背中では、ショパンが、
まだ生きていた、
ゆるやかな停滞を
微笑む、
一時も眠らない雨、
動かずにいた世界、
影のようなピアノに、
かの相貌が、
降りた
音を扱える友人、
時計が刻む一秒間、
埃まみれのアスファルト、
屋根から屋根へ走る背広、
梢の中で脈打つ若葉、
そして濡れていく
自分で淹れた
コーヒーの温度に、
息をついて、
数えきれない
その一秒、
やまない
スタッカートが、
垂らした、一筋、
偏在する始点、
つまり「わたし」
仄暗い、
世界の隅、
この部屋から
拡充して描かれる
地図を、
求めてた、
言葉の尽きた
歌を
うたおうとおもう、
そのブレスの度に、
わたしたちはうまれる、
向かう先のない、
読点が
存在するかぎり、
吐息に潰れた声で、
雨空を近づけて、
アコースティックベースのピックに、
暖色照明で浮かんでく部屋に、
マルボロの燃える香草に、
友人が組んだメジャーなコード達に、
宿る、素粒子の
わたしたちは、
雨粒となっていくから
世界が休む、
こんな日、
受け止めきれない
見たこともない、
星くずのカタチした
一秒が、
降ってくるんだ
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作品 - 20101008_691_4748p
- [佳] Rainy seconds - 破片 (2010-10)
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Rainy seconds
破片