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作品 - 20100406_925_4298p

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てんの桜/地の子宮

  葛西佑也

桜は一年中咲いている?/散っている?/んですよ。都内某所、高層マンション三十四階のベランダで上空から、舞い降りてくる花びらをずっと眺めていた。昨夜、繁華街ですれ違った男子学生集団のひとりは、作動しなくなったATMの前に寝そべっていた。こんな日には、冬の空気が澄んでいるのが気味悪く感じられて、桜が散るより一足先にすべてを放棄しても良いのだと自分に言い聞かせた。


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愛する人を悲しませてしまったことや、信じてくれた人たちに嘘をついていたことや、ぼくがあの子宮に与えてしまった影響のことや、サラサラサラ 、サラ、サラサラ、サラ、サラサラ、さらに、思い出すときりがなかった。あの子宮にたどり着いた、たくさんの桜の種たちは湿気に弱い性質を持っていて、そのほとんどが全滅してしまったことは、特に記憶に新しかった。ぼくが幼い頃、絵本を読んでくれている母の隣で、「さいて さいて 咲いて! 咲いて! 裂いて! 裂かないで! 咲かないで!」必死に願っていたのもまだ最近のような気がしてきた。/ATMの前で寝そべっていた男子学生が、夢の中ではあの子宮の中を彷徨っていた。道がないという条件は一見不利に見えて、自由度が高いという点では、この上なく彼にとっては好都合だった。彼は子宮の一番奥深いところで、「わたし ひとり しゃ ねがえり うてないの」と変った甘え方をする女に出会った。(彼は性にしかリアルを感じることができない)それから、彼はこの女と後何回キスするのか考えずにはいられなくなった。サラサラサラ 、サラ、サラサラ、サラ、サラサラ、さらに、


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/春を待てないせっかちなひとびとが、都内某所、高層マンション三十四階のベランダに集まっている。その集合は、一枚のマントのようだと、桜には思えただろう。その汚らしいマントの上に降り積もる、花びらのいちまいいちまいから、またあたらしい命がはじまろうとしてい、る。

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