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作品 - 20100828_025_4661p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


仔犬日記

  ゼッケン

おとうさんはいつも小学校までぼくを迎えに来てくれます
その日の帰り道 ぼくたちは子犬を拾いました
おかあさん、飼ってもいいって言う?
ぼくはおとうさんにたずねます
たぶんね。父さんからもお願いしてみるよ
うん
ただいまー
玄関を開けると、いつものようにおかあさんがエプロンで手を拭きながらスリッパをぱたぱたいわせて出てきます
おかえりなさい。あら、子犬ね
ぼくはちょっとどきどきしながら言います、おかあさん、おねがいがあるんだけど
おいしそう。煮込みがいいかしら?
おかあさん、おねがいがあります、煮込まないでくださいっ!
あら、焼いた方がいいの? お父さんは?
おとうさんはすこし苦笑いしながら
食べずに飼った方がいいんじゃないかな?
まあ! おかあさんは頬をちょっと赤くして
わたしったら、食い意地張っちゃったわ。そうね、もうすこし大きくなったほうが脂ものっておいしいわよね
おかあさん、脂をのせないでください、おねがいします!
もう、この子ったら、なんでも自分の思い通りにしたいのね。かわいくなくなったわ、明日からネグレクト決定
ぼくはもうすこしで泣きそうだとぼくは思いました
おいおい、母さん、ネグレクトだなんて。この子ももう小学生だし、閉じ込めて餓死させるのはたいへんだぞ、いっそ
いっそ、なんですか? 
優等生づらでお父さんにつっこむのね、包茎で童貞のくせに
おかあさん、ぼく小学生です。そこに劣等感はまだありません
じゃあ、どっちかに決めなさい。子犬を食べるの? あなたを食べるの?
いつどこでなぜ、そんな二択になったの?
おとうさんはぼくの肩に大きな手をのせると、言います
おまえが決めなさい
ぼくは逃げられないことを悟りました

子犬、子犬を、子犬を食べましょう、みんなで!

おとうさんとおかあさんは顔を見合わせると、すこし安心したようにうなずき合いました
それから子犬をおかあさんに渡し、ぼくは自分の部屋に入りました
そして、晩ごはんができるまでの間、新しく日記をつけ始めました
はじめまして。ぼくは今日からこの家の子犬になりました
これからみんなと楽しく遊ぶ予定です
おとうさん、おかあさん、小学生のぼくと子犬のぼく、いっしょにいっぱいいっぱい遊びたいです
       わん、
 わん、

    わわん、   

           わん、 

        わん。

文学極道

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