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作品 - 20100326_744_4272p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


海の指紋

  椎葉一晃

※各章、各節の番号は進行する順番を示す
 同一番号の章は同時に進行する
 同一番号の節は同時に進行する



1(1-5)
1.犬の視線の先を私と呼ぼう
 例えば
 稜線の向こうには青空が広がっているという
 本能と区別のつかない予断のように

 犬の視線のとどまる場所を私と言おう

2.稜線の裏側には青空が連続しているという
 本能と区別のつかない予断
2.遮られ
 滞り
 偏って
 時にはなでたり

3.舐めてみたりする
 だから

4.犬は、私を見ている
4.だから、犬は私を見ている
4.かろうじて定位した輪郭線

5.それなら、四角く区切られた海は私だね
 それなら、四角く区切られた海は私だね



2(1)
1.昔耳に触れた雷鳴より美しいものを見たくて
 私は肘を洗っていた
 聴いてはいけなかった
 音響と区別がつかなくて、私は、肘を洗っていた

 やがて落下する私の眼球が
 たらいの向こうへ、四角く区切られた海へ

3(1-4)
1.私の眼球が
1.海を忘れた海として

2.四角く区切られた海を遡る
2.溺死したことを忘れた水死体として

3.やがて上昇する私の肘
4.海はたらいに掬われて、今、女の肘を洗う

3(5)
5.二人を死なすまいとする力が砂浜に鉄塔を建設した…

4(1-2)
1.交錯する先は砂浜の鉄塔
 彼と彼女を死なせないために

2.昔、耳に触れた美しいものを見たくて
 私は肘を洗う

 やがて落下する私の眼球が
 たらいの向こうへ、四角く区切られた海へ

5(1)
1.俺たちは
 犬を捨てに
 遠くを目指して

 出発したときには
 生きていたが
 電車の中で
 絞め殺した

5(2-10)
2.眼球はたらいの向こうに続いている
2.もう落ちそうだよ

3.四角く区切られた海からやがて女の肘が上昇して
4.すべてが見えるね

5.二人は犬の死体を引きずりながら歩いた
6.もう犬は何も見ない?
7.違うよ、肘だよ、肘が持ち上がるんだよ、

8.ビル街に落ちる所々遮蔽された日射しに
9.街から全ての視線を引き抜いて歩こう

10.俺たちの勝ちだ
10.焼かれながら歩いた

6(1)
1.拡散していたものがつかの間交錯する
 砂浜の鉄塔で
 おそらくいくつもの目にいくつもの目が映る



7(1)
1.雷鳴が轟いた
 海は四角く区切られた

 犬が埋葬された
 砂浜は、誰の目からも隠れた

8(1)
1.昔耳に触れた雷鳴より美しいものを見たくて
 私は肘を洗っていた
 聴いてはいけなかった
 音響と区別がつかなくて、私は、肘を洗っていた

8(2 繰り返し)
2.雷鳴が轟いた
 海は四角く区切られた

9(1-4)
1.やがて落下する私の眼球が
1.海を忘れた海として

2.四角く区切られた海を遡る
2.溺死したことを忘れた水死体として

3 やがて上昇する私の肘
4 海はたらいに掬われて、今、女の肘を洗う

9(5 繰り返し)
5.犬が埋葬された
 砂浜は、誰の目からも隠れた

10(1)
1.稲妻が落ちる
 あらゆる海に亀裂が走る
 海面から巨大な肘が上昇した
 燃え盛る女の眼球が天から落下した

 女は眼窩に惑星を収めた
 全ては把握可能だった

10(2-4)
2.眼球はたらいの向こうに続いている
2.もう落ちそうだよ

3.四角く区切られた海からやがて女の肘が上昇して
4.すべてが見えるね

10(5 繰り返し)
5 稲妻が落ちた

11(1)
1.割れ続ける海の
 あらゆる格子状の海面から
 埋葬された犬が上陸を目指し立ち上がる

 幾億の群れが天を見た
 巨大な肘を噛み砕いた
 惑星は血を流し

11(2-5)
2.二人は犬の死体を引きずりながら歩いた
2.もう犬は何も見ない?

3.ビル街に落ちる所々遮蔽された日射しに
4.街から全ての視線を引き抜いて歩こう

5.俺たちの勝ちだ
5.焼かれながら歩いた

11(6 繰り返し)
6.二人を死なせまいとする

12(1)
1.海は凪いだ

13(1)
1.昔耳に触れた雷鳴より美しいものを見たくて
 私は肘を洗っていた
 聴いてはいけなかった
 音響と区別がつかなくて、私は、肘を洗っていた

13(2)
2.全ては浜辺の出来事だった
 区切られてはいない、彼らが架空する限り広がる
 無限の浜辺だった

13(3 繰り返し)
3.砂浜の鉄塔に

14(1)
1.崩壊したのは鉄塔で
 海はただ静かだった
 女は海に飛び込み、男は犬の骸を見た



15(1)
1.昔、耳に触れた雷鳴より美しいものをみたくて
 私は、肘を洗っていた

 やがて落下する私の眼球が
 たらいの向こうへ、四角く区切られた海へ

文学極道

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