとしている。友人の懐中電灯が、この空間の隅っこを照らした、そこには、」いやになる。「水星から落下した、クジラの寝息の上で、セーターを編む、時に、くしゃみした、やまちゃん、やまちゃん、と、思い出しながら声をかける、たけるくん、たけるくんの、メガネはいつも曇っている。曇っているのは、彼がやさしいからだ、彼は落下した、クジラの、骨に挨拶をする、古くなった鼻骨、そして背骨、背びれに尾びれ、と、脈拍は空気に混じって酸化して、その酸っぱさの中で、息を吸い込む。」いやになる。

仏の、唇に、たれた、雨垂れの向こうで、羅漢、達が、踊り、浄土、三部の、お経の、内から、たち現れる、人の、後姿に、前姿に、めをうばわれ、蛙はがはねると、同時に、遠くを見る、雨、と、口にする、甘さが、瞳に、耳に、手は自然と、うなだれ、爪が伸びる、草が分かれる、自然に、道を作る、砂浜は、苦い、近くで挨拶を拾う、言葉に、夜に、昼に、体を、投げ打つ、打ち捨てる、


火の始末

  Q

皿の上に蜘蛛が上る。蜘蛛は無数に口を開き、小蝿を吐き出し、一匹が女の陰毛に止まって宿をとる。
蜘蛛が上った皿は、女の頭めがけて投げつけられ、割れる。こんなことはあたりまえだ、と一人の男が蝿に語りかける。
男の奥歯の影で、ヘルペスが花開く、彼の口はもう毎晩、ほかの男達の歓喜の中で、水泡がはじける。
水泡の中に、多くの子供達。お前らの子供だ、みてみろ、こんなにも醜い!
体も頭もあったもんじゃない、どろどろの中に、腐った魂がへばりついてようやく、生きているだけだ!
排水溝で、せいぜいもがきくるしんで死ぬだろうよ、女や男の髪の毛を衣にして、ながされるだろうよ。

貴方からの終わりのない、
暴力の、あたたかさ、
と、女が言うので、
思いっきり頭をなでててやった、
お前の尻はいつでも、青ざめて、
天使どもがまともに堕落でもできずに、
酒場で酔っ払っているように、
「私は神に給仕した」と、叫ぶ天使の、
肌の黒いこと、あいつは、クロンボ、
アフリカの大地で、真っ黒焦げにこげちまって、
もう、白にはなれないだってよ、
そんな与太話は聞きたくないってか、
くだらない、くだらない、あまりにもくだらないって、
蝶々が言うから、羽をむしって、女の頭に髪飾りとして
くれてやって、奴は妊娠しやがったんだよ!
妊娠したが最後、女の腹を祝福でみたせってもんで、
酒場中の酔っ払った天使どもが、女のあそこにキスさせてくれって
大騒ぎだ、
あいつらは、絶頂をしらないのさ、
いつも、祝福に満たされて、インポなんだよ、
神は、あいつらに絶頂をあたえなかった、
だけど、俺たちには与えた、
そして、最後にはそれも全部奪い去りやがる、
まとめて全部だ、よぼよぼになったじじいどもが、
女の肌に触るだけで満足するように、
天使どもは、いつだってじじいなんだ、
やつらは、乞食、俺達の、絶頂を見つめては、記憶の中で、
拾い集めて喜んでやがる、

「ねぇ、君の、三丁目は、
 夕日の中で、夕日の中で!」
「君らの日本語はあまりにも、
 潔癖症だから、私のこの、
 肉体はいつだって、存在しない、
 ことを前提に、便器の上で、上で!unnko!」
「山ちゃんは、三陸海岸の、ヒットラー!」
「鬼ごっこさせて、ベネチアを、下る」
「日本語について、まじめに答えよう」
「日本語には、体が無い、肉体が無い」
「夜は、曙、昼は水鳥」
「引用される、私の身体」
「へーどれがどうしたの」
「ここからは工場の映画」
「煙はずっと、くだをまいて、世界中のヤクザどもの、
 千の涙を集めて、君は」
「ずっと風になる」
「風になったまま、私達は」
「いつだって、ここからは、工場の映画」
「煙はずっと私達の肺を満たして、」

ぼくはですね、(そう、朴訥に!とってもお上手なお前!百点だ!)
はっきりいますが、日本語が大嫌いなんですよ、
この不器用な言葉が、いつだって、
草葉の陰で、泣いているのを、
「うえーんうえーん」
と、「はは」
「はははははは」

「まーたん、まーたん」
「夕日の中で、あんな糞みたいな
 三丁目は、燃やしちゃおうよ」
「にくまんの額に、キンニクマンが、降りてきて、
 そして、星の王子は、三回もおねしょをしたんだって、
 だから、彼の髪の毛は金髪で」
「うるさい、黙れ」
「孤独は依然として、瓶にそそがれたまま」
そして何度も「私は」「私は」を繰り返す、
「さやちゃん!」

もくもく、煙、どこまでも、
煙のない、土地、
砂漠は、夜の貴方のためにある、
「えー、はやこちゃん」

「明るいね」
「冷蔵庫も、扇風機も、すべてが明るいね」
「ここにある言葉は全部がらくただけど、」
「それが明るいね」
「優しい言葉を」
「うるせぇ!世界中のろくでなしが、
 まとめてかかってきても、
 逃げちゃうから!」

そして、きぶんが落ち込むんです、(唐突にですよ、唐突にですよ!)

チュルクン、
苦し紛れに、
パータ、と、倒れる、
事への、「傍観」
が、百回、

水平線で、捻じ曲がる、
牛乳、

クマルリ、
瞬きの、パチャへの、
冒頭からの引用が、
千度、

教室を開こう、
塗りつぶされたばかりの、
床に、広がる、
光の中で、
果実が実る、
都市が実る、

「わーい、わーい」

「ょ、ってつけたらかわいくなるって思ってる
 糞みたいな書き手を全部ぶっ殺したい
こんな俗っぽい本音を正当化するために、
長々と書くんですよ!
分かりますか、諸君、世界は、くだらない
描写で埋め尽くされて、
まさに、ウンコカスですよ、諸君!」

ここから拾い始める、
あらゆる都市の、
中で、歌われる惨禍の、
始まりを、

あなた、おまえ、
わたし、の、
口に、

ここには、灰がない、

「ねぇねぇ。とりあえず、ょ、ってつかってみよっか」
「わたしぃ、あなたのことがだいすきだょ!」
「汚物は消毒だコラ!」

土の中に、
埋められた、震災の犠牲者のその瞳が、
いっせいに、この、東京の、
道路やビルの壁に花開いたら、
きっと多くの人が、気持ち悪いって言って、
逃げ出すだろうけど、
正直、そんな風景を望んでいる

ぼーいみーつがーるに、
らぶあんどぴーすの、
壮絶なる全生命体への復讐劇を待ち望んでいるんですよ、

はらきりさんまの、
金閣寺!

めのなかに、
あるゆきの、
ふしぎなあたたかさの、
おわりから、
はじまって、
ずっとはじまりのない、
このりょうど、

―ユートピア

「ここは、星座の始まり」
「貴方の終わりの無い暴力からはじまる」
「紙はもうとっくに、真っ黒でいつも真っ白」
「貴方は、過去形に彩られた、星座」
「流れ星は、少しばかりの母」
「恒星の、物語」
「ずっと飛来する、ばかりで、
「飛ばないことだけを、
「括弧を決して、閉じない
「教室は、いつのまにか、
「教師達ばかりで満たされ


プゲラ、ウンチョ!
モスキート!フルスコバッコ!


この放送は江戸川の腐った香りのする、
松戸の安アパートから!


駅構内に点在する、空白地帯、
浮浪者たちが、我が物顔で、
座り込む、連絡口の、
壁面に飾られた、市民の、
優しい絵、

おい、お前らとりあえず、
手芸でもやろうぜ!
みたいな、そういう、口笛の間に、

奈々子
「生まれて26年、ぶっちぎりの処女」
つとむ
「生まれて30年、ぶっちぎりの童貞」
山崎
「世界が球体としての意味を失った時、
 僕の包茎は、初めてやさしく開かれる」
まさと
「俺が、ろくでもない暴力を、振るう時、
 世界はこっそり泣いてくれる」
ゆうじ
「ギャルをナンパして、シカトされときに、
 浴びせる罵声の心地よさ」
りな
「公園の砂が、決して海の砂でないのは、そこに、
 子供達の汗と一緒に、犬のウンコが入っていて、
 それを掛け合いながらも笑い合っている子供達の
 笑顔があるから」
まな
「私が双子でなかった、きっと世界の均衡は、
 とっくの昔に失われていて・・・」
ベンヤミン
「同時にまた、もしかするとその付加語は、その
 要求に応じられているであろうもうひとつの領域
 、神の記憶という領域への、指示を内包しているかもしれない。」
ワンピース第612話の人魚達
(何が入っているのかしら・・・)
(宝物なら宝箱でしょ?大切な樽なら高級酒でしょ?)
総合英語Forest P354
―この日本語を否定文にしなさいと言われたら、一番最後に否定表現を加えて
「ぼくはおなかがすい"ていない"」


ぼくはおなかがすいていない
ぼくは、けっしておなかがすいてはいない、

大岡昇平―差別・その根源を問う(上)―
「人間性を失っても、やはり現実には人間ですよ。
 ただその場合にも、強いていえば、差別がある。
 篭城でも、飢饉の場合も、まず、女子どもが食われる。
 フィリピンでも、日本兵はまず敵であり、また弱いフィリピン
 人を、しかも女をと考える。」

たのしいおりがみ135 日本折紙協会 P274
おにの折り方のページから
「人が想像してつくりだしたおには、きばやつのがあって、
 おそろしいかいぶつとされているんだよ。」


ここまで読んでくれてご苦労様


憎悪

  Q

病は、母の、庭で、いつものように、
 呼吸しては、父の、額で、水に変わる、
 その水で、洗われた、子供が、
 また、庭で、芽吹く、
 小鳥は空へ落ちる、
 魚は海へ落ちる、
 動物は森へ落ちる、

 初夏は海に落ちて、波に変わる。日盛りの庭には、光が居座って、ずっと場所をあけようとしない。
 「散文詩に混じって」
 「大きな声で」
 「色は互いに」
 「そう、いつのまにか飽和して」
 
 漂流物のいくつかを拾い上げて、光と一緒にビンに詰める。
 「その手は病を遠くへ」
 「いや、病に混じって」
 「ここからは、ずっと何も飛来しない場所」
 「ずいぶんと多くのものが、私達の内側で」
 「忘れ去れては消えて」

 小鳥は空へ落ちる、
 魚は海へ落ちる、
 動物は森へ落ちる、
 
 「そしてここから想像」
 
 マトバは、瞳を開けて、砂で瞳を洗う、家に流れ込んでくる砂が、もう部屋の半分以上を埋め尽くした
 書棚にしまわれている本の間にも砂が、そして文字をさらって行く、もうそれらを取り返すことができない
 ことを、彼は一番良く知っていたから、砂で瞳を洗う、文字をさらった砂で、
 彼の食卓に並べられるのは、砂が運んできた缶詰ばかり、その一つ一つにも、砂が混じっている、
 マトバの、家の扉を叩く、唯一の友人は砂、音がすれば、彼は砂を迎え入れる、
 あまりにも、来客がおおすぎたから、彼の扉はもう閉まることが無い、

 「初夏が散文に混じって」
 「病と光がずっと飛来しない」
 「場所は、忘れ去れて、飽和する」
 「大きな声で、お互いに」
 「想像する」

 父は、病で、母に洗われ、子供達は、
 庭で、水を、

 


世界の終わりに

  Q

「なぁ、あの女の子は死んだのか?」
「あぁ、天国でおっちんじまったよ」
「天国でもばかすか死んでいきやがるな」
「地獄ではもっと死んでいるって話だぜ」
「お前の羽はあいかわらず黄色いしみったれてやがる」
「あたりまえじゃねーか、俺は元々日本人でよ」
「そうか、お前は日本人だったのか」
「とりあえず、このままいくとだな。俺らもそろそろ
 死期が近いんじゃないか」
「うんなわけでもねーだろう」
「地獄と天国で、ちゃぶ台かえしたみたいに
 いっせいに、ドンパチやろうぜって話になって
 いまだやりあってるが、おれらみたいに、
 元人間は戦争では使い物にならねーからと
 赤紙はこねーよ」
「早く戦争にいきてぇよな」
「この永遠という恵は、俺ら元人間からすりゃ
 不自由きわまりないからな」
「もういっかい、あれだけ俺を罵った嫁が、
 俺が死んだ時にわんわん泣きながら
 侘びをいれたのを味わいたいしな」
「もう無理だろうよ。せいぜい、俺達は、天国・地獄で死んだ奴らの
 数を数えて、統計的なデーターにして整理していくしかない」
「神様も、ついにはこの膨大な死者の死をその精神に受け入れられない
 ときたらしく、データーにしろっていうわけだ」
「グラフだと、「今月は少なかったね。良かったね」ですむもんな」
「しかしまぁ、これだけつみあがった死者の死者をどこにもってけっていうんだ」

―ひかる、ひかる、

「貴方の頭から光る、私の足からも、この暴かれた内蔵からも、ひかる、ひかる、世界はいつのまにか、この小さな光に、埋め尽くされて、老いていくだろうね」
「そして、老いた世界も―ひかる、ひかる」
「あの女の子光っているよ。」
「生きてたころはかわいかったらしいよ。ただ、事故で死んだものだから、死者になってからは、ずっと内臓が特に、胃がたれっぱなしで、それをよくぶらぶらさせながら、歩いてたもんだよ。あ、ほら、彼女の胃からも―ひかる、ひかる」
「糞を垂れ流して死んでいるあの男もあの男の糞もひかっているね。―ひかる、ひかる」
「すべてがひかっていくね。僕らの話している言葉ももう光っているよ。」
「それは僕らの言葉がもうすでに死んでいるからだよ。」
「ほら、あっちで歌っている女からもひかりが溢れている。」
「あの歌は悲しい歌だね」
「そうだね。また、僕の言葉が光った。」
「この光はいつ消えてなくなるだろうね。」
「もう消えることは無いよ。」
「ただ、光が残るだけだよ。この世界が滅んだら、世界が光る。そして、光だけが残って、世界が消えてなくなるだけ。」
「すべてがひかりに還元されたら」
「争いも言葉もすべてなくなるね」
「あの女の子も、あの男の人も」
「そしてこうやって会話している僕らも」
「ひかるだけ。」
「きみのからだも光り始めてるよ」
「きみのからだも同じように」
「光だけが残る。」
「一体それを誰が観測するんだろう。」
「もう誰も観測しない。」
「観測されないひかり」
「でも、ひかりだけがのこる」

―ひかる、ひかる

木々の間から漏れる光。ビルの間から漏れる光。それがいつのまにか空を覆いつくして、そして空ももう光になった。あらゆる天国も地獄も、空想も想像も夢も、何もかもが光なって、誰にも観測されないまま、そして空間も光になった。そして光も光になって。今朝、目が覚めて、瞼をこする時、少しだけ光が溢れた。


非常に退屈な詩

  Q

 林を満たすようにして、木々が緑をわけあっている。ユリエは、一人物思いにふけようとして、林へと飛び込んできたが、すでに、彼女の物想いが広がるほどの空間はなかった。木々の間の空間は、林の生活で埋め尽くされている。そこには、排せつ、食事、睡眠、という彼女があたりまえのようにしてきたことが詰め込まれていて、彼女が生まれる以前からそれらは林を占領して来たのだ。
 そこに、彼女が突然、侵略者のようにやってきた。林は静かに、扉を固く締め、彼女の出方を伺っている。彼女が、物想いをいくら膨らまそうが、それは彼女の中からでることができない。彼女はそれをしらない。彼女の思いは無理やり彼女の中へ押し戻される。
 そして、僕らはいつの間にか、林を僕らの生活で取り囲んだ。彼女の家は、林からすぐ近くにあり、農家だ。この土地特有の気候で、土はすぐに疲弊して砂になってしまう。疲弊した砂で作られた疲れ切った野菜を食べる疲れ切った人々が建てた家もまた貧しさで疲れ切っている。僕らはユリエを取り囲んだ。そして、彼女を林へ追いやった。彼女は林からも追いやらるだろう。
 ユリエを失った僕らの中に、一つの共同体が生まれた。ユリエがいない共同体。僕らは、ばらばらにユリエを追いやって、ようやく一つになれたのだ。しかし、ユリエはこの共同体には勿論参加することができない。彼女は創設者であると同時に、永遠に、排除されつづけなければならない。
 ユリエは孤立した―だから彼女はまた別の共同体になった。たった一人の共同体に、なることで、彼女は彼女らになり、彼女らは彼女になった。
 
「ユリエ、昨日、お前の家から嫌なにおいがしていたがあれはなんだ」
「あれは、お父さんが焼かれたの」
「おい、ユリちゃんよ、お前の家から昨日嫌なにおいがしてたがあれはなんだ」
「あれはお母さんが妹をやいたの」
「おい、ゆううりいいいええええ、おまえのとこ、昨日、なんかやいたのか」
「あれは、お父さんがおかあさんをやいたの」
「おい、ゆりえ、おまえのとこ、こげたいやなにおいがするが・・・」
「あれは、いもうとがおかあさんをやいたの」

 彼女の共同体にすむ、彼女らが一人一人逃げ出して行く。それを追う僕ら。そして、僕がようやく登場することができる。僕は、彼女を捕まえた。彼女は林の中で、物想いにふけっている。ふけっている彼女の後姿は、黒く手入れされた長い髪が、少しだけ風をふくんで、ここちよさそうに僕を誘っていた。

「ゆりえ、お前を燃やしにきたよ」
「あらそう、わたしも、貴方を燃やそうと思っていたのよ」

「俺もだ」と、僕は気付かなかったが僕と同じように、僕らも彼女を燃やそうと潜んでいたのだ。

「まるこげにしようぜ」
「ゆりえをまるこげにしようぜ」

彼女はおびえてもいなかったし、彼女と同じように彼女らもおびえてもいなかった。林は、僕らと彼女と僕と彼女らを軽蔑した眼差しで見ているかのように、葉一つも風にそよがさない。
 


ラブソング

  01 Ceremony.wma

僕は夜の闇の中を、
駆けずり回った、
まるで逃げ出すかのように、
呪詛の言葉を、
優しく、
花にささやくように、
そして、消えていった、
唇と、それをぬらしたであろう、
唾の間を、
何度も、何度も、
怒り狂いながら、
駆け回った
すべての死んだ人々の、
唇の、温かい、記憶
と、体液の、生ぬるさの、
中で、
もだえ苦しみそうな、
地獄のような、
天国を、
見つけた、

皮膚と皮膚が、
こすれあって、
なまぬるい
熱を放出する、
それがどんどん、
この世界を覆い始める、
振動するたびに、
気温が上がり、
誰も彼もが、
眩暈の中、落ちる、

 
酒場の隅で、本をめくる
少年を蹴飛ばす
たびに、歓声が起こる
「ここじゃ、そんなものは何もうみださねぇ!」
罵りと酒と唾が入り混じって、
熱帯を呼び込む、
朝からのみっぱなしの、
親父どもの、頭の上に、
熱い雨、
雨の成分は、濃いアルコールと、
少量の汗と、堕落で、
「うちのかかあのののしりったら
 天使さまもびっくりおっかないぐらいなもんだ」と、
すきっぱの間から笑い声を響かせる、
―そしてようやくここで、初めて名前を持つ登場人物が現れる
「よう、ラクリ!、てめぇんとこのかみさんは未だに祈ってやがるのか?」
「聖母様、聖母様、と、まるで病気みたいにのたうちまわって一日中いのってんのか?」
「ここらじゃ、イカれちまうときにはイカれちまうのさ。いかれないために酒をのむんだよ。
 かかあどもは、いかれないために俺達を罵り、小娘どもはいかれないために、ガキどもと
 こっそり会うのさ。」
「ラクリ!てめぇもイカレちまわないように酒を飲めよ。」

―ラクリのよめ、ファトナの一日
 彼女の部屋は一日中いすの上に座り。天上を見上げて、手をこすり合わせながら祈っている。
湿気となまぬるさに満ちた部屋の中で、すべての扉と窓を閉め切って、彼女は、何十年も前から
祈っている。彼女は一切の家事も、一切の交流も持たない。ラクリと口を利くことも無ければ、
勿論、ラクリの畑仕事で鍛えられた体を舐めることも、彼の太く固い陰茎を勃起させて、口に
ほうばることもしない。彼女の祈りは声を発さない。

カラスが屋根の上で、池で水浴びをしている。黒い色は決して落ちることが無い。
水面を揺らがしてそれを見つめては喜ぶ。

雨の中、ラクリがテニスラケットを持って、畦道を歩く。彼の足取りは、いつだって泥に汚れている。
天気は彼のためにあり、彼は雨の中で、テニスラケットをいつも握っているが、彼は一度も、テニスを
したことがなければ、ルールもしらない。テニスラケットは彼が、街の市でなんとなく買ったものだ。
その日以来、ファトナは祈り始めたのだ。

昨日から、ラクリのテニスラケットに蟲が繭をはった。白い繭がちょうど、テニスラケットのガットの
中央にはられており、ラクリはそれをわざわざひっぺがえそうとも思わなかった。ラクリには、テニスラケット
などそもそもどうでも良いのだ。

ファトナは、昨日から、以前よりまして激しく祈り始めた。あまりにも祈りが激しいので、それはほとんど、
呪詛のようになって、言葉にならない声で、うなっているだけ。彼女は癲癇の発作のように、何度も体を、
反ったり、ねじったりしながら、一日を過ごしている。

(どいつもこいつも皆イカレちまえ!)
(ろくでなしどもを世界に呼び込め!)
(俺達の醜い笑い声で満たしてやろうぜ!)

矮小な悪魔が一匹、天使に化けようとして失敗する。同じように、傲慢な天使が悪魔に化けようとして失敗した日。
テニスラケットの繭は裂けた。しかし中身は空っぽだった。そこには何も詰まってはいなかった。ラクリは、それすらも
気にしない。繭にもテニスラケットにも興味が無いのだ。
ファトナは、いすから立ち上がり、雨の中にいた。ラクリは雨の中テニスラケットを持って畦道を歩く。
二人の足には、泥がついている。
泥から、手が無数に沸いた。
手が二人の足を引き止める。
ラクリは家が見える場所まで来て、ファトナとであった。
「狂っている!何もかもが!」
そして、ラクリはファトナをテニスラケットでぶん殴った。何度も。
ファトナは、負けじと爪を立てて彼をひっかいた。
爪あとからは血が流れ、テニスラケットに殴られた場所は青く内出血した。
二人は、雨の中を、殴ってはひっかきあった。

雨が上がる。
矮小な悪魔が一匹の天使に化けようとして失敗する。傲慢な天使が悪魔に化けようとして失敗する。
二人の間に、穴が開く。
疲れた二人が、ずぶぬれの服を掴んだまま、穴を見つめる。
穴がじょじょに大きくなる。
二人は掴んだ手を離す。
穴はどんどん大きくなり、しまいに、二人はお互いを点としてか認識できなくなるほどになった。
穴の中に、ひざを抱えて落ちていく人が無数にいる。数え切れないほどの人が落ちていく。
二人はそれを見下げる。
ひざを抱えていた人たちが、落ちながら起立して、二人を見上げる。
雨上がりの太陽が、二人のずぶぬれになった服や髪をなでて、ゆげをたてさせる。
湿度があがり、髪の毛は静かにうなだれる。

二人はまっさかさまに落ちていく人々を見つめる。
落ちていく人々は二人を見上げる。
全員がはにかんでいる。

(まっさかさまにおちていって、すべってころんで)
(ろくでなしどもが笑う、笑う)
(おいこら聴け、全世界のろくでなしども!
 この世界をろくでなしどもで埋め尽くそうぜ!
 いくら気取ったところで、もうお前らはろくでなしだ!)

隠喩を閉じる、
多くの濁音から、言葉が抜かれる、
貴方の韻律は、夜に始まる、
君/冬に凍える、手に、
瞳は凍らなかった、眼差しを、
たたえてて、
孤独は、涙を呼ばない、
その、手、
多くを掴むには、
小さすぎた手
君/その手を、開く、
小さいものたちのために、
何度も
君の手/その手は、多くをつかめなかったが、
小さなものを、掴むために、ある手、

僕の、魂は、今、どこへ行けばいいか、
何をすればいいか、
秋に、落ち葉を踏みしめるように、鳴る、
魂の音、
ぱちぱちと、燃え上がって、
君と僕を焼き尽くす、
この炎を、
どうやって、
凍えさせればよいのか、

君/その手を、
僕に、
小さな、
魂しか持ち得ない、
僕に、
少しだけ、
僕の魂を凍えさせるために、
その手を、


makura

  01 Ceremony.wma

まくらからのいんようは
いつだってさばくでおわる

限りなく、青に近い、
罵声の数々が、
砂漠に雨をもたらした、

(貴方の絶え間ない信仰が、
 私達を引き裂いた日に、
 狭き門をこちら側から
 閉じることへの、)

ずだばばばずだばばば
「もし、殴りたい作家がいたら?」
「ジッド、ダンテ、ヘミングウェイに、サリンジャー」
「なんで?」
「あいつらは世界を焦土にしたから」



夏の日盛り庭では、光が飛び跳ねては、無邪気に転げまわっている。子供達が、それに混じっていく。いすに座って、それらを
眺めている。私の隣の椅子は、空席のまま、朝顔が、蔦を伸ばし、花を咲かせている。庭の隅っこで、多くのアジサイ達が、日差しの強さに敗れて、死体のように色あせ始めている。足元に群がる野草、の、中で、生きる、虫達の、静けさ。
夜、空に輝く星の中で、星達は夜におぼれている。窒息しそうなぐらい輝きを放つ。世界中の酸素がこの夜に、吸い上げられて、すべての人々が、酸素ボンベを背負いながら、挨拶をする、冬の日。

電車の中で、歌を歌う、女の子に話しかける男の、背中に、羽が生えている。頭にはわっかがのっていて、輝いている。
それを、見つめる。

ここは、雨の中の、砂漠、
砂の中で、呼吸することの、
大げさな、
しぐさに、
笑う、貴方の、
顔、

そして、
雨季をふんだんに含んだ、
ソファに座って、
ゆっくりと、
ジンジャーエールに、
世界地図を沈めていく時の、
顔も、また笑っている、
泡が、地図を飲み込んで、
そして、この部屋もいつの間にか、
飲み込まれて、
すべての、
家具や、本が、
浮かんで、

手紙を、送ること、
丹念に、折りたたんで、
決して開封されない、
手紙を、
埋めること、
そして、
呼吸させないことで、
その手紙の、
内容が消えうせていくこと、

街を見下ろす、
あらゆる、街頭に、
上って、
さかんに、
叫ぶ、
すべての、
人の頭に、
氷を、落とす、

「この世界を、焦土にした、
 大竹さんは、先日無くなった」
「ええ、おしいひとをなくしました」
「彼が、鳩にエサをやっている姿が
 もうみられないなんて」

砂漠、そして、
砂漠、貴方の瞳から、
溢れる、砂が、

そして、
雨、

天気は、
いや、天気のことは、
秘密だろう、

全部、ぶん殴る、
この、終わりの無い、
罵声と暴力、
の、真っ只中で、

貴方が、天体の、話を、する時、
そして、それが、
記憶に刻まれる時、
星座の多くが、
ずっと昔に名づけられたものだとするなら、
それは、もう忘れ去れるべき、
ものかもしれない、

ずっと、まくらから、
すながながれていて、
おわらない、
おとがやまない、
みみをふさいでも、
きこえてくる、
頭を、腕で支える、
動作の間に、
混じる、雨の、
におい、

指を、
見つめる、
まくらを、
ひっくりかえす、

また、
すながあふれて、
おとがやまない、
みみのなかで、
すながもれていく
おとがやまない、

お前、
に、ふる、
挨拶の数々が、
たった、
一人の、
貴方を、
浄化して、

お前、
この、世界、のなかで、
足を速め、
痛めた、
まま、
歩む、
ことへの渇望、

まなざし、
ここは、積乱雲の、
終わり、

(一つの夜が、明け渡された)

わたしたちは、夜の間近にいる、
この、閉ざされた、空間の中では、
私達は、お互いを、捉えきれない、

名前を、閉じる、
ことで、開く、

叫ぶ、笑う、
罵る、
すべてが、暴力的に、
行われて、
この空間を、
裂く、

私が、お前が、
雷雨でなかったのなら、
この土地は、
溺れていた、

名前を、
埋める、
何度も、
深く、
言葉に出さないために、
言葉にならないために、

僕の、お前の、血は、
この、土地を、
からすために、
流されて、

悲しい言葉は、明るい
このぼんやりとした、
あかるさのなかで、
生きることが許されない、
ことばのための、
からだ、

幽霊が燃えている、
ずっと遠くで、
それが、愉快で、
悲しい、

幽霊が燃えている?
そうだよ、ずっと燃えているんだよ、
たった一匹?一人?で燃え続けているんだよ。
この、人通りの多い街の中央の噴水の前で、
ただただ燃えているんだよ、
俺にだけしか見えないのかもしれないが、
真昼間も、真夜中も、ずっと燃えているんだよ、
みずをかけてやれば?
かけてやったが、燃え続けていたよ、
たったまま燃えているんだよ、
燃えているから、俺は安心するんだ、
真昼間から、人ごみのど真ん中で、
燃え続けている、あいつを、見ると、
安心するんだ、
悲しくって安心するんだよ、

寒気、
眩暈、
この、
作品の、強引な終わらせ方、
う、う、あ、い、


これは批判ではありませんという嘘をつくための詩

  01 Ceremony.wma

る、と、り、
と、ら、
をあわせれば、
ぱらぱらと、
貴方の髪に、
まとわりついた、
透明な音、

大きな鳥を
まねて、
砂浜を横切る、
後姿を、
カモメが追う、

大丈夫?
貴方が私を振り返って、
言葉をかける、
頭が、痛いんだ、

かもめは、弱いから、
きっと空を飛んでいるのよ、
この地上では、
かもめの言葉は通用しない、
だってかもめは、
私達よりも、卑しくて、
貧しい言葉の中で、
生きているから、

る、と、り、と、
ら、に、る、を
たして、
やっぱり頭が痛い、
大丈夫?

恋が聖なるものなら、
それを言った、
男はろくでもない、
脳なしだと思うわ、
突然何を言うんだよ、
その男の言葉なんて、
誰でもつけるものよ、
それにきづていないだけ、
誰にもできない、
言葉を彼は吐くことができないの、
だから、みじめ、
まるで、かもめ、と一緒だね、
だから、地上に降りこずに、
空からわかったふりをして、
かもめであることを、
ばら撒いている、
それは一体何のため?
みつがとんで、
頭もとんでいるのよ、
蜜が飛んで?
富んでいるのよ、
みつが?
そうよ、
この世界を堕落させる、
私達の欠如を、
受け入れることのできないものたちが、
作り出した蜜が富んでいるだけ、

秩序と、完成、
そんなものはもうまっぴらごめんよ、
零れ落ちるものを、
ばらばらにこぼして、
何も与えないために、
何も芽吹かないために、
ばらまくだけ、
暴力的だね、
そうそれでいて、星座的、
星の輝きは、ばらばらと、
輝いて、何も残さないけど、
まだ光っている、
独立したまま、他の輝きとは、
関連せずに、

ひかりは、何も見えないものたち、
をてらすだけで、役立たずよ、
ひかりが、ひかりをみえていなんだから、
闘争を開始するための、
優しい笑みは準備できてる?
夜の果てまで闘争するのよ、
まるで、逃げまくってなきわめきながら、
周りの暗闇をみないようにして、
あらゆるものを無視して、
ひたすら逃走するために、

海の比喩は要らない、
きっとそれは、
全部が、僕らの、
我侭な空想の産物でしかないから、
僕らは、
比喩に描かれるような、
優しくて、同時に、残酷で、
我侭で、苦悩の中にある、
ようなりっぱな人間じゃない、

人の比喩はいらない、
都市の比喩もいらない、
涙の中に、
貴方の体があるなら、
なおさら、
僕は、いらない、

鴎の比喩も、
いらない、
混ざっていって、
解き放たれることのない、
僕らの生活には、
飛ぶことも、
落ちることもない、
そして、決して撃たれることもない、

女の比喩もいらない、
男の比喩もいらない、
貴方の、比喩もいらない、
そして、僕の比喩ももういらない、

いとう貴方に、
消えていったね、
そうだね、
いとうお前に、
見事に消えたね、
だって、何も無かったんだから、
いとうことなく
消えてしまうのはあたりまえだろう、
それがいいのよ、
女のカタカナの名前は、
嘘をつくばかりで、何も、もたらさない、
畑も、まるで石だらけよ、
はじめからそうなら、耕さなければ、
何もみのらない、
いや今も実ってないわ、
見てみなさいよ、あの畑を、
相変らずの石だらけ、

もたつ、いた、
ままで、言葉も、も、た、つ、いた
ままのあの人を、
愚鈍だね、そうね、
日常を繰り返していくことでしか、
彼は生きていけないの、
そうやって己を縛ることはまるで、
宗教的だけど、なまぬるさと、
同時に、本当の、ろれつの回らない、
舌をうまく隠しているだけね、

田んぼ中に、
言葉がばら撒かれているわよ、
畑の話?
いえ、今度は田んぼよ、
ああ、あんなに、囲い込んで、
まわりを寄せ付けようとしないばかりか、
でも、目立とうとして、
カカシだけはたくさんたってるよね、
あのカカシは
人を寄せ付けないために、
同時に、人に見てもらいたいがために、
立てているのよ、
じゃ、人が寄ってくるんじゃないの、
それで、あの囲いを通って、
中に入れば、
皆して泣き虫よ、
まるで、かもめだ、
そうね、かもめよ、
でも、地上にいる、
そう、囲われた地上に、

川はいつか干上がってしまう、
それも違うわ、
もともとこの大地は干上がっていたの、
そこに川が出来たのだから、
川のほうが後よ、
でも、川は僕らの生活には必要でしょう、
勿論ね、だけど、
暴れ川にしろ、整備された川にしろ、
そのどちらでもない川は、
必要とされてないわ、
暴れ川なんて、いらないじゃん、
いいえ、あれはあれで、
豊穣をもたらすのよ、
整備され川は、それはそれで、
私達に安らぎをもたらすけど、
どちらでもない、淀んで、
流れもとまりっぱなしの、
川はただ悪臭がたちこめるだけ、
そうだね、そういう川が、
清浄に戻されるといいね、
いいえ、それは違うわよ、
川が川であるために、人間に、
媚を売るようになったら、
川は川のために生きてはいないわ、



たった、ひとつの、
さくらんぼを、バスタブに、
浮かべて、雨を待つ、
日、
忙しさの中で、
部屋を作ることを忘れて、
この、バスタブは、
むき出しの中、
雨を待って、
そこにつかる、
貴方が、首にかけている、
メノウの、首飾り、
が、雨の匂いと混ざって、
火花を散らす、

歴史としての、時間、
そして、私のいる場所、
から、遠い、
トイレの中で、かかとが、
温かい、水につかる、
まるで、流動する、
その、体を、
形式は捉えきれない、
いえ、カモメのような、
痴呆、の中では、
捉えきれない、

詩人は、天才?
いいえ、それどころか、
ただの、抑圧を抱えた、
美学の人、
まるで、滑稽な芸術だね、
ブラウン管にうつる、
僕等よりも、灼熱の、
太陽に打たれて、
青ざめている、

それじゃ、闘争はできないわね、
世界の悲惨さを、描くことが、
闘争じゃないわよ、
この世界の中で、生きている私、
今ここから、この場所から、
この場所でいきる私、もしくは貴方、
私達からしか考えることは出来ないのよ
だから私にしか闘争は出来ないのよ、
貴方は、未来に逃げようとしたね、
貴方も、過去に逃げようとしたじゃない、
どちらにも逃げられないのにね、

こんな長い会話を、
私達にさせないでほしいわね、
でもしちゃう僕らもどうかと思うよ、
しなくてもいいことなのにね、
でも、しちゃうわけだ、
早くこの世界が炎に焼かれればいいのに、
そしたら、最高に楽しく踊り狂えるのに、
ジャズでスイングするどころじゃないわよ、
そうだね、

そういえば、大丈夫?
いや、やっぱり、頭が、
ずっと痛い、


最後の、

  01 Ceremony.wma

ヴェールでは覆われない土地について、石段ではなく砂利を踏んで、
音の一つ一つを飽和させるようにして、そしてまた、折れていく枝の
一本一本から鳴る音に燃えるようにして、この林を抜ける人の後ろ姿に、
静かに寄り添う雪原の記憶。あの家は、何度も雪に覆われたから暖かい、
と、息を凍らせて話す貴方の、足の痛み、遠くから飛来したそれが、
紫に冷えて熱を持ったころに、髪の毛は下ろされ雪が宿る。若い人の
髪は、いまだ燃えていて、雪が宿る場所がない、と、口にするたびに、
三度目の音がする。泉に張った氷が割れる音、そして、それはこの家の、
扉が開く音と同じ温かさをを持って、開かれる。小さな瞳では、涙を
おさめきれない、だから、涙は溢れる、この瞳から、もし、溢れずに、
とどまることができるのなら、この瞳は溺れてしまう。手は、溢れた
涙を、もう一度私に返すためにあると、皮膚の間にしみこんでいくもの
達が消えていき、そこだけが温まって、冷える、その場所にはもう林が
出来ている。この降雨は肌に、ヴェールでは覆い隠せない肌に、なに
もかもを燃やしつくしてしまうその肌に。家の中に散らばる言葉、すべて
が、熱く燃えた跡に凍えて寄り集まってまた、言葉を孵す。

林を過ぎると荒れ果てた田畑が広がり、夕日に燃やされた空が空気に重さ
を与えて、家に帰ろうとする足、そして、雪原の記憶。雪の中、私たちは、
この土地のあらゆる場所に積もった、そして消えてなくなった。記憶は、深い
場所で、蛙を温めた。蛙は雨期を好んだ。望んだものが降ったこの土地に、
私の小さな家はある。緑は夏に、私たちを家に呼んだ。呼ばれるままに、私たちは、
家を作った。何度も壊して何度も作りなおして、その都度、口を泉で洗い、足に、
蛙をとまらせた。そしてまた、今日、新たに家が作られて壊された。壊された家の、
記憶は、雪原の中に、吐く息白く、私を呼ぶ声と共に。

(マグマの記憶、まだ燃えてどろどろだった、日の、
 そして、凍えて固まったまま、降ることの物語)

林の木々に支えられた暗闇の中を歩く。遠くで犬が鳴いているが、決して悲鳴ではない。
貧しい田畑に植えられた貧しい作物を食べる貧しい人々が建てた家々の中に、明るさが
ともっているが、それらすべてが決して悲鳴ではなかった。それどころから、悲鳴を、
知らない、ことに満たされたこの土地では、何もかもが一斉に衰弱していく。新しい
言葉はすぐに小さくなり、新しい人はすぐに消える、新しい緑はすぐに枯れ、唯一、
衰弱していったものたちがこなごなに砕け散り砂となって田畑に降り積もって土になっている。
憐みよりも早くこの土地には雷雨がやってきて、悲しみよりも早く日照りがやってくる。
そして、言葉よりも早く土がすべてを覆いつくしてしまう。
道路に漏れたままの田畑の土が、何度も車にひかれて悲鳴も上げない。
この土地で出来たものを食べる人たちは、この土地のことを何も知らされないように囲われている。

(この土地の記憶、の中に、住み始めた私たちと私たちの家)

寝返りを打つ。朝に夜に、昼に。夢を見る。とても多くの夢を、そしてそれらすべてを、記憶する。
家の中で、私たちが、降る。白い皿の上にも、スプーンの上にも。外では、砂が土にのまれて、日に日に
大きくなっていく。それと競争するように、私たちは小さくなっていく。凍えていく、燃えているものを
とめるために。ヴェールで覆い隠すことができない。どこも。だから、私たちは見る。
この家と一緒に、記憶の中で、貴方が、寝返りを打つ、私も寝返りを打つ。何度も。何度も。新しい家を作るために、そして壊すために。雪原の中で、話される言葉を見つけるために。


おい、磯野、野球やろうぜ

  New order

水平線から、
投げ出された、
球体が加速する前に、
内ゲバで、
あらゆる人が、
美しく殺しあうように、
応援する、

映画は、はじまったばかりだというのに、
水に浸されて、
コップは投げ出されたまま、
置かれている、
その下で、
私たちは駆けまわる、

革命は、
きっと、殺し合いだから、
愛のある形で、
皆が殺しあう姿を
八月の雨の晴れの中で、
応援しなくちゃならない、

君の彼氏が、
君の顔面を、
革命の形而上学のために、
ぶん殴るとき、
君は、きっと、1メートルはふっとぶ、
でもそれが、革命のための愛だから、
許さなければならない、
救いのために、殴られることが、
一つの罪なら、
もっと多くの花が咲く、
平原で、裸の人達が、
にこやかに、原初の踊りと
喜びを祝っている人達を、
また強く殴らなければならない、

腕に重みがかかり、
払いのけるように、
鈍さが宿るとき、
貴方の、背後で、
天使が、八月の、
風にのって、
貴方の背中に、
キスをする、

おい、磯野、野球やろうぜ、
この革命の季節に、
誰もが甲子園で、
泣きながら、愛しあう者たちでさえも、
殺し合いをはじめるように、
応援するために、
野球をやろうぜ、

おい、磯野、野球やろうぜ、
世界中の誰も彼もが、
バッターボックスにたって、
俺達を打ちのめそうとする中で、
俺はどこも守らないまま、
お前のボールを受けてやるから、
おい、磯野、お前が燃えているのか、
俺が燃えているのか、
そして、泣いているのか、
笑っているのか、もうわからないまま、
お前はボールを、この夜の球場の明かりの中で、
投げて、観客はだれもいなくなったとしても、
俺が受けてやる、

気でも狂ったか、
いや全然、まだまだま足りない、
だから、
球体は、いつだって、
雨の中、一人で加速して、
遠くへ投げられている、


akuro

  New order

春、花が咲くようにして、
幽霊達を埋葬する、

踏み固められた土の上で、
また踵を鳴らす、
姉が、土間に並べられた、
靴の中から、長靴を選んで、
妹の咳が、台所に中で、
食事に降る、
母のエプロンにとまった、
甲虫に、西瓜を与える、
父の、足は裸足だった、

テレビの中の生活が、
時間通りに始まって、
席に着くはずだった、

野球をしに出かけたままの、
弟は、帰ってこない、
仏間にいけられた紫陽花の、
裏で、語られなかった記憶が、
飴玉のようにころがって、
蛙の口に触れる、

テレビの中で、あの家族は、
手を合わせない、
彼らには宗教がない、
だから、悲しい、

後ろを振り向けば、
貴方が歌う歌がある、
帰りはこわい、といって、
さらわれないように、
手を絡めた、

引かれたままの、
髪が、少しだけ抜けて、
祖母が笑った

ゆっくりと引き抜かれるように、
私は、口をぱくぱくさせて、
走り去った足が、
もうついてこない

貴方の乳房が
優しく発狂するように、
私は少しだけ、子供になる、
その手から飴玉が転がるようにして、


孵化、火学

  New order

神の暗闇が部屋に満ちて、
異国の言葉は、

「もし、孤独が一つの連続体の、
 総称として、私たちを、
 海へ、ラプラスの海へ、
 投げ込むとするなら」
「ええ、貴方は、そこで、火学、を、
 言うのね。あの古い忘れ去られた
 魔術と呼ばれるようなものを」
「失われた空間は、恐怖で満たされているのよ」
「そこに、火を、千切れた魂を燃やすようにして」
「そうね。そして、私は嘘をつくのよ」
「特異点として、私は偽りの、心を」
「今日、心から願う、か、あの彼、そして詩人であった、
 彼が、詠ったように、」
「私は限りなく演算された一つの値ではないわ。」
「むしろ、固有値を持った無限」
「それはおかしいわ」
「いいえ決しておかしくない」
「私の不安は無限であると同時に、私の孤独は有限性の中で
 値を振り切って、「止まっている」のだから」
「私は教科書ではないのよ。ましてや、方程式に満たされた
 世界の終わりの向こう側で、肌を晒しているの」
「傷口は、論理を破綻させる。」
「そうね、知性は初めから傷つけられているのよ。」
「火の値を探して、貴方は、その傷を観測したわけだ」
「瞳は孵化する、こんな詩的である表現が「科学的」であるわけがない」
「貴方は、ラジウムの洗礼を、あの放射性物質の持つ洗礼を受けなければならない」
「それは、失われた神の恩寵とでもいうのか?」
「いいえ違うわ。神は失われた恩寵そのものであるのよ」
「じゃ、定義しよう。そこで言われる神とは?」
「火と魂の物語が終焉へ近づくに連れて、無限に閉じられていく有様」
「あまりにも詩的すぎるね」
「そうね。私は今、貴方を煙に巻こうとしているの。」
「煙に巻いたところで、その煙は一体何がくべられた火から?」
「ミモザよ。ミモザの語源は、パントマイムの語源であるミモスからきてるのよ」
「なるほど。では、貴方のそれは、行為は一体何なんだろう」
「火学、負荷が始めにこの魂には持たされているの。いや、魂が負荷そのもの、
 私たちは、この魂の重力から逃れられない」
「孤独と恐怖にまつわる火の物語を、火学というのか?」
「それも違う。火に物語が、魂の負荷と同じように、初めから、
 孤独と恐怖を内在しているの。だから燃えているのよ。
 さぁやさしい数学の時間よ。方程式は永遠に閉じられて、私達の間では
 何の意味ももたない。どうする?」
「個つまりatomismを越えようと?」
「違うわね。原子論ではなくて、原始論なのよこれは」
「くだらない冗談にようにきこえるけど。」
「起源は常に覆い隠されている。私たちの歴史は、歴史それ自体その起源を
記憶していないのよ。だから、終局から、本当の終わりから、燃え始めていて、
遠い未来から私たちに向かってすでに火が私たちを追いかけているのよ。」
「遠い未来から「追いかけてくる?」。よくわからないな。」
「だから、私たちはここで、孵化しなければならない。私たちと火が衝突する前に、
 羽でも生やして、飛び立たなければならないのよ。」
「どうやって?」
「私の、そして貴方の、失われている起源、を、捨てて、私の起源は貴方、そして貴方の起源は私、
 私たちの起源は私達、と言う風に、魂を分け与えるのよ。その時、火に焼かれるように、お互いの
 魂が痛みを感じるだろうけど、そしてより深い孤独や恐怖に陥るだろうけど、それが、起源として
 刻み込まれるはずよ」
「つまり、それは 始めに言葉が、あったように、すでに、その言葉には火が内在されていたと」
「そうで、私たちは、言葉を吐くたびに、この唇を、この口内を焼け焦がしながら、そして、向かいあった
 相手すらも焼き尽くすようにあるのよ」
「まるで、それでは殺し合いじゃないか」
「そうよ。それは、すでに絶対的に決められている逃れることの出来ない「事」としてあるのよ」
「外は雨だね」
「雨の中で、私たちは火を噴く、まるで怪獣よ」
「小さな怪獣としてこの世界を火で包むと」
「それは私たちの魂が凍えてしまわないように、痛みは私たちを傷つけて破滅させるけど、燃え上がらすわ」
「じゃ、君と私は今から殺しあうわけだ」
「そもそも、私と君はこの会話では、同一性を保っていない。私そして貴方、いえ君、は誰と話しているのかしら」
「火とその物語の孵化のために」


失われた、母の、

  New order

ここは第三層の、
母の平原、
そして、父の焼かれたままの、
湿地帯の中で、
蠢いているのは、
かわいそうだった、
私たちの残滓、
と呼ばれたままの、
砂浜に打ち付けるような、
浅い幸福、

父と母の、
結び目に、
赤く伸ばされた、
目の中で、
翻ったままの、
娘という、
私たちが、立ち現れて、
あらためて、
こんにちわ

湿地帯が、禁止された、
言葉なら、それを、
優しく、描写すればいい?

留まった、水の中に、
手を差し入れるように、
泥の中で、多くの、
鳥達が、たち現れては、
飛び去っていくような、
もっと具体的に?
19世紀の、血みどろの、
戦争の中で、
取り囲まれた、地図上で、
滑り続ける、指の、
感覚だけが、
海を広げていくように、

「歴史は癒されることを、待っているのよ」
「ずっと遠い未来から、ずっと近い過去まで、
 あらゆるすべての、罪と祝福が書き込まれては
 投げ捨てられていった、記述の、間に、
 私たちは繋ぎとめられたまま」
「死者は僕らの父でなかった、母でもなかった。僕達の子供でも娘でも息子でもなかった」
「生者も同じように、私たちも同じよう」
「この都市は、死者たちの記憶で作られている。どこもかしこも、すで死んだ者達か、
 今、死に行くものの思想や空想で作られているのだから」
「死者が見た夢、または死者が見続けている夢に住む私達も、死者達の夢なのかもしれないわね」
「では、生者が見る夢は?」
「生者っていうのはなし!生きる者にしましょう」
「そこに意味があるとは思えない」
「意味があるとは思えないことがすでに、私たちが生きていることへの、乾いた欲求」
「歴史を癒すことで、私たちが癒される?」
「屋根に登る時に、はしごが必要なように、そして登った後、誰かに手を振っている間に、
 梯子は取り外されて、もう降りられないように」

土曜日に見る夢は、日曜日のための夢ではなく、
すでに過ぎ去った日々のために見る夢でありますように、
そう願うために、手の中で、皺が蠢いて、
体中を這い回る、
体を構成する、すべての、
原子が、私たちを通して、
衝突するような、席を、
石段を、

陽の当たる部屋には、枯れていく、植物達が、
眠れるように、台所に、置かれた、
花瓶には、茶色の、水が入っていて、
その中に手を突っ込む、
のは、私ではなく、昨夜、帰ってきた、
戦いを終えた人達、

「じゃ、凍えるような一言を
原発事故の比喩は、すべて死んでいる」
「お前や、私に関する、比喩も、すべて死んでいる」
「突然、何を言っているの」
「突然何を言っているの、と、言っている、貴方もすでに、
 死んでいる」
「オウムもフクシマも死んでいる」
「カタカナになったものは皆しんでるのかもね」
「記憶にとどめておこうとするればすルほど、忘れ去れて行く」
「バカ、も死んでいるの?」
「バカって言葉は、死んでいる奴に使われる言葉なのさ!」

動物を苦しめる父の、姿の、
記憶が、母の、苦しめた父の、
姿の、間で、私の、
始めての出産を、邪魔するように、
「貴方は知っているかしら?今は失われたふるい風習を」
「どんなの?」
「新生児が生まれる、くしゃみをするたびにその数だけ糸を結んでいった風習を。これは明治の頃まで行われていたのよ」
「なんのために?」
「タマ結いのために。私たちはタマ結いをする母の手つきをもう失ってしまったのよ。それは失われてしまった母。タマを結びとめ、魂が出て行ってしまう
 ことを防ぐために、母親が、結ぶ手つき。魂を繋ぎとめる手は、もう失われてしまったのよ。そして、魂を呼び止める手を持った母も失われた」
「なるほど。」
「そして、この死者の記憶でできた都市で、私たちは踊り続けるってわけ。そうしないと、私たちの魂は出て行ってしまう。」
「鎮魂祭だね。」
「そうね、私たちが、踊り続ける。ここが、世界の中心になるように。」
「とはいえ、この会話はここまでよ。私たちをしゃべらせている作者が考えている小説のネタの一部でもあるからね。秘密ってわけよ。」
「作者のトランス状態も少しずつ落ち着いてきたみたいね」
「そうね。こうやって会話させている私たちについては一切描かないのだけど。」
「描く必要性がないと思っているんじゃないの。」
「どうなのかしらね。」

私たちは、生き続けて、
あらゆるものに転移して、


さんすう

  New order

孤独は限りなく演算された、
私の部屋、

演算された値は、
私の皮膚を覆って、
この船に乗り込もうとする、
友人達の口を焼け焦がした
灰の一つ、

ところどころ燃え落ちていく、
島の門をくぐるために、
私は錨を、右腕に、
絡ませて、
そのまま海へ引きづり落とされる、
凝固した科学的実証性によって
何も与えられなかった、
「あ」という濁音に混じらない、
人の背後で、蠢いている、
そして囁いている


地獄は限りなく、
平均化された
数式上で0の値を
導き出して、
一気に、針を
振り切って
止まった、まま
凍えている
息を吹きかけた
温まるように、

手を合わせるようにして、
開かれた世界に降る雨は、
死体など一度も焼かなかった、
肉が溶け落ちて、
剥き出しになった、憎悪が
固まって、骨になって、
それが、友人達を、
突き刺す夢を見る、

穢れた手など、
どこにも存在しなかった、
ましてや、穢れる前に、
私たちには差し伸べる、
手など初めから無かった、
私たちはただ肥大化しただけの、
グラムに換算されるだけの脂肪
となって、止まるだけの、
静止物、

大げさな身振りで、
手振りで、孤独や愛を、
うたう、友人の、
魂を、いくら捧げても、
誰かを救うことも、
何かも助けることも、
できないことは、
わかりきっている中で、
いまだに、歌だけ歌おうとする人の、
口をふさごうとして、
私は怒りの中で、蠢いている、

千の亡霊の、
首を駆るようにして、
言葉を吐き出す、
魂より、
重い言葉を
捜して、


雪の思想 裏面

  New order

雪のように、
やさしく、
溶けていく、
白い、思考の中で、

血のように、凍らない、
冷たい、思想が、
生まれて来る

この、二椀の、
雪が、早く雨に変わりますように、
と、祈る、声が、する、
そう、この土地では、
雪ですらも、砂にかわるのだから、
飲み込まれたばかりの、
家々から、漏れる、静けさも、
どこもかしこも、
浅いばかりで、
手は、ひび割れた、ばかり、
それを埋めるように、
砂が、混ざって、
赤くなるのを、
見ては、振り払う、
手の、
多さばかりが、
やっぱり、降る、

「凄く芸術的なあなたの尿道から」
とか、
とにかく、
「凄く、芸術的な」
なにか、が秘められているなら、
この、土地の、風土を、
今すぐ終わらせるような、
言葉をくれてやってほしい、
もし、「すごく文学的な」
でも、「すごく芸術的な」な
でも、なんでもかんでも、
「すごく」なさけない、
現実を、埋め合わせるためだけに、
降るような、雪なら、
早く溶けてしまえ、
そして、剥き出しの、
地面で、横たわった、
なさけない、体に、
優しく花が咲くのなら、
それを、微笑みながら
摘んであげる、

骨は、雪、で出来ているわけじゃないから、
この、寒さの中でも、
音がならない、
肺を、この土地の、
砂に、砂の混ざった、風に、
あった、肺を、
そして、声を、
探している、外では、
やっぱり、砂嵐が
続いていて、

その、向こうには、
歯並び、
の、悪い、一人の、
男でも、女でもいいから、
突っ立っていて、
風に飛ばされないように、
身をかがめながら、
何も考えていないなら
その人も、さらって行ってほしい、

これは、裏面だから、
何書いてもいいよね、
いいよね、って、
子供をあやすように、
遠くで、未だ、
終わっていない、
雨が降っても、
風がつよくても、
もう、思い出さない、
記憶だけが、あって、
それでも、皆生きている、
の、一言で、まとまるような、
冷たい、思想だけが、
風の中で、吹き荒れている、

冷たい、思想が、
体に宿っていくのを、
日に日に感じるよ、
誰もかれもが、
でも、あの、大雪の日だけは、
違ったみたいだよね、
皆、口ぐちに、あの、
日のことを語っていた、

あの、日、語った、言葉は、
あの日の、言葉でしかなくて、
今ここには、もうないんだよね、
そうかわかった、
だから、皆、冷たい思想の中で、
やっぱり、この、
二椀の雪が、早く、雨に変わるように、
祈っているんだね、

(おまへが たべる この ふたわんの ゆきに
わたくしは いま こころから いのる
どうか これが兜率(とそつ)の 天の食(じき)に 変わって
やがては おまへとみんなとに 聖い資糧を もたらすことを
わたくしの すべての さいはひを かけて ねがふ )

俺は、すべての、災いを、かけて、願うよ、
お前たちが食べる、この、二椀の、
雨が、この、土地の、砂を、
じべたに、はいつくばらせたまま、
もう二度と、舞い上がって、
僕らを、押し潰さないように、
飲み込まないように、
私は、今、こころから祈るよ、

(わたくしの すべての さいはひを かけて ねがふ )

今、詩を、書いている途中にも、揺れたよ、
動物たちが騒いでいる、
そして、すぐに、静かになる、
冷たい、砂のように、舞い上がって、
すぐに、消えてなくなる、
この風土にも、

あの、二椀の、雪にもられたはずの、
雪が降る、
それが、早く、雨に変わるように、
僕の、すべての、修羅よ、
雨を、呼べ、
砂も、雪も、
溶かして、消し去ってしまう、
雨を、


もこもこ

  にゅーおーだー

なるべく、
ゆっくりと、
あるいた、
雪道を、
ヒバリや、
スズメ、
ツバメ、
達と、小さな、
足跡を、
互いに競って、

詩的な、
言葉は、
昨日、夢の中に、
全部忘れてきた、
から、
また、一羽、
また、一羽と、
鳥たちが、
集まって、

花の名前を、
寄せる、
知らない鳥の、
くちばしに、
スミレ、
ヒマワリ、
アジサイ、
と、名付けては、
増えていく、
くちばしの、
数だけの、
足跡が、小さく、
小さく、
増えて、

春を知らないのは、
雪だけで、
また、雪も、
春を知らない、
ことを、
鳥たちに告げては、
悲しむ、

知らないことだけが、
降り積もり、
溶けあっては、
滲んで行った、
後を、

生活に切り取る、


感性

  にぃーおーだー

『雪の日』

雪の、
歩き方だけが、
早くなっていく、

雨の中、
駆け回るように、
固まった、
体の、関節を、
一つ、一つ、
外していく、
熱を、込める、
冷えないように、
押しては、引いて、
祖母に、教えられたように、
向かい入れるのは、
隙間を、ぬって、
歩いてくる、人達、

外では、
野豚が、三回転半の、
宙返りを決めて、
光すらも、凍らせた、
風景の中を、

恩寵や、
重力、または、
罪や、罰、
よりも、
深い、生活の言葉は、
乱れたままで、

花瓶に、いける、
一輪の、花に、
本の中でしか知らない、
失われた、人々の、
優しい、手を、見つける、

外に出て、空を見上げる、
雪、手、雪、手、
無数の、手が降っている、
冷たい、冷たい、
と、手が触れるたびに、
肌が、小声で、囁く、

その隣では、
まだ、野豚が三回転半の、
宙返りを、決めて、
現代を、駆け回っている、
この、雪で、手で、
覆い尽くされた、
光り輝く、風景の中を、



第一章 昼下がり、舌の上で、ひかりは、

昼下がり、
ひかり、は、
しぜんと、やいばに、
なって、
夕闇、みみなりのする、
この、とちの、
におい、

けものたちだけが、
つめたい、むれをなして、
わたしたちを、
おそってくるまえに、
わたしたちは、
あたたかいむれを、
はなれて、
また、
(もういちど、はじめから
 やりなおさなければならない)

つちを、巡る、
かぜの、冒険、
それは、病、
次から、次へと、
私たちの、間を、
通り抜けて、
切り刻んでいく、

あなた、たちは、
あたかかい、
としで、汗だくで、
働くのだろう、

私は知っている、
あなた、たちが、
食べる、凍えた、
まずしい、しょくぶつや、
どうぶつたち、の、
こわれていく、
たましいの、かずかずを、

このとちは、
貧しさばかりで、
うめつくされているというのに、
あなた、たちは、
このとちで、生まれた、
ものを、よろこんでたべる、

ひとりのともが、
しぬたびに、
ひとつの、ものがたりが、
うしなわれていくなかで、
おおくのものが、しんで、
失われていく、この土地だけは、
かわらない、

古事記で、
記される、ここから、
向こうが、
さばえなす、神々の、
領土なら、
今、私は、
境界にいる、

(また、もう一度、
 初めから、語りなおさなければならない)

三日前に、
芽吹いた、
それでは、まだ、
幼い、
手の中に、
収まる、ような、
魂の中で、
朝、
凍えた、
ばかりの、
小さな、
雨の、群れ

手は、
遠くを、知っている、
足は、
遠くを知らない、
耳だけが、ちかく、を、
教え、
教え込まれた、数だけの、
叫びが、わたしのしらない、
人の、顔を、呼び覚ます、

夢は、冒頭で、
熱を持って、眠りの中で、
体中に、溶け込んだ、
(千度の、高温に、
耐えられるように、
私たちの、体は、
できているんだ、)

「いつか、
 貴方が救おうとした、
 むれは、
 腐り果てるだろう、けんじ」

獣、たち、
の、あしおとだけが、
雨を引き連れて去っていく、
の、を、追う様にして、
早くなる、
あなたの、ちいさな、
たましいが、
つまった、
しんぞうの、中に、
みをよせあって、
ふるえる、
むれ、を、

「昼下がり、
 舌の上で、
 たましいは、」
「たましい、だけは、
 みをよせあわない、
 ために、
 この、からだをつくった」

たましいを、
手放すようにして、
花に、名を与える、
その時、
たましいは、
舌の上で、
昼下がりの、
眠るような、
輝きの中で、
優しい雨を浴びて、


第ニ章 土地の名前を、忘れるための、夕闇

土地に、
踏まれた、
足に、つく、
泥、の、
泥の、
また、足に、
踏まれた、
土地に、つく、
つく、泥の、
色、と同じ、
夕闇だけが、
残された、残された、
と、口にする、
人の、背中を、
やっと、捕まえる、
蝉の、背中が、
ゆっくりと、
割れるような、
速度で、
この、夕闇の、
赤が、
黒く、裂かれていく、
時に、

指を切った、
契るための、
唇は、
病に、
切り刻まれた、
風、の、
傷となって、
届くでしょう、
(眠りだけが、
 この、土地に、
 名づけられた、
 病から、
 唯一、
 逃げるための、
 瞼は、凍えを、知らない、
 だから、
 夢だけは、近い場所で、
 遠く、凍える
 凍えた、ものを、
 温める、手は、
 指は、)

(指を、切るのだ、
 病に、犯された、
 風が、
 契りの、ための、
 唇を、
 切り裂いていくのなら
 けもの、たちの、
 後、を、追って、
 私達は、
 ばけもの、になるんだ)

比喩が、
世界に、与えられた、
雨なら、
(降らせられるはずだ)

土に、剥ぎ取られた、
あなた、の、
からだ、から、
わたされた、
少しの、毒が、
私の、言葉を、
滲ませて、

夕闇、
切り裂かれるようにして、
夜、


第三章 涅槃、

切り刻まれた、
言葉が、ちぐはぐに、
発話されて、
貴方の、切り刻まれた、
体の、
色を、白く、させる、
日に、

明るい、部屋で、
明るい、色、
の、中に、
横たわる、
群れから離れて
、けもの、の、
ように、けもの、
たち、のように、
夕闇に、染まる、
前に、失った、
たましい、だけが、
よびもどされない、
まま、

投げかけられる、
言葉が、多いほど、
貴方は、また、
傷つけられ、
病に、犯されたまま、
唇は、契るために、
ようやく、赤く、
なって、
指先は、
硬く、名を、
拒絶しては、
閉じられた、
瞼が、軽い、
剥ぎ取られた、
あらゆるものが、
物語で、
また、物語で、
力で、剥ぎ取られた、
明るい、死、
笑っても、
悲しんでも、いない、
顔に、閉じられた、
瞼と、
契りの、ための、
唇だけが、

(閉じられているだけで、
 なぜ、貴方が、
 この、けもの、たちの、
 群れを、離れたって、
 誰がわかるんだろう)

閉じられているだけで、
言葉だけが、多く、
多く、何度も、
強く、弱く、
投げかけられて、

言葉は、
きっと、貴方の、
閉じられた、重みに、
耐えられないから、
逃げ出すよ、


第四章 骨格と、

手をとれ、
とれ、と、
摘み取られた、
手の多くが、
雨戸に、投げ込まれ、
幸い、外は、
晴れている、

正座、した、
横顔、
私は、二度、
その、姿を、
見た、

その話を、
ずっと昔に、
祖母にした、
時、祖母の、
手が震えていたのを、
覚えている、
覚えている、

震えていた、
のは、小さな、
ざわめきで、
それが、災い、
となって、
土に、埋もれるまでに、
後、何年かかるでしょう、

土に埋もれた、
災いの、
後に、花咲くのは、
小鳥の、名前を持った、
野花、であることを、
願う、

縁側に、
咲いていた、
アジサイ、
そして、松に、
雨が、当たる、
夕時、の、
暗闇の、中で、
仏間に、掲げられた、
写真の、いくつかの、
後ろに、差し入れられた、
手紙、

黄色く、腐敗したんだね、
と、手紙に、告げる、
後、少しで、
暗闇が、やってくるだろう、
その時、真っ赤に、
燃える、炎を、
蝋燭に、灯して、
浮かぶのは、
浄土の、輝きを、
もった、仏の、
体ぐらいで、

手にとられ、
とられた、手だけが、
また、雨戸に、投げつけられ、
瓦の、落ちる音を、
聞くたびに、雨の、
香り、


第四章 吃音、

木の葉を、
千切るようにして、
契った、
未だ、声をかけられない、
こごえだけが、
残ったままの、
手、
て、てと、
手を、取り合うように、
そこに、擬音が、
降り注いで、
初めての、
発話だけが、
飽和した、

一つの空間を、
押し込めるようにして、

世界、
と、名指した、
時の、顔は、
青ざめている、

アダージョ、
アレグロ、

よりも、

ひばりや、
すずめの、
名が、音が、
今は、懐かしい、

生き抜いていくことが、
一つの、信仰なら、
あなたに、降った、
二つ目の、戒めは、
乖離で、
剥ぎ取られた、
み、は、
もう、こうべをたれない、

あなたが、
また、この家に、
生まれてくること、
そしてまた、
この家が、
あなたから生まれてくること、
背筋を、這い上がる、
身をよじるようにして、
青ざめている

海の彼方でも、
山の彼方でもなく、
うみのあなた、
やまのあなたに、
宿るようにして、
集う、
身を寄せ合うようにして、
寄り集まる、

生きているものは、
皆、悲しい、と、
教える、声の、
小ささだけが、
大きい、のは、
体だけで、
小さくなっていくのは、
雨、あめ、
あめ、と、
やめることなく、
ふることなく、

とち、とち、
土地、と、
家々に、

『雨の日』

水道を、ひねる、
真昼、水の音の中に、
流れる、体、
を、またひねる、様にして、
生活に、浸す、

硬い言葉、
やわらかい、言葉、
数を数える、
声に出して、
小さく、大きな身振りで、

林の奥で、
奥だけで、雨が降っている、
また降っている、
その音を、聞きに行く、
これは、生活の音ではない、
(そして、それは、生活の、
 言葉でもない)

荒々しい、人の、
優しい言葉、
物静かな人の、
怖い、言葉、

(それは、生活の言葉)

比喩は、福音の、様に、
降っている、
(だから、それは、
 生活の言葉じゃない)

詩を、書いている時は、
林の、奥で、
雨が降っている、
その、音が聞こえる

第五章、世界中の、豚ども、醜く、わめけ

雨が降る度に、
春が近づいて来る、
生活が始まる、
あなたが生まれるようにして、


枕元に、

  New order

床に災いを敷き、
枕元に病を、
口は光を囀り、
音は夕べの窓際に、
丁寧に、
配置された、
優しいもの、
今から、白く、
多くを、食べる、
夢の中で、友人たちを、


黒く、浮かぶもの、
背骨を、折る、
二日目の、手に、
持たされた、
また、夢、

地獄は、明るい、
と、肘を、ついて、
遠くを指さす、
顔が、微笑んでいる、

白く、また、
食べる、多くを、
くべる様な、手つきで、
燃えていくように、
落下する、
そう、落下する、

凍える様な、
科学の、時間だけが、
すぎて、
また、一人、
また一人と、
白く、食べられては、
夢の中で、

花の名前を、
伝える、新しい、
水素、だけが、
私の、体を、
突き抜けて、

見たままの、
手だけが、
遠く、伸びていく、
この、角を曲がれば、
永遠の、終末で、
明るい、と、
また、顔だけが笑っている、

意味が分からないから、
怖いでしょう、
だから、大嫌いだ、
と、口を滑らした、
夜、
その背後で、
待っているものは、


技術

  にゅーおーだー

夕方、
夏に、
早く、も、
蚊帳を被せ、

手で、鳴らすのは、
うちわで、

ふゆ、ふゆ、ふゆ、
と、三度口にしては、
赦し、だよ、
と、毛糸を、施す、

振る舞いが、
とても、ゆっくりだ、
と、ふゆだから、
なつだから、と、
話し合っては、
だんろに、手を伸ばし、
また、伸ばされた、
尻尾で、結ばれる、
季節が来た、と、
たわいもない会話をする、

アルビノノート、
深い、白は、
浅くて、浅い、白は、
まるで、雪のようだ、
朝早く、駆け抜けていく、
神の、子供達が、
幼い、マレビトだ、
まだ、幼いぞ、
と、鬼の面をかぶって、
赤い、

赤く、充血するのではなくて、
白く、充血したまま、
の、手と足で、
浅い、雪、
深く、足を入れて、

ねじまがった、
優しさ、
と、奇形だ、
奇形、だ、
と、扉をたたく、
声が、
ボタボタと、
屋根から落ちて、

そして、
ポタポタ、
なみだ、を、
雪に、添える、

悲しいことばかり、
しか、書けない、
言葉は、また、
うれしいことばかり、
しか、書けない、
ことばは、
滅んでいくばかりで、
だれも、書けないような、
言葉で、駆け抜けていくような、
私の、貴方の、
言葉だけが、
書かれることで、ねじ曲がる、


の死、そして、「しき」だけがなく

  Ceremony

しきだけが、なき、
繰り返されるたびに、
ひかれては、
たされるようにしては、
削られていく、
おられたものだけが、
たたまれて、
わたしは、
ひらいたままの、
あたらしい「しき」で、
生活を、
呼び戻しては、

色、として、
失われては、
花言葉を添えるように、
また、式、として、
ひかれては、
たされて、
やっぱり、
最後は、
声と、声で、
割れて、
貴方に、
もう、「かける」こと、
の、できないものばかりが、
識、に、残る、

心は、
枯山水の、
ように、
一輪の、
花を添えることを、
ためらっては、
涅槃に、おける、
わたしや、あなたが、
すごした、死期だけが、
何度目かの、
何十回かいもの、
四季をめぐり、

強い、
言葉を抑えて、
私は、つなげる、
意味を、
つなげるように、
失われた、
体と、
記憶を、

ひとつの、
「しき」だけを、
生き残らせようとは思わない、
ましてや、

色即是空
識即是空、

存在しない、
から、
こうやって、
繰り返すのが、
まるで、お経のようで、

(意味を、まるで、
 魂を転がすように、
 追い散らして)


しきだけが、失われた、瞳が、開かれずに、口だけが、垂れ、白くなっていくばかりの、
意識は、すでに、体を失い、生活は、遠く、貴方の、肌から離れ、幾百、と、浴びせられる、
生きているものの、声は、すでに、川を、わたり、死に、濡れた、衣服の、水滴が、乾いていく、
私が、見ようとしている、瞳は、生きているもの、目で、

生活の、
優しい、式は、
失われて、
「色」は、
貴方の、魂から、
ひかれては、
私たちの、
声に、割られて、
かけられる
もう、何度も、
この、
公式は、繰り返されている、
そしてまた、
四季はめぐり、
私たちは、識を、
憂う、


季節の層

  Ceremony

そう、
いくつもの、
母や、
姉が積み重なり、
水のように、
流れては、
父や、
弟も、
もぎ取られ、
押し込められた、
春、

夏には、
芽吹くだろう、
あの、
痩せた土地から、
一つの、
雨を、降らせるためには、
どれだけ多くの、
花を、
草木を、
枯らせなければならないのだろう、
嵐を、飲んだ日に、
祖母は、
火を身ごもった、
そして、
山々は、
秋に、燃やされて、
父は、
灰の中へ、
潜り込んでいく、
冬、になれば、
皆が、
積み重なって、
私は、
歴史を描こうと思う、
ずっと、
重い、長い、
歴史を、

くだらない、
タームの、
時代は終わったのだから、
やさしい、
私の、
詩の言葉で、
新しい、
私の、言葉を、

戦争が始まるよ、
そして、
敗戦の、
言葉で、


(無題)

  いかいか

この、工都には、
葡萄しか実らない、
「林檎は神の物語を呼び込んでしまうから」
血のように、硬い、
骨を
油で満たし、
汗は、
雨をよぶ、

工都は、
秋に燃える、
君はいつ燃えるのか、
はやく死ね
天使よりもはやく


(無題)

  いかいか

花のように咲いた、
人の死を頼む、
雨のように、
泣く人の、悲しみを、
頼む、

今、僕は、サフランを、
摘みながら、
ブエノスアイレスの
冷たい、路地裏で、
歌われるであろう、
歌を、描こうとして、
必死だから、

僕の詩には足がないから、
逃げ出すことを知らない、
僕の詩には腕がないから、
戦争にも革命にも行けない、
僕の詩には死がないから、
本当の悲しみも、喜びも知らない、

だから、僕の死を頼む、
悲しみを知らない、
生まれたばかりの、
詩を、

眠いから止めたわ

文学極道

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