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作品 - 20120218_454_5877p

  • [優]  暗礁 - sample  (2012-02)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


暗礁

  sample

天井から集まる
星屑のめいめつが
頬からこぼれそびれて
睫毛にからまり
目を閉じると
角膜の表面に錨をおろし
浮標のように
ただ揺れている
覚束ない眩しさを
ひとつ摘んで
たやすくつぶし
ひしゃげたおとが
耳から鼻孔へ
すべりこむと
小匙ていどの
くしゃみが生まれ
さそわれるままに
あくびをしてしまった
ほの暗い口腔が開かれて
乳歯から順番に
明かりが点される
うわ唇がめくり上げられ
夜が頭巾のように
被せられる
赤裸々になった
のどちんこに
灯台が建設されて
置き去りにされたゆりかご
漫然と船を漕ぐ

アイロンをかける
母のそばにはいつも
天使がいて
幽霊が描く漫画の線のように
頼りない輪を描いていた
湿った繊維から
蒸気があがるたびに
軌道をそらし
畳に落ちそうで心配だった
また見てしまった
おそろしい夢 
回転木馬を模し
貴金属を装飾した
拷問器具に拘束され
あかくらげに触診される
けさ、起きると
乾燥した白い肌に
爪痕があかく
火傷のようにうかんでいて
毛布に身体を埋めても
土踏まずの下みたいに冷たい
母のくすりゆびに
嵌められた指輪は
あの拷問器具の
部品のひとつに似ている
だから手をつないで
海岸を歩いたとき
右手をつかむようにしていた
ふたりで灯台にのぼり
真昼の星座をつないだ
解体された、母の手が
星を真似て
さよなら、していた

文学極道

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