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作品 - 20090923_004_3809p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


いん ざ びゅーてぃふる わーるど

  葛西佑也

お昼のテレビドラマはその存在が
ストーリー以上に残酷でした
いつか終わってしまいますから」
粘着質な食べ物を好んで食っている
肌つやだけはとびきりよい
年齢不詳の女が言った
ジンジャーエールの入ったグラスを
唇まで引き寄せると
ぼくの手の甲に水滴がニ、三滴
落下したのは言うまでもありません
「ちょっとここは暑くはありませんか?
 

ぼくたちはなぞの疫病でした/です
それは飢えと呼ばれるものに良く似ているのですが
豊かさの反対ではありません
明日になれば世界中の鳥たちが行方不明になり
彼/彼女たちの鳴き声だけが響くでしょう
鳥たちは疫病を運んでくれる
いくつもの河、を、超えて
それは彼/彼女たちにとって
死を意味しました/します
しかし、このこと と 死 を 怖れない こと と は こと なる こと なの
でした/です/が、
ぼくたちはいくつもの勘違いを抱え込んいる生き物なので
これも小さな、小さな勘違いのひとつなのかもしれません

夕暮れ
羽音と鳴き声が出発を教えてくれます
写真の中のお母さんにキスをします/しました
(このことは絶対に秘密ですよ)
涙が頬を伝い世界が紅くそまり
ぼくたちはみんなで歌いました
いっそ盲目であればいいのに
と願ったのはこのときがはじめてではありませんでした

砂嵐
ぼくたちはここで生まれる/生まれました
すべての生命の源がここにはあります
すべての名づけがここにあります
あの人は そっと耳元で ささやきました
(ぼくの名前
そうして、生まれたのがぼくでした
ぼくはぼくの名前によってぼくになりました
あの人がそうだったように
酔っ払った若者は職務質問を受けています
制服を着た男の顔は よく見ると
ただの点の集合でしかありませんでした
結んで線にして形を作ったのは一体だれだったのでしょう/か?

ずっと幼い時から鏡が大好きでした
残酷なところ
嘘つきなところ
おしゃべりなところ……
ましろな二の腕から 血 が
流れ出しています
どうやら蚊にさされた場所を
掻き毟り過ぎたようで
紅く染まった爪をちょっぴり噛むと
なつかしい味がしました。

文学極道

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