おかあさんのいのちには
さびしい色がついていて
産道でねじれる、子どもの
ほっぺたに色うつりする
広がって、いつか
こころまできれいに染まるようにと
抱きしめる
それはわたしのためじゃなく
あなたの
いのちのため
化粧のしかたも知らないで
人にさらされる
手のひらで頬を隠しながら
つみたい花を、
なでたい猫を、
ひきたいピアノを、
通りすぎていく
いつまでも片づかない質量をじっと
見つめると、あなただった
しかたなく母と呼んで
足のうらから
びーだまをこぼす
わたしは 少しずつ軽くなって
誰にも分からないのに
すりむくと血が見えた
たいらな目が俯瞰すれば
嘔吐のようにうつるんだろう
よごれた泡が ひかりを
はねかえって歌が
遠ざかる、
骨を
わたすのがいやだった
かってな色に葬られて、あなたの
祈りのかたちに削除されるなら
生きてるほうがましだと
がらくたのように追いやっている、
いのちなんて
くだらないだけ
水になれたらいい
雨のような手つきで
ほっぺたの色を溶かして すける
おかあさん、なにも気づかず
そのままわたしを泳げばいいよ、
つかまえて、放り投げれば
あがいて死ぬだけのさかな
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選出作品
作品 - 20111226_701_5780p
- [佳] infect - 黒崎立体 (2011-12)
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黒崎立体