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作品 - 20120128_083_5835p

  • [佳]  荒浜 - 菊西夕座  (2012-01)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


荒浜

  菊西夕座

がさつな海が人気のない浜に重たげなローラーをかけている
寝静まった街の片隅でいびつな音を引きずりながら清掃車両がゆっくり道を渡るように
整然とした深みを果てしなくひろげながらもその足もとはかき乱されている
なぎ倒された松の防潮林が廃屋に至る小径を荒々しく塗りつぶしている
打ち砕かれた海岸堤防は数キロの距離を一枚の薄い塀となって切り立っている
堤防と防潮林の間を縫うように車輪の跡が長々と刻まれて固まっている
押し戻された漁具や靴や雑貨類の氾濫がいたるところで厚い砂に埋もれかけている
行き場もなく重なり合う星形の消波ブロックには群れを離れた渡り鳥の影

 
枯れた木立の残骸と流木とわずかな足跡がさびしそうに入り交じる
法線は太陽の沈む彼方まで荒涼とした汀に延びている
越境した辛い水は飛び地に貯留池をかまえて海の版図を広げている
家と仲間を失った家族が臨海線の手前に建てた慰霊碑に祈りを捧げにやって来る
かたわらを通り過ぎる雪まじりの風に波の乱れた息づかいがおしかぶさる
空疎な痛みは重くはかなげに灰色の砂へと足を沈ませた
いまだ乱れを均すことができない浜で海が重たげにローラーをかけている
だれかを探しつづける足跡を辿りながらだれもいない荒地に親しみを寄せていた

文学極道

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