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作品 - 20100223_962_4201p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


さらにがんばれ、ベアーズ

  ゼッケン

石を握って
きみはひとりで
そんなところに立っているんだろう

バッターボックスに立ったぼくは正午の蒼穹を見上げ、一瞬、くるりと眩暈を覚えた
親が買ったキンキンと音のするバットの先端で一度おおきく空に円を描いてから構えた
川原で拾ってきた石なんかを握ってマウンドに登ってしまったきみは
その石をぼくにぶつけるしかない、素手のキャッチャーは
きみのその120キロの石を受けることができない、背後に立つきみの持たざる仲間たちは
無力。ぼくだけだよ、きみを救えるのは
投げろ、ぼくときみはぼくときみにしか理解できない信頼で結ばれている

きみは、
投げた、

うわぁーと叫ぶ、演技ではない分が混じった
鼻先を120キロで石がかすめ、ぼくは首を振ってヘルメットを宙に飛ばした
ぼくの父が経営するパチンコ屋で普段は店長をしている審判がデッドボールを宣言する
胸がむかついた、ぼくはまだおぼっちゃまにすぎない
デェェェッドボォォォル
チームメイトが全員ベンチから飛び出してくる
いちはやくピッチャーマウンドに到達したぼくは
きみの鼻を拳で叩く
ぷっと鼻血を吹いて
きみは抵抗せずにマウンドに倒れる
よくやったぞ、きみは
チームメイトに囲まれ、きみは踏まれる
踏まれる踏まれる踏まれる、そうして
英雄が生まれようとしている
きみの仲間は空になったこちらのベンチからグラブとバットを盗み出している
盗め!盗め! はっはっ
道具を手に入れたきみらはきみらのチームをつくり、きみらの子供たちが
野球をするようになるだろう
そのときにはおぼっちゃまじゃなくなったぼくは
きみらの子供たちに新しいボールを売り、新しいユニホームを売り、
新しい野球場を売り、新しいルールを売り、
その金でぼくらの子供たちが宇宙船を造る

宇宙のひろがりのなかでひとりひとりが魂の崇高さを見つめる
ふたたびバベルへと航海する
結集した人々が挑み続ける

文学極道

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