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作品 - 20101130_440_4866p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


サンクティティ

  しりかげる

 
 
この星は
どうしようもなく球体ですので
放逐された
吐瀉物、体温、影、
この身体で分泌された、もの、が
私の背中を追ってくるはずでした


たとえば
大気圏と呼ばれる
学術的なカテゴリ
呑みこまれたのは
ガラス張りの小部屋で
どこに散っても
ひとつの青に連れられ
左脳をもたない
原始的なしくみの
むきぶつ、に
飼育される
いき、もの


(腹を引き裂かれた馬のはらわたが
ごぷっ、とこぼれて
ずるずる伸ばされてゆく
星を引き裂いて
はらわたを取り出せば
どれだけ伸びるのでしょうね)
長いものには巻かれよ
、って先生が言っていました
ですから
長い、果てしなく永い
まるでえいえん? みたいな
内蔵にくるまれて
それがしあわせだと
おもいました/おもわされました
いいえ。
しんじてみました


けれども


裂いても割いても
なかから溢れるのは
もこもこ、した、綿ばっかりで
“ぬいぐるみ”
(ためしに
私のお腹を裂いてみたら
なかには幾百もの
プチプチした卵がつまっており)
あるいはこれが
いき、もの
なのだ





、唐突に。
呼吸
億劫になって
終わらせようとしたら
内蔵、が、喉、から
せり出してきました
勝手に呼吸をはじめる内蔵たち
、すう
、はあ


そのとき
気付きました、ね。
こうやって
いき、もの



飼われている。


尻尾をひきちぎられた日、
これまで放逐してきた
吐瀉物、体温、影、
この身体で分泌された、もの、が
私の背中に迫ってきていて


繰りかえされることを拒んではみるが
置いていかれるのはたまらないから、


すぐにでも左脳を捨て
単純なしくみになりたかった


ひとしく
いき、もの、は
青を冠して
異なる内蔵に巻かれてゆく
たとえば
大気圏と呼ばれる
学術的なむきぶつ


隠されながらも
普遍だと安堵できた
張りつめる水面
浅い目覚めのなかで
「神聖とは、


騙されることでしたから」
私はただ頷きながら
はらわたを首に巻き
おだやかにねむる。


(いびつな無精卵を
つみかさねて
そのうえにねむる。)



 
 

文学極道

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