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作品 - 20110503_548_5181p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


屋上からの景色

  美裏

わたしたちの学校の屋上はあらかじめ封鎖されていた
高さがあり
そこから落下すると危険だからという正当な理由がある
しかしそれに伴う閉塞感をどう考えてるのかね、あんたたちは
「落ちるなら、ここではない別の場所からやってくれ」
結局、おとなってのはそんな生き物なんだね
わたしたちが落ちるか落ちないかは関係ない
わたしたちのピュアを斜め横からズタズタに切り刻むな

屋上へと続く鉄の扉
そこには魔術師による結界が敷かれているわけではない
ただ100均、辺りに置いてあるちゃっちい南京錠がぶら下がっているだけだ
だから結局、問題はわたしたち自身なんだとも言える
その気になればいいだけなのかもしれない
やってみる?
やってみようよ
じゃあ来週にね
そして、その来週に
わたしたちは焼きそばパンをお口に突っ込んで自殺したい気分のままだった
「起きろって、屋上の南京錠、突破するんだろ?」
何いってんだこいつ………
と顔をしかめた後
思い出した
あそうだったね
わたしはなんだか自分が英米小説のような世界へ足を突っ込んでしまった気がしていた
「サリンジャーって知ってる?」
わたしは机にうりゃーって背伸びして言った
友人は
「名前だけね」
と言った
「初めてサリンを作った人なんだよ」
わたしは嘘情報を友人に仕込む
「へー………それ嘘じゃん」
すぐバレた
そしてその後なんのフォローもしないままわたしは立ち上がった
廊下を歩いた
友人はてくてく付いてきた
階段をせっせと上がる
辺りに、だあれもいなくなる
扉は簡単に空いたよ
なぜなら鍵があるからね
4時間目の体育が始まる前にわたしたちは体育倉庫の鍵をもらいに職員室に行った
そこで体育のヒゲちゃんは自分のクラスの日誌に何かを書き込みながら言った
「あー、そこに掛かってるから取ってけ」
観音開きって言うの?
その中には我が校のキーがずらり
この学校の安全に対する認識の高さに乾杯
「乾杯!」
そうしてカルピスなんとかをぐびぐび飲んだのがさっきの昼食ってわけ

ギギイと錆び付いた音を立て扉が開いた
その先に広がる屋上の景色
「おおうっ」
わたしは強風にスカートをはためかせその中を歩いた
(髪形が多分すごいことになってるな………)
だがどうでもいい
「いーっすね」
端まで来てそこに腕をつき、見慣れた校庭を不思議な角度から眺めていた
友人のポケットから出ているストラップは桃色の見たこともないキャラで
それがあっちこっちに勢いまかせで揺れていた

たった一度のことだったんだけど
わたしはこの日のことをよく覚えている
そしてあの日、屋上から見下ろした校庭で
ちっちゃくバレーボールをしていた人たちは
今はどこで何をしてるのかな?
とかよく思うよ

文学極道

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