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2011年03月分

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* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


東條英機。

  田中宏輔




      歴史教育にこそ、決して枯れることのない泉がある。それはとりわけ
     忘却の時代において、無言の警告者として刹那的な栄華を超越し、つね
     に過去を思いだすことによって、新しい未来をささやくのである。    
          (アドルフ・ヒトラー『わが闘争』I・第一章、平野一郎訳)


規則I
 自然の事物の原因としては、それらの諸現象を真にかつ十分に
説明するもの以外のものを認めるべきではない。
(ニュートン『プリンシピア』第III編・世界大系・哲学における推理の規則、中野猿人訳)


大がかりの見せしめを目的とする罰は、常になんらかの不正を伴う/国家を破滅させた
罰として/首をくくられ/吊り下げられる/気の毒な将軍/彼は/自分の
利益のために人殺しをするのではなく/偉大なる祖国のために
/祖国愛から/殺す/根っからの軍人だった。                                          *01

もう/処刑はすんだか?                                                   *02

戦争のかつての主役であり/現に今もそうである/人間の身体が/ハンカチで
/顔を/覆(おお)われ/絞首台の上に/横たわっていた。                                    *03

死んでいるのかい?                                                     *04

彼は/ハンカチをとって/自分自身の/顔を/見た。                                       *05

牢を出ると/森がある/森へ入っていく道がある/この森は/彼の故郷だった
/海の上に傾いたこの鬱蒼(うつそう)とした森/彼は/この森を愛していた。                            *06

やがて/森に入ってしばらく行った斜面で足を停め/木々のあいだから
海が見られるような向きをとった。                                               *07

もし、時間というものが静止してしまったら?/陽が沈むことがあっては
ならない/太陽の下では一日のうちにすべてが変るのだ
/彼はそう言って、引鉄(ひきがね)を引いた。                                          *08



規則II
 ゆえに、同じ自然の結果に対しては、できるだけ同じ原因を
あてがわなければならない。
(ニュートン『プリンシピア』第III編・世界大系・哲学における推理の規則、中野猿人訳)


どうして森なんかに行ったの?                                                 *09

苺を取りに。                                                         *10

ほんとう?                                                          *11

彼は/ハンカチに/つつまれた/野いちごを/目の前につきだした。                                *12

どこで見つけたの?                                                      *13

すこし森を歩いてみない?                                                   *14

あたし、ここにいてもいい?                                                  *15

森はきれいだよ/そのうえ/苺の茂みがある/見事な苺がなっている。                               *16

ふと眼の隅に白いものが動くのを見て、彼はそちらに視線をむけた。                                 *17

それ/何を隠してるんだ?                                                    *18

わたしの好きな遊び、何だか知ってる?                                              *19

「可愛い兵隊(カリグラ)」                                                   *20

知らぬ間に/靴のひもがとけたわ。                                                *21

肩ひとつしゃくってみせると/彼は/ひざをついて
靴ひもを結んでやった。                                                      *22

靴はいらないのよ。                                                       *23

彼は/山と/積もった/靴の山に/靴を投げつけた。                                        *24

木端微塵/地雷が/爆発した。                                                  *25

森の周りに/地雷がある/地雷が仕掛けられている/それが森の境界だった。                             *26

足が、腕が、頭が/ちぎれてあたりに飛びちった。                                          *27

枝々に/血のしたたる/ちぎれた皮膚が/ぶら下がっていた。                                    *28



規則III
 物体の諸性質のうち、増強されることも軽減されることも許されず、また
われわれの実験の範囲内ですべての物体に属することが知られるようなもの
は、ありとあらゆる物体の普遍的な性質と見なされるべきである。
(ニュートン『プリンシピア』第III編・世界大系・哲学における推理の規則、中野猿人訳)


戦争について語ることの外に/いったい、何が残されているのだろう?/聞くがいい
/わたしの言葉を心して聞くのだ/忘れてもらいたくない。                                    *29

第二次大戦なんて関係ないわ/過去の物語にすぎないわ/戦争は終ったのよ。                            *30

お前は知っているかい?/いま/おまえの祖国に/どんな人たちが生きているかを/
市民達は、政治的無関心と快楽とに取り憑かれており/間もなく/祖国を/
滅ぼしてしまうだろう/平和がこの頃ほど、長く続いていたことは
かつてない/平和が悲惨であるぐらいなら、戦争と代った
ほうがましだ/だれにしろ/平和より戦争を
えらぶ/と将軍はいった。                                                   *31

そろそろ/紙の上に/樹々の密生する現実の森そのものを含ませよう。                                *32

なんと申す森だ、これは?                                                    *33

カチン。                                                           *34

カティン Katyn は、現ベラルーシのスモレンスク近郊のドニエプル河畔にある
森/長さ八メートル、横一六メートルの一二層からなる穴に約三〇〇〇
人のポーランド軍将校の死体が横たわっていた/全員、正規軍装を
着用し、手を縛られ、首の後ろ側に銃で撃たれた跡があった。                                   *35



規則IV
 実験哲学にあっては、諸現象から一般的な帰納によって推論された命題
は、たとえどのような反対の仮説が考えられようとも、それらがよりいっ
そう正確なものとされるか、あるいは除外されなければならないような他
の現象が起こるまでは、真実なもの、あるいは真実にきわめて近いものと
みなさなければならない。
(ニュートン『プリンシピア』第III編・世界大系・哲学における推理の規則、中野猿人訳)


心は祖国愛にみち、口唇には歌をくちずさみながら/からだをまっすぐに伸ばして、
胸を張って/首くくりの吊し縄の方へと足を運んで/行き/行く/と
/ふと/ふり仰ぐと/何か/光っている/ように見えた。                                       *36

太陽は右手に/左手は海になっている。                                               *37

ハンカチが/光ったのだ。                                                     *38

それは太陽のせいだ/太陽は一切の白い物を容赦(ようしや)はしない。                                 *39

頭上にあった/黄金の手巾を/見て
/彼は自分自身に言った。                                                     *40

この手巾を一番多く所有する者が、最大の勇者と判定される/しかし/結局、
それはわたしの手のなかにあったものではなかったのだ。
わたしの手には何もなかったのだ/と。                                               *41

とはいうものの/定めとあれば、死ぬほかはない/祖先の多くの人たちと同じ
ように/偉大なる祖国のために/私は死んで太陽に捧げられねばならない
/そうだ/帝国のためには、いつでも死ぬ覚悟があった/いつでも。                                  *42

おお/祖国のために死ぬことの幸福さよ!                                              *43

太陽は沈み、また昇るのだろうか?                                                 *44

黄金(こがね)色(いろ)なす/雲を/見はるかしながら/彼はそう/言った。                               *45

将軍の言葉に/森が/緑の枝を/靡(なび)かせる。                                          *46

樹の枝に/ひっかかっている/一枚の/ハンカチが/
海の方へと/ひらひら/飛んで行きました。                                             *47

留(とど)まれ/お前はいかにも美しい。                                                *48

数秒のあいだ/ハンカチが/宙に静止した。                                              *49

きれいじゃない?/ほんとうにそう思う?/きれいでしょう?
/そう?/そうじゃなくて?                                                     *50

バスというバスが/一時間前に発車していた。                                             *51

しかし/彼は/待っていた。                                                     *52

もう一度同じ場所に戻ってくるという確信があったからだ。                                       *53

コーヒー飲む?/別のところで/コーヒーを
もう一杯いかが?                                                          *54

泣いているの?                                                           *55

すべてのものは海から来たんだ。                                                   *56

そうとも/そうだった。                                                      *57

おお海よ/海よ、おまえはどうして逃げるのか。                                            *58

わたしは海であるのか/わたしは海であるのか/わたしは海であるのか。                                 *59

来ないのもよい。バスも……。                                                    *60

あるいはまた……                                                          *61











 References

*01:タキトゥス『年代記』第十四巻・44節、国原吉之助訳/タキトゥス『年代記』第十五巻・51節、国原吉之助訳/アイザック・ディネーセン『復讐には天使の優しさを』第二部・2、横山貞子訳/トーマス・マン『トニオ・クレーゲル』高橋義孝訳/サバト『英雄たちと墓』第IV部・5、安藤哲行訳/D・H・ロレンス『完訳チャタレイ夫人の恋人』第十章、伊藤整訳・伊藤礼補訳/ヘッセ『別な星の奇妙なたより』高橋健二訳/サバト『英雄たちと墓』第IV部・5、安藤哲行訳/タキトゥス『年代記』第十五巻・49節、国原吉之助訳/スタッズ・ターケル『「よい戦争」』1・ロージー・銃後の勤労戦士、渡辺和枝訳/ヨーゼフ・ロート『果てしなき逃走』第十三章、平田達治訳。*02:ヘッセ『アウグスツス』高橋健二訳/シェイクスピア『マクベス』第一幕・第四場、福田恆存訳。*03:シェイクスピア『ハムレット』第一幕・第一場、大山俊一訳/シェイクスピア『ハムレット』第一幕・第一場、大山俊一訳/ダス『「ノールランのらっぱ」から』林穰二訳/D・H・ロレンス『指ぬき』小野寺健訳/プラトーノフ『粘土砂漠』9、原卓也訳/トーマス・マン『ヴェニスに死す』高橋義孝訳/クワジーモド『現代人』井出正隆訳/エーヴ・キュリー『キュリー夫人伝』第一部・二、川口篤・河盛好蔵・杉捷夫・本田喜代治訳。*04:D・H・ロレンス『指ぬき』小野寺健訳。*05:ソルジェニーツィン『イワン・デニーソヴィチの一日』木村浩訳/シェイクスピア『ハムレット』第五幕・第二場、大山俊一訳/ラドヤード・キップリング『船路の果て』小野寺健訳/カトリーヌ・アルレー『わらの女』I、安堂信也訳/カトリーヌ・アルレー『わらの女』I、安堂信也訳。*06:カトリーヌ・アルレー『わらの女』II、安堂信也訳/アーシュラ・K・ル・グイン『始まりの場所』4、小尾芙佐訳/アーシュラ・K・ル・グイン『始まりの場所』4、小尾芙佐訳/シェイクスピア『マクベス』第五幕・第四場、福田恆存訳/アーシュラ・K・ル・グイン『始まりの場所』1、小尾芙佐訳/コレット『青い麦』一、堀口大學訳/トーマス・マン『ヴェニスに死す』高橋義孝訳/D・H・ロレンス『完訳チャタレイ夫人の恋人』第五章、伊藤整訳・伊藤礼補訳。*07:D・H・ロレンス『完訳チャタレイ夫人の恋人』第八章、伊藤整訳・伊藤礼補訳/アイザック・ディネーセン『復讐には天使の優しさを』第三部・13、横山貞子訳。*08:トーマス・マン『トニオ・クレーゲル』高橋義孝訳/ロバート・ネイサン『ジェニーの肖像』6、井上一夫訳/ヨベル書二一・一〇/ミュッセ『戯れに恋はすまじ』第一幕・第四景、進藤誠一訳/クライヴ・バーカー『不滅の愛』第五章・V、山本光伸訳。*09:アーシュラ・K・ル・グイン『始まりの場所』5、小尾芙佐訳。*10:シェイクスピア『リチャード三世』第三幕・第四場、福田恆存訳、句点加筆。*11:イェジイ・アンジェイェフスキ『灰とダイヤモンド』第七章、川上洸訳。*12:D・H・ロレンス『死んだ男』I、幾野宏訳/メリメ『ドン・ファン異聞』杉捷夫訳/ルソー『告白』第十一巻、桑原武夫訳/アイザック・ディネーセン『復讐には天使の優しさを』第二部・8、横山貞子訳/ジャック・フィニイ『悪の魔力』福島正実訳。*13:ミュッセ『戯れに恋はすまじ』第四幕・第六景、進藤誠一訳。*14:D・H・ロレンス『息子と恋人』第二部・第九章、小野寺健訳。*15:エーヴ・キュリー『キュリー夫人伝』第一部・一、川口篤・河盛好蔵・杉捷夫・本田喜代治訳。*16:D・H・ロレンス『息子と恋人』第二部・第七章、小野寺健訳/G・マクドナルド『リリス』18、死か生か?、荒俣宏訳/ヘッセ『車輪の下に』第二章、秋山六郎兵衛訳/シェイクスピア『リチャード三世』第三幕・第四場、福田恆存訳。*17:小松左京『旅する女』6.*18:D・H・ロレンス『春の陰翳』三、岩倉具栄訳/クライヴ・バーカー『不滅の愛』第一章・I、山本光伸訳。*19:ロバート・ネイサン『ジェニーの肖像』12、井上一夫訳。*20:タキトゥス『年代記』第一巻・41節、国原吉之助訳.*21:トーマス・マン『トニオ・クレーゲル』高橋義孝訳/ロバート・ネイサン『ジェニーの肖像』4、井上一夫訳。*22:ジャック・フィニイ『大胆不敵な気球乗り』福島正実訳/D・H・ロレンス『死んだ男』I、幾野宏訳/ロバート・ネイサン『ジェニーの肖像』4、井上一夫訳。*23:プラトーノフ『ジャン』2、原卓也訳。*24:D・H・ロレンス『完訳チャタレイ夫人の恋人』第一章、伊藤整訳・伊藤礼補訳/ウィーダ『フランダースの犬』1、村岡花子訳/コクトー『怖るべき子供たち』一、東郷青児訳/ソルジェニーツィン『イワン・デニーソヴィチの一日』木村浩訳/ソルジェニーツィン『イワン・デニーソヴィチの一日』木村浩訳。*25:レーモン・クノー『地下鉄のザジ』3、生田耕作訳/スタッズ・ターケル『「よい戦争」』2・爆撃者と被爆者・空襲のなかの暮らし、本田典子訳/沢村貞子『貝のうた』戦争がはじまる。*26:ヘロドトス『歴史』巻六・八〇節、松平千秋訳/ティム・オブライエン『僕が戦場で死んだら』18、中野圭二訳/カトリーヌ・アルレー『わらの女』II、安堂信也訳/アーシュラ・K・ル・グイン『始まりの場所』1、小尾芙佐訳。*27:シェイクスピア『ヘンリー五世』第四幕・第一場、大山俊一訳/沢村貞子『貝のうた』戦争がはじまる。*28:メレジュコーフスキー『ソレント』草鹿外吉訳/サマセット・モーム『物もらい』瀧口直太郎訳/ティム・オブライエン『僕が戦場で死んだら』8、中野圭二訳/ヨーゼフ・ロート『果てしなき逃走』第二章、平田達治訳。*29:ヴィーレック『カルタゴよ、さらば』児玉惇訳/ヴィーレック『カルタゴよ、さらば』児玉惇訳/アイスキュロス『縛られたプロメーテウス』呉茂一訳/ホメーロス『オデュッセイア』第一巻、高津春繁訳/カトリーヌ・アルレー『わらの女』I、安堂信也訳。*30:スタッズ・ターケル『「よい戦争」』記念碑、中山容訳/スタッズ・ターケル『「よい戦争」』記念碑、中山容訳/カポーティ『叶えられた祈り』川本三郎訳。*31:ミュッセ『戯れに恋はすまじ』第三幕・第三景、進藤誠一訳/エーヴ・キュリー『キュリー夫人伝』第二部・一、川口篤・河盛好蔵・杉捷夫・本田喜代治訳/アフマートワ『平和のうた』江川卓訳/アフマートワ『平和のうた』江川卓訳/プルタルコス『アギスとクレオメネス』クレオメネス・二三(二)、岩田拓郎訳/クライヴ・バーカー『不滅の愛』第四章・II、山本光伸訳/ホメ―ロス『イーリアス』第十二巻、呉茂一訳/D・H・ロレンス『完訳チャタレイ夫人の恋人』第十章、伊藤整訳・伊藤礼補訳/タキトゥス『年代記』第十五巻・46節、国原吉之助訳/タキトゥス『年代記』第三巻・44節、国原吉之助訳/T・H・ガスター『世界最古の物語』バビロニアの物語・神々の戦争、矢島文夫訳/ヘロドトス『歴史』巻一・八七節、松平千秋訳/サスーン『将軍』 成田成寿訳、句点加筆。*32:コレット『青い麦』一、堀口大學訳/マラルメ『詩の危機』南條彰宏訳/モーリス・ブランショ『文学空間』II、粟津則雄訳。*33:シェイクスピア『ヘンリー四世』第二部・第四幕・第一場、中野好夫訳。*34:スタッズ・ターケル『「よい戦争」』4・罪と罰・ポート・シカゴの大爆発、唐沢幸恵訳。*35:平凡社『東欧を知る事典』カティン事件/岩波ブックレット『シリーズ東欧現代史1・カチンの森とワルシャワ蜂起』渡辺克義/岩波ブックレット『シリーズ東欧現代史1・カチンの森とワルシャワ蜂起』渡辺克義。*36:アドルフ・ヒトラー『わが闘争』I・第七章、平野一郎訳/トーマス・マン『ヴェニスに死す』高橋義孝訳/プルタルコス『アギスとクレオメネス』アギス・二〇、岩田拓郎訳/ジャック・フィニイ『ゲイルズバーグの春を愛す』福島正実訳/ランボー『飾画』ある理性に、小林秀雄訳/ガルシン『あかい花』二、神西清訳/メリメ『ヴィーナスの殺人』杉捷夫訳/原民喜『永遠のみどり』/D・H・ロレンス『完訳チャタレイ夫人の恋人』第五章、伊藤整訳・伊藤礼補訳/ティム・オブライエン『僕が戦場で死んだら』16、中野圭二訳/ラーゲルクヴィスト『バラバ』尾崎義訳。*37:ヘロドトス『歴史』巻四・四二節、松平千秋訳/小松左京『旅する女』1。*38:メリメ『ドン・ファン異聞』杉捷夫訳/カポーティ『感謝祭のお客』川本三郎訳。*39:カミュ『異邦人』第一部・4、窪田啓作訳/ゲーテ『ファウスト』第一部、相良守峯訳。*40:アーシュラ・K・ル・グイン『始まりの場所』1、小尾芙佐訳/ヘロドトス『歴史』巻二・一二二節、松平千秋訳/ゴールディング『ピンチャー・マーティン』11、井出弘之訳/D・H・ロレンス『死んだ男』II、幾野宏訳。*41:ヘロドトス『歴史』巻四・六四節、松平千秋訳/ヘミングウェイ『暗黒の十字路』井上謙治訳/ロバート・ネイサン『ジェニーの肖像』8、井上一夫訳/ゲーテ『ファウスト』第二部、相良守峯訳。*42:ローデンバック『死都ブリュージュ』VII、窪田般彌訳/ソポクレス『コロノスのオイディプス』高津春繁訳/トーマス・マン『ヴェニスに死す』高橋義孝訳/サバト『英雄たちと墓』第I部・12、安藤哲行訳/D・H・ロレンス『馬で去った女』三、岩倉具栄訳/モリエール『人間ぎらい』第四幕・第四場、内藤濯訳/アドルフ・ヒトラー『わが闘争』I・第五章、平野一郎訳/アドルフ・ヒトラー『わが闘争』I・第五章、平野一郎訳、句点加筆。*43:『NHK音楽シリーズ 1 ショパン─その愛と生涯』第三章、園部三郎/エーヴ・キュリー『キュリー夫人伝』第一部・一、川口篤・河盛好蔵・杉捷夫・本田喜代治訳。*44:クライヴ・バーカー『不滅の愛』第五章・VII、山本光伸訳。*45:アーサー・シモンズ『阿片喫む人』尾島庄太郎訳/トーマス・マン『トニオ・クレーゲル』高橋義孝訳/トーマス・マン『トニオ・クレーゲル』高橋義孝訳/アーシュラ・K・ル・グイン『始まりの場所』1、小尾芙佐訳/ジーン・リース『あいつらのジャズ』小野寺健訳。*46:タキトゥス『年代記』第十四巻・36節、国原吉之助訳/シェイクスピア『マクベス』第五幕・第五場、福田恆存訳/V・E・フランクル『夜と霧』七・苦悩の冠、霜山徳爾訳/モーパッサン『テリエ館』2、青柳瑞穂訳、句点加筆。*47:ラディゲ『肉体の悪魔』新庄嘉章訳/エーヴェルラン『ヨーロッパのどこかで』林穣二訳/ヒメーネス『唄』荒井正道訳/ヨーゼフ・ロート『果てしなき逃走』第十九章、平田達治訳/コレット『青い麦』一、堀口大學訳/トーマス・マン『ヴェニスに死す』高橋義孝訳/T・H・ガスター『世界最古の物語』ハッティの物語・姿を消した神様、矢島文夫訳。*48:ゲーテ『ファウスト』第一部、相良守峯訳/ゲーテ『ファウスト』第一部、相良守峯訳、句点加筆。*49:サバト『英雄たちと墓』第I部・2、安藤哲行訳/メリメ『ドン・ファン異聞』杉捷夫訳/プラトーノフ『ジャン』11、原卓也訳。*50:D・H・ロレンス『息子と恋人』第一部・第四章、小野寺健訳/マーガレット・ドリブル『再会』小野寺健訳/P・D・ジェイムズ『殺人展示室』第三部・2、青木久恵訳/サリンジャー『ナイン・ストーリーズ』バナナフィッシュにうってつけの日、野崎孝訳/D・H・ロレンス『歓びの幽霊たち』幾野宏訳。*51:マ・フニンプエー『同類多数』南田みどり訳/イェジイ・アンジェイェフスキ『灰とダイヤモンド』第十章、川上洸訳。*52:T・H・ガスター『世界最古の物語』カナアンの物語・バアルの物語、矢島文夫訳/D・H・ロレンス『太陽』二、岩倉具栄訳/トーマス・マン『ヴェニスに死す』高橋義孝訳。*53:サバト『英雄たちと墓』第I部・2、安藤哲行訳。*54:クライヴ・バーカー『不滅の愛』第五章・III、山本光伸訳/G・バタイユ『無神学大全・内的体験』第一部・III、出口裕弘訳/クライヴ・バーカー『不滅の愛』第五章・III、山本光伸訳。*55:プラトーノフ『フロー』原卓也訳。*56:クライヴ・バーカー『不滅の愛』第五章・V、山本光伸訳。*57:ロバート・ニュートン・ペック『豚の死なない日』3、金原瑞人訳/モリエール『人間ぎらい』第四幕・第四場、内藤濯訳。*58:ヴァレリー『夏』鈴木信太郎訳/詩篇一一四・五。*59:ヨブ記七・一二/ヨブ記七・一二/ヨブ記七・一二。*60:吉増剛造『<今月の作品>選評19』ユリイカ一九八九年九月号。*61:大岡信『<今月の作品>選評1』ユリイカ一九九〇年二月号。


ジャンヌとロリータの物語。

  田中宏輔




Contents

Hourglass Lake
Katyn
Selve d'Amore
Katyn
Selva Oscura
Gethsemane
Bois Chesnu
Nageki no Mori
Ararat



登場人物

Jeanne d'Arc ジャンヌ・ダルク(1411 or 1412−1431)。ローマ教皇庁はルーアンの審決をまだ取り消していない。それでいて、教皇庁は、一九二〇年、ジャンヌを聖女に列した。したがって、ジャンヌの存在は、異端の女にして聖女という、まことに不可解なものである。(平凡社『大百科事典』)

Dolores Haze ドロレス・ヘイズ。ウラジーミル・ナボコフ(1899−1977)の『ロリータ』という小説の題名は、それに出てくる少女の名前 "Dolores"の愛称"Lolita"による。(Vladimir Nabokov,"Lolita", U.S.A.,Vintage International,1989,p.9.)新潮社文庫版・大久保康雄訳の『ロリータ』の訳注に、ドロレスとは、「悲しみ」、「悲哀」の意で、キリスト教の「マリアの悲しみ」に由来する、とある。研究社『羅和辞典』に、「悲しめる」という意味の形容詞 "dolorosus"、「悲嘆、苦悩」という意味の名詞 "dolor"が収載されている。"Via dolorosa"、「悲しみの道」という言葉が、筆者に想起されたが、それは、十字架を背負わされたイエス・キリストが、<総督の官邸>から<ゴルゴタという所>(マルコによる福音書15・16 、15・22)にまで歩ませられた道の名である。(M・ジョーンズ編『図説・新約聖書の歴史と文化』左近義慈監修/佐々木敏郎・松本富士男訳)

Pier Paolo Pasolini  ピエール・パオロ・パゾリーニ(1922−1975)。イタリアの詩人、作家、映画監督。同性愛にからみ、ローマ郊外で殺された。(平凡社『大百科事典』)

King Lear リア王。ウィリアム・シェイクスピア(1564−1616)の『リア王』の主人公。ブリテンの老王。(シェイクスピア『リア王』大山俊一訳)

Hans Giebenrath ハンス・ギーベンラート。ヘルマン・ヘッセ(1877−1962)の『車輪の下に』の主人公。角川文庫版・秋山六郎兵衛訳の『車輪の下に』に、「ハンス・ギーベンラートは疑いもなく優秀なる子供だった。この子が他の子供たちとまざって走り廻っていたとき、どんなに上品で一目を惹いていたかを見れば、それで十分だろう。」とある。

Jesus Christ イエス・キリスト(B.C.4?−A.D.30)。カトリック教では、イエズス。ユダヤのベツレヘムに生まれたキリスト教の開祖。"Jesus" は "help of Jehovah"の縮約形 "Joshua" に由来し、また"Christ"は、救世主 "Messiah"の意の称号で、"Jesus the Christ"といわれていたものが、後に"the" が脱落して、"Jesus Christ"と固有名詞化されたものである。(三省堂『カレッジ・クラウン英和辞典』)キリストは、ギリシア語では"Christos"、ラテン語では"Christus"。普通名詞で、その意味は「油を塗られた者」である。「油を塗る」という動詞は "chrisma"である。なお、同じく、「油を塗られた者」のことを、ヘブライ語では "mashiah"という。このヘブライ語からメシア "Messiah"「救世主」という語が生まれたのである。(山下主一郎『シンボルの誕生』)

Maximilian Kolbe マクシミリアン・コルベ(1894−1941)。カトリック司祭、宣教師、殉教者。一九四一年、アウシュビッツで餓死刑に定められた囚人の身代わりになって殉教した。一九七一年列福、一九八二年列聖。(平凡社『大百科事典』)

Pierre Cauchon ピエール・コーション(1371−1443)。ボオヴェイの司教。一九三一年のジャンヌに対する異端裁判における宗教裁判官。名義上の主席裁判官は、ジャン・ル・メートルであったが、審理の行方は、コーション一人の手に委ねられていた。(堀越孝一『ジャンヌ=ダルクの百年戦争』)

Judges and People 陪席判事たちと民衆。ルーアンにおける、ジャンヌに対する異端裁判では、一四三一年二月二一日を第一日目として、六回の公開審理と、三月一〇日以降の八回の獄中審理がもたれ、いったんは、五月二四日に異端の審決が下されたが、ジャンヌが回心を誓ったので、コーションは審決を変更し、終身刑を申し渡した。ところが、同月二八日にジャンヌが回心を翻したため、二九日に、再度、法定合議が執り行われ、三〇日に、ルーアンの広場において、「もどり異端」と宣言され、ルーアン代官に引き渡され、火刑に処せられた。(堀越孝一『ジャンヌ=ダルクの百年戦争』)この裁判においては、陪席判事の発言は参考意見に過ぎず、コーションただ一人が、異端審問官代理のジャン・ル・メートル(最終審議には欠席)と並んで裁決権をもっていた。(レジーヌ・ペルヌー、マリ=ヴェロニック・クラン『ジャンヌ・ダルク』福本直之訳)


場所

Hourglass Lake  アウアグラス・レイク。ナボコフの『ロリータ』に出てくる森林湖で、ラムズデイルから数マイルの所にある。(Vladimir Nabokov, "Lolita", U.S.A., Vintage International, 1989, p.81.)

Katyn  カティン。一九四三年四月一二日、ドイツは、スモレンスク近郊カティンの森で、大量のポーランド軍将校の死体を発見し、これをソ連の虐殺行為であると発表した。モスクワは直ちに反駁し(山本俊郎・井内敏夫『ポーランド民族の歴史』)ドイツの仕業であると発表した。後に、ソ連がポーランド人将校ら一万五千人を殺したことが暴露した。(平凡社『東欧を知る事典』)

Selve d'Amore  セルヴェ・ダモーレ。ローレンツォ・デ・メディチ(1449ー1492)がつくった詩の題名『愛の森』より。(饗庭孝男『「西欧」とは何か』三田文学・一九八九年・夏季号・二〇九ページ)

Selva Oscura  セルヴァ・オスクーラ。ダンテ・アリギエリ(1265−1321)の『神曲』地獄篇に出てくる森。誤謬、非現実、無定形を表わす。(大修館書店『イメージ・シンボル事典』)

Gethsemane  ゲッセマネ。エルサレム東方、オリーブ山(八一四メートル)の麓にある園。イエスがユダに裏切られ、捕らえられた苦難の地。(三省堂『カレッジ・クラウン英和辞典』)「油絞り器」を意味する。(教文館『旧約・新約聖書大事典』)

Bois Chesnu  ボワ・シュニュー。ジャンヌ・ダルクが生まれたドムレミイの村から西に三キロメートルほどの所にある森で、彼女がお告げを聞いたといわれている場所の一つ。(村松剛『ジャンヌ・ダルク』)"chesnu"は古仏語で、現代仏語の"chene"に当たり、(高山一彦編・訳『ジャンヌ・ダルク処刑裁判』巻末に附載されている「編訳者の註釈」)槲、楢、樫などのぶな科こなら属の木の総称である。(三省堂『クラウン仏和辞典』)キリストの十字架がオーク材であったために、キリストのエンブレムとなった。また、この木は、太陽王の火葬用の薪であった。(大修館書店『イメージ・シンボル事典』)太古、森を神聖視したゲルマン人は、樫の森には、供犠を行なう祭司のほかは足を踏み入れることをゆるさなかった。暗闇に坐った祭司は、樫の樹の葉からもれる囁きにじっと耳を澄まし、神意を聴き取った。(谷口幸男・福嶋正純・福居和彦『ヨーロッパの森から』)

Nageki no Mori  嘆きの森。『古今和歌集』巻第十九収載の安倍清行朝臣女さぬきの歌から。岩波文庫・佐伯梅友校注の脚注に、「なげきの森という神社(鹿児島県にあるという)の由来を考えた歌。人々の嘆き(木にかけて)が集まって森となっているのだろうというわけ」とある。

Ararat  アララテ。トルコ東端にある火山(五一〇〇メートル)。(三省堂『カレッジ・クラウン英和辞典』)洪水が引いた際に、ノアの箱舟が漂着した所。(教文館『旧約・新約聖書大事典』)


事物と象徴

cricket  コオロギ。その鳴き声を楽しむ習慣は、現在、ギリシアほかの地中海地域、インド、中南米に盛んで、これを神の声に擬して神託を得たりもする。しかし、西ヨーロッパ地域では、その声を死の予兆と見たり、女のおしゃべりに模したり、雑音扱いにする。イギリスでは、これが鳴けば嵐が来ると信じられた。(平凡社『大百科事典』)

owl  フクロウ。死と暗闇に関連をもつ鳥で、エジプトの象形文字では、死、或は、地平線に沈み、夜の航行をする死んだ太陽の領域を表す。ガイウス・プリニウス・セクンドゥス(23or24−79)によると、悪い知らせをもたらす鳥であるという。(大修館書店『イメージ・シンボル事典』)

mine  地雷。昔は敵の防御施設の下にトンネルを掘って仕掛ける爆発物を指し、中世末期以来、攻囲戦で使われてきた。(ダイヤグラム・グループ編『武器』田島優・北村孝一訳)

strawberry  イチゴ。聖母マリアのエンブレム。(大修館書店『イメージ・シンボル事典』)

bramble  キイチゴ。キリストのイバラの冠の材料の一つ。ヘブライにおいては、神の愛、燃える薮から聞こえる神の声を表す。(前掲同書)

shoes  靴。靴を脱ぐことは、「主の前に裸で立つ」ことの一つの形式である。(前掲同書)

lily  シャルル七世(1403−1461)は、ジャンヌと彼女の二人の兄にユリの紋章を与え、貴族の称号「白ユリ」を授けた。(村松剛『ジャンヌ・ダルク』)ユリは不死(土中の球根から再生する)、永遠の愛、復活(復活祭の花)を表す。エドガー・アラン・ポー(1809−1849)では、たいてい悲しみを表す。トーマス・スターンズ・エリオット(1888−1965)では、ユリ−葬式−復活祭−イエスという意味関連がある。また、ハトとユリは受胎告知を表す。(大修館書店『イメージ・シンボル事典』)

handkerchief  ハンカチ。毎日新聞社刊の『聖書美術館3・新約聖書2』に収載されている『聖ヴェロニカ』(一四〇〇年から一四二〇年ごろにかけて、ケルンで活躍した無名画家によるもの)の解説に、「イエスが十字架の道行きをされたとき、彼女はイエスの苦しみに同情して、自分のハンカチ(ベールともいわれる)で額の汗をぬぐってあげた。すると、不思議なことに、その布には、イエスの顔がうつされていた。これは新約外典の『ニコデモの福音書』(『ピラト行伝』とも称せられる)に記された話である」とある。

toad  ヒキガエル。ヒキガエルの腹には、死者たちの魂がつまっているともいわれる。(大修館書店『イメージ・シンボル事典』)

rain  雨。神の恩寵を表す。(前掲同書)

flood  洪水。十二宮では双魚宮を表し、再出現を意味する。(前掲同書)








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Hourglass Lake



  Jeanne d'Arc

どうして森へなんか行くの?
(阿部日奈子『キャロル式三段論法十番勝負』)


  Dolores Haze

あたし、新しいセーターを森のなかでなくしちゃったの。
(ナボコフ『ロリータ』第一部、大久保康雄訳)

で、あなたの方は?
(シェイクスピア『空騒ぎ』第三幕・第二場、福田恆存訳)


  Jeanne d'Arc

あたし?
(テネシー・ウィリアムズ『やけたトタン屋根の上の猫』田島博訳)

わたし、──いまは、よくわからないのよ。
(キャロル『ふしぎの国のアリス』高杉一郎訳)

でも、
(ゲーテ『ファウスト』第一部、相良守峯訳)

そこへ行けば
(ハイネ『森の寂寞』片山敏彦訳)

森は
(フェンテス『脱皮』内田吉彦訳)

わたしに
(エリオット『寺院の殺人』第一部、福田恆存訳)

失ってしまったものを思い出させてくれる。
(フェンテス『脱皮』内田吉彦訳)

それはよく知っているものだった。
(ガルシア=マルケス『族長の秋』鼓直訳)

森の繁みのあいだに
(ゲーテ『ファウスト』第二部、相良守峯訳)

茂みの奥のあちこちに、
(サムイル・マルシャーク『森は生きている』第一幕・第一場、湯浅芳子訳)

到る処に
(ヘッセ『キオッジア』高橋健二訳)

忘れ去ってしまった音がいっぱい詰まっていて、
(フェンテス『脱皮』内田吉彦訳)

地面をふむと
(サムイル・マルシャーク『森は生きている』第四幕・第三場、湯浅芳子訳)

消える。
(フリョーデング『落日に』尾崎義訳)

縡(ことき)れる。
(リリエンクローン『麦穂の中に死す』坂本越郎訳)

多くの記憶を
(サンドバーグ『真実』安藤一郎訳)

草の上に
(ワイリー『野生の桃』片桐ヨウコ訳)

木の下に
(ミカ書四・四)

雑草のなかに
(エマソン『詩人』斎藤光訳)

置きざりにしたまんま。
(ヴェーデキント『ブリギッテ・B』吉村博次訳)

・・・・・・姿は見えない
(フライシュレン『十一月』高安國世訳)

どうしてだか分る?
(カブレラ=インファンテ『亡き王子のためのハバーナ』木村榮一訳)


  Dolores Haze

どうして?
(プラトン『メノン』藤沢令夫訳)


  King Lear

はっ、はっ、はっ!
(シェイクスピア『リア王』第一幕・第一場、大山俊一訳)

答えてやるとも。
(シェイクスピア『マクベス』第四幕・第一場、福田恆存訳)

いまこそ喜べ。
(シェイクスピア『ヘンリー四世』第二部・第四幕・第五場、中野好夫訳)

みんな死ぬのじゃ。
(シェイクスピア『ヘンリー四世』第二部・第三幕・第二場、中野好夫訳)


  Pier Paolo Pasolini

馬鹿!
(ブライス=エチェニケ『幾たびもペドロ』野谷文昭訳)

このばかが!
(キャロル『ふしぎの国のアリス』高杉一郎訳)

あっちへ行け!
(テネシー・ウィリアムズ『やけたトタン屋根の上の猫』田島博訳)

あっちへ!
(シェイクスピア『オセロウ』第四幕・第二場、菅泰男訳)

しっ!しっ!
(キャロル『ふしぎの国のアリス』高杉一郎訳)

さあ、さあ、
(シェイクスピア『十二夜』第一幕・第五場、小津次郎訳)

やり直し!
(ラディゲ『ヴィーナスの星』江口清訳)

やり直し!
(ラディゲ『ヴィーナスの星』江口清訳)


  Jeanne d'Arc

嘘!
(テネシー・ウィリアムズ『欲望という名の電車』小田島雄志訳)


  Dolores Haze

また?
(ガルシア=マルケス『悪い時』高見英一訳)


  Pier Paolo Pasolini

もちろん。
(シェイクスピア『オセロウ』第四幕・第三場、菅泰男訳)


  Dolores Haze

まあ、そう。すてきだわ
(ナボコフ『ロリータ』第一部、大久保康雄訳)


  Pier Paolo Pasolini

さ、さ!
(シェイクスピア『じゃじゃ馬ならし』第三幕・第二場、福田恆存訳)

みんな、位置につきなさい。
(キャロル『ふしぎの国のアリス』高杉一郎訳)

もとの同じところへ、
(プラトン『パイドロス』藤沢令夫訳)


  Jeanne d'Arc

どこまでやったかしら?
(シェイクスピア『じゃじゃ馬ならし』第三幕・第一場、福田恆存訳)


  Dolores Haze

あなた憶えてないの?
(フェンテス『脱皮』内田吉彦訳)

森よ!
(トルストイ『春なお早い・・・・・・』清水邦生訳)

蟋蟀(こほろぎ)多(さは)に鳴く
(『万葉集』巻第十・秋の相聞・読み人知らずの「花に寄する」歌)

森へはいる
(ゲーテ『ファウスト』第一部、相良守峯訳)

ところ。
(ダンテ『神曲』浄罪篇・第二十八歌、野上素一訳、句点加筆=筆者)


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Katyn



  Pier Paolo Pasolini

ここはくらやみの森である。
(ダンテ『神曲』地獄篇・序曲・第一歌、野上素一訳)

森はしいんとして、
(ドイプラー『冬』石川進訳)

いたるところに闇がある。
(リンゲルナッツ『いたるところに』五木田浩訳)

そこではすべての願いがかない、熟し、完結する、
(ダンテ『神曲』天堂篇・第二十二歌、野上素一訳)

またそこでのみ、あらゆる部分はかつてそれがあったままと同じ姿をとるのである。
(ダンテ『神曲』天堂篇・第二十二歌、野上素一訳)

それは、この場所が神によって直接支配されていたからである。
(ダンテ『神曲』天堂篇・第三十歌、野上素一訳)

美しい森よ。
(ヘルダーリン『散歩』片山敏彦訳)

これは古い森だ。
(ゲーテ『ファウスト』第二部、相良守峯訳)

古い森の
(ダンテ『神曲』浄罪篇・第二十八歌、野上素一訳)

森の縁
(ボブロフスキー『子供のとき』神田芳夫訳)

わたしたちはここにいる。
(民数記一四・四〇)

そこから深い森の奥へ!
(ランボー『何がニナを引止める』堀口大學訳)

さあさあ、
(シェイクスピア『お気に召すまま』第五幕・第一場、阿部知二訳)

ここのあたりからはじめてくれ、ええと──
(シェイクスピア『ハムレット』第二幕・第二場、大山俊一訳)

ぼくのとても好きなせりふがあるんだ。
(シェイクスピア『ハムレット』第二幕・第二場、大山俊一訳)

ほら、ほら!
(シェイクスピア『リア王』第五幕・第三場、大山俊一訳)


  Jeanne d'Arc

どうして森へなんか行くの?
(阿部日奈子『キャロル式三段論法十番勝負』)


  Pier Paolo Pasolini

そう、そう、
(テネシー・ウィリアムズ『欲望という名の電車』小田島雄志訳)

すばらしい始まりだ。
(ディラン・トマス『皮商売の冒険』北村太郎訳)

さあ、つづけてくれ。
(シェイクスピア『ハムレット』第二幕・第二場、大山俊一訳)


  Jeanne d'Arc

どうして森へなんか行くの?
(阿部日奈子『キャロル式三段論法十番勝負』)


  Dolores Haze

あなた、まえにも同じことをきいたわ。
(マヤ・ヴォイチェホフスカ『夜が明けるまで』清水真砂子訳)


  Pier Paolo Pasolini

おい、おい。
(シェイクスピア『『ロミオとジュリエット』第一幕・第一場、大山敏子訳)

きめられたセリフ以外は
(シェイクスピア『ハムレット』第三幕・第二場、大山俊一訳)

喋っちゃいかん。
(シェイクスピア『リア王』第三幕・第五場、大山俊一訳)

さあ先をやってくれ。
(シェイクスピア『ハムレット』第二幕・第二場、大山俊一訳)


  Dolores Haze

あたし、新しいセーターを森のなかでなくしちゃったの。
(ナボコフ『ロリータ』第一部、大久保康雄訳)


  Jeanne d'Arc

どうして?
(シェイクスピア『十二夜』第三幕・第一場、小津次郎訳)


  Dolores Haze

あたしってとてもだらしがないの。
(ブライス=エチェニケ『幾たびもペドロ』野谷文昭訳)


  Jeanne d'Arc

相手は誰?
(ガルシア=マルケス『百年の孤独』鼓直訳、疑問符加筆=筆者)


  Dolores Haze

もう覚えてないわ。
(ブライス=エチェニケ『幾たびもペドロ』野谷文昭訳)

相手が誰だったか知らないけど、
(ロベール・メルル『イルカの日』三輪秀彦訳)

でもそれがどうしたの?
(ジョン・ダン『夜あけ』永川玲二訳)

あのセーターは純毛だったのよ。
(ナボコフ『ロリータ』第一部、大久保康雄訳)

で、あなたの方は?
(シェイクスピア『空騒ぎ』第五幕・第二場、福田恆存訳)

どうして森へなんか行くの?
(阿部日奈子『キャロル式三段論法十番勝負』)


  Jeanne d'Arc

あたし?
(テネシー・ウィリアムズ『やけたトタン屋根の上の猫』田島博訳)

そうねえ。わたし、
(キャロル『ふしぎの国のアリス』高杉一郎訳)

わたし、──いまはよくわからないのよ。
(キャロル『ふしぎの国のアリス』高杉一郎訳)

でも、
(ゲーテ『ファウスト』第一部、相良守峯訳)

そこへ行けば
(ハイネ『森の寂漠』片山敏彦訳)

ああ、ああ・・・・・・
(テネシー・ウィリアムズ『欲望という名の電車』小田島雄志訳)

ええと──
(シェイクスピア『ハムレット』第二幕・第二場、大山俊一訳)


  Pier Paolo Pasolini

はなはだ多くの骨があり、
(エゼキエル書三七・二)


  Jeanne d'Arc

そう。
(シェイクスピア『ジュリアス・シーザー』第四幕・第三場、中野好夫訳)


  Pier Paolo Pasolini

それはいたるところに在る。
(ル・クレジオ『戦争』豊崎光一訳)


  Dolores Haze

地面も見えないほどよ。
(サムイル・マルシャーク『森は生きている』第一幕・第三場、湯浅芳子訳)


  Jeanne d'Arc

あの、地面から出てきたものは何でしょう。
(ゲーテ『ファウスト』第一部、相良守峯訳)


  Dolores Haze

そうよ。あそこ。
(フェンテス『脱皮』内田吉彦訳)


  Jeanne d'Arc

おお、かわいそうに、
(シェイクスピア『ロミオとジュリエット』第五幕・第三場、大山敏子訳)

あの頭蓋骨。
(シェイクスピア『ハムレット』第五幕・第一場、大山俊一訳、句点加筆=筆者)


  Dolores Haze

あんた、どう?
(ミストラル『プロヴァンスの少女』杉富士雄訳)

わたしといっしょにこない?
(ミストラル『プロヴァンスの少女』杉富士雄訳)


  Jeanne d'Arc

わたしにどうしろって言うの?
(カブレラ=インファンテ『亡き王子のためのハバーナ』木村榮一訳)


  Dolores Haze

そこは土が深くないので、
(マタイによる福音書一三・五)

土でこれをおおうために、
(エゼキエル書二四・七)

土を盛り、土を盛って
(イザヤ書五七・一四)

これを踏みつけ、
(ダニエル書七・二三)

埋めましょう。
(アポリネール『サロメ』堀口大學訳)


  Jeanne d'Arc

もしよければ、そうしましょう。
(プラトン『パイドロス』藤沢令夫訳)

でも、
(プラトン『パイドロス』藤沢令夫訳)

あたしは森から帰れなくなるわ。
(サムイル・マルシャーク『森は生きている』第一幕・第三場、湯浅芳子訳)

おそろしいことだわ!
(ビョルンソン『人の力を超えるもの』第一部・第一幕・第一場、毛利三彌訳)


  Pier Paolo Pasolini

これらの骨は、
(シェイクスピア『ハムレット』第五幕・第一場、大山俊一訳)

すべて
(エリオット『寺院の殺人』第一部、福田恆存訳)

土でこれをおおわなければならない。
(レビ記一七・一三)

土は
(オマル・ハイヤーム『ルバイヤート』小川亮作訳)

死者たちのものなのだ。
(シュトルム『海辺の墓』吉村博次訳)

骨は、
(シェイクスピア『ハムレット』第五幕・第一場、大山俊一訳)

押し潰されることを欲している。
(ル・クレジオ『戦争』豊崎光一訳)

さあ、
(シェイクスピア『ハムレット』第二幕・第二場、大山俊一訳)

来て踏め、
(ヨエル書三・一三)

踏みはずすことなく、
(ヘブル人への手紙一二・一三)

踏みしだく者は幸いなるかな!
(ゴットフリート・フォン・シュトラースブルク『トリスタンとイゾルデ』第一章・序章、石川敬三訳)

Quidquid calcaverit hic,rosa fiat.
(研究社『羅和辞典』)

この者が踏みつけるものは何でもバラになれかし。
(研究社『羅和辞典』)


  Dolores Haze

しっ、
(シェイクスピア『空騒ぎ』第二幕・第一場、福田恆存訳)

黙って。
(シェイクスピア『マクベス』第二幕・第二場、福田恆存訳)

あれは梟、
(シェイクスピア『マクベス』第二幕・第二場、福田恆存訳)

梟の声かしら、
(エリオット『寺院の殺人』第一部、福田恆存訳)


  Jeanne d'Arc

鳴いているわ。
(ロベール・メルル『イルカの日』三輪秀彦訳)


  owl

ほう!
(シェイクスピア『空騒ぎ』第三幕・第二場、福田恆存訳)

ほ、ほう!
(シェイクスピア『空騒ぎ』第三幕・第三場、福田恆存訳)

阿呆がきたよ、ほう。
(シェイクスピア『十二夜』第二幕・第三場、小津次郎訳)


  King Lear

おい!
(シェイクスピア『リア王』第四幕・第六場、大山俊一訳)

お前たちはこの神聖な場所で何をしておる。
(ゲーテ『ファウスト』第二部、相良守峯訳)

おお胸も張り裂けるような光景!
(シェイクスピア『リア王』第四幕・第六場、大山俊一訳)

何というむごいことを!
(シェイクスピア『ハムレット』第四幕・第一場、大山俊一訳)

さあ言え。
(シェイクスピア『リア王』第五幕・第三場、大山俊一訳)

娘たち、
(シェイクスピア『リア王』第一幕・第一場、大山俊一訳)

なんと申す森だ、
(シェイクスピア『ヘンリー四世』第二部・第四幕・第一場、中野好夫訳)

この森は?
(シェイクスピア『マクベス』第五幕・第四場、福田恆存訳)


  Jeanne d'Arc and Dolores Haze

カティン。
(平凡社『東欧を知る事典』句点加筆=筆者)


  King Lear

もう一度言うがよい。
(シェイクスピア『リア王』第一幕・第一場、大山俊一訳)


  Jeanne d'Arc and Dolores Haze

カティン。
(平凡社『東欧を知る事典』句点加筆=筆者)


  King Lear

もう一回!
(シェイクスピア『リア王』第五幕・第三場、大山俊一訳)


  Jeanne d'Arc and Dolores Haze

カティン。
(平凡社『東欧を知る事典』句点加筆=筆者)


  King Lear

そのとおり。
(シェイクスピア『マクベス』第一幕・第三場、福田恆存訳)

ここは
(ゲーテ『ファウスト』第一部、相良守峯訳)

聖なる森
(ランボー『太陽と肉体』堀口大學訳)

聖なる地である。
(使徒行伝七・三三)

ここにもまた戦争があった。
(ル・クレジオ『戦争』豊崎光一訳)

殺される者は多い。
(イザヤ書六六・一六)

だれも救う者はない。
(ホセア書五・一四)

これこそはまこと非道、絶無、残酷きわまる殺人だ。
(シェイクスピア『ハムレット』第一幕・第五場、大山俊一訳)

手足をしばって、
(マタイによる福音書二二・一三)

両眼をえぐり、
(士師記一六・二一)

鼻と耳とを切り落とし、
(エゼキエル書二三・二五)

その皮をはぎ、その骨を砕き、
(ミカ書二・三)

ことごとく殺し
(哀歌二・四)

ことごとく殺し
(マタイによる福音書二・一六)

ことごとく殺してしまった・・・・・・。
(ミストラル『プロヴァンスの少女』杉富士雄訳)

あはあ、あはあ、われらの目はそれを見た。
(詩篇三五・二一、句点加筆=筆者)

おお何とおそろしい、おそろしい、おそろしい事だ!
(シェイクスピア『ハムレット』第一幕・第五場、大山俊一訳)

殺される者はおびただしく、
(ナホム書三・三)

彼らの血はちりのように流され、
(ゼパニヤ書一・一七)

地はその上に流された血をあらわして、
(イザヤ書二六・二一)

かわくこともない。
(イザヤ書四九・一〇)

どこへ足を踏み入れても、
(リルケ『ドゥイーノ悲歌』第一悲歌、浅井真男訳)

血がそこから流れでた。
(シュトルム『白い薔薇』吉村博次訳)

は!
(シェイクスピア『あらし』第五幕・第一場、福田恆存訳)

はっはっ!
(シェイクスピア『ハムレット』第一幕・第三場、大山俊一訳)

この森にいつまでいるつもりだ?
(シェイクスピア『夏の夜の夢』第二幕・第一場、福田恆存訳)

swelling ground 盛り上がった土地
(三省堂『新クラウン英和辞典』)

多くの人がつまずき、
(マタイによる福音書二四・一〇)

その足は土を踏まなかった。
(ダニエル書八・五)

彼らはやって来たときと同じように、去って行った。
(フェンテス『脱皮』内田吉彦訳)

swelling ground 盛り上がった土地
(三省堂『新クラウン英和辞典』)

多くの人がつまずき、
(マタイによる福音書二四・一〇)

くつを脱ぎ
(イザヤ書二〇・二)

跪く
(メーリケ『恋びとに』富士川英郎訳)

swelling ground 盛り上がった土地
(三省堂『新クラウン英和辞典』)

多くの人がつまずき、
(マタイによる福音書二四・一〇)

祈り
(エリオット『寺院の殺人』第一部、福田恆存訳)

歩みも重く立ち去って行った。
(ヴェルフェル『幼な友達』神保光太郎訳)

だが、
(ゲーテ『訪ない』高橋健二訳)

娘たち、
(シェイクスピア『リア王』第一幕・第一場、大山俊一訳)

お前たちはこの神聖な場所で何をしておる。
(ゲーテ『ファウスト』第二部、相良守峯訳)

こうして足で踏まれ、
(イザヤ書二六・六)

足の裏の下にあって、
(マラキ書四・三)

これらの骨は、生き返ることができるのか。
(エゼキエル書三七・三)

バカバカしい!
(シェイクスピア『ハムレット』第一幕・第二場、大山俊一訳)

おやっ!
(シェイクスピア『リア王』第四幕・第六場、大山俊一訳)

おお、
(シェイクスピア『空騒ぎ』第四幕・第一場、福田恆存訳)

あれは何だ?
(シェイクスピア『あらし』第三幕・第二場、福田恆存訳)

どうして、そんなことが。
(シェイクスピア『夏の夜の夢』第三幕・第二場、福田恆存訳)

いや、そんなことはありえない。
(シェイクスピア『じゃじゃ馬ならし』第三幕・第二場、福田恆存訳)

いや、いや、いや!
(シェイクスピア『リア王』第五幕・第三場、大山俊一訳)

おお!
(シェイクスピア『リア王』第四幕・第三場、大山俊一訳)

見よ、
(エゼキエル書三七・七)

骨と骨が集まって
(エゼキエル書三七・七)

みるみるうちに、
(シェイクスピア『ハムレット』第一幕・第二場、大山俊一訳)

その上に筋ができ、肉が生じ、
(エゼキエル書三七・八)

皮がこれをおおった。
(エゼキエル書三七・八、句点加筆=筆者)



バン!
(ジョージ・オウエル『カタロニア讃歌』鈴木隆・山内明訳)



銃声一発!
(テネシー・ウィリアムズ『欲望という名の電車』小田島雄志訳)



  King Lear

伏せろ! 地面に伏せるんだ!
(ガルシア=マルケス『百年の孤独』鼓直訳)

戦争が始まった。
(ル・クレジオ『戦争』豊崎光一訳)



ダダダダダッ
(J・G・バラード『太陽の帝国』第一部、高橋和久訳)



機銃掃射!
(ジョージ・オウエル『カタロニア讃歌』鈴木隆・山内明訳、感嘆符加筆=筆者)



バン、バン、バン!
(テネシー・ウィリアムズ『やけたトタン屋根の上の猫』田島博訳)



バン、バン、バン、バン!
(テネシー・ウィリアムズ『やけたトタン屋根の上の猫』田島博訳)



  King Lear

戦争!
(ゲーテ『ファウスト』第二部、相良守峯訳)

そこに向けるべき銃があり、
(ドルトン・トランボ『ジョニーは戦場へ行った』信太英男訳)

発射すべき弾丸があり、
(ドルトン・トランボ『ジョニーは戦場へ行った』信太英男訳)

殺されるべき人間がいる。
(ドルトン・トランボ『ジョニーは戦場へ行った』信太英男訳、句点加筆=筆者)

これらの者は
(ペテロの第二の手紙二・一二)

ほふられるために生れてきた、
(ペテロの第二の手紙二・一二)

見よ、
(ヨブ記五・二七)

われわれの尋ねきわめた所はこのとおりだ。
(ヨブ記五・二七)

この場所こそ呪わしいのだ。
(ゲーテ『ファウスト』第二部、相良守峯訳)

戦争はやむことがない。
(ル・クレジオ『戦争』豊崎光一訳)

あはあ、あはあ、
(詩篇三五・二一)

見よ、流血。
(イザヤ書五・七)

見よ、叫び。
(イザヤ書五・七)

a swelling sound 高まっていく音
(三省堂『新クラウン英和辞典』)

うなりをあげる砲弾、
(ポール・エリュアール『おれたちの死』大島博光訳)

突進する戦車の数々。
(ル・クレジオ『戦争』豊崎光一訳)

さあ始めろ。
(シェイクスピア『ハムレット』第三幕・第二場、大山俊一訳)

ぶっ放せ。
(シェイクスピア『十二夜』第二幕・第五場、小津次郎訳)

殺せ、殺せ、
(シェイクスピア『リア王』第四幕・第六場、大山俊一訳)

皆、殺せ。
(サムエル記上一五・三)



  Jeanne d'Arc

ああ、神さま!
(ゲルハルト・ハウプトマン『沈んだ鐘』第四幕、秋山英夫訳)


  Dolores Haze

どうすればいいのかしら?
(ル・クレジオ『戦争』豊崎光一訳)


  Pier Paolo Pasolini

戦争を停めるための一つの言葉が必ずやあるにちがいない。
(ル・クレジオ『戦争』豊崎光一訳)


  Dolores Haze

でもどの言葉かしら?
(ル・クレジオ『戦争』豊崎光一訳)


  Jeanne d'Arc

一語で?
(ボルヘス『パラケルススの薔薇』鼓直訳)


  Pier Paolo Pasolini

ああ、そうだとも、
(シェイクスピア『お気に召すまま』第二幕・第四場、阿部知二訳)


  Jeanne d'Arc

戦争をやめさせるもの、何かしら。
(ヘミングウェイ『武器よさらば』第一部・第四章、石一郎訳、句点加筆=筆者)

ことば、ことば、ことば。
(シェイクスピア『ハムレット』第二幕・第二場、大山俊一訳)


  Dolores Haze

ああ、意味のない言葉よ!
(ポー『リジーア』富士川義之訳)


  Pier Paolo Pasolini

世には多種多様の言葉があるだろうが、意味のないものは一つもない。
(コリント人への第一の手紙一四・一〇)


  Dolores Haze

けれどその言葉を知らない。
(トルストイ『陽はばら色の西に消えゆき』清水邦生訳)


ひゅう!
(シェイクスピア『リア王』第四幕・第六場、大山俊一訳)

頭上をかすめる弾丸のうなり、
(ドルトン・トランボ『ジョニーは戦場へ行った』信太英男訳)


  King Lear

見よ、
(エゼキエル書一八・三)

殺害に殺害が続いている。
(ホセア書四・二)



バン!
(ジョージ・オウエル『カタロニア讃歌』鈴木隆・山内明訳)



ダダダダダッ
(J・G・バラード『太陽の帝国』第一部、高橋和久訳)



  cricket

cri-cri
(三省堂『クラウン仏和辞典』)

cri-cri
(三省堂『クラウン仏和辞典』)


取りちらかした地面には、
(ディラン・トマス『敵たち』北村太郎訳)

骨でできた
(オクタビオ・パス『砕けた壺』桑名一博訳)

こおろぎが鳴いていた。
(ディラン・トマス『敵たち』北村太郎訳)

こおろぎの骨、
(シェイクスピア『ロミオとジュリエット』第一幕・第四場、大山敏子訳)

そのからだはそこなわれて、
(ダニエル書七・一一)

機関砲の砲弾を受けばらばらになっていた。
(J・G・バラード『太陽の帝国』第二部、高橋和久訳)


  Dolores Haze

さあお出でなさい、
(ゲーテ『ファウスト』第一部、相良守峯訳)

こおろぎ、こおろぎ、こおろぎちゃん、
(サンド『愛の妖精』篠沢秀夫訳)

一しょに楽しい思いをしましょう。
(『グリム童話』収載『ならずもの』高橋健二訳、句点加筆=筆者)


  King Lear

このあばずれ!
(ブライス=エチェニケ『幾たびもペドロ』野谷文昭訳)


  Pier Paolo Pasolini

しっ、静かに!
(エミリー・ブロンテ『幻想するひと』斎藤正二訳)

この老いぼれめ、
(シェイクスピア『じゃじゃ馬ならし』第五幕・第一場、福田恆存訳)


  Dolores Haze

で、どこ?
(テネシー・ウィリアムズ『欲望という名の電車』小田島雄志訳、疑問符加筆=筆者)

どこにいるの?
(テネシー・ウィリアムズ『欲望という名の電車』小田島雄志訳、疑問符加筆=筆者)

何もこわいことはないのだから安心して、
(プラトン『テアイテトス』田中美知太郎訳)

いたいた、
(テネシー・ウィリアムズ『やけたトタン屋根の上の猫』田島博訳、読点加筆=筆者)

こんなとこに、いた!
(テネシー・ウィリアムズ『やけたトタン屋根の上の猫』田島博訳)


  cricket

cri-cri
(三省堂『クラウン仏和辞典』)

cri-cri
(三省堂『クラウン仏和辞典』)


  Dolores Haze

オホホホ。
(シェイクスピア『十二夜』第三幕・第四場、小津次郎訳)

まあ、なんてかわいいこと。
(ミストラル『プロヴァンスの少女』杉富士雄訳)

こんなに大きくなって!
(ガルシア=マルケス『百年の孤独』鼓直訳)


  Jeanne d'Arc

笑っているのかしらん?
(リルケ『愛と死の歌』石丸静雄訳)


  Dolores Haze

こおろぎは
(ダリーオ『シンフォニア灰色長調』荒井正道訳)

すべて
(エリオット『寺院の殺人』第一部、福田恆存訳)

私のもの。
(ヴァレリー『セミラミスの歌』鈴木信太郎訳)

私のものよ。
(アンリ・ミショー『夜の中で』小海永二訳)

この足で踏みにじってやるわ。
(シェイクスピア『リア王』第三幕・第七場、大山俊一訳)


  King Lear

おお!
(シェイクスピア『リア王』第二幕・第四幕、大山俊一訳)

こんなことをして、なにになるんだ。
(ダンテ『神曲』地獄篇・第二十一歌、野上素一訳、句点加筆=筆者)

どうしてそれを隠しておくんだ。
(シェイクスピア『十二夜』第一幕・第三場、小津次郎訳、句点加筆=筆者)


  Dolores Haze

おかげで、あたしたちは、また森へやられるのよ。
(サムイル・マルシャーク『森は生きている』第三幕・第二場、湯浅芳子訳、句点加筆=筆者)


  King Lear

こういったことすべてをどうやって忘れよう?
(ル・クレジオ『戦争』豊崎光一訳)


  Pier Paolo Pasolini

こら老いぼれ!
(シェイクスピア『リア王』第二幕・第二場、大山俊一訳)

黙れ!
(シェイクスピア『じゃじゃ馬ならし』第一幕・第二場、福田恆存訳)

静かにせい。
(シェイクスピア『ヘンリー四世』第二部・第三幕・第二場、中野好夫訳)

この老いぼれめ、
(シェイクスピア『じゃじゃ馬ならし』第五幕・第一場、福田恆存訳)

あっちへ行け!
(テネシー・ウィリアムズ『やけたトタン屋根の上の猫』田島博訳)

あっちへ。
(シェイクスピア『お気に召すまま』第五幕・第一場、阿部知二訳)


  owl

ほう!
(シェイクスピア『空騒ぎ』第三幕・第二場、福田恆存訳)

ほ、ほう!
(シェイクスピア『空騒ぎ』第三幕・第三場、福田恆存訳)

阿呆はいったい、いずこへまいった。
(ゲーテ『ファウスト』第二部、相良守峯訳)


  Pier Paolo Pasolini

あとで森のなかをさがすのがたいへんだ。
(サムイル・マルシャーク『森は生きている』第一幕・第三場、湯浅芳子訳)

・・・・・・さ、用意は出来たか?
(シェイクスピア『じゃじゃ馬ならし』第四幕・第一場、福田恆存訳)


  Jeanne d'Arc

えっ!
(シェイクスピア『リチャード三世』第三幕・第五場、福田恆存訳)


  Pier Paolo Pasolini

やり直し!
(ラディゲ『ヴィーナスの星』江口清訳)

やり直し!
(ラディゲ『ヴィーナスの星』江口清訳)


  Jeanne d'Arc

嘘!
(テネシー・ウィリアムズ『欲望という名の電車』小田島雄志訳)


  Dolores Haze

また?
(ガルシア=マルケス『悪い時』高見英一訳)


  Pier Paolo Pasolini

もちろん。
(シェイクスピア『オセロウ』第四幕・第三場、菅泰男訳)


  Dolores Haze

いつまでやるつもり?
(テネシー・ウィリアムズ『欲望という名の電車』小田島雄志訳)


  Jeanne d'Arc

まるで違うふたつの話を、いっしょくたにして、いったいどうなさりたいの?
(ハシント・ベナベンテ『美徳を裏切る人びと』第一幕、荒井正道訳)


  Pier Paolo Pasolini

まあ、そう言わずに、気を鎮めて。
(シェイクスピア『あらし』第一幕・第一場、福田恆存訳)


  Dolores Haze

あと一回でおしまいにしてくれない?
(テネシー・ウィリアムズ『欲望という名の電車』小田島雄志訳)


  Pier Paolo Pasolini

わかった。わかった。
(ハシント・ベナベンテ『美徳を裏切る人びと』第二幕、荒井正道訳)

もう一度、これが最後だ。
(シェイクスピア『オセロウ』第五幕・第二場、菅泰男訳)


________________________________________


Selve d'Amore



  Hans Giebenrath

どこへ行くのさ?
(マヤ・ヴォイチェホフスカ『夜が明けるまで』清水真砂子訳)


  Jeanne d'Arc

え?
(シェイクスピア『オセロウ』第四幕・第一場、菅泰男訳)


  Hans Giebenrath

で、
(シェイクスピア『ハムレット』第一幕・第二場、大山俊一訳)

何を探しているの?
(ガルシア=マルケス『悪い時』高見英一訳)


  Dolores Haze

・・・・・・なにを捜してたんだっけ?
(テネシー・ウィリアムズ『欲望という名の電車』小田島雄志訳)


  Jeanne d'Arc

森の苺。
(ジュール・シュペルヴィエール『雲』嶋岡晨訳、句点加筆=筆者)


  Dolores Haze

森の木苺。
(ラディゲ『憤ったニンフ』江口清訳、句点加筆=筆者)


  Jeanne d'Arc

森に實るたぐひない苺よ。
(ラディゲ『秋』川村克己訳、句点加筆=筆者)


  Hans Giebenrath

場所はどこか知ってるかい?
(ロベール・メルル『イルカの日』三輪秀彦訳)


  Dolores Haze

わからない。
(シェイクスピア『オセロウ』第二幕・第三場、菅泰男訳)


  Jeanne d'Arc

どこでそれを見つけたの?
(フェンテス『脱皮』内田吉彦訳)


  Hans Giebenrath

suo loco.
(岩波書店『ギリシア・ラテン引用語辭典』)

それ自身の場所に。
(岩波書店『ギリシア・ラテン引用語辭典』)

でも、
(ゲーテ『ファウスト』第一部、相良守峯訳)

ひとつとして同じ場所にとどまっていない。
(ル・クレジオ『戦争』豊崎光一訳)


  Dolores Haze

だったら早く見つけなきゃいけないわね。
(カブレラ=インファンテ『亡き王子のためのハバーナ』木村榮一訳)

あるところへ行く道を教える?教えない?
(サムイル・マルシャーク『森は生きている』第四幕・第二場、湯浅芳子訳)


  Jeanne d'Arc

さあ、どうかお教えください、
(シェイクスピア『ロミオとジュリエット』第三幕・第三場、大山敏子訳)


  Dolores Haze

つれてってちょうだい。
(シェイクスピア『十二夜』第一幕・第二場、小津次郎訳)


  Hans Giebenrath

じゃ、行こう。
(シェイクスピア『ロミオとジュリエット』第二幕・第二場、大山敏子訳)

一緒においで。
(シェイクスピア『ハムレット』第二幕・第一場、大山俊一訳)

ぼくもいっしょに行く。
(シェイクスピア『ロミオとジュリエット』第一幕・第一場、大山敏子訳)


________________________________________


Katyn



  Hans Giebenrath

見てごらん!
(カブレラ=インファンテ『亡き王子のためのハバーナ』木村榮一訳)

ハンカチだ!
(シェイクスピア『オセロウ』第三幕・第四場、菅泰男訳)

苺の刺繍をしたハンカチ、
(シェイクスピア『オセロウ』第三幕・第三場、菅泰男訳、読点加筆=筆者)

だが、待てよ!
(シェイクスピア『ハムレット』第一幕・第五場、大山俊一訳)

なんだろう?
(シェイクスピア『ロミオとジュリエット』第五幕・第三場、大山敏子訳)

木の下に
(ヨブ記四〇・二一)

繁みのあいだに
(ゲーテ『ファウスト』第二部、相良守峯訳)

隠れている。
(ヨブ記四〇・二一)

いた。
(ボブロフスキー『拒絶』神田芳夫訳)

これだ、
(シェイクスピア『ハムレット』第一幕・第五場、大山俊一訳)

それっどうだ、
(シェイクスピア『リア王』第三幕・第四場、大山俊一訳)

つかまえたぞ。
(ゲーテ『ファウスト』第一部、相良守峯訳)

見てごらん、
(ジョン・ダン『蚤』湯浅信之訳)

骨でできた
(オクタビオ・パス『砕けた壺』桑名一博訳)

こおろぎ、
(ゲーテ『ファウスト』第一部、相良守峯訳)

虐殺された
(ジャン・ジュネ『花のノートルダム』堀口大學訳)

ポーランド人将校、
(平凡社『東欧を知る事典』読点加筆=筆者)

だがこれは生きている。
(ゲーテ『ファウスト』第一部、相良守峯訳)

おまえは生き残りか?
(J・G・バラード『太陽の帝国』第二部、高橋和久訳)


  cricket

cri-cri
(三省堂『クラウン仏和辞典』)

cri-cri
(三省堂『クラウン仏和辞典』)


  Hans Giebenrath

ああ!
(シェイクスピア『リア王』第四幕・第六場、大山俊一訳)

あの頃の日が忘れられない。
(ネクラーソフ『公爵夫人トゥルベツカーヤ』谷耕平訳、句点加筆=筆者)


  cricket

cri-cri
(三省堂『クラウン仏和辞典』)

cri-cri
(三省堂『クラウン仏和辞典』)


  Hans Giebenrath

おまえはどこにもいるし、
(エーミー・ローエル『ライラック』上田保訳)

おまえはどこにもいた。
(エーミー・ローエル『ライラック』上田保訳)


  cricket

cri-cri

cri-cri


  Hans Giebenrath

そして
(シェイクスピア『ロミオとジュリエット』第二幕・第三場、大山敏子訳)

ぼくはここにはいないのだ。
(シェイクスピア『ロミオとジュリエット』第一幕・第一場、大山敏子訳)

ぼくはそこに留まったままなのだ。
(フェンテス『脱皮』内田吉彦訳、句点加筆=筆者)


  Dolores Haze

途中で、本当は何を探しているのか、忘れちゃったからじゃない?
(ブライス=エチェニケ『幾たびもペドロ』野谷文昭訳)


  Hans Giebenrath

そうだとも。
(シェイクスピア『ハムレット』第五幕・第一場、大山俊一訳)

あのころ、ふるさとの森の中で
(ボブロフスキー『プルッセン悲歌』神田芳夫訳)

つぎつぎに姿を消していった
(フィッツジェラルド『カットグラスの鉢』飯島淳秀訳)

草葉のこおろぎ、
(ゲーテ『ファウスト』第一部、相良守峯訳)


  cricket

cri-cri
(三省堂『クラウン仏和辞典』)

cri-cri
(三省堂『クラウン仏和辞典』)


  Hans Giebenrath

お前ではない、
(リルケ『ドゥイーノ悲歌』第三悲歌、浅井真男訳)

長年のあいだ、お前を忘れていたが、
(ゲーテ『ファウスト』第一部、相良守峯訳、読点加筆=筆者)

お前ではない、
(リルケ『ドゥイーノ悲歌』第三悲歌、浅井真男訳)

おまえはそこにおいで!
(シェイクスピア『ロミオとジュリエット』第四幕・第三場、大山敏子訳)


  cricket

cri-cri
(三省堂『クラウン仏和辞典』)

cri-cri
(三省堂『クラウン仏和辞典』)


  Jeanne d'Arc

これがなんであるか、あなたに示しましょう。
(ゼカリヤ書一・九)

土くれと一緒に、
(ゲーテ『ファウスト』第一部、相良守峯訳)

それを地に投げなさい。
(出エジプト記四・三)

あなたのそれを。
(リルケ『鎮魂歌』石丸静雄訳、句点加筆=筆者)


  Hans Giebenrath

これは何としたことだ。
(ゲーテ『ファウスト』第一部、相良守峯訳)

別の森が
(ゴットフリート・ケラー『さよなら』堀内明訳)

現われた!
(シェイクスピア『ハムレット』第一幕・第一場、大山俊一訳)


突如としてすぐ近くの/地中から森が一つ姿を現わしていた。
(ミルトン『失楽園』第十巻、平井正穂訳)

蟋蟀が
(グンナル・エーケレーフ『魂ノ不在』圓子修平訳)

黒い森になった。
(ディラン・トマス『はつかねずみと女』北村太郎訳)


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Selva Oscura



  Hans Giebenrath

ほれ、こうしてまた森の中で出あうことになったよ。
(サムイル・マルシャーク『森は生きている』第四幕・第二幕、湯浅芳子訳)

おまえを探して二度もここへきたんだ。
(ビョルンソン『人の力を超えるもの』第一部・第二幕・第一場、毛利三彌訳)

さあ、おいで。
(シェイクスピア『ハムレット』第五幕・第二場、大山俊一訳)

茂った森へ、
(ゲーテ『あこがれ』高橋健二訳、読点加筆=筆者)

深い森の奥へ!
(ランボー『何がニナを引止める』堀口大學訳)


  Jeanne d'Arc

どうして森へなんか行くの?
(阿部日奈子『キャロル式三段論法十番勝負』)


  Hans Giebenrath

お前は神に会わなければならない。
(フェデリコ・フェリーニ『ジュリエッタ』柱本元彦訳、『ユリイカ』一九九四年九月号・一〇二ページ)


  Jeanne d'Arc

神に会うって?
(フェデリコ・フェリーニ『ジュリエット』柱本元彦訳、『ユリイカ』一九九四年九月号・一〇二ページ)


  Hans Giebenrath

ほら見てごらん!
(シュトルム『夕暮れ』吉村博次訳)

ぼくの手が
(シュトルム『白い薔薇』吉村博次訳)

なすところを、
(シェイクスピア『マクベス』第一幕・第四場、福田恆存訳)


  Jeanne d'Arc

どうしようというの?
(シェイクスピア『ハムレット』第三幕・第四場、大山俊一訳)


  Hans Giebenrath

そら!
(シェイクスピア『マクベス』第二幕・第三場、福田恆存訳)

折れ曲がれ!
(シェイクスピア『ハムレット』第三幕・第三場、大山俊一訳)


  Jeanne d'Arc

やめて!
(シェイクスピア『ハムレット』第三幕・第四場、大山俊一訳)


ブチ
(ケンネス・レックスロス『春のおもい』成田成寿訳)


  Jeanne d'Arc

ああ、
(シェイクスピア『ハムレット』第四幕・第七場、大山俊一訳)

かわいそうに!
(シェイクスピア『マクベス』第四幕・第二場、福田恆存訳)


  Hans Giebenrath

ごらん、
(シェイクスピア『ヴェニスの商人』第五幕・第一場、大山敏子訳)

なかはうつろさ。
(ゲーテ『ファウスト』第一部、相良守峯訳)

なかみはからっぽだ。
(エリオット『うつろな男たち』高松雄一訳、句点加筆=筆者)

そら!
(シェイクスピア『マクベス』第二幕・第三場、福田恆存訳)


ブチ
(ケンネス・レックスロス『春のおもい』成田成寿訳)


  Hans Giebenrath

これもまた空である。
(伝道の書五・一〇)

そら!
(シェイクスピア『マクベス』第二幕・第三場、福田恆存訳)


ブチ
(ケンネス・レックスロス『春のおもい』成田成寿訳)


  Hans Giebenrath

そら!
(シェイクスピア『マクベス』第二幕・第三場、福田恆存訳)


ブチ
(ケンネス・レックスロス『春のおもい』成田成寿訳)


  Jeanne d'Arc

もうやめて!
(シェイクスピア『ハムレット』第三幕・第四場、大山俊一訳)


  Hans Giebenrath

なかはうつろさ。
(ゲーテ『ファウスト』第一部、相良守峯訳)

からっぽだ。
(シュトルム『深い影』吉村博次訳)

さあ、手をおだし。
(ミストラル『プロヴァンスの少女』杉富士雄訳)

恐れることはない。
(マタイによる福音書一〇・三一)

神さまの思し召しだ!
(ゴットフリート・フォン・シュトラースブルク『トリスタンとイゾルデ』第十三章、石川敬三訳)

これこそは最も切なる祈りなのだ!
(シュトルム『別れ』吉村博次訳)

手にあるそれは
(出エジプト記四・二)

お前のためにつくられたのだ。
(シュトルム『小夜曲』吉村博次訳)

二つに
(列王紀上三・二五)

へし
(エウジェーニオ・モンターレ『昼も夜も』河島英昭訳)

折るがいい。
(シュトルム『秋』吉村博次訳)


  Jeanne d'Arc

不思議だわ。
(ゲーテ『ファウスト』第一部、相良守峯訳)

いったいこの中に何がはいっているのかしら。
(ゲーテ『ファウスト』第一部、相良守峯訳)

あけて見ようかしら。
(ゲーテ『ファウスト』第一部、相良守峯訳)


すると、
(シェイクスピア『マクベス』第三幕・第三場、福田恆存訳)

蟋蟀が
(グンナル・エーケレーフ『魂の不在』圓子修平訳)

涙をぽろぽろこぼした。
(ガルシア=マルケス『百年の孤独』鼓直訳)


  Jeanne d'Arc

そこでわたしはそれを投げすてて逃げだした。
(マーク・トウェイン『イヴの日記』大久保博訳)


  Hans Giebenrath

待て、
(シェイクスピア『マクベス』第二幕・第一場、福田恆存訳)

逃げてはいけない、
(シュトルム『時がうった』吉村博次訳)

おお!
(シェイクスピア『リア王』第五幕・第三場、大山俊一訳)

なんだ、
(シェイクスピア『マクベス』第二幕・第一場、福田恆存訳)

どうしたのだ。
(シェイクスピア『ハムレット』第二幕・第一場、大山俊一訳)

僕の靴
(ランボー『「居酒屋みどり」で』堀口大學訳)


(ダンテ『神曲』天堂篇・第三十歌、野上素一訳)

触れるやいなや、
(ダンテ『神曲』天堂篇・第三十歌、野上素一訳)

蟋蟀の
(シェイクスピア『マクベス』第二幕・第二場、福田恆存訳)

いままで細長かった形が丸く変わった。
(ダンテ『神曲』天堂篇・第三十歌、野上素一訳、句点加筆=筆者)

a mine
(研究社『新英和大辞典』)

地雷
(ダイヤグラム・グループ『武器』田島優・北村孝一訳)

になった。
(ディラン・トマス『はつかねずみと女』北村太郎訳)

a mine
(研究社『新英和大辞典』)

地雷
(ダイヤグラム・グループ『武器』田島優・北村孝一訳)

になった。
(ディラン・トマス『はつかねずみと女』北村太郎訳)

そして
(シェイクスピア『リア王』第一幕・第一場、大山俊一訳)

その頭には
(シェイクスピア『ハムレット』第二幕・第二場、大山俊一訳)

こう、しるしてある。
(ルカによる福音書二四・四六)

I.N.R.I.
(三省堂『カレッジ・クラウン英和辞典』)

(Iesus Nazarenus,Rex Iudaeorum ユダヤ人の王、ナザレのイエス)
(三省堂『カレッジ・クラウン英和辞典』丸括弧加筆=筆者)

と、
(シェイクスピア『ハムレット』第一幕・第一場、大山俊一訳)

そこで土くれを投げてみた。
(マーク・トウェイン『イヴの日記』大久保博訳)
















ピカッ
(辻真先・原作/石川賢・作画『聖魔伝』第二十九章)
















ズズーン
(辻真先・原作/石川賢・作画『聖魔伝』第十四章)
















光があった。
(創世記一・三)
















A mine exploded.地雷が爆発した。
(研究社『新英和大辞典』)

神はその光を見て、良しとされた。
(創世記一・四)

その響きは全地にあまねく
(詩篇一九・四)

ひびき渡る。
(エレミヤ書五一・五五)

a mine
(三省堂『カレッジ・クラウン英和辞典』)

地雷火が
(原民喜『貂』)

頁のうえに
(リルケ『読書する人』富士川英郎訳)

Flying sparks started another fire. 飛び火した。
(研究社『新和英中辞典』)

地を震わせ
(イザヤ書一四・一六)

地をくつがえす
(ヨブ記一二・一五)

大いなる光、
(ゲーテ『ファウスト』第二部、相良守峯訳)

神様が、
(インジェロー『一つの七倍−よろこび』古谷弘一訳)

森の上で、
(フランシス・ジャム『愛しています・・・・・・』手塚伸一訳)

美しい姿でみおろしている。
(カール・シャピロ『郷愁』三井ふたばこ訳、句点加筆=筆者)

地は再び新しくなり、
(ミルトン『失楽園』第十巻、平井正穂訳)

浄められ、
(ミルトン『失楽園』第十巻、平井正穂訳)

エデンの園のようになった。
(エゼキエル書三六・三五)


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Gethsemane



a passage through a wood 森の中の通路
(三省堂『新クラウン英和辞典』)

a passage from the Bible 聖書の一節
(三省堂『新クラウン英和辞典』)


  Jesus Christ

わが父よ、もしできることでしたらどうか、この杯をわたしから過ぎ去らせてください。
(マタイによる福音書二六・三九)

しかし、わたしの思いのままにではなく、みこころのままになさって下さい。
(マタイによる福音書二六・三九)

(神は黙したもう)
(ミストラル『ばらあど』荒井正道訳)

(神は黙したもう)
(ミストラル『ばらあど』荒井正道訳)

(神は黙したもう)
(ミストラル『ばらあど』荒井正道訳)


  Jesus Christ

わたしは死ぬべき運命をもった存在だったのだ。
(ディラン・トマス『わたしがノックし』松田幸雄訳)


  Jeanne d'Arc

伝説の森、
(ゲオルゲ『誘い』富士川英郎訳、読点加筆=筆者)

こおろぎがなく
(キーツ『秋に寄せるうた』出口泰生訳)

なつかしい
(ハイネ『セラフィーヌ』第三歌、片山敏彦訳)

ふるさとの森。
(ハンス・カロッサ『Stella mystica(神秘の星)』片山敏彦訳、句点加筆=筆者)

わたしはそこできいたのだった。
(ネクラーソフ『公爵夫人ヴォルコーンスカヤ』谷耕平訳)


(キーツ『レイミア』第一部、大和資雄訳)


(キーツ『ギリシア古甕のうた』出口泰生訳)

声、
(シェリー『アドネース』上田和夫訳、読点加筆=筆者)


(キーツ『レイミア』第一部、大和資雄訳)


(キーツ『ギリシア古甕のうた』出口泰生訳)

声、
(シェリー『アドネース』上田和夫訳、読点加筆=筆者)


(キーツ『レイミア』第一部、大和資雄訳)


(キーツ『ギリシア古甕のうた』出口泰生訳)


(シェリー『アドネース』上田和夫訳)

を。
(キーツ『小夜啼鳥に寄せるうた』出口泰生訳)

そして私は子供だった。
(ハンス・カロッサ『水の中の空』片山敏彦訳)

子供だった。
(ハンス・カロッサ『水の中の空』片山敏彦訳)

ああ!
(シェリー『ナポリ近く失意のうちによめる歌』上田和夫訳)

なつかしい
(シェリー『アドネース』上田和夫訳)

故里の
(シュトルム『復活祭』吉村博次訳)

家。
(ル・クレジオ『オロール荘』佐藤領時・豊崎光一訳、句点加筆=筆者)

ああ、お父さん!
(ホセ・エチェガライ『拭われた汚辱(四幕の悲劇)』第一幕、篠沢真理訳)

お父さんはどこ。
(ホセマリア・サンチェスシルバ『汚れなき悪戯』江崎桂子訳)

お母さんはどこにいるの?
(ゲルハルト・ハウプトマン『沈んだ鐘』第四幕、秋山英夫訳)

わたしの指環! わたしの指環!
(アロイジウス・ベルトラン『夜のガスパールの幻想曲』及川茂訳)

刻まれた
(サンドバーグ『貨幣』安藤一郎訳)

しるし。
(創世記四・一五、句点加筆=筆者)

JESUS MARIA
(Georges Duby and Andree Duby,Les Proces de Jeanne d'Arc,Gallimard,Julliard,1973 )

JESUS MARIA
(Georges Duby and Andree Duby,Les Proces de Jeanne d'Arc,Gallimard,Julliard,1973 )


神が
(ジョン・ベリマン『ブラッドストリート夫人賛歌』澤崎順之助訳)

ひかる姿をあらわす。
(ダンヌンツィオ『アルバの丘の夕ぐれ』岩崎純孝訳)

そして
(ハンス・カロッサ『水の中の空』片山敏彦訳)

神が話しかけてきた。
(フランク・ハーバート『ドサディ実験星』岡部宏之訳)


  Jesus Christ

こんな森のなかでなにをしているんだ?
(モリエール『ドン・ジュアン』第三幕・第二景、鈴木力衛訳)

なぜ、
(ダンテ『神曲』地獄篇・第三十二歌、野上素一訳)

指環の印を
(レミ・ドゥ・グルモン『薔薇連祷』上田敏訳)

みつめてばかりいるのだ?
(ダンテ『神曲』浄罪篇・第十九歌、野上素一訳、疑問符加筆=筆者)


  Jeanne d'Arc

主よ、あなたでしたか。
(マタイによる福音書一四・二八)

ああ、神様!
(ホセ・エチェガライ『拭われた汚辱』第四幕、篠沢真理訳)

イエス様、
(アロイジウス・ベルトラン『夜のガスパールの幻想曲』及川茂訳)

でも、
(シェイクスピア『ロミオとジュリエット』第五幕・第三場、大山敏子訳)

もう誑かされぬ。
(ヴァンサン・ミュゼリ『白鳥』齋藤磯雄訳)

二度とふたたび。
(ジャン・デ・カール『狂王ルートヴィヒ』三保元訳)

わが神、わが神、
(マタイによる福音書二七・四六)

どうしてわたしをお見捨てになったのですか。
(マタイによる福音書二七・四六、句点加筆=筆者)

あなたは私を棄てました。
(キーツ『レイミア』第二部、大和資雄訳)


  Jesus Christ

黙りなさい。
(士師記一八・一九)

あなたは神をののしってはならない。
(出エジプト記二二・二八)


  Jeanne d'Arc

わたしは知らなかった前途に何がまっているか!
(ネクラーソフ『公爵夫人ヴォルコーンスカヤ』谷耕平訳)

火で焼かれ、
(エレミヤ書五一・三二)

火に包まれて燃えあがった
(ゲーテ『ファウスト』第二部、相良守峯訳)

わたしの肉体。
(マヌエル・デル・カブラル『負担』田村さと子訳、句点加筆=筆者)

わたしは
(ネクラーソフ『公爵夫人ヴォルコーンスカヤ』谷耕平訳)

生きながら燒かれ、
(D・H・ロレンス『不死鳥』刈田元司訳)

生きたまま焼かれ、
(D・H・ロレンス『不死鳥』安藤一郎訳)

火に炙られながら
(ジョン・ベリマン『ブラッドストリート夫人賛歌』澤崎順之助訳)

死んでしまった。
(オーガスタ・ウェブスター『種子』古谷弘一訳)


  Jesus Christ

知っている。
(シェイクスピア『リチャード三世』第一幕・第三場、福田恆存訳)

わかっている、
(シェイクスピア『ハムレット』第四幕・第四場、大山俊一訳)

わたしの白ゆりよ!
(イワノフ『白ゆり』草鹿外吉訳)

わたしの白ゆりよ!
(イワノフ『白ゆり』草鹿外吉訳)

あの日のことを思い出すか?
(ハンス・カロッサ『灰いろの時』片山敏彦訳)

あの日のことを。
(ハンス・カロッサ『灰いろの時』片山敏彦訳、句点加筆=筆者)


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Bois Chesnu



  Jeanne d'Arc

あなたは近づいて、
(哀歌三・五七)

恐れることはない。
(マルコによる福音書五・三六)


(ナボコフ『ロリータ』第二部、大久保康雄訳)

仰せられました。
(哀歌三・五七)

そして、
(ポール・クローデル『ローヌ河の歌』中村真一郎訳)

また、
(イェイツ『黒豚の谷』尾島庄太郎訳)

私はお前のくるのを待っていた、
(ダンテ『神曲』天堂篇・第十五歌、野上素一訳)

わたしは
(ネクラーソフ『公爵夫人ヴォルコーンスカヤ』谷耕平訳)

キリストである。
(マタイによる福音書二三・一〇)

神である。
(ブルフィンチ『中世騎士物語』野上弥生子訳)


(ナボコフ『ロリータ』第二部、大久保康雄訳)

仰せられました。
(哀歌三・五七)

そこで
(ネクラーソフ『公爵夫人ヴォルコーンスカヤ』谷耕平訳)

わたしは
(ポー『盗まれた手紙』富士川義之訳)

どうしてわかるの?
(マヤ・ヴォイチェホフスカ『夜が明けるまで』清水真砂子訳)


(ナボコフ『ロリータ』第二部、大久保康雄訳)

言いました。
(ジャン・ジュネ『花のノートルダム』堀口大學訳)


  Jesus Christ

わたしを見るのだ。
(パブロ・ネルーダ『マチュピチュの頂』野谷文昭訳、句点加筆=筆者)


ほんの一瞬のことであった。
(リスペクトール『家族の絆』貴重品、深沢暁訳)

目の前でイエスの姿が変り、
(マタイによる福音書一七・二)

ハンカチ
(シュトルム『みずうみ』高橋義孝訳)

となった。
(ポー『黒猫』富士川義之訳)

すると、
(サムイル・マルシャーク『森は生きている』第一幕・第一場、湯浅芳子訳)

まばたき一つ、
(キーツ『レイミア』第二部、大和資雄訳、読点加筆=筆者)

ほんの一瞬の間に、
(リスペクトール『家族の絆』貴重品、深沢暁訳)

キリスト自身、
(リスペクトール『G・Hの受難』高橋都彦訳)

また現われた!
(シェイクスピア『ハムレット』第一幕・第一場、大山俊一訳)


  Jesus Christ

あなたは備えをなせ。
(エゼキエル書三八・七)

馬に乗れ。
(エレミヤ書四六・四)

あなたとあなたの所に集まった軍隊は、みな備えをなせ。
(エゼキエル書三八・七)

かぶとをかぶって立て。
(エレミヤ書四六・四)

そしてあなたは彼らの保護者となれ。
(エゼキエル書三八・七)

ほこをみがき、よろいを着よ。
(エレミヤ書四六・四)


  Jeanne d'Arc

その時、
(リスペクトール『G・Hの受難』高橋都彦訳)

答えて言いました、
(ジャン・ジュネ『花のノートルダム』堀口大學訳)

わたしはこれらのものを着けていくことはできません。
(サムエル記上一七・四〇)

慣れていないからです。
(サムエル記上一七・四〇)

と。
(リスペクトール『家族の絆』愛、高橋都彦訳)

すると、
(サムイル・マルシャーク『森は生きている』第一幕・第一場、湯浅芳子訳)

あなたは
(サムエル記上二一・一)

微笑みながら
(フェデリコ・フェリーニ『ジュリエッタ』柱本元彦訳、『ユリイカ』一九九四年九月号・八五ページ)

仰せられました。
(哀歌三・五七)

さあ、行きなさい。
(使徒行伝九・一五)

恐れることはない。
(マルコによる福音書五・三六)

わたしがあなたを助ける。
(イザヤ書四一・一三)

わたしの言うことを信じなさい。
(ヨハネによる福音書四・二一)

わたしはあなたとともにいる。
(イザヤ書四一・一〇)

と。
(リスペクトール『家族の絆』愛、高橋都彦訳)


  Jesus Christ

それは偽りではない。
(ハバクク書二・三)

わたしはあなたといた。
(ハンス・カロッサ『Stella mystica(神秘の星)』片山敏彦訳)


  Jeanne d'Arc

けれども
(エミリ・ディキンスン『大聲でたたかうのは』刈田元司訳)

神は戦争の中には存在しないのですね。
(ビョルンソン『人の力を超えるもの』第二部・第一幕・第四場、毛利三彌訳)

世界は絶えまなく戦争に見まわれ、戦争の恐怖におびえているというのに、
(エリオット『寺院の殺人』幕間劇、福田恆存訳)


  Jesus Christ

神はいつもいた!
(リスペクトール『G・Hの受難』高橋都彦訳)


  Jeanne d'Arc

そう、
(リスペクトール『G・Hの受難』高橋都彦訳)

そしてわたしは
(リスペクトール『G・Hの受難』高橋都彦訳)

私の体は焼かれた、
(ベルナール・B・ダディエ『神よ、ありがとうございます』登坂雅志訳)


  Jesus Christ

私はあなたを殺さなければならなかった。
(シルヴィア・プラス『お父さん』徳永暢三訳)

あなたを焼き、
(エゼキエル書二八・一八)

焼き浄めて新しくする
(ミルトン『失楽園』第十一巻、平井正穂訳)

ために。
(フランツ・ヴェルフェル『酒席の歌』淺井眞男訳)

火のあとに残るもの、
(アンドレ・デュ・ブーシェ『白いモーター』小島俊明訳)

それは
(アンドレ・デュ・ブーシェ『白いモーター』小島俊明訳)

私の心臓!
(シェイクスピア『ロミオとジュリエット』第三幕・第二場、大山敏子訳)

さあ、
(シェイクスピア『マクベス』第一幕・第五場、福田恆存訳)

神に返すのだ。
(カルロス・ドルモン・ジ・アンドラージ『食卓』ナヲエ・タケイ・ダ・シルバ訳、句点加筆=筆者)

その心臓を、
(ジュール・シュペルヴィエール『壁のない世界』嶋岡晨訳、読点加筆=筆者)

私の熱した心臓を。
(ヘッセ『十月』尾崎喜八訳、句点加筆=筆者)


キリストは
(ジョン・ベリマン『ブラッドストリート夫人賛歌』澤崎順之助訳)

娘の
(シェイクスピア『ハムレット』第二幕・第二場、大山俊一訳)

胸の中に
(シェイクスピア『ハムレット』第一幕・第五場、大山俊一訳)

手をそっとさし入れ、
(パブロ・ネルーダ『マチュピチュの頂』野谷文昭訳、読点加筆=筆者)

心臓を
(トラークル『デプロフンディス』瀧田夏樹訳)

引き抜いた。
(セーサル・バジェッホ『九匹の怪物』飯吉光夫訳、句点加筆=筆者)

キリストの
(エドウィン・ミュア『時間の主題による變奏』第九曲、大澤實訳)

手のなかには、
(アルフレト・モムベルト『夜更にわたしは山の背を越えた』淺井眞男訳)

燃えなかった
(アンドレ・デュ・ブーシェ『はためく』小島俊明訳)

心臓がある。
(サンドバーグ『シカゴ』福田陸太郎訳、句点加筆=筆者)

キリストの
(エドウィン・ミュア『時間の主題による變奏』第九曲、大澤實訳)

燃えなかった
(アンドレ・デュ・ブーシェ『はためく』小島俊明訳)

心臓がある。
(サンドバーグ『シカゴ』福田陸太郎訳、句点加筆=筆者)


  Jeanne d'Arc

──どこに置き忘れたのかしら、
(ラディゲ『福引』川村克己訳)

みせしめの
(アポリネール『花のはだか』堀口大學訳)

私の心臓。
(エリオット『聖灰水曜日』大澤實訳、句点加筆=筆者)


  Jesus Christ

あなたは
(サムエル記上一七・四〇)

死ぬことはない。
(レオポルド・セダール・サンゴール『火の歌(バントゥー人の歌)』登坂雅志訳)

母なるおんみ
(ハンス・カロッサ『不安な夜の後に』片山敏彦訳)

母なるおんみ
(ハンス・カロッサ『不安な夜の後に』片山敏彦訳)

わたしの白ゆりよ!
(イワノフ『白ゆり』草鹿外吉訳)


  Jeanne d'Arc

私のこと?
(ホセ・エチェガライ『拭われた汚辱(四幕の悲劇)』第三幕、篠沢真理訳)


  Jesus Christ

我が身は/御身の息子にして、
(ポール・クローデル『眞晝の聖女』佐藤正彰訳)

御身はマリヤに在せば、
(ポール・クローデル『眞晝の聖女』佐藤正彰訳)

私の母。
(カヌク『イスタンブールのうた』峯俊夫訳、句点加筆=筆者)

キリストを
(ヴェルレーヌ『夜の鳥』堀口大學訳)

産む
(ルカによる福音書一・三一)

母マリヤであった。
(ルカによる福音書二四・一〇)

神である
(ヨハネによる福音書八・四一)

わたしは、
(リスペクトール『G・Hの受難』高橋都彦訳)

すでにいくたびとなく
(プラトン『メノン』藤沢令夫訳)

生まれかわってきたものである。
(プラトン『メノン』藤沢令夫訳、句点加筆=筆者)

いっさいのありとあらゆるものを見てきている。
(プラトン『メノン』藤沢令夫訳、句点加筆=筆者)

あなたは美しい。
(雅歌四・一)

そのからだに触れ、くちづけをし、ともに寝ようという欲望を感じる。
(プラトン『パイドロス』藤沢令夫訳)

わたしの白ゆりよ!
(イワノフ『白ゆり』草鹿外吉訳)

わたしの白ゆりよ!
(イワノフ『白ゆり』草鹿外吉訳)

わたしを
(リスペクトール『G・Hの受難』高橋都彦訳)

みごもって
(ルカによる福音書一・三一)

わたしを
(リスペクトール『G・Hの受難』高橋都彦訳)

産むがよい、
(ゴットフリート・ベン『コカイン』生野幸吉訳)


  Jeanne d'Arc

今、この瞬間、
(リスペクトール『G・Hの受難』高橋都彦訳)

お言葉どおりの身に成りますように。
(ルカによる福音書一・三八)


二人は森の奥深く分け入った。
(シュトルム『みずうみ』高橋義孝訳)


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Nageki no Mori



  Pier Paolo Pasolini

フィナーレだ!
(ゴットフリート・ベン『舞踏会』生野幸吉訳)

なげきの森
(『古今和歌集』巻第十九・安倍清行朝臣女さぬきの「題しらず」の歌)


(シェイクスピア『リア王』第一幕・第一場、大山俊一訳)

梟が
(アポリネール『エレジイ』窪田般彌訳)

塒(ねぐら)
(張均『岳陽晩景』阿部正次郎訳)


(シェイクスピア『ヴェニスの商人』第二幕・第二場、大山敏子訳)

雛を
(ミストラル『プロヴァンスの少女』杉富士雄訳)

間引く
(フランク・ハーバート『ドサディ実験星』岡部宏之訳)

たび
(ハンス・カロッサ『老いたる魔術師』片山敏彦訳)

森は
(シュトルム『森のなか』吉村博次訳)

だんだん
(シェイクスピア『マクベス』第一幕・第三場、福田恆存訳)

暗くなる。
(ロビンスン・ジェファーズ『海豚』外山定男訳)

暗くなる。
(ロビンスン・ジェファーズ『海豚』外山定男訳)


森から森へ
(キーツ『レイミア』第一部、大和資雄訳)

暗い森の奥深く
(キーツ『ロビン・フッド』出口泰生訳)

森の中を歩いていると、
(キーツ『サイキに寄せるうた』出口泰生訳)

閉じている門の前に着いた。
(ハンス・カロッサ『聖者の手の上の小さな都』片山敏彦訳)

すぐそばに/赤い木苺や野薔薇の花が咲いてゐた。
(フランシス・ジャム『お前の貧しさは知つてゐる・・・・・・』室井庸一訳)

背後にある
(ジョアオン・カブラル・ジ・メロ・ネト『アスピリンに捧げる碑文』ナヲエ・タケイ・ダ・シルバ訳)

教会が
(ヨルゲンセン『ラジオ』山室静訳)

芝生の
(エミリ・ディキンスン『豫感』刈田元司訳)

真ん中にある
(ヘッセ『車輪の下に』秋山六郎兵衛訳)

an instrument screen 百葉箱
(小学館『英語図詳大辞典』)

のように
(ポール・クローデル『ローヌ河の歌』中村真一郎訳)

建っていた。
(ハンス・カロッサ『聖者の手の上の小さな都』片山敏彦訳)

barbed wire 有刺鉄線
(三省堂『カレッジ・クラウン英和辞典』)

barbed words とげのある言葉
(三省堂『カレッジ・クラウン英和辞典』)

はり巡らされた二重の鉄条網、
(宮田光雄『アウシュヴィッツで考えたこと』読点加筆=筆者)

有刺鉄線の囲いに
(ロバート・ロウエル『北軍戦死者のために』金関寿夫訳)

二二〇ボルトの三相電流。
(早乙女勝元編『母と子でみる2アウシュビッツ』句点加筆=筆者)

これは触れるものことごとくを真黒にする。
(シェイクスピア『ヘンリー四世』第一部・第二幕・第四場、中野好夫訳)


(エドウィン・ミュア『城』大澤實訳)

の上に
(マタイによる福音書二・九)

鋼の
(ズビグニェフ・ヘルベルト『戦争』工藤幸雄訳)

文字が
(フライリヒラート『自由新聞』井上正蔵訳)

あらわれる。
(ロルカ『月がのぞく』野々山ミチコ訳)


  Jeanne d'Arc

LASCIATE OGNI SPERANZA,VOI CH,ENTRATE
(Dante Alighieri,"La Divina Commedia"Inferno III 9,La Nuova Italia,Firenze,1973,p.30.)

汝等こゝに入るもの一切の望みを棄てよ。
(ダンテ『神曲』地獄篇・第三歌、山川丙三郎訳、句点加筆=筆者)


まばたき一つ、
(キーツ『レイミア』第二部、大和資雄訳、読点加筆=筆者)

鋼の
(キーツ『レイミア』第二部、大和資雄訳)

文字が
(フライリヒラート『自由新聞』井上正蔵訳)

消えうせる。
(バイロン『マンフレッド』第一幕・第一場、小川和夫訳)

現われる。
(ウォレ・ショインカ『私はわが身を清める(断食の十日目)』登坂雅志訳、句点加筆=筆者)


  Jeanne d'Arc

ARBEIT MACHT FREI
(早乙女勝元編『母と子でみる2アウシュビッツ』)

労働は自由への道。
(早乙女勝元編『母と子でみる2アウシュビッツ』句点加筆=筆者)


まばたき一つ、
(キーツ『レイミア』第二部、大和資雄訳、読点加筆=筆者)

鋼の
(ズビグニェフ・ヘルベルト『戦争』工藤幸雄訳)

文字が
(フライリヒラート『自由新聞』井上正蔵訳)

また消える、
(ロバート・フロスト『林檎もぎのあと』安藤一郎訳)

また現われる。
(オクタビオ・パス『白』鼓直訳、句点加筆=筆者)


  Jeanne d'Arc

This is none other than the house of God
(GENESIS 28.17)

これは神の家である。
(創世記二八・一七)

ああなんという静けさ!
(シェリー『ジェーンに−思い出』上田和夫訳)

今こそ、汝の新しき主を迎えよ!
(ミルトン『失楽園』第一巻、平井正穂訳)


音もなく
(ハンス・カロッサ『猫に贈る詩』片山敏彦訳)

戸は内側へ開かれた──
(ハンス・カロッサ『聖者の手の上の小さな都』片山敏彦訳)


  Jeanne d'Arc

祈りのことばを口ずさみながら
(ネクラーソフ『公爵夫人トゥルベツカーヤ』谷耕平訳)

わたしは十字をきった・・・・・・
(ネクラーソフ『公爵夫人ヴォルコーンスカヤ』谷耕平訳)

中へ入って見ると、
(ブルフィンチ『中世騎士物語』野上弥生子訳)

一人の司祭がいた。
(フィッツジェラルド『罪の赦し』飯島淳秀訳)


彼はいま祈っている。
(使徒行伝九・一一)

司祭は身を起こした。
(カミュ『異邦人』第一部、窪田啓作訳)


  Maximilian Kolbe

あなたはどこから来たか。
(ヨブ記二・二)


  Jeanne d'Arc

わたしは戦場からきたものです。
(サムエル記上四・一六)

きょう戦場からのがれたのです。
(サムエル記上四・一六)


  Maximilian Kolbe

この神聖な場所に、なんの用があるんでしょう?
(ゲーテ『ファウスト』第一部、相良守峯訳)

穏やかな事のためにこられたのですか。
(サムエル記上一五・四)


  Jeanne d'Arc

穏やかな事のためです。
(サムエル記上一五・五)


  Maximilian Kolbe

神を探しているのですか?
(J・G・バラード『太陽の帝国』第二部、高橋和久訳)


  Jeanne d'Arc

イエス。
(ポール・クローデル『眞晝の聖女』佐藤正彰訳、句点加筆=筆者)

それで神は?
(D・H・ロレンス『肉体のない神』安藤一郎訳)

神様はどこ?
(ブライス=エチェニケ『幾たびもペドロ』野谷文昭訳)


  Maximilian Kolbe

おられます。ごらんなさい、この先です。
(サムエル記上九・一二)

それ、そこに、
(シェイクスピア『ロミオとジュリエット』第三幕・第三場、大山敏子訳)

すぐそばに。
(シェイクスピア『オセロウ』第五幕・第一場、菅泰男訳)


見ると、
(ヨハネの黙示録一六・一三)

鳥籠の
(シェイクスピア『ハムレット』第三幕・第四場、大山俊一訳)

前に
(ゲーテ『歌びと』高橋健二訳)

神がいた。
(フェデリコ・フェリーニ『ジュリエッタ』柱本元彦訳、『ユリイカ』一九九四年九月号・八六ページ)


  Maximilian Kolbe

祈るがよい。
(ヤコブの手紙五・一三)

神が
(アポリネール『地帯』堀口大學訳)

新雛(にいびな)を
(エミリー・ブロンテ『わが思うひとの墓』斎藤正二訳)

おしつぶすために
(パスカル『パンセ』第六章、前田陽一・由木康訳)

土くれのように
(アンドレ・デュ・ブーシェ『白いモーター』小島俊明訳)

踏みつけておられる。
(ジョン・ダン『冠』湯浅信之訳)


  Jeanne d'Arc

いいえ、
(トルストイ『ドン・ジュアン』第一部、柴田治三郎訳)

神父さま、
(フィッツジェラルド『罪の赦し』飯島淳秀訳)

それは
(ホーフマンスタール『体験』富士川英郎訳)

あなたの神、
(出エジプト記二〇・一二)

あなたのもの。
(詩篇七四・一六)

私の
(トルストイ『ドン・ジュアン』第二部、柴田治三郎訳)

神ではありません。
(エレミヤ書一六・二〇)

わたしはこれを受けいれない。
(アモス書五・二二)


  Maximilian Kolbe

子よ、
(創世記一七・八)

なげき悲しむがいい!
(シェリー『哀歌』上田和夫訳)

その心臓の奥の奥まで
(ニーチェ『ツァラトゥストラ』手塚富雄訳)

嘆きの声で
(ジャン・ジュネ『花のノートルダム』堀口大學訳)

すっかり満たされるのだ、
(ゲーテ『若きウェルテルの悩み』井上正蔵訳)

血を流すことなしには、罪のゆるしはあり得ない。
(ヘブル人への手紙九・二二)

神は苦しむ者をその苦しみによって救い、
(ヨブ記三六・一五)

これをみ心にとめられる。
(詩篇八・四、句点加筆=筆者)

苦痛こそなくてはならないものだ。
(エバハート『人間はさびしい生きもの』田村隆一訳、句点加筆=筆者)

わたしたちは
(ホーフマンスタール『無常の歌』富士川英郎訳)

その苦しみをよろこんでわが身にひきうけなければならないのだ。
(エリオット『寺院の殺人』第一部、福田恆存訳)

Accipe hoc.
(岩波書店『ギリシア・ラテン引用語辭典』)

これを受けよ。
(岩波書店『ギリシア・ラテン引用語辭典』)

この苦痛という
(ジェフリー・ヒル『葬送曲』富士川義之訳)

神の
(伝道の書七・一三)

賜物
(詩篇一二七・三)

を。
(リルケ『読書する人』富士川英郎訳、句点加筆=筆者)

いやいや、
(ホセ・エチェガライ『拭われた汚辱(四幕の悲劇)』第一幕、篠沢真理訳)

何事も神から出たこと。
(ビョルンソン『人の力を超えるもの』第二部・第二幕・第三場、毛利三彌訳)

苦痛こそ
(エバハート『人間はさびしい生きもの』田村隆一訳)

神である。
(ブルフィンチ『中世騎士物語』野上弥生子訳)

苦痛こそ
(エバハート『人間はさびしい生きもの』田村隆一訳)

キリスト自身、
(リスペクトール『G・Hの受難』高橋都彦訳)

神である。
(ブルフィンチ『中世騎士物語』野上弥生子訳)


  cricket

cri-cri
(三省堂『クラウン仏和辞典』)

cri-cri
(三省堂『クラウン仏和辞典』)


  Jeanne d'Arc

ほら!
(D・H・ロレンス『神の肉体』安藤一郎訳)

茂った森から
(キーツ『レイミア』第一部、大和資雄訳)

コオロギのすだくのが聞こえるでしょう。
(ゲルハルト・ハウプトマン『ソアーナの異端者』秋山英夫訳)

こおろぎが
(エミリ・ディキンスン『こおろぎが歌い』刈田元司訳)

鳴いている。
(イェイツ『道化帽子』尾島庄太郎訳)

こおろぎが
(エミリ・ディキンスン『こおろぎが歌い』刈田元司訳)

鳴いているわ。
(ロベール・メルル『イルカの日』三輪秀彦訳)

きっと恐ろしいことが起る。
(ワイルド『サロメ』西村孝次訳)


  Maximilian Kolbe

空つぽの巣で
(イェイツ『塔』大澤實訳)

雛は生まれる。
(チャールズ・オルソン『かわせみ』出淵博訳、句点加筆=筆者)

私は
(ブルフィンチ『中世騎士物語』野上弥生子訳)

それを取って
(ハンス・カロッサ『聖者の手の上の小さな都』片山敏彦訳)

ひなを集める。
(マタイによる福音書二三・三七、句点加筆=筆者)

押しつぶされ
(トム・ガン『へだたり』中川敏訳)

砕かれた骨、
(パブロ・ネルーダ『独裁者』桑名一博訳、読点加筆=筆者)

骨と骨、
(オクタビオ・パス『砕けた壺』桑名一博訳、読点加筆=筆者)

この森いちめんに
(エズラ・パウンド『春』新倉俊一訳)

骨の山
(ジョアオン・カブラル・ジ・メロ・ネト『ペルナンブコの墓地(「トリタマ」)』ナヲエ・タケイ・ダ・シルバ訳)

どうしてこんなに夥しいのか?
(ホーフマンスタール『人生のバラード』川村二郎訳)

あれは兵隊だ。
(レイモン・クノー『不幸な人たち』三輪秀彦訳、句点加筆=筆者)

この森は
(シェイクスピア『マクベス』第五幕・第四場、福田恆存訳)

戦争をひたすら求める。
(サンドバーグ『闘争』安藤一郎訳)

ここは神がわれわれに与え給うた世界だ。
(フランク・ハーバート『ドサディ実験星』岡部宏之訳、句点加筆=筆者)

拷問にかけられ、
(ジェフリー・ヒル『葬送曲』富士川義之訳、読点加筆=筆者)

虐殺された
(ヴェルレーヌ『パリの夜』堀口大學訳)

おびただしい
(ロバート・フロスト『林檎もぎのあと』安藤一郎訳)

戰士たちの古い骨、
(エドウィン・アーリントン・ロビンスン『暗い丘』福田陸太郎訳、読点加筆=筆者)

ひと足ごとに
(クワジーモド『帰郷』河島英昭訳)

ばらばらに
(ゴットフリート・ベン『墓場を越えて』生野幸吉訳)

砕かれた
(パブロ・ネルーダ『独裁者』桑名一博訳)

こおろぎの
(エリオット『荒地』大澤實訳)

骨、
(エリナー・ウァイリー『鷲と土龍』辻以知郎訳、読点加筆=筆者)

骨、
(エリナー・ウァイリー『鷲と土龍』辻以知郎訳、読点加筆=筆者)

骨。
(エリナー・ウァイリー『鷲と土龍』辻以知郎訳、句点加筆=筆者)

神は苦しむ者をその苦しみによって救い、
(ヨブ記三六・一五)

これをみ心にとめられる。
(詩篇八・四、句点加筆=筆者)

苦痛こそなくてはならないものだ。
(エバハート『人間はさびしい生きもの』田村隆一訳、句点加筆=筆者)

わたしたちは
(ホーフマンスタール『無常の歌』富士川英郎訳)

その苦しみをよろこんでわが身にひきうけなければならないのだ。
(エリオット『寺院の殺人』第一部、福田恆存訳)

この苦痛という
(ジェフリー・ヒル『葬送曲』富士川義之訳)

神の
(伝道の書七・一三)

賜物。
(詩篇一二七・三、句点加筆=筆者)

いやいや、
(ホセ・エチェガライ『拭われた汚辱(四幕の悲劇)』第一幕、篠沢真理訳)

何事も神から出たこと。
(ビョルンソン『人の力を超えるもの』第二部・第二幕・第三場、毛利三彌訳)

苦痛こそ
(エバハート『人間はさびしい生きもの』田村隆一訳)

神である。
(ブルフィンチ『中世騎士物語』野上弥生子訳)

苦痛こそ
(エバハート『人間はさびしい生きもの』田村隆一訳)

キリスト自身、
(リスペクトール『G・Hの受難』高橋都彦訳)

神である。
(D・H・ロレンス『神の肉体』安藤一郎訳)


  Jeanne d'Arc

そんなものは、瞬き一つで消すことができる。
(ジョン・ダン『日の出』湯浅信之訳)


  Maximilian Kolbe

神を試みるのか。
(使徒行伝一五・一〇)


  Jeanne d'Arc

神様を試すことにはならないわ。
(ビョルンソン『人の力を超えるもの』第一部・第一幕・第一場、毛利三彌訳)


  Maximilian Kolbe

神を試みてはならない。
(マタイによる福音書四・七、句点加筆=筆者)


  Jeanne d'Arc

ほら!
(D・H・ロレンス『神の肉体』安藤一郎訳)

消えてしまった。
(アイヒ『罌粟』坂上泰助訳)


神の
(ゲゼレ『ヘリオトロープ(向日性の花)』朝倉純孝訳)

姿はなかった。
(ポー『ウィリアム・ウィルソン』富士川義之訳)


  Maximilian Kolbe

何?
(トルストイ『ドン・ジュアン』第一部、柴田治三郎訳)

何を?
(コクトー『ピカソに捧げるオード』堀口大學訳)

何をしたって?
(コクトー『ピカソに捧げるオード』堀口大學訳)

あなたがしたことを、わたしに言いなさい。
(サムエル記上一四・四三)


  Jeanne d'Arc

わたしは神の御声に従うのです。
(モリエール『ドン・ジュアン』第五幕・第三景、鈴木力衛訳)


  Maximilian Kolbe

あなたの手にあるそれは何か。
(出エジプト記四・二)

それをここに持ってきなさい。
(マタイによる福音書一四・一八)


  Jeanne d'Arc

This is mine.
(Tony Randel 監督の "HELLBOUND HELLRAISER II"に出てくる Juria役の Clare Higginsのセリフ)


  Maximilian Kolbe

Is it yours?
(三省堂『新クラウン英和辞典』)


  Jeanne d'Arc

Yes,certainly.
(三省堂『新クラウン英和辞典』)

a mine
(研究社『新英和大辞典』)

地雷。
(ダイヤグラム・グループ『武器』田島優・北村孝一訳)

これこそ神であり、
(詩篇四八・一四)

わたしを踏みつける者を
(詩篇五七・三)

ことごとく滅ぼし、
(詩篇一〇一・八)

またたくまに滅ぼされたのだ。
(哀歌四・六)

そして
(リルケ『ドゥイーノ悲歌』第八悲歌、浅井真男訳)

すべてのものを
(ヨハネの黙示録二一・五)

新たにされる。
(詩篇一〇四・三〇)

あらゆるものは再び作られる、
(ポール・クローデル『金の歌』中村真一郎訳)


  Maximilian Kolbe

それをさして誓ってはならない。
(ヨシュア記二三・七)

またそれに仕え、それを拝んではならない。
(ヨシュア記二三・七)


  Jeanne d'Arc

わたしはこれが全身と、その著しい力と、/その美しい構造について/黙っていることはできない。
(ヨブ記四一・一二)


(テッド・ヒューズ『カマス』田村英之助訳)

でできた
(ゲオルク・ブリッティング『追剥騎士』淺井眞男訳)

わたしの心臓、
(エレミヤ書四・一九、読点加筆=筆者)

わたしの
(エレミヤ書四・一九)

地雷、
(チャールズ・オルソン『ヨーロッパの死』出淵博訳、読点加筆=筆者)

炎のなかで鋳られ、完成された神。
(ジェフリー・ヒル『小黙示録』富士川義之訳、句点加筆=筆者)

外側は美しく
(マタイによる福音書二三・二七)

内側は
(マタイによる福音書二三・二七)

きらきら光る精密な仕掛け、
(カミュ『異邦人』第二部、窪田啓作訳、読点加筆=筆者)

いろいろの器械が
(ゲーテ『ファウスト』第一部、相良守峯訳)

そつくりはいつている。
(アルフレト・モムベルト『夜更にわたしは山の背を越えた』淺井眞男訳)

抱え
(レオポルド・セダール・サンゴール『シニャールに捧げる歌(カーラムのために)』登坂雅志訳)

持っている
(ヴェルレーヌ『汽車の窓から』堀口大學訳)

わたしにとって、
(サムエル記下一・二六)

これはおそろしく重いわ。
(ゲーテ『ファウスト』第二部、相良守峯訳)


それには、
(シェイクスピア『マクベス』第五幕・第四場、福田恆存訳)

イエス・キリストの
(ポール・クローデル『眞晝の聖女』佐藤正彰訳)

I.N.R.I.
(三省堂『カレッジ・クラウン英和辞典』)

(Iesus Nazarenus,Rex Indaeorum ユダヤ人の王、ナザレのイエス)
(三省堂『カレッジ・クラウン英和辞典』丸括弧加筆=筆者)

という名が
(ヨハネの黙示録一九・一六)

しるされていた。
(ヨハネの黙示録一九・一六)


  Maximilian Kolbe

キリストは、いくつにも分けられたのか。
(コリント人への第一の手紙一・一三)


  Jeanne d'Arc

御覧なさい、わたくしを。
(バイロン『マンフレッド』第三幕・第一場、小川和夫訳)


そこで、
(テモテへの第二の手紙二・一)

彼女は
(ヨハネの黙示録一八・八)

ハンカチの端をつまんでひっぱりだし、ひろげて見せた。
(ジョイス『ユリシーズ』1・テーレマコス、高松雄一訳)

ありありと
(ランボー『音楽につれて』堀口大學訳)

浮かびあがる
(ダンヌンツィオ『アルバの丘の夕ぐれ』岩崎純孝訳)

白百合、
(レミ・ドゥ・グルモン『むかしの花』上田敏訳)

乙女の騎士、
(ゴットフリート・フォン・シュトラースブルク『トリスタンとイゾルデ』第十三章、石川敬三訳)


  Maximilian Kolbe

とてもはっきり見える。
(ラールス・グスタフソン『哲学者たちの対話』飯吉光夫訳、句点加筆=筆者)

燃えている!
(ハンス・カロッサ『蝶に』片山敏彦訳)

火の刑罰を受け、人々の見せしめにされている。
(ユダの手紙七)

とてもはっきり見える。
(ラールス・グスタフソン『哲学者たちの対話』飯吉光夫訳、句点加筆=筆者)


  Jeanne d'Arc

あれはわたしなのよ──
(アンナ・アンドレーヴナ・アフマートワ『ヒーローのいない叙事詩』江川卓訳)


  people

殺せ!
(ヴェルレーヌ『詩法』堀口大學訳)

殺せ、殺せ、
(ヨハネによる福音書一九・一五)

早く殺せ。
(ブルフィンチ『中世騎士物語』野上弥生子訳)

殺してしまえ!
(ブルフィンチ『中世騎士物語』野上弥生子訳)


  Pierre Cauchon

異教徒よ!
(エリオット『荒地』大澤實訳、感嘆符加筆=筆者)

異端のものよ!
(ゲオルク・トラークル『眠り』高本研一訳)

女は男の着物を着てはいけない。
(申命記二二・五)


  Jeanne d'Arc

なぜそんなことをおっしゃいますの?
(シェイクスピア『オセロウ』第五幕・第二場、菅泰男訳)


  Pierre Cauchon

主はそのような事をする者を忌みきらわれるからである。
(申命記二二・五)


  Jeanne d'Arc

神さま、
(シェイクスピア『オセロウ』第五幕・第二場、菅泰男訳)


  Pierre Cauchon

罪を白状しろ。
(シェイクスピア『オセロウ』第五幕・第二場、菅泰男訳)


  Jeanne d'Arc

神さま、
(シェイクスピア『オセロウ』第五幕・第二場、菅泰男訳)

神さま、
(シェイクスピア『オセロウ』第五幕・第二場、菅泰男訳)

異端糺問官は
(ズビグニェフ・ヘルベルト『マーギェル』工藤幸雄訳)

わたしの知らない事をわたしに尋ねる。
(詩篇三五・一一)


  Pierre Cauchon

黙れ、静かにするんだ。
(シェイクスピア『オセロウ』第五幕・第二場、菅泰男訳)

焼き場はすでに設けられた。
(イザヤ書三〇・三三)

多くのたきぎが積まれてある。
(イザヤ書三〇・三三)

haeretico comburendo.
(岩波書店『ギリシア・ラテン引用語辭典』)

異端者は燒かれるべき。
(岩波書店『ギリシア・ラテン引用語辭典』)

火炙りの刑に値する。
(トルストイ『ドン・ジュアン』第一部、柴田治三郎訳)


  Judges

異議なし、異議なし、
(ゲーテ『ファウスト』第一部、相良守峯訳)


  Pierre Cauchon

さあ、これを殺してしまおう。
(マルコによる福音書一二・七)

宣告はくだされたのだ。
(バイロン『マンフレッド』第一幕・第一場、小川和夫訳、句点加筆=筆者)

神聖な焔で貴様を焼いてやろう。
(ゲーテ『ファウスト』第一部、相良守峯訳)

死ぬがよい!
(ゴットフリート・ベン『急行列車』生野幸吉訳)

火を持ってこい。
(シェイクスピア『ジュリアス・シーザー』第三幕・第三場、中野好夫訳)

火を放て。
(パブロ・ネルーダ『マチュピチュの頂』野谷文昭訳、句点加筆=筆者)


  Jeanne d'Arc

神さま、
(シェイクスピア『オセロウ』第五幕・第二場、菅泰男訳)


  Pierre Cauchon

火を放て、
(パブロ・ネルーダ『マチュピチュの頂』野谷文昭訳、読点加筆=筆者)

小鳥を飛ばせてやれ、
(シェイクスピア『ハムレット』第三幕・第四場、大山俊一訳)


その汗布がしめされているあいだじゅう、
(ダンテ『神曲』天堂篇・第三十一歌、野上素一訳)

燃えていく火の
(ジョン・ベリマン『ブラッドストリート夫人賛歌』澤崎順之助訳)

匂いがした。
(アレン・テイト『魂の四季』成田成壽訳、句点加筆=筆者)


  Jeanne d'Arc

わたしの皮膚は黒くなって、はげ落ち、
(ヨブ記三〇・三〇)

わたしの骨は熱さによって燃え、
(ヨブ記三〇・三〇)

火の燃えくさとなって焼かれる。
(イザヤ書九・五)

私はいま燃えているのだ。
(リルケ『来るがいい最後の苦痛よ』富士川英郎訳、句点加筆=筆者)


  Maximilian Kolbe

あなたが見える。
(ヴェルレーヌ『夜の鳥』堀口大學訳、句点加筆=筆者)

あの日のあなたが見える。
(ヴェルレーヌ『夜の鳥』堀口大學訳、句点加筆=筆者)


教会の外、
(リスペクトール『家族の絆』水牛、林田雅至訳、読点加筆=筆者)

森では
(エリオット『寺院の殺人』第二部、福田恆存訳)


(シェイクスピア『マクベス』第二幕・第二場、福田恆存訳)

が、
(シェイクスピア『ハムレット』第一幕・第一場、大山俊一訳)

生まれる
(パブロ・ネルーダ『呪い』田村さと子訳)

雛を
(ミストラル『プロヴァンスの少女』杉富士雄訳)

間引きする。
(ロバート・ロウエル『日曜の朝はやく目がさめて』金関寿夫訳、句点加筆=筆者)

神の姿が
(ビョルンソン『人の力を超えるもの』第二部・第二幕・第三場、毛利三彌訳)

現われた。
(イェイツ『クフーリンの死』尾島庄太郎訳)

神の
(レオポルド・セダール・サンゴール『春の歌』登坂雅志訳)

足が
(エウジェーニオ・モンターレ『ヒットラーの春』河島英昭訳)

土くれのように
(アンドレ・デュ・ブーシェ『白いモーター』湯浅信之訳)

ひな鳥を
(フェンテス『脱皮』内田吉彦訳)

踏みつぶす。
(ゴットフリート・ベン『われらは芥子の野に・・・・・・』生野幸吉訳、句点加筆=筆者)


  Maximilian Kolbe

見よ、ここにキリストがいる。
(マタイによる福音書二四・二三)

わたしたちの主イエス・キリストである。
(ローマ人への手紙一・四)

そしてまた
(シェイクスピア『マクベス』第一幕・第五場、福田恆存訳)

あなたの神
(ルツ記一・一六)


(コリント人への第一の手紙一〇・一七)

わたしの神、
(ルツ記一・一六、読点加筆=筆者)

イエス・キリストである。
(ローマ人への手紙一・四)


  Jeanne d'Arc

さあ、その雛をちょうだい。
(ミストラル『プロヴァンスの少女』杉富士雄訳、句点加筆=筆者)


  Maximilian Kolbe

お前は何を呉れる?
(ハンス・カロッサ『聖者の手の上の小さな都』片山敏彦訳)


  Jeanne d'Arc

神の御足の下で
(レオポルド・セダール・サンゴール『春の歌』登坂雅志訳)

苦しみを。
(マックス・ジャコブ『瞑想』齋藤磯雄訳)


  Maximilian Kolbe

そなたの両手は祝福されている。
(リルケ『告知』石丸静雄訳、句点加筆=筆者)

わたしはそれをあなたの手にわたす。
(士師記七・九)

受取るがいい、
(リルケ『オルフォイスのソネット』高安國世訳)

Est tuum.
(岩波書店『ギリシア・ラテン引用語辭典』)

それは汝のものなり。
(岩波書店『ギリシア・ラテン引用語辭典』)

われわれを造った神は一つ。
(マラキ書二・一〇)

わたしの神
(ルツ記一・一六)


(シェイクスピア『マクベス』第三幕・第一場、福田恆存訳)

あなたの神は
(ルツ記一・一六)

一体である。
(マタイによる福音書一九・六)

これらはわたしの手で一つとなる。
(エゼキエル書三七・一九)


  owl

ほう!
(シェイクスピア『空騒ぎ』第三幕・第二場、福田恆存訳)

ほ、ほう!
(シェイクスピア『空騒ぎ』第三幕・第三場、福田恆存訳)

阿呆がきたよ、ほう。
(シェイクスピア『十二夜』第二幕・第三場、小津次郎訳)


死んだ
(エドウィン・ミュア『時間の主題による變奏』第九曲、大澤實訳)

ひな鳥を
(フェンテス『脱皮』内田吉彦訳)

ひとまたぎ、
(ヴェルレーヌ『コロンビーヌ』堀口大學訳)

ひとりの男、登場する。
(ゴットフリート・ベン『肉』生野幸吉訳)


  King Lear

みんな死ぬのじゃ。
(シェイクスピア『ヘンリー四世』第二部・第三幕・第二場、中野好夫訳)


  Pier Paolo Pasolini

触るな、阿呆!
(シェイクスピア『空騒ぎ』第四幕・第二場、福田恆存訳)

それに触わるな!
(J・G・バラード『太陽の帝国』第一部、高橋和久訳)
















ピカッ
(辻真先・原作/石川賢・作画『聖魔伝』第二十九章)
















ズズーン
(辻真先・原作/石川賢・作画『聖魔伝』第十四章)














________________________________________


Ararat



  Hans Giebenrath

踏む者もなくなった
(エレミヤ書四八・三三)

僕の踏みつけられた靴、
(ジョン・ダン『香水』湯浅信之訳、読点加筆=筆者)

森のなかに、
(ゲーテ『ファウスト』第二部、相良守峯訳)

あの靴が
(シェイクスピア『ハムレット』第一幕・第二場、大山俊一訳)

いつまでも残っているにちがいない。
(ボルヘス『一九八三年三月二十五日』鼓直訳)


  Dolores Haze

その靴をはかせてやるといいわ。
(ガルシア=マルケス『百年の孤独』鼓直訳、句点加筆=筆者)

あの森の中で
(ジャン・ジュネ『花のノートルダム』堀口大學訳)

虐殺された
(ジャン・ジュネ『花のノートルダム』堀口大學訳)

歩兵の
(イザヤ書九・五)

足が
(エレミヤ書二・二五)

はだしにならないように。
(エレミヤ書二・二五、句点加筆=筆者)


  Maximilian Kolbe

聖なるこの静けさ!
(ネクラーソフ『公爵夫人ヴォルコーンスカヤ』谷耕平訳)


  toad

ゲゲ
(草野心平『月夜』)

ゲゲ
(草野心平『月夜』)


蛙が鳴きだす。
(エズラ・パウンド『詩篇』第二篇、新倉俊一訳)


  Hans Giebenrath

なんだこいつ跛じゃないか。
(ゲーテ『ファウスト』第一部、相良守峯訳)


  Jeanne d'Arc

雨かしら。
(レオン・ポール・ファルグ『かはたれ』山内義雄訳)


  Dolores Haze

雨がふるのかしら?
(ルイス・キャロル『鏡の国のアリス』高杉一郎訳)


  Pier Paolo Pasolini

いづれは雨だ。
(フランシス・ジャム『お前も退屈してゐやう』室井庸一訳)


  toad

ゲゲ
(草野心平『月夜』)

ゲゲ
(草野心平『月夜』)


  King Lear

生きているのは蛙だけか?
(オクタビオ・パス『砕けた壺』桑名一博訳、疑問符加筆=筆者)

死なないのは蛙だけなのか?
(オクタビオ・パス『砕けた壺』桑名一博訳)


  Hans Giebenrath

びっこひきひき、雨の中か!
(シェイクスピア『ヘンリー四世』第一部・第三幕・第一場、中野好夫訳)


  Pier Paolo Pasolini

それ、ひき蛙、
(シェイクスピア『マクベス』第四幕・第一場、福田恆存訳)

雨を降らせよ。
(『ブッダのことば−スッタニパータ−』第一蛇の章二ダニヤ、中村元訳)


  King Lear

さあ、そろそろ森から離れるときがきた、
(ダンテ『神曲』地獄篇・第十四歌、野上素一訳)


  Pierre Cauchon

ここから出て行けば、この世で再び一同が逢うことは決してないだろう。
(ブルフィンチ『中世騎士物語』野上弥生子訳)


  Jesus Christ

それもよい。
(エミリー・ブロンテ『わが思うひとの墓』斎藤正二訳)


  Dolores Haze

あたしたちのあとにくるのは大洪水よ、あとはどうともなれ、よ、
(ゴットフリート・ベン『掻爬』生野幸吉訳)


  Jeanne d'Arc

After me the deluge!
(三省堂『カレッジ・クラウン英和辞典』)

後は野となれ山となれ!
(三省堂『カレッジ・クラウン英和辞典』)


  All the Players

After us the deluge!
(三省堂『カレッジ・クラウン英和辞典』)

後は野となれ山となれ!
(三省堂『カレッジ・クラウン英和辞典』)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(ネクラーソフ『公爵夫人トゥルベツカーヤ』谷耕平訳)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(ネクラーソフ『公爵夫人トゥルベツカーヤ』谷耕平訳)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(ネクラーソフ『公爵夫人トゥルベツカーヤ』谷耕平訳)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(ネクラーソフ『公爵夫人トゥルベツカーヤ』谷耕平訳)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(ネクラーソフ『公爵夫人トゥルベツカーヤ』谷耕平訳)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(ネクラーソフ『公爵夫人トゥルベツカーヤ』谷耕平訳)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(ネクラーソフ『公爵夫人トゥルベツカーヤ』谷耕平訳)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(ネクラーソフ『公爵夫人トゥルベツカーヤ』谷耕平訳)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(ネクラーソフ『公爵夫人トゥルベツカーヤ』谷耕平訳)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(ネクラーソフ『公爵夫人トゥルベツカーヤ』谷耕平訳)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(ネクラーソフ『公爵夫人トゥルベツカーヤ』谷耕平訳)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(ネクラーソフ『公爵夫人トゥルベツカーヤ』谷耕平訳)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(ネクラーソフ『公爵夫人トゥルベツカーヤ』谷耕平訳)

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(ネクラーソフ『公爵夫人トゥルベツカーヤ』谷耕平訳)

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(ネクラーソフ『公爵夫人トゥルベツカーヤ』谷耕平訳)

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(ネクラーソフ『公爵夫人トゥルベツカーヤ』谷耕平訳)

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(ネクラーソフ『公爵夫人トゥルベツカーヤ』谷耕平訳)

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(ネクラーソフ『公爵夫人トゥルベツカーヤ』谷耕平訳)

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(ネクラーソフ『公爵夫人トゥルベツカーヤ』谷耕平訳)

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(ネクラーソフ『公爵夫人トゥルベツカーヤ』谷耕平訳)

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(ネクラーソフ『公爵夫人トゥルベツカーヤ』谷耕平訳)

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(ネクラーソフ『公爵夫人トゥルベツカーヤ』谷耕平訳)

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(ネクラーソフ『公爵夫人トゥルベツカーヤ』谷耕平訳)

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(ネクラーソフ『公爵夫人トゥルベツカーヤ』谷耕平訳)


  Pier Paolo Pasolini

カット、
(ジャン・ジュネ『花のノートルダム』堀口大學訳、読点加筆=筆者)

カット。
(ジャン・ジュネ『花のノートルダム』堀口大學訳、句点加筆=筆者)

すばらしい!
(ガルシア=マルケス『悪い時』高見英一訳、感嘆符加筆=筆者)

すばらしい!
(ガルシア=マルケス『悪い時』高見英一訳、感嘆符加筆=筆者)


  Dolores Haze

それでおはなしはおしまい?
(フェンテス『脱皮』内田吉彦訳)


  Pier Paolo Pasolini

やりなおしだ。
(コクトー『傷ついた祈り』堀口大學訳)

やり直し!
(ラディゲ『ヴィーナスの星』江口清訳)


  Jeanne d'Arc

嘘!
(テネシー・ウィリアムズ『欲望という名の電車』小田島雄志訳)


  Dolores Haze

また?
(ガルシア=マルケス『悪い時』高見英一訳)


  Pier Paolo Pasolini

もちろん。
(シェイクスピア『オセロウ』第四幕・第三場、菅泰男訳)

das ist eure Pflicht;
(Goethe"Faust"Zweiter Teil,l.11665,C.H.Beck,Munchen,1991,p.351.)

それがお前たちの勤めなのだ。
(ゲーテ『ファウスト』第二部、相良守峯訳)


夏の虫(三篇)

  

飴んぼ(アメンボ)
熟れた果実を踏みにじってただれた足を
綺麗に舐めとってくれるペットを探しているの
水溜まりをとっかえひっかえ歩き渡るアメンボは
せっけん水で足をごしごしすると
溺れてしまうって話ですわよ
ねぇ試してみましょうよあの水溜まりの上なら
電灯もうるさい虫の声も私たちには届かないわ
アメンボのお嬢様がお御脚舐めさせたげる
アメンボのお嬢様が生き甲斐与えてあげる
どう私のつま先つめたいでしょう
ちょっとした荒波を乗り越えてきたところですのよ
別にあなたの為ではありませんけど感謝ぐらいしなさいよね
顔が怖いから優しく燃えてねせっけんさん
わたくしまだ濡れた事がありませんの

日暮らし(ヒグラシ)
その日暮らしの最後の一匹
屈辱がじわじわと快感に変わったクソ暑い午後3時
隣の木にいた奴らは夕立と共に鳴きやんで
夕焼けが目に染みても再び鳴かなかった
マジな話みんなどこへ消えちまった
最後まで諦めんな絶望すんな生きているうちは俺たち鳴きあかそうぜ
なんて言ってた奴はある日地面に落っこちて野良犬に食われてた
理想は黒髪ロングで三十代なかばむっちり系の美女もちろんその女の初恋の相手は俺な
そいつは虫かごで沢山のメスに囲まれてモテモテになっていったがその後を知らない
俺この木にしがみついてて何も間違ってないよな
生き物として何も終わってないよな
どうせ夏が終わるんだったら
最後に俺も何か面白いことすりゃ良かったかな
なんて後ろ向きに夢を見ている空しさよ
空回りする欲望に吹かれ
空笑いするしかないぜ
あー俺って鬱なセミだったよな
略して鬱セミだったよな

強請りか(ユスリカ)
本音を申しますと
この子が産まれてきてもどうせ
不幸な生き方しかさせてあげられないのだからと
私は出産を諦めて
あなたの家に逃げ込んで
この夏までひっそりと生きてきました
臆病に吹かれた私は
母親失格なのだと思います
でもある日
黄金色のカブトムシが現れて
私は何故かその虫を神だと知っていました
あなたの大きな拍手に一瞬だけ潰された
私の真っ暗な視界の中央に
黄金色のカブトムシが
ぽっと現れて
私のひねくれた触角をまっすぐな角でそっとほぐして
光の向こうにぶうんと羽ばたいていったのです
気がつくと私はただひたすら蛍光灯を目指して
傷ひとつなくふらふらと飛んでいたのです
そのとき私は
この命は最初からこうする為に与えられたものであるということを
理解したのです
羽音がうるさいですか
すみません
刺された跡が痒いですか
とてもすみません
でも
少しでいいから
あの人の子を産むために
あなたの血を
私に分けてください
深い祈りと共に
こうべを垂れて
大地に口づけるように
あなたの皮膚を通して
唾液を注ぎ込みながら
真っ赤な命を吸い上げています
あなたと子供の眠りを妨げないように
夜の深い所でひっそりと


きゃらめる物語

  右肩

 半びらきの口
 ミルクキャラメル
 ぬれるミルクキャラメルの
 舌のうえの愛らしさ
 かくめいしたい 息と息
 くずれるミルクキャラメルの ながい舌
 のびて ふたつながら のびて
 舌さき を 舌のね とからみあわせ
 ぜつぼうてきに甘いまま
 のどの やわらかなのどの 奥まで
 おしこみおとしこんで
 もらいたい もらい受けたい
 あつい政治のきせつを
 ゆたかさが ろすとばーじんする きせつを
 あめとむちとキャラメルの
 きせつを
 みずと砂とヒトデの きせつを
 裸でくらす
 しろいきいろいきめこまやかなはだ
 はだけて
 あしを あしたを 大きくひらいて
 ぴんくの
 ジャングルから ながす テロップ
 あじてーしょん
 いみてーしょん
 いみねーじゃん
 かた足の太ももを かたに乗せかけて きて
 ごう引にせまる こかん 熱たいの奥そこ
 ふりそそぐ あめ
 あめの中から あめの中まで あめをこえて かすむ密りん
 しょうげきの 走る すこーる
 に おもわず
 あはん 赤はた あふん
 あふれよ ふれよ ふれ
 ふれ はたをふれ いいよる男をふれ すがる女をふれ
 あたたかだった 経ざい成長きを
 ふれ
 しゃしん立てに パリス・ヒルトン
 思いでの フジコ・ヘミングウェイ
 けん盤をとび とびこえて
 ゆびさきが
 ゆびのはらで ひたひたと ささやきかける
 つめたいおしり
 つめたい丸みを ばらばらに ぱらぱらと
 ゆびがたびする
 ゆび 五ほんぷらす五ほんいこーる十ぽん
 の ゆびが
 つらく みじめな たびをする
 白いはとはのあいだ くちびるのはしから
 つつつと
 つつつつつと
 もれる 甘い苦もんの よだれ
 むざん むさん階級
 吐いきも 走れ 玉のしずく
 おもわず あらがえば
 喜びのきふくを ちちとみつのながれる
 はだのきふくを なめて ながれこむ 
 するどいき裂の みずうみを わって
 わたって 中みのない記おくへ
 ぼくがぼくという一人 で なかった記おくへと
 はてなく もぐろうと するそれも
 丸い しへの いざない
 丸い 百おくのあたま が 寄りあい寄せあい
 たかめる 音のない 怒り
 しづかでうつくしい現しょう
 うつくしい
 だけの えねるぎー ぎりぎりと 歯ぎしりも
 する 人とうまれた 不こう
 くやしさ
 もう、我まん 
 しない こらえない
 やけた砂 つぶだつねん膜
 ねん膜を あぶる燐寸
 舌さきあかく とろかせ
 もうそうも にくたいも
 もやせ砂つぶのなかまにみなかえるまで
 砂として 砂を うめよ
 増やせよ 地にみてよ
 砂きゅうが
 砂きゅうの しるえっとが
 さまざま そう似形をきそう
 ゆうぐれの 地へいに
 なるまで
 ふかく 鼻こうふかく
 におう満ぞくと 安そくの
 ため その
 ため その
 こと葉やみ来を すてて
 ばらばらのぶつぶつのこなごなのつぴつぴのつつつつに
 なることができて
 しまう
 ように。


  とうどうせいら

 
 
手と手を
握って
走ったら
あなたのてのひらと
わたしのてのひらの間で
ちゃぷんと音がする

違った遺伝子を持つ皮膚と皮膚の
深い狭間には
ブルーグレイの湖があって
あなたが駆け上がった
エスカレーターの段も
わたしがたくし上げた
スカートの裾も
そのおもてに
映っていた

息が
苦しくなるのは
駆けているせいと
わたしは
言い訳をして

湖面には
一面のさざなみ
刻んで散らした
ネオンの光
向こう岸から
強く寄せる波
こちらから
打ち返す激しい水しぶき

もう少し
明るかったら
しぶきが残す白い飛沫まで
見えてしまいそうだった

引っ張るわけでも
ついてゆくわけでもなく
初めて同じはやさで
同じところまで
走る

つながった湖を
ふたつのてのひらで
隠した私たち
上昇する水温
ラメ入りの夜風

やわらかなペチコートが
ひそかに脚に絡まっても


微かな声も漏らせない
 
 
 


Land Scape Goat

  雛鳥むく

わたしの背に
連綿とつづく原野
そこに暮らしていた
一匹の仔兎が
今夜
死にました

という
あざやかな寓話を
包帯にくるんで
玄関の扉に
吊るしておきます
けれども街には
乾いた三角点が
散乱しているから
誰もが尾鰭の手入れに夢中で
わたしはひとり
兎を追悼する
準備にかかりました

兎を、弔う
兎を弔う兎を、弔う
兎を弔う兎を弔う兎を、弔う
兎を弔う兎を弔う兎を弔う兎を、弔う

わたしの背に
連綿とつづく原野
そこに暮らしていた
一匹の仔兎が
今夜
死にました





骨のない魚を
のみこんでいくネオン
空中庭園のうえから
たくさんの神話が
飛びおりてしまった
というひとつの神話を
空中庭園のうえから
突き落としたのだけれど
ひとつも
血は流れませんでした

(そのとき
(兎の死骸は
(神話を
(肯定できなかった

神話と、
そうでないものが
入り混じって
忘れられた幽霊たちは
清潔な比喩を
夜空に点らせていきます





兎の死骸がわたしに問いかける 散華の花言葉を知っていますか 答えられるはずがないなぜならわたしは自分の尻尾を追いかけている最中で 指先から葉脈を追っていくとやがて深い海溝に辿り着いた 夜闇が信号機を運んでくるのではなく点滅を繰り返す黄信号が夜を運んでくるのだから 影絵で遊ぶ手が失われたから夜は薄暗いのかもしれないと呟く右手に絡まる影が兎の死骸をぐわりと攫っていったとき街には三角点が散乱し 空中庭園のうえから飛びおりていくひとつひとつの清潔な比喩が骨のない魚の鰓を手入れするのだとして

だとしたら、
もしも、
仮に、

神話を
量産する
わたしが
ひとつの
神話
だとしたら、

ただひとつの変貌が
わたしの手ではおこなえない
ナイル青の
審判を
待つ
誕生
兎が死ぬ世界にいる
わたしの誕生
兎が死ぬことのない世界にいる
わたしの誕生

あらゆる
病理というものを
内包した
神話を
空中庭園から
突き落とすわたしは
青く燃えあがる
アスファルトのうえに
突き落とされたかった
どうせ血は流れない





わたしの背に
連綿とつづく原野
そこに暮らしていた
一匹の仔兎が
今夜
死にました

という
あざやかな寓話を
包帯にくるんで
玄関の扉に
吊るしておきます
けれども街には
水没のはじまりを
告げる鐘の音が響き
人々は
そもそも 兎が
うまれることのなかった世界に
黙祷を捧げていたので
わたしはひとり
兎を追悼する
準備にかかりました

兎を、弔う
兎を弔うわたしの誕生を、祝う
兎を弔うわたしを祝うわたしを、弔う
兎を弔うわたしを祝うわたしを弔うわたしの誕生を、祝う

わたしの背に
連綿とつづく原野
そこに暮らしていた
一匹の仔兎が
今夜
死にました

という
ひとつの間違い

約束を啄む
巨大な世界樹に
わたしは
愛犬と同じ名前を付けてやる
ポチ
ほら ポチ
わたしは犬など
飼ってはいないのだけれど


どぐされ放浪記

  Q

押し迫った、庭園に、私達の庭師は、

 庭園の、暗さは、何度も、目をこする事で、徐々に明るさにみたされていった、
 「何度も、こすると目が真っ赤になるね」
 「とてもじゃないけど、この通りの多さにはうんざりしてしまうね」
 「もう憶えきれないわ。明日も、明後日も、憶え切れないまま、多くの通りを歩くのよ。」
 「目が真っ赤になって、はじめて、庭園は、明るさの中に、」
 「私達が目をこするたびに、彼は、庭園を横切る」
 「この壁の高さに、貴方の額は汗ばんだ」
 「何度もそうやって、犬達が雨季を運んでくる」
 「噴水は、斜面を転がって、扉をたたいた」
 「そう、その音は、私達に手をふらせる」
 「彼に向かってね」
 「帽子をかぶらない日は、季節が言葉を失ってから」
 「口笛は、湿度の子供達を寄せる」
 「窓辺には、花の名前が一切出てこない本を」
 「この庭に生えるすべての草木の、中に、庭師はいつだって埋もれたままだから」
 「彼は知らないよ、花の名前も木の名前も」
 「遠来が聞こえるのは、彼が腰を曲げて石をひろったからかしら」
 「片方の目だけがいつだって赤い。」
 「そのせいで、花は恥らわずに咲ける」
 「庭園の、明るさは、彼の、両目と比例して、」
 「まるででたらめな数式で、子供が答えを勝手に導きだしてしまうようにして」
 「暗くなる」
 「暗くなる前に、また目をこする」
 「赤くなる。何度も」

 午後は、煙で、くだをまいて、

 イスタンブールのロックはそれは過激で、地球をぐるっと一周してもちっともかいわくならないくらい嫌なやつなんだ
 そんなやつのなかに、混じって、時々、行進がはじまるんだってさ、
 征服されたり、されなかったり、そんなことはどうでもよくて、どこかの王朝がぶん殴られるよりも、安く、俺達の、
 酒は安いときてる、
 朝から、飲みまくるのは、くだをまいて、いっその事を、さけをやめるためのなんだが、
 そうやって飲んでいるうちに、どうしようもない奴らが集まって、酒をやめようと飲み続けるもんだから、まったく
 やめることができないときてやがる
 カウンターの向こうで、若いバーテンが、どんどん強い酒をぶんがてきやがる、それを受け止めては臭い息を吐きながら、
 飲みつくす、若い女の給仕は毎度毎度、金の勘定をまちがったふりをして、おこづかいをためて、酒の飲まない男に、
 「酒飲みはしんでしまえ!」と愚痴りながら貢いでやがる
 外では、鶏が雨の中うんざりするほどないてやがる、朝でも、昼でも、夜でもないってのによ、
 もうあいつは狂っちまってるから、
 おかげで、俺達は安心していつまでたっても酒が飲める

 ぷー子ちゃん出勤

 ぷー子ちゃん、ぷー子ちゃん、便秘のままベッドに横ならないで、いっそのこと枕を抱いてランドセルをせおえばいいんだよ、
 ぷー子ちゃんは、醜いブタだから、恥ずかしがりや、照れくさそうに、先生に怒られてパンツを見せて笑顔、
 だからいつだって、スカートは天上に張り付いたまま落ちてこない
 ぷー子ちゃんの机は、お父さんの手袋でいっぱい、教科書なんてひとつもはいってない、
 教科書が無いから、勉強は、床に教えてもらう、
 テストの時、床がこっそり答えを教えてくれるから、ぷー子ちゃんは、いつだって30点!
 ねぇねぇ、ぷー子ちゃん背中に背負ったランドセルの中に、
 明るい日本語がたくさんつまっていて、それらすべてが、
 理科の実験で気体になっちゃったから、言葉がはなせないんでしょ?
 だから、家庭科の時に、言葉を縫い合わせなくちゃいけない
 国語の時間は、いつだって外国語の練習だから、
 大きな口をあけて、手を上げて
 


永久圏外

  美裏

弱酸性のお前らがのさばるこの街
わたしはそこをすり抜けるように歩く
耳にイヤーフォンを突っ込んで
最寄りの駅まで向かう道のりに
日本一うまいラーメン屋という看板が三枚あったことについては
わたしは
特に
思うことは無い
無いね
ああ無いよ
なぜならこの世界はむちゃくちゃだから
一見、理論整然としているように見えて実際はそうではないから
だから
わたしは突っ込んだイヤーフォンから
わたしの求める情報だけを摂取する
だが狂い始めた歯車は止まらなかった
お気に入りのラブソングからは毛細血管という言葉がやたら登場
おちつけ
わたしは大丈夫
歩調を緩め、目を閉じて、深呼吸をし、再びこの世界を凝視した
………
そこはいったい何処だったのだろう?
確かに数秒前と何も変わっていないように思えた
近くで誰かが叫び出した
「風上に逃げろ!」
それが合図だったのか、交差点にいた人々は大きなうねりとなり一方向へと駆け出した
わたしは茫然と立ち尽くしていた
そこへマウンテンゴリラを乗せた人力車が登場
「自分の星を探す旅に出る途中です」
荷台のゴリラはそう言うと直後、電信柱にぶつかって脳をはみ出させた
人力車を引いていた男はアスファルトに散らばったゴリラ脳をごそごそとかき集めようとしている
ねじり鉢巻をぎゅっと締め下半身には何も履いていない
………
わたしは黙る
木の葉が風に揺れ
マフィアが大きく、くしゃみをした
気づけば降り注がれているのは夏の日射しだった
オフィス街の、その、ど真ん中で子どもたちがレディオ体操をしている
「うでをおおきくまわしいいい、がむをかみかみいいい」
傾きかけてるビル
いつそれが崩れ落ちて子どもたちをぺしゃんこにしてもおかしくない
見つめる一級土木建築士
区役所の人間に怒られていた
「あんたよくもこんな欠陥構造物を作ってくれたな!」
だが建築士はそのずさんな工事をワイルド、と言い切った
わたしは駆けた
学校へいかなくちゃ!!
信じられるものは何も無い
わたしは最後の記憶を頼りに行動を決めるしかない

『6時34分の快速急行におくれちゃう』

息を切らして到着した駅前のタクシー乗り場
冬眠から覚めたクマさんたちが大挙していた
「ここどこ?」
「えき」
はあはあ……
わたしは肩を揺らしその光景を眺めた
私鉄を使って街まで降りてきたのか?
クマさんたちは各々の手のひらにSuicaをセロハンテープでぐるぐる巻きにして貼り付けていた
だから電車に乗れたのだ
改札を通るときJR職員は何も言わなかったのだろうか?
ホームへと向かう途中さらにぞろぞろとやって来るクマさんたちとすれ違った
自動改札で職員はややうつ向き加減に両手をへその辺りに置き何も言わなかった
クマさんが自動改札をくぐり抜けるときのマニュアルが無かったからだ
わたしはケータイ画面を開いた
『永久圏外』
パタムと閉じて
もう学校に間に合わないことを知る
わたしは歩を緩め引き返すことにした
再びロータリーへと続く階段を降りて行った
太陽は眩しく、空は青く澄み渡っていた
わたしは、なんだか、愉快な気持ちになってきた
空からうどんが降ってきたのだ


航海に出ようよ

  美裏

新大陸を探す航海に出ようよ
いますぐに
思い立った今日というこの時に
持ち物はポケットの中に入るもの
航海に出よう
吠えまくる犬といっしょに
こんないいお天気の日に
わたしたちはお出かけします
そしてもう二度と帰ってきません
「さよなら」
は大気に散るように消えていきました
前世のように遠ざかる日々
学校で
先生に「階段に座るな!」と注意されたわたしたち
「ご指摘ありがとうございます!」
と一斉に立ち上がりお辞儀をした
「ふざけるな!」
と怒鳴られてびんた
こんな理不尽なことってある?
いや
ない
と自問自答にこくんこくん頷く
わたしたちはただはしゃぎすぎて酸欠で死にたいだけだったんだ
でも祭りの閉鎖
それに伴うやり場の無い想い
ペットボトルのラベルを剥がしたりしているうちに
いつも夏が終わってしまっていた
いつもわたしたちは遅すぎる
取り返しがつかなくなってようやく気付く
そして
賞味期限のきれたやばいショートケーキをむしゃむしゃ食べて
「おいしいね」
って
わたしたちの舌は終わっていた
だから
新大陸を探す航海に出ようよ
ポケットの中にコンビニのレシートを入れて
わたしたちは新大陸を探す航海に出る

わたしたちは卒業式に出席しない
終わりは自らの手で行うのです
ふらりと道に迷ったふりをして
もう二度と戻ってきません

潮風を浴びて
きみの最後のリンスのいい匂い
「あんた、素敵な方向音痴だね」
そう船長に誉められた
まあね
わたしは笑う
そうしてぐるんぐるんアレを回す
道連れなのだ
わたしの感覚に
でもそのおかげでくじらに会えるよ
きっと
虹色に輝いてるまだ誰も見たことのないやつ………

わたしたちは旅に出ました
それからかなりの月日が経ったようです
新しい大陸はまだ見つかりませんが
予兆はあります
もし誰かさんが言ってみたいに
この大地がほんとに真ん丸なら
わたしとあなたも再び会えるかもしれませんね
その時はもっと違った形でわかり会えるかな?
でも
でもね
世界の端は崖になっていて
そこから落っこちて死んじゃうかもってちょっと思ってる


多くの、死の、帰りに

  Q

足音の多くが、
冬を蹴散らした、
君の、首は、黒い、
またずっと、長く、
手は白い、
そのうち、
君の友人も、
この輪に加わるだろうから、
今から、準備しなくちゃいけない、

夜は、叫びの中で、ずっと短い、
夜は、孤独の中で、ずっと浅い、
夜は、明るさの中で、ずっと脅えている、

王座だけが、優しさに包まれている、
長い間、王を失った、
彼の、瞳は、母の、乳で洗われ、
父の、体毛で、しごかれ、
もうむちゃくちゃだ、

砂漠は、歴史の中で、一度も、
孤独じゃなかった
―いいえ、一人じゃなかった、
砂嵐の中に、影がばら撒かれて、
夜の間に、それらは温められて、
昼に、冷たく倒れた、

多くの、死の帰りに、
ずっと、道は満たされていて、
それは長い、
長いようで、短い、と、
彼女は言うけど、
それは、瞳では語らない、
言葉、
口は、灰を、
涎に変えた、
その晩に、肺に、
魂が集って、
ずっと動かない、

そしてまた、
多く、の、死の帰りに、
うんざりするほどの、
体を浴びる、
彼の体、
彼女の体、
知らない誰かの体、
立ち上る、蒸気が、
この世界を、満たして、
大きな、寝息をたれはじめるのが
聞こえる、

夜につがれた、
水は、朝には、
もう水にかえることがない、
そこには、少しばかりの、
白さがまじって、
祝福を受けてしまっている、

金色に、群がる、
羽虫の中に、
一匹だけ、
知らない、蟻のような、
彼、
もしくは、彼女の、
ような、
そして、その周りだけが、
異様に、明るい、

よくしらない、
ものが、ずっと、
目の前を、ゆっくりと、
飛び回っている、
その数を、もう数え切れなくなる頃に、
不思議と、体は、
起き上がる、

聞け、誰かに、
彼の名前を、
彼女の名前を、
私の知らない言葉で、
私の名前が呼ばれる、
そして、飛び跳ねて、
机から落ちる、時の、
名前の、叫びが、
耳を、熱くさせて、
言葉を隠してしまう、

多くの、死の、帰りに、
体は凍える、
温めるには、眠り、
誰もいないことへの、
眠り、

遠くで、女子高生の、ぱんつが、見える、
それは白い、
もうそればかりみてしまう、


河口付近

  鈴屋


河は亡びる 海は沸く 子犬を連れた奥さんが突堤を散歩する 海 海についての感慨を厭う 指先の紫煙を潮風がぬぐう 私は知っている 見晴るかす水平線の先が瀑布だということ その奈落の底で太陽が生まれるということ 太陽は日毎天空に弧を描いては昼をつくり ふたたび奈落に落ちては一日の命を閉じる 月は生まれない なぜなら月はつねに母だからだ 乳白の相貌を空にかかげ はるかな落日を見送る 星は瀑布の飛沫にすぎず とくに使命はない 人にもとくに使命はない
   
   +       +

河は亡びる いずれ海も亡びる 私は子犬を連れた奥さんと恋愛する 私は告げる 貨幣は言葉よりも真に近く純粋で美しいと 奥さんは頬笑み 私に告げる 貨幣は真昼よりも眩く 語り継がれた海と陸の物語よりも尊いと 私はもう一度告げる 奥さんの頬笑みは貨幣よりも美しく 風雨をなだめる月よりも優しいと 浜辺の老いた波頭は来たり去り こうして私たちの恋愛は成就した

   +       +

貨幣は世界を化石化する 私はその林立するパールホワイトの世界で生きる 奥さんのトイプードルを抱いてみる 茶色い子犬の二つの眸 子犬が見ている世界には吐き気がする 海と陸を見つめる奥さんのはかなげな眼差し 世界を見るという過酷な行い けなげな睫 奥さん 私はあなたのその眸の中に永遠に棲みつきたい 見ていることが思うことであるために永遠に言葉を失いたい 遠くの鉄橋をコンテナ貨車の長い列が渡っていく その眠たげな響きにさえ 奥さんの眸は涙ぐむのですか?

   +       +

河は亡びる 杭が露出し暮れなずむ 私はそろそろ清算をしなければならない 何ごとを? 私の身過ぎ世過ぎ 山脈を削り来たった河の土砂の堆積 貨幣の浪費 太陽と月の関係 河原の斑模様の小石と小鳥の卵の関係 昼と夜の光りの貸借 奥さん 私はあなたを失ってしまいたい 水は死を誘う 私はあなたの死を夢見る あなたの入水を夢見る 奥さん 夕凪は深い慈愛を湛えている 真の悲しみは私を生かすはず 頬笑み忘れがたく 子犬を連れた奥さん    
   




 註 ・・・・「子犬を連れた奥さん」、チェーホフの同名の小説から借用
    ・・・「子犬が見ている世界には吐き気がする」、投稿欄、Jさんの「犬」という詩への右肩さんのレスよりヒントを得る。


恋の終わらせかた

  んなこたーない

 停車場では
ねむりたくない
 雪の降る体育グランドに
三脚カメラが立っていて

 あの人たちは
バナナの皮をむいている
 ばしゃばしゃと泥水に手をひたし
ぼくらはガードレールをこえた

 あれはいつのことだっただろう
何曜日? 何時何分?
 だれも知らない
たえず赤信号に監視され

 スプーン曲げの要領で
きみはぼくをなだめたけれど
舌ばかりがだらっと垂れていて
しびれていた

うす青い草のいんきのにおいに
それはなぜ?
やさしさは癌細胞のようなものだから
ぼくらは浴室で背骨を磨いた

 きみをむしばむ
虫歯のようにありふれたもの
 歯科医のようにありふれたもの
その正体をぼくは知りたい

 なのに鉤が折れ 鉤が折れるたび
パイプ椅子らがゲラゲラ笑い
 きみはすさまじい速度で枝葉をひろげ
みずからの茂みで毒草を育てた

 いっそ太陽氏の自我にはうんざりするね
サイレンが砂絵を吹き消せば
 玉葱の汁が襲撃してくる
教えて 雲に歯型をつけたのはだれ?

 川岸の鉄線が錆びるころには
歯車みたいに羽虫が飛び交う
 精巧な時のチクタクのなかで
ぼくらは溶接の火花をながめた

 それでもエスカルゴ型した耳の奥から
聞こえる 幽霊たちのタップダンスが
 物陰にひそんだぼくらの身体が
乳白色に液体化すれば

 なのに夜空は検眼表 何も見えない
何も答えない どうして?
 どうして? と炭酸は弾けるけれど
棒杭に身をあずけ 白い息を数えていよう

 まるで触れればぼろぼろ崩れる壁に
なったような気分だ
 でたらめに神経叢をなでられて
踏切のところで ぼくらは

 ぼくらの悪い遺伝ともども別れを告げた
きっといまでも
 汚物のうえで足を踏み鳴らせば
氷片がきらきら光るのに 地球は回るのに

 あの人たちはバナナの皮をむいている
いわば倒立する亀のシルエット
 よりも悪趣味に
ぼくらの恋は脱臼したのだ

 ぼくらの恋は脱臼したのだ
一息でタバコを灰にしてみても
 「手は欲望を反映している」
ならば扁平野郎は死ぬまで勝手に

 抱きあっていろ! これからだぞ!


帰り道と 亡霊

  山崎みふゆ


私の肩はいつまでも
ずっしり 重たいままなんです


ひとり
とことこ 帰り道
なんでが詰まった
赤い赤い身分証明の
亡霊のせいだと思います


降り注ぐ眩しさが 痛くて 痛くて
記憶はいつも曇り空
なのに
独り歩いた帰り道だけ
優しさに満ちて 生きています


よく 一緒に帰ったよね
あれ なんでだったっけ
偶々 方向一緒だったから
クラスも同じだったしね
なんとなく だよね


だよね?


なのに とことこ帰り道
どうしてだろう
覚えていない
一緒に帰った筈の あの子の事
どうしてだろう
思い出せない


後ろ向いてる なんで? が
ギュウギュウ パンパン
それでも壊れなかった6年保証の
赤い 赤い亡霊が
今でも私の肩にいます


独り 歩いた 帰り道


忘れ物常習犯のペルソナも
まだ 右腕に残っています


もう みえない
「明日の持ち物」


身体に合わないランドセル
両肩ずっしりめり込んだまま
こんな所へ来てました


笑い声の残響も
鼓膜に 忍び込んだまま
独り 眩しい帰り道


途中のお寺のお坊さんに
生きるってなんですか?
地獄ってなんですか?
私、死んだら どうなりますか?
柔らかな熱意は見当違いで


やっぱり とことこ帰り道


狂っていたんだと思います
普通だったと思っています
普通のままで狂ってました


赤い亡霊背負ったままで

これからも
独り


だって もう
どんなに眩しさが痛くても
私 微笑む事が出来るので


だから これから


帰ります

文学極道

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