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作品 - 20111022_044_5636p

  • [優]  包む - ゼッケン  (2011-10)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


包む

  ゼッケン

万引きの時間だった
いつものコンビニエンスストアで男梅を万引きして帰る
ぺたぺたとサンダルを引きずって帰るおれを
きみは途中で呼び止めた
おれのジャージのズボンのすそは擦り切れていた
ゴムがゆるんで腰から下がっているからだ
証拠の写真を持っている
きみはおれに言った
おれは買えと言うのかい?と言った
おれは肩をすくめてカネはないんだ
男梅の袋を代わりに差し出す
きみはついて来いと細い顎をしゃくった
きみはインド人だろう? 美少年ですね
きみはおれをよくあるアパートの二階の部屋に
金属の柱と踏み板だけの屋外の階段を昇って招きいれ、
手作りのぎょうざを焼いてくれた
おれは象牙の箸でぎょうざを大皿からひとつつまんで口に運ぶ
酢醤油はなかった
一口でほおばった、とたんにさわやかなミントの香りが
さわやかではないふうにぎょうざのもっちりした皮を破って口中にあふれた

ハローホワイト

歯磨き粉だった
ぎょうざの中身はおれがいままでに万引きしてきた品物らしい
きみは証拠の写真がある、とおれにそっとささやいた
耳元で言った
乾電池は食えないよ、とおれは言った
いくら水銀0使用だといってもね
するときみは帰れ、と言った
おれは帰った
がんばって食べてみればよかったかもしれない
そうすればおれときみのひそやかな共犯関係はいまも続いていた?
いま、おれはちょっと懇願するような気持ちだ

きみの歯はとても白かった

文学極道

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