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作品 - 20111114_669_5697p

  • [佳]  失語 -  (2011-11)

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失語

  

三度目の寝がえりをうった、あんたを尻目に、分厚い本を捲る指先から、言葉が次々と滑り落ち、指落ち、手落ち、こくこくと時間をなでる、その古びた柱時計の中に、午睡がゆるやかに行進するのを、実は見ていたんだなって、そう気付いた時には遅く、頬にあてがわれた掌から、伝わる、体温が、一切を告げる、何かが始まる、何も始まらないかもしれないことも、全部含めて。(あんたは次に俺の手を握る)

手を握り締めて、開いたら、そこには夜が、更けていた、
夜が俺とあんたの顔に翳んで、瞳を、取り出そうとする
やめてと、繰り返しうめく、口から、言葉が夜に、次々と、墜落して
今夜、あんたと俺の手の中であらゆる言葉が重力を忘れる。

捩れる肉体から伝わる、嬌声が瞬間を、更新していく、そんな月並みな物語が、背骨をなぞりつつ、ゆくりなく、夜空に溶けて、絶えていく、もう二度と離さないと、誓った手が、情熱的に、お互いを撫で合う、悲しみの限りを尽くして、寄る辺なく漂う、二つの艀は、これから何度でも訪れるだろう災いを、振り切れるだけの櫂を探した、互いの身体へ、その櫂を探しにいく、俺はあんたを、あんたは俺を、もうすでに、裏切っていたというのに。(あんたは次に俺の手を離す)

離れた、手のひらから、気怠い朝が始まる
言葉たちは、すべて、撃ち落とされてしまった、殺戮の朝に
二人の物語は、ねじを巻かれる、気怠い朝の息吹に、繰り返される無為に、
剥き出しになった殺意を抜かれる
今、再び物語が始まる、終わらなかった、二人のための物語が始まる。

じとじとと、発芽する殺意のない、憎しみが、幼児のように、世界を吸収して、卵割を始める、幼児どもが、わらわらと、二人の裂け目から溢れだす。(あんたは次に、)増えすぎたにくしみが、熟れた柘榴の切り口のように、醜くとも、発話を求めているというのに。(あんたは次に俺の、)腐り切った、幼児どもの口々から、伝わる、臭気を帯びた、吐息が、またの墜落を予告し、朽ちた化石を掘り起こし、わらわらと、わらわらと、増え続ける、その口々から、わらわらと、わらわらと、零れおちては潰えてゆく、声。(あんたは次に俺の手を)掬う、その体温が、腐食して、腐食させ、腐食する。その手を

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