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作品 - 20110606_580_5272p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


まるちーちゃんとうじむしおじさん

  摩留地伊豆

(1)

まるちーちゃんは
にさいのまるちーずけんのおとこのこです
おうちがないので
いつもひとりでさんぽしているまるちーちゃんは
よくきんじょのかいいぬたちに
ばかにされていました

ぶるどっぐけんのぼびーは
「おまえは、くびわもしていないし、すごくよごれているな」
「なかまや、ごしゅじんさまはどこへいっちゃったんだ」
と、まるちーちゃんがいつもひとりぼっちなのをしっているのに
わざといじわるにそんなことをいいます

そして、ぼびーのごしゅじんさまに
「こら、いくわよぼびー」
と、いってしかられても
ごしゅじんさまにつれられて
ずっと、とおくにいっても
いつもにやにやとして
まるちーちゃんをみていたのです

でも、まるちーちゃんはとてもつよいこなので
そんなことをいわれてもへいきでした
それにまるちーちゃんには
ゆめがあったのです

それはいつかぼびーが
「このへんにはおまえそっくりなへんなおじさんがいるぞ」
「そのおじさんうじむしをびんでそだてているんだってさ」
「おまえのごしゅじんさまだろ」
と、はなしていた「うじむしおじさん」にあうことです

どうしてかわからないけど
「そのおじさんなら、ぼくにやさしくしてくれるかもしれない」
「もしかしたら、ぼくをかってくれるかも」

そうおもったまるちーちゃんは
よるもひるもずっと
「うじむしおじさん」のおうちをさがしていました

(2)

そんなあるひまるちーちゃんは
うじむしのたくさんはいったびんを
とてもだいじそうにかかえたおじさんをみつけました

そのとき、たまたまとおりかかったぼびーが
「きょうは、ごしゅじんさまとおさんぽかい」
と、にやにやしていったので

(ああ、このひとが「うじむしおじさん」にまちがいない)
と、おもいました

とてもうれしくなったまるちーちゃんは
わんわん、といって
そのひとにかけよりました

でも、びんのなかのうじむしにえさをあげている「うじむしおじさん」には
そのこえはきこえないみたいでした

まるちーちゃんはおおきなこえでもういちど
わんわんとなきました

すると、びんのなかをのぞきこんでいた「うじむしおじさん」は
すこしびっくりしたようなかおでまるちーちゃんをちょっとだけみましたが
またやさしいかおでうじむしたちをみました

そんなやさしいかおでじぶんのことをみてほしいとおもった
まるちーちゃんがもういちどなこうとしたとき

おじさんはおおきなこえで
「うるさいぞ、なんだこのきたないいぬは、あっちへいけ、しっしっ」
といいました

まるちーちゃんはとてもびっくりしましたが
おじさんにあえることをゆめでみるほどにたのしみにしていたので
そこからはなれることができずにいました

すると、ごんっというおとがして
めからぱちぱちとひばながでて
あたまにはおおきなたんこぶができました

「うじむしおじさん」がまるちーちゃんのあたまに
いしをぶつけたのです

そして、「うじむしおじさん」はまるちーちゃんをおいていってしまいました

おじさんがいってしまってとてもさびしいきもちになったまるちーちゃんは
ちいさなこえをだして、おおきななみだをながして
なんじかんもなきました

ごしゅじんさまにすてられたときも
なかなかったのにです

(3)

まるちーちゃんがないていると
ひとりのちいさなおんなのこがかけよってきました

「どうしたの?」

おんなのこはたんこぶのできたまるちーちゃんのあたまを
やさしくなでてくれました

まるちーちゃんはなきやんで
わん、といいました

すると、おんなのこのおかあさんがやってきて

「めぐみちゃん、もういくわよ」
といいました

「でも、このこけがしてるよ?」
おんなのこがいいました

「いいから、ほっときなさい」
おんなのこはおかあさんにてをひかれて
いってしまいました

まるちーちゃんはもうたくさんないたので
さんぽにでかけることにしました

さんぽのとちゅう
あきたけんのけんたと、しばいぬのめいにあいました

にひきは、まっかになったまるちーちゃんのめをのぞきこむと

「あれ、こいつのめまっかっかだぞ」
「きっとないたんだよ、なきむしやーい」
などといってはやしたてました

まるちーちゃんがはずかしそうにしていると
にひきとまるちーちゃんのあいだに
すうっとぼびーがはいってきました

ぼびーはまるちーちゃんのめをじいっとのぞきこんだあと
くるっとけんたとめいのほうをむいて

わんっ、とほえました

けんたとめいはびっくりしてきゃいんとないて
ごしゅじんさまたちにつれられて
いってしまいました

ぼびーもだまってごしゅじんさまといっしょに
いってしまいました

(4)

あるひ、まるちーちゃんがおきにいりのこうえんにある
どかんのうえでひなたぼっこをしていると
おんなのこがおおきないたをたくさんもってやってきました
このあいだ、たんこぶができたまるちーちゃんの
あたまをなでてくれたおんなのこです

「うんしょ、うんしょ」

おんなのこは、もってきたいたをどさっとおいて
まるちーちゃんにこういいました

「わんちゃん、おうち、ないんでしょ、めぐみがわんちゃんのおうちをつくってあげる」

おんなのこは、せおっていたりゅっくさっくから
くぎと、かなづちをとりだすと

「おとうさんのをもってきちゃったんだ、ないしょだよ」

にっこりわらってそういうと
どかんのうらのめだたないばしょにいって
くぎをかなづちでたたいて、まるちーちゃんのおうちづくりをはじめました

とん、とん、とん

おんなのこはまだちいさいので
くぎをうつのがあまりじょうずではありません
まるちーちゃんはおんなのこがてをたたいてしまうのではないかと
しんぱいしてみていました

「いたい、わーん」
まるちーちゃんがしんぱいしていたとおり
おんなのこはひだりてのひとさしゆびを
かなづちでたたいてなきだしてしまいました

おんなのこのことをとてもしんぱいしたまるちーちゃんは
はしっていって、おんなのこのたたいてしまったゆびを
なんどもなんどもなめました

おんなのこはすぐになきやんで
まるちーちゃんのあたまをやさしくなでると
また、まるちーちゃんのいえづくりをはじめました

「できた」

もう、ゆうやけでそらがあかくなりかけたころ
ようやくまるちーちゃんのいえがかんせいしました
おんなのこのいえづくりを
ずっとしんぱいしながらみていたまるちーちゃんでしたが
いえができるととびあがってよろこびました

「めぐみちゃん、いつまであそんでるの、ごはんだからかえってきなさい」

「はーい、おかあさん」

しんぱいしてさがしにきたおかあさんにつれられて
おうちにかえっていったおんなのこをみおくると

まるちーちゃんはじぶんのこやのまわりをぐるぐるとまわりました
ちいさなおんなのこがつくってくれたので
こやのかべにはすきまがいっぱいありましたが

まるちーちゃんはうれしくてたまりませんでした

そして、よるになったので
まるちーちゃんはじぶんのこやにはいって
すやすやとねむりました

(5)

それからというもの、おんなのこはまいにちのように
ぱんをもってきてくれたりして
まるちーちゃんにあいにきてくれるようになりました
まるちーちゃんはおんなのこがきてくれるのを
いつもたのしみにしていました

そんなあるひ、おんなのこがまるちーちゃんをこうえんにつれていきました
そして、

「めぐみがまるちーちゃんをきれいにしてあげるね」
そういって、こうえんのみずのみばのじゃぐちをひねると
おんなのこはもってきたせっけんで
まるちーちゃんをごしごしとあらいました

おんなのこがいっしょうけんめいにあらってくれたので
まるちーちゃんのけはぴかぴかになりました

そしておんなのこはぽけっとからぴんくのりぼんをとりだすと
まるちーちゃんのあたまにつけました

まるちーちゃんはおとこのこなので
ぴんくのりぼんがちょっとだけはずかしかったけれど
おんなのこがとてもよろこんでいたので
うれしくなってはしりまわりました

まるちーちゃんがはしりまわっていると
けんたとめいがさんぽにきているのをみつけました
そしてけんたとめいのごしゅじんさまが
ひそひそばなしをしているのがきこえてきました

「いやねえ、あのひと、またきてるわ…」

ごしゅじんさまたちがみているほうをみると
さなぎがいっぱいはいったびんをもった
「うじむしおじさん」がいました

うじむしおじさんは、なにもしゃべらずに
さなぎのはいったびんをじいっとのぞきこんでいました

まるちーちゃんはまたいしをぶつけられるとこわいので
けんたとめいのごしゅじんさまのうしろにそっとかくれました

すると

「あのひと、ほんとうにきみがわるいわ」
「うじむしをびんにいれてかっているなんて、どんなびょうきをもっているかわからない」
「このこうえんにこないでほしい」

ふたりはずっとうじむしおじさんのわるぐちをいっていました
それをきいていたまるちーちゃんは
なんだかはらがたってきて、わんっ、とおおごえでなきました

けんたとめいのごしゅじんさまは、はじめはびっくりしましたが
おんなのこがせっけんでけをきれいにしてくれて
ぴんくのりぼんをつけてくれたまるちーちゃんをみて

「あら、かわいいわんちゃん」
「どこのおたくのわんちゃんかしら」

と、くちぐちにいいましたが

まるちーちゃんがおこってずっとほえるので
けんたとめいをつれてかえっていきました

「なにしてるの、もうかえろう」

おんなのこがよびにきたので
まるちーちゃんもかえることにしました

まるちーちゃんがふりかえると

うじむしおじさんはまだだまったまま
びんのなかのさなぎをみつめていました

(6)

まるちーちゃんとめぐみちゃんはとてもなかよしになりました
ふたりはかけっこをしたり、めぐみちゃんがなげたぼうを
まるちーちゃんがひろいにいったりして
とてもたのしくあそびました

そのひ、いつものようにおかあさんにつれられてかえる
めぐみちゃんをみおくってしばらくすると
めぐみちゃんのおかあさんがひとりで
まるちーちゃんのおうちへやってきました

まるちーちゃんは、いつもおそくまでめぐみちゃんとあそんでいるので
きっとおこられるにちがいないとおもって
どきどきしました

でもめぐみちゃんのおかあさんは
すうっとまるちーちゃんのまえにすわりこむと
まるちーちゃんのかおをじいっとみたあとで
やさしくあたまをなでてかえっていきました

そのよる、めぐみちゃんのおうちでは
かぞくかいぎがひらかれました

おかあさんがめぐみちゃんに、まるちーちゃんのことをかってもいいかどうか
「おとうさんにきいてごらん」
と、いったからです

めぐみちゃんがおとうさんにきくと

おとうさんはめぐみちゃんとまるちーちゃんがとてもなかよしなことや
めぐみちゃんがまるちーちゃんのめんどうをよくみていることを
おかあさんからよくきいていたので

「いいよ」

と、いいました

めぐみちゃんはうれしくて

「ばんざーい」

と、いいました

(7)

まるちーちゃんはめぐみちゃんのかぞくのいちいんになりました
めぐみちゃんはがっこうへいくまえとゆうがた
まいにちまるちーちゃんをおさんぽにつれていってくれました

めぐみちゃんががっこうへいっていないときは
おかあさんがせなかをなでてくれたり
とてもやさしくしてくれました

ゆうがたのおさんぽで、まるちーちゃんは
ぶるどっぐけんのぼびーといつもすれちがいます

ぼびーがいつもわんっ、となくので
まるちーちゃんもいつもわんっ、となきました

にちようび

まるちーちゃんはめぐみちゃんと
おとうさんとおかあさんとみんなでこうえんにいきました

まるちーちゃんはこうえんでめぐみちゃんとかけっこをしているとき
べんちに、はえのいっぱいはいったびんをうれしそうにみつめている
「うじむしおじさん」がすわっているのをみつけました

うじむしおじさんがびんのふたをあけると
びんのなかのはえたちは
いっせいにそらへとんでいって
あっというまにみえなくなりました

うじむしおじさんはすこしさみしそうにわらって
そのようすをながめていました

まるちーちゃんも
はえたちがいっせいにそらへきえていくのを

じいっとながめていました

(おしまい)

文学極道

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