夜を解体するあなたの腕が、こまやかに分たれて腐食していく、長い髪が放射状に散らばった水面に、月がぬらぬらと白く光っている、その胸に穴があいて、ぽこりぽこりと音がする、潮が満ち、その陰でひそやかに花がこぼれだす、ひとつふたつみっつよっつ、とお、
わたしはそこに横たわったまま
浅く目を閉じてそらをみている
死んだ生物が群れて、あなたの下腹部を泳ぎまわり、どうしようもないのに腐臭がする、海は荒くなにかを隠すようで、泳ぐ指さきが熱をもち、震える、壊れはじめた夜の破片が、音もなく沈み、消え、そしてまた花がこぼれる、ふたつみっつよっついつつ、とお、
ほしが墜ちるその
おとをわたしほんとうは聞きたくなんてなかった
銃声のかげで不完全なひとが泣きながら笑っている
べとべとになったわたしの首をそのよごれた手で絞めて
そのまま海に沈めてください、夜は
解体されつづけている、花が咲きそしてこぼれみっつよっついつつむっつ、とお、
わたしの呼吸がとまる
そのときまで眠りにつかないでいて
水面がぼこぼこと沸きあがり、弾ける泡が悲鳴のようだ、あなたの両足はしだいに感覚を失い、もう境目がわからない、その腹は大きくふくれ、空間を時間を圧迫する、欠けた夜はもう夜ではなく、そしてまた花がよっついつつむっつななつやっつ、とお、
息ぐるしさをかかえ
ながら強く祈り続けていたのは
妊娠線がはりめぐらされたからだを、解体された夜が解放する、こぼれつづける花に、ゆっくりと水面が閉じていく、その中心でわたしたちは、つぎつぎにほしを孕む、むっつななつやっつここのつ、花を手向け、とお。
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作品 - 20100616_355_4476p
- [佳] 散華 - yuko (2010-06)
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散華
yuko