頭を置き去りにして歩く、白い煙を道標として吐きながら
灯りは思い思いに燈り、星のように曖昧な輪郭
地面には産毛が生えている。泡立って固まった鍾乳石の土地
光のないことを誇っている。音のないことを望んでいる
光がないから夜なのだ。白い手の軌跡が美しい
空には無数の目がある。動物だろうと植物だろうと人だろうと
吐息が宝石だろうと鬼灯だろうと、頭が失われていようと
息が冷たく頬をさらう、熱はどこにも行かず、滴り落ちるだけ
まれに鈍器のような音がするのは、おそらく雪の塊が落ちたのだ
じっと聴き入る、また、夜空から見つめられる
ふたたび足あとを追うようにして歩き出す。まるで足あとをなぞることが
目的であるかのように、でもまた降り出せば、足あとは消える
そのときは、まるで足あとをつくるために歩く
雪の中に頭を置き去りにして
最新情報
選出作品
作品 - 20101223_800_4912p
- [優] (頭を置き去りにして歩く、) - 田中智章 (2010-12)
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(頭を置き去りにして歩く、)
田中智章