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作品 - 20100222_915_4192p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


ハ ル         

  りす

梅のなかにハルは隠れていた

男たちの少女期のように

前髪をあげる時機を逸して

笑顔をもらえなかったハル


桜が咲いて散るのは

冬の粗相だというのに

ハルはかたくうつむいたまま

冬の代わりに罰を受ける


暖かい梅の幹を追われ

毛虫のように叩き落とされ

この世の冷たい草むらで

ほっそりと生きはじめるハル


背中を丸めた小さなハルは

ながいながい余生をさかのぼる

この世は巨大な獣のようで

波うつ広い平野をもっていた


なめらかな毛並みに逆らって

獣の背中を越えていくハル

獣はあたたかい土地から土地へ

盲目に走りだしてしまうから


ハルの頭のうえをひゅんひゅん

飛び去って行くたくさんのハル

ハルはハルをなんにちも

見送って飽きなかった


見あげるハルと見おろすハル

見あげてもハナはなく

見おろしてもハナはなく

見えるのは桃色のハルの影ばかり


胸のなかにハルを隠していた

膨らむことのない硬い胸に

ハルがあふれてもあふれても

ハルはハルになんにも

教えることができない

文学極道

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