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作品 - 20091023_718_3890p

  • [佳]  June - んなこたーない  (2009-10)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


June

  んなこたーない

「いつかある日、(あらゆる)街灯に
          点火されることが忘れられる
    だろう」と
だけ、
書きのこして
ひとりでに椅子は傾いた
カーテンがまぶしげに揺れていた



コーヒーカップの底に沈んだ
よく晴れた日の
青い空から、
雨つばめがさかさまに墜ちてくる
身を乗り出して
砂に埋もれる恋人の、淫らな
シルエット
その膕を渡る風
を見た

(フェルナンドは軽やかに境界線を跨いでゆくのだ)



ときには
刻々とせばまる陽だまりのなかで、
リボンがほどけることもあった
「てのひらの<June>、それさえも」
濡れそぼる翼の一撃が
だれかの捕鳥網と重なりあって
それから
永遠に離れていった



花綵の陰から、
  航海の巣から、
フェルナンド! フェルナンド!
「日没の街に
 明かりを絶やさぬために
 ぼくらは管制塔のように興奮し、
 植栽試験場のように、ひとりずつ
 他人の卵から孵るのだ」

目のくらむほどに、まばゆい「その、
 けばだつ火災」が
<Soundtracks>

「日は短く、
 夜は長くなる
 思い出せ」



室内を洗い
天井をながめ
それから
ゆっくりと立ち上がり
身を乗り出した

フェルナンド
いまにもほどけそうな
夕凪の水面に
さかさまに墜ちてくる街の明かりが、
いっせいに灯るのを
見た
フェルナンド
かざすてのひらに、いまもまだ
まぶしげに揺れている
のを、見た

文学極道

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