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作品 - 20120223_597_5890p

  • [佳]  点描 - 津島ことこ  (2012-02)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


点描

  津島ことこ

濃淡を、くりかえしながら先割れのスプーンに近づいている朝


演じるということ、やさしさということ、おろし金から飽和する雪


質量をもってしまった画家はもう手のひらを返すようにかなしい


ましかくに凍えるような病棟でビニール傘を写生するひと


引き潮がさらわれてゆく静けさのなかで東京駅に降り立つ


連弾をしているずっと/ひとりきり はると見まごうプラネタリウムで


きゅうくつに体を折り曲げしあわせをちいさく握りしめている、猫


ちょうむすびしている春がこんなにもやさしすぎても誰も責めない


いちめんの菜の花畑で露光する(月光、液体窒素、フラワー)


ひらかれた感光紙には職人の顔をしている知らないあなた


お手数をおかけしますと梅雨入りの午後、ファックスで送信します


雨の日の断片アジサイすきだった ひとをなくしてわたしそらをとぶ


むじゅうりょくのなかでみつめるやわらかな名前、ピアノの上で跳ねるの?


とうめいな打ち上げ花火 ひび、ひびと 身をまかせれば素粒子のうみ


あめであることを忘れる(ハレーション、)はくさい色の虹をみていた

文学極道

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