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作品 - 20110509_805_5199p

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雪解け

  

風が吹けば寒村で白鳥に抱きすくめられた心地がした
雪の気配が眼窩から染み透って次第に声と意味は乖離していった
小鳥のあれは親鳥を求める声なのか
私にはわからないただ私は一羽の白鳥になって
子を持つ親鳥のようにそちらを見やっていた
このごろの古川は雪が降っているか
さもなければ風が強いかだった
雲によって太陽は久しく無力化され
オレンジ色の象徴となって空に浮かんでいた
水面に映った子ども達が
オレンジがどんなものかを身振り手振りでこちらに伝えようとしている
オレンジ色に染め抜かれた木々は
我々とはおそらくちがう雨の予感に揺れている
春風が絶えず肥え太った河の腹を舐めている河原で
雪の塊から毛玉みたいに吐き出された自転車の車輪が
いまだ車輪の形をなして空を向いていた
自転車よ自分はまだ走り続けられると思い込んでいるのか
車輪だけのその姿で
絶えることのない水のほとりで
流行というものをペットボトルのラベルのように剥ぎ取ってしまった透明な人が
もの思いに耽っていたら
後ろから抱きしめてもきっと消えてしまう
水面に映る姿の方がきっと本物だろう

文学極道

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