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作品 - 20100208_524_4151p

  • [優]  net 詩 - りす  (2010-02)

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net 詩

  りす

みずから編んだ網の
美しい放射を 
蜘蛛は知らない
だから ため息をつかない 
網をたたむ 
空腹の夜さえも

ストッキングに爪をかけて
破りたい、欲望の夜 
彼は ヒョーゲンする
破れ目から顔を出す
絶世の自我像を
破れ目から手を振る
薄化粧の父親を

となりでは
鳥目の彼女がいそいそと
メタファーをずり下ろす
足首で丸まったストッキングは
金糸雀の巣のように暖かい

劣文を敷いた冷たいベッドでも
性交はできるんだ
痛んだバネがギシギシ鳴るから
甘い睦言にも切実さが、

ねえ、できちゃったの。
なにが?
詩が。

もしもし、おふくろ、
何日身籠れば 産んでもいいんだ?
なにを?
なんだろう。


鳥目の彼女には羽がない
おだてても 懇願しても
飛んでいってくれない
これが モモ肉
これが ムネ肉
これが ササミ
全部に名前が付いてるの
豊満な鳥肌を惜しげもなく差し出して
ああ、君を食べ尽くすことなんて
僕にはできないよ


未熟児を産湯からあげて
原稿用紙にくるむ
赤ん坊から立つ湯気の香りは
うまく表現できないけれど良いものだ
やはり 
原稿用紙は満寿屋に限る
ところで
この子の名前、どうする?
「無題」はどうかな?
あ、いいんじゃない、字画もいいし。


何日も 何日も
獲物が掛からないことがある
網を張る場所が悪いのか
網の出来が悪いのか
蜘蛛に そういう悩みはない
腹が減れば 網を食ってしまう
網は また張ればいい
糸なら、
糸ならたくさん
あるのだから
この腹の中に

文学極道

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