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作品 - 20091031_861_3901p

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ハロウィン(中身のない南瓜)

  破片

煙草の不味さで胸からえずく。味のないような、薄っぺらな毒はひどく不快な気分にさせる、空腹の所為だろうか。葉を半分も残したまま、にじり消した。燻っている小さな灰まで、慎重に。なかなか溶けてくれない煙やにおいが、しつこい。デスクに佇んでいるディスプレイには目もくれず、右手は、抽斗を引く。

君の目は空っぽである、と。
指を伸ばすと、
べったりと、絡み付いて落ちる、
夜が、
毛細の器官にまで
溶け込む、そして呼吸し始め、
滴るようにして
音が抜けていき、
聞えたら、現像してもらえないことばが
待っている色彩、イメージでしかない飛翔
と共に、囁く。

へこんだ部分に手をかけ、そのままの姿勢で、何も入っていない抽斗の隅々まで舐るように焦点をめぐらせる。蓋をした灰皿、無酸素のはずの吸殻が静かに再燃を始めて、直方の木箱が焼失していく。当然、消火など、しない。

空っぽで
あること
の暗闇から、
手探りで掴めるだけを、
引っ張り出す。
現像していく、
捻り出す色はいつも
似通っていて、
空虚を表現するのに黒色しか
使えないけれど、ましろい光が
絶対に
山脈の向こうまで届くとは限らない、とうたい、
かみのない月を狙って
やってくる精霊たちが、
すると指先は彼らと踊り、
ギリシャの言語で
「見つけた」と。

何もなかった抽斗にはファンシーな包み紙がしわくちゃのまま放置してあり、ほのかな甘い匂いが漂ってきていた。まるで自らの脳髄が叫んだような方向から「とりっく、おーあ、とりぃと!」
近隣の子供たちが全員集合し、仮装して練り歩いている。

文学極道

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