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作品 - 20100215_799_4176p

  • [佳]  赤子 - 益子  (2010-02)

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赤子

  益子

部屋では男が赤子と遊んでいた。赤子が床を這うのに合わせて男の体も動いた。男と赤子は親子ではなかった。しかし顔はよく似ていたが手足はまったく似ていなかった。男は動かしている手が誰のものだかわからずに遊んでいた。赤子と遊ぶには赤子の名前を知る必要があったが教えてくれる者はいなかった。男は赤子のことは何も知らなかった。赤子の性別も知らなかった。ふいに赤子が服を脱ぎたそうに身動ぎした。男は赤子と遊んでいた。男の肌は浅黒かったが赤子の肌は風船のようだった。男と赤子は風船で遊んでいた。男は赤子と話をした。手が二本で足が二本だった。いつしか赤子は男の真似をしているということに男は気づいた。手足が似ていたからだ。赤子が男の名前を呼ぶ声は赤子の母親に似ていたが男は母親のことは何も知らなかった。母親の性別はとてもよくわかっていた。男は赤子と母親の性別の話をした。そのためには赤子の名前と性別を知る必要があったから遊んでいた。しかし顔はよく似ていた。赤子の自分で服を脱ぐのを男は眺めていた。赤子の腹は風船のようだったが男はそれの真似をした。母親も今その真似をしている。男は今赤子と遊んでいた。遊んでいた赤子は知らない男と遊んでいた。赤子は母親を叱った時の声真似をした。男は赤子のことを何も知らなかったが風船を赤子の腹に結び付けて母親へのプレゼントとした。赤子は男を振りほどきたそうに身動ぎしたら男が笑った。赤子も笑った。母親も今声を上げて笑っているのだと赤子は男の声真似をして言った。風船が割れると母親が出てきたと思ったら赤子で、赤子の手足は短く、男は床を這っていた、裸を見ても性別がわからない、風船のような腹を押し潰したら赤子のような声で浅黒かった、で笑った、赤子は風船とともに空へ昇り、それに合わせて男は母親を追った真似をして性別がとてもよくわかった二本だった、部屋で



※一条氏の『nagaitegami』を参考にさせて頂きました。

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