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作品 - 20110625_066_5303p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


どこにも行かないと答えた

  yuko

あなたの暗がりから流れ出した
川が
ひたひたと
部屋を出て広がっていく
酸素呼吸をつづける
さかなたちの鰓が
開いた
やわらかさを知らないままに

まなざしと真みずの
接合面
に、ふれて。
聞こえてくる芽吹きの音を
吸い上げるまるい
おなか
(こぼれる、
撫でていく手のひらの
数をわたしだけ覚えている

排水溝から溢れだした
ひかりを
瞼ごと捨ててしまって
ベランダでたばこをすう
たなびく粒子たちに
手首の青みをあげる
真夜中の台所
包丁の刃線に
感光するフィルム
露出度をあげた
のは、
(わたしではない、)
わたしで。
気がつけば
足の爪さえひとりで切れない

アイラインを細く引いて
まなざしから生まれてくる
はだは鱗に覆われていて
どこにも行かないと答えた
春を踏んで歩いていく
ここは一面みどりです
あなたの
水脈を吸って

文学極道

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