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作品 - 20100212_710_4171p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


Petite et accipietis

  しりかげる

 
 
眠れない真夜中。
この街を縦横無尽に走る、幹線道路。
行き交う蛍は、目的地を知らないの。
乱立する、高層建築物。
点された炎は、ひどくつらそうに、
死角を放出している。


ねえ、、


ビルの脇に等間隔にたたずむ、
カーキ色の街路樹。
公共バスに窮屈そうに乗る、
仕事帰りの会社員。
裏路地にかりそめの関係を探す、
涙線のない女子高生。
コンビニに並んだ菓子パンみたい。
一様にくたびれていて、
きっと鉄の味しかしないわ。


パーティーに使う、
折り紙のわっかを繋げて作るやつ、
あれ、名前なんて言うんだっけ。


視線の抱擁、
網膜、と、網膜、
キスをしよう。
篝火の暖色に包まれ、
ホームレスの男たちは、
小さな公園の隅で、
儀式をしている。
震える、切っ先、
吐息、絡める、
重ねる、輪、


保健所ではたくさんの動物が、
毎日殺処分されているから、
その中に二人ぐらい、
人間が混じり込んでも、
きっと、気付かれない。
声を潜めて、一緒に、
おどりを、踊ろう。


温度のないリズム、
壊れた問いかけ、
吐き捨てられたガム、
誰も知らない。
願い、人、
きこえる、きこえず、


感覚が。


昨夜から、どうもおかしいみたい。
どうおかしいの。
なんだかね、すごくぼやけてる。
ふうん。


摩擦。


数多もの心が波になる。
数多もの波が海になる。
銀波が水面を浚う。
水中は見えない。
傷付いた音や光が、
手のひらの世界を、
飽和させている。


不器用な喧騒。


夜ごと、内部で生み出された騒音を、
やかましい光に変え、
ネオンサインから排出している。
そんなパチンコ店。
夜ごと、光に集まる蛾のように、
汚れたスニーカーたちが、
忘却の快楽を求めてコインを弄る。
そんなゲームセンター。
夜ごと、淡く色づいた爪が、
指先でついばむように、
一瞬の空白を傷つけあう。
そんな風俗店。


空っぽの欲望がね、
ぎらぎらしている、
そんな悲しい光が、
この街の夜を照らしているんだよ。
眠らない街、だって。
眠れない街、なのにね。


うるさい光たちが、
羽虫のように飛びかって、
ぶんぶうん、って、
耳障りな音を立てている。


こんなに明るいから、
星なんて見えるはずもなく、
綻びのない常夜に、
都心は傷跡を抱き、
旅人たちは、
祈りを、
 
 
 

文学極道

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