手と手を
握って
走ったら
あなたのてのひらと
わたしのてのひらの間で
ちゃぷんと音がする
違った遺伝子を持つ皮膚と皮膚の
深い狭間には
ブルーグレイの湖があって
あなたが駆け上がった
エスカレーターの段も
わたしがたくし上げた
スカートの裾も
そのおもてに
映っていた
息が
苦しくなるのは
駆けているせいと
わたしは
言い訳をして
湖面には
一面のさざなみ
刻んで散らした
ネオンの光
向こう岸から
強く寄せる波
こちらから
打ち返す激しい水しぶき
もう少し
明るかったら
しぶきが残す白い飛沫まで
見えてしまいそうだった
引っ張るわけでも
ついてゆくわけでもなく
初めて同じはやさで
同じところまで
走る
つながった湖を
ふたつのてのひらで
隠した私たち
上昇する水温
ラメ入りの夜風
やわらかなペチコートが
ひそかに脚に絡まっても
微かな声も漏らせない
最新情報
選出作品
作品 - 20110321_246_5089p
- [優] 湖 - とうどうせいら (2011-03)
* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。
湖
とうどうせいら