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作品 - 20120218_464_5878p

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ざりら

  WHM

ゆんわりとした坂道をのぼるともなく転がっていく、いつかTVで観た指の長い超能力者のスプーン曲げ。あんな風に影がおかしくなって、ざりらはぶっ倒れた。

2012年2月15日。椅子は傾かない。黒いピアノだって、逆さになって海底へ沈んでいったりしない。部屋に差し込んだ陽の光が、遠くへ引いていくのを見たくらいで、海のペンキを体中に塗りたくって、ぐるぐる巻きのダイナマイトに着火しなくたっていい。飛ぶように沈んだ。だだっ広い砂浜へ砂を燃やして。太陽第342号。

風の強い日だった。エンジンがなかなかかからず、嫌がったセルモーターが何度もいなないた。路上でめくれ上がったビニールから、骨組みが何本か飛び出して。細長い銀色の甲殻類が数匹。次から次へガラスを叩く水滴の広がりと一緒に後ろへ流れていく。

ひとけのない体育館は平和だった。ブレーカーが下がっている。道路に木が倒れて、スクールバス来れないんだって。朝の体育館は広くて薄暗い。床に友達の体育シューズが映っている。だむど。だむどと鳴り始めて、その影がたわんで揺れた。続くようにかごのボールに手を伸ばす。指先から離れて浮かんでいくバスケットボール。千の天使と遊ぶのだ。これから、飽きるまで。

住処へ張り巡らされたワイヤーと。ピアノに向かう老人の背中は小さい。厳粛な鍵盤の配列の上で、裸木は活けられている。白、白、黒、白黒白黒白白。遂には裁断される音の断崖を。指は戸惑い、宙をさ迷う。思い出すように。垂直に裂かれていく、この震えをどうか止めずに。指先から記憶を開いて、それから音はひん曲がる。

間違いだ。間違えられた。ポケットからアルニコを取り出して、束になって逃げ出そうとするワイヤーをアンプにぶち込む。膨れ上がった暗箱から幾つもの管がそこらじゅうをのた打って、脳ミソを蹴り上げる。もつれ合う脚の群れ。まだ空は青いのか。赤いのか。入り混じってるのか。ざりら、踏み付けられた靴底の模様と。何色の涙が、最後の目頭を溢れたんだろう。

文学極道

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