#目次

最新情報


選出作品

作品 - 20100309_429_4242p

  • [優]  ポエム - ぱぱぱ・ららら  (2010-03)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


ポエム

  ぱぱぱ・ららら

 僕はきみを愛してる。僕が言いたいことなんて本当はこれだけだ。つまり僕が語ることは全部嘘だ。いや、もしかしたら僕はきみを愛してるということを複雑で分かりにくく語るだけなのかもしれない。ティムは言った。わたしたちは愛のために戦争にいくのだ。僕は言おう。僕はきみのために明日も仕事にいくのだ。部屋には僕しかいない。テーブルには焼酎の入ったグラスと納豆と日の消えたお香。Art-Schoolのロリータ キルーズ ミーがループして流れ続けている。もしくは未知瑠のWORLD'S END VILLAGEが。僕は美しく生きたいと誓ったんだ。誰に? きみに。僕の左上腕には女神のタトゥーがある。右手でピストルを掲げ、左手には煙草を持っている。今の世界を象徴していると思わないかい? コートジボワールの子供たちはどうなったのだろう? ホワイトデーの広告を見るたびにそんなことを考えています。ここでまた一本線香に火をつけさせてもらいます。それから焼酎を一杯飲む。焼酎はコーラで割ってある。この前キャバクラで会った女の子がコーラで焼酎を割っていた。だから僕は焼酎をコーラで割る。おぉ、これこそ人生。きみの大きな瞳は整形だろ? 知ってるんだ。クソが。僕は知ってるんだ。きみが整形してようと、してなかったかろうと、僕はきみを愛してる。お香とお酒は合わない。気持ち悪くなってくる。お香と木下さんの歌声も合わない。耳が溶けてくる。僕は溶けた耳をさわる。肌色の液体が僕の左手にまとわりつく。つまみが足りない。僕は八歳の頃から死にたがっていた。僕はその頃マンションの七階に住んでいた。ベッドに眠る僕。寝付けない僕。ベッドは壁についている。壁には窓がある。僕は窓から飛び降りようと思う。下は駐車場だ。車が並んでいる。みんなこれを手に入れるために、あくせく時間や家族を犠牲にして働いているのだ。僕は信じている。僕を。僕はまだ生きている。僕はもう八歳ではない。僕はもう七階には住んでいない。僕はもう自ら死ぬことはない。美しく生きたいと、木下さんは言った。僕は美しく生きたいと言った。たとえ世界の果ての村でただ一人になっても。僕は女の子を抱いている。それから射精する。僕はシャワーを浴びる。僕がシャワーを浴びている間に、女の子は別の男を受け入れる。その男は僕より背が高く、ガタイも良い。顔もイケメンでチンコもでかい。僕は部屋に戻り、その男を見る。それが彼らのやり方だ。彼らとは政府のことであり、社会のことであり、マネーのことだ。相手が女の子の場合はこうだ。きみは太りすぎている。きみの胸は小さい。きみの肌は汚ない。きみの目は小さい。などなど。でもそんなの嘘っぱちだ。だからこれ以上目を大きくしようするのは止めてくれ。きみは美しい。僕はきみが好きだ。僕は一口焼酎を飲む。少しこぼす。今は今のことで、僕は今を生きている。もう死ぬことはない。左手首は傷だらけだ。その傷ひとつひとつが僕の詩だ。ポエムだ。愛だ。僕は生きている。きみは生きている。ここにポエムがある。他に何が必要だというのだろうか。カモン、カモン、カモメやい。聞いているのかい? お香のケムリは消え、ここにいるのは誰だい? お前は詩人なのかい? お前は詩を愛してるのかい? お前は詩をなんだと思ってるんだ? 俺は詩を愛だと思ってる。愛によって人々は戦争に行くように僕は愛によって詩を書く。僕はそれをポエムと呼ぼう。焼酎がなくなった。もう一杯注ごう。ちょっと待ってて下さい。コーラが無くなったので、グレープソーダで割った。僕はブドウが好きだ。あと、トマト。僕は詩を書く人を信じる。僕はポエムを書く人を信じる。たとえどんなにひどいポエムでも。僕はトマトが好きだ。これはもう言ったか。みなさま、僕はブドウとトマトと詩とポエムが好きです。車も一軒家も冷凍庫も入らないです。ああ、人生。ああ、生活。そんなのはそんなのが欲しい奴のとこへ行ってしまえ。僕が欲しいのは愛だけだけです。今、この瞬間に。魚の骨をしゃぶりながら、僕はきみのことを考えている。それだけだ。後はうまくやって来れ。僕は芸術も師も人生もマネーも生活も捨てて、きみを迎えにいくよ。納豆が余っていることに気づいた。焼酎と納豆はあわないけれど、僕は納豆を食べることにする。僕はこのポエムを書き終えたら納豆を食べるだろう。それから歯を磨き、顔を洗い、ベッドに入るだろう。音楽は鳴り続けている。残りのスペースは少ない。あと443バイトだ。僕は携帯電話でこの文章を書いている。電話。僕は伝えたいのだ。何かを。言い残したことは一杯ある。次こそは、とは言わない。今のこの瞬間に。次はない、かもしれない。僕にはわからない。これが今の僕のすべてた。誰かがこのポエムを読んでくれると嬉しい。嘘じゃなく。これはポエムだ。誰がなんと言おうと、僕がなんと言おうと、これはポエムだ。僕の言いたいことは、きみを愛してる、それだけだ。あとは全て、どんな一文字だって嘘っぱちである。

文学極道

Copyright © BUNGAKU GOKUDOU. All rights reserved.