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作品 - 20101119_238_4839p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


(あさ水を弾く)

  田中智章



あさ水を弾く
風が汚されたのどをあらう
聴覚のゆめは畸形の吐いき
明日から野放しの天使が



生まれたばかり生まれたままで蟻が燃えて、逃げた骨片の表面で水が啼いている。話し声
が気になってカードを投げつけようとして水銀の川を。絵は二十二枚、それを十一枚とみ
なし一枚を除くべきか加えるべきか悩むうちに炭酸の海に無数の花が転生した。息が喉か
ら拡がる。丘には放し飼いの爪あとが夜ごと走っている。



九十九の浜を
生きたままプリンターの口からは
ぽろぽろとリングの石灰の滓
夜が仮にも夜ならば
結節をデネブとして波を口にふくむことで
「いいから」と言われた背中をみている



私は生物ではなく namamonoとして
装着した本や 海藻を
値引きしたまま歩いて
歌われれば雨に傷つき
切り開かれた体を
地面に縫いとめた



残骸の静寂は綿菓子をほおばった子の歩幅で、クレーンの鉄塊に骨を抜いた魚の亡骸と小
声で話している。野から海底から、岩が響く音の印字をレコードした婚礼が繰り返し自壊
しているのんびり、星が砂浜を降下していく根が斜めに、大きな空を裏返して夜の表面か
ら膿んだ泡が、波が冷たくて喉をあらった。
 
 

文学極道

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