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作品 - 20110325_358_5100p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


恋の終わらせかた

  んなこたーない

 停車場では
ねむりたくない
 雪の降る体育グランドに
三脚カメラが立っていて

 あの人たちは
バナナの皮をむいている
 ばしゃばしゃと泥水に手をひたし
ぼくらはガードレールをこえた

 あれはいつのことだっただろう
何曜日? 何時何分?
 だれも知らない
たえず赤信号に監視され

 スプーン曲げの要領で
きみはぼくをなだめたけれど
舌ばかりがだらっと垂れていて
しびれていた

うす青い草のいんきのにおいに
それはなぜ?
やさしさは癌細胞のようなものだから
ぼくらは浴室で背骨を磨いた

 きみをむしばむ
虫歯のようにありふれたもの
 歯科医のようにありふれたもの
その正体をぼくは知りたい

 なのに鉤が折れ 鉤が折れるたび
パイプ椅子らがゲラゲラ笑い
 きみはすさまじい速度で枝葉をひろげ
みずからの茂みで毒草を育てた

 いっそ太陽氏の自我にはうんざりするね
サイレンが砂絵を吹き消せば
 玉葱の汁が襲撃してくる
教えて 雲に歯型をつけたのはだれ?

 川岸の鉄線が錆びるころには
歯車みたいに羽虫が飛び交う
 精巧な時のチクタクのなかで
ぼくらは溶接の火花をながめた

 それでもエスカルゴ型した耳の奥から
聞こえる 幽霊たちのタップダンスが
 物陰にひそんだぼくらの身体が
乳白色に液体化すれば

 なのに夜空は検眼表 何も見えない
何も答えない どうして?
 どうして? と炭酸は弾けるけれど
棒杭に身をあずけ 白い息を数えていよう

 まるで触れればぼろぼろ崩れる壁に
なったような気分だ
 でたらめに神経叢をなでられて
踏切のところで ぼくらは

 ぼくらの悪い遺伝ともども別れを告げた
きっといまでも
 汚物のうえで足を踏み鳴らせば
氷片がきらきら光るのに 地球は回るのに

 あの人たちはバナナの皮をむいている
いわば倒立する亀のシルエット
 よりも悪趣味に
ぼくらの恋は脱臼したのだ

 ぼくらの恋は脱臼したのだ
一息でタバコを灰にしてみても
 「手は欲望を反映している」
ならば扁平野郎は死ぬまで勝手に

 抱きあっていろ! これからだぞ!

文学極道

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