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作品 - 20100701_609_4508p

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夜バス、或いは乗客。(一)

  黒沢


傷付いている! ベッドに横たわるとき、何故だかそう思う。すると、私のうえにバスが現れる。見慣れたあの、鉄の箱が近づいてきて、丁度、胸の辺りで停まる。これ程の乗客が、装填されていたのかと驚く位に、膨大な数の人ごみが降りる。眠りの間際に、そのような驚きを得ることは、愉快、愉快だ。

乗客は、それぞれ、マッチ棒のような黒い頭を持っていて、折れそうで心細い。大きな手が、それは私なのだが、溢れるそれら乗客の一人一人を、その殆どを、丁寧に間引いていく。黒い頭を、次々に間引く。日によって、唯の気まぐれによって、様々なその理由を付ける。参照すべき法則を作るのだ。

バスのなかには、きっちり八人。二人がけの座席の通路側に一つ。通路を挟んで、窓ぎわの座席に一つ。そうやって求めた二人の対を、きっちり四列、作る。真ん中に、やや淋しげに配置していく。マッチ棒の、整理整頓の按配。私は、愉快だ。私は云わば袋のようなもので、それは、痛みすら内包する!

何かが、騒ぐ。バスは走り去っていく。人ごみを収納し、袋のような私を置いて。ベッドが僅かに軋み、そう、振動が伝えられているのだ。私のうえには、円い鉄の板が、疑問符のように架かっている。よく見れば、行き先案内の、唯のバス停のようだが。私は、のびをする。何度となく寝返りを打つ…。

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