おれは警察に捕まるときになにを準備したらいいのか知らなかった
それにここは勤め先の高校の職員室でどうせ持って行きたいような私物はない
タバコは吸っておいた方がいいのではないかと思い、おれは
職員室を出た、教頭がびくりと顔を上げた、
おれは人差し指と中指の二本を口元に持っていき、前後に揺らした
教頭は黙っていた、おれはまだ逮捕されていないからだ、それから
おれは職員室を出た
体育館の裏に行く
よお。
どうも。
おれはタバコに火をつける
先客の男子学生はタバコを吸うおれの唇から10センチの場所にある火を探そうとしているようだった
昼間なので火は見えない
先生、つかまるんでしょ?
男子はそう言った
理科室のツメガエル、あれ、週イチで水代えとエサよろしく、あいつらにも言っといて
ぼくらも逮捕されますか?
されないでしょ
そうですか
男子は信じていない風でおれをじっと探っている
いや、むしろ被害者
そうですよね
そうですよね、ハート、じゃないよ
すみません
今朝、彼女は無事に出産したとの知らせが入った
驚いた親が問いただすと父親はおれだと言った
計画どおりに
もちろん、おれは父親ではなく、いまここにいる男子でもない
男子ではない
彼女の親友で恋人の女子だ
ふたりの卵巣から卵子を摘出、高カルシウム濃度と適度な電気刺激
融合と卵割の開始、子宮への着床
高校の生物部としては上出来だがやりすぎだ
おまえらね、赤ん坊は週イチの世話じゃ済まないからね
わかってる?
はい
男子は言う
おれは自分もふくめてなにもわかっていない気がした
カレンダーの上ではもうすぐクリスマスだ
ともあれメリークリスマス、よかったね、マリアさま
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作品 - 20101218_753_4906p
- [優] したく - ゼッケン (2010-12)
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したく
ゼッケン