とても遠い丘で
横たわったわたしは
したばらに針を刺し
水を抜いていきます
草原の羊たちの
やわらかい角は
生まれたての
うつくしいままでしょう
まだ生まれていないあなたのために
月かげさやく
目をとじ
耳をすませると
羊飼いの笛が
辺りを
振るわせるのがわかります
そして星ぼしが
ささやく宙のしたで
生んだはしから忘れてしまう
ことばの
えいえんを抜き差しする
指先にかびが生えて
幼子は
いつだってかんたんに負けてしまうことを
そしてわたしたち、
ほとんどがみずで
それがなければ生きてはいけないのだと
知っていました
から
だれか
足を(角を)
折ってください
まなざすとぶよぶよと
揺れる天球は
粛粛とまぶたを落とし
熱を帯びた
わたしのからだは
溢れんばかりの
水を抱いた草原です
すべてのきざはしに
耳を空向けながら
よわい角が脱皮して
赤い伽藍を
破る
日が
昇るその前に
笛の音とともに去ってゆく
羊飼いはさようです
わたしはここで
手を振り
すべての海が
今ここに
集う
遠心される
呼び声を軸索にして
まだ生まれていないあなたと
わたしだけが残る
頬をみずが伝う
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選出作品
作品 - 20110409_812_5136p
- [優] 着床痛 - yuko (2011-04)
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着床痛
yuko