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作品 - 20100517_821_4403p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


渇いた失語で緯度もない

  ただならぬおと

白御飯に吹きつけられる
その吐息に巻かれたかった
僕は箸をおく
きみは今なにも見なくていい
僕は箸をとる
言葉が自ずと
推敲されてゆく思いがして
たまらず口走る
僕は失くしたい
それがなにかも判らないのに
僕は時間を喪うことから考える
食卓の木材から
触れあった足の爪まで苔産して
腐朽した米をきみが口に詰めたまま
老いて舌が垂れさがっている
干乾びた麦茶を
僕は持とうとして
指が痙攣する
きみが
死にたいと言う
風に運ばれて
やって来ては居なくなって
その風をも運んできては
やがて居なくなる
それだけを
ひたすら待っていた気がする
僕は周到に抱えてきたつもりの言葉が
一つもなかったことに気付く
醤油に浮く脂と脂の円い境目を
なぞる僕の箸があたって
焼魚の
今にもまだ動きだせそうな枯骨
きみは今なにも見なくていい
茶碗が湯気を吹く
僕は箸をおく
なみなみと麦茶を注ぐ
きみは今なにも見なくていい
自分に監視されているような
異和感をとり払った手の甲に
涙がついている

文学極道

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