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作品 - 20100414_035_4320p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


どこにもいかないで

  ぎんじょうかもめ



きみのおっぱいにしつこく触った夜
それはたくさんの星がふりつづいた夜
ぼくはきみの乳液がながれているんだと
冗談を話しながら きみのおっぱいに触れることをやめず
きみはその間ずっと黙っていた
きみの右と左の乳首がそろって勃起したとき
ひとこと「さよなら」
きみがさびしくそう言ったことを思い出す
それから足の使えないきみを背負うと
約束の丘の上まで上った
そのときになるともう星はふっておらず
代わりに細かな雨がふっていた
頂上にあるベンチにきみを置き去りにすると
ぼくは涙をながしながら一気に丘を下った
そしてまた一気に丘を駆け上るときみを殴った
それが僕らの
「生きる」 という動詞の意味だった
きみは今きれいに折り畳まれて
僕の部屋のクローゼットへ収まっている
そして夜な夜なつぶやいている
どこにもいかないで
どこにもいかないで
そして話す
わたしこのまま眠ったままでいたいよ
夢から覚めれば
ここはきっと海の底なんだ
海の底なんだから
僕はクローゼットを閉める
コーヒーカップを口に運ぶ
窓の外を見る
サクラが咲いている

文学極道

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