月のない夜に
忍び込んで
心臓を手繰りよせる
手紙に宛先はなく
靴はきちんと揃えて脱いだ
扉には
呼び鈴がついていて
ひたひたと影が付き纏う
開け放たれた窓と
俯いて針を刺す母親
父親ははじめからいない
食卓で
夕飯が湯気をたてる
だれか蚊取り線香をつけて
明日は雨
間違えないで
私には君がわかる
だからお食べなさい
霧が立つのは
まだ少し先のこと
封を切る鋏
がしゃがしゃと
乱暴な音
目の上に傷
溜まる影
「ただいま留守にしております」
いいですか
ここにあるのは
比喩ではありません
対話でもありません
順番に
床板が傾いで
夜鷹の目が洗われる
書きつけられた文字が
読めずにいる
明け方
隣の家で
両親の首が落ちる
割れた爪先で
だれかが心臓を毟り取る
でもそれも
まだ少し先のこと
まじないが
飲み下される間
最新情報
選出作品
作品 - 20100930_580_4733p
- [佳] 系統学 - yuko (2010-09)
* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。
系統学
yuko