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作品 - 20090723_768_3663p

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花冷え

  如月

そして
指の隙間から
こぼれおちてゆくものの
行方を
わたしは知らない
目線よりも
少しだけ高くで
懐かしい声が遠い

 てのひら
柔らかく包みこむ
体温の空は
魚のように広く
なだらかに泳ぐ
浮遊する午後の岸辺

 声
寄せては帰す
波の狭間で
声の鳴る
燃やされた地平線の
向こう側の白く
あたたかな内陸

 夜
発芽する緑の呼吸
桜の裸体がいっそう
夜を美しく散らして
空に広がる
指先の凍えた隙間から
こぼれおちてゆくものたちの
かすれた声が鳴る
ざらついた四月で
あなたが
少しだけ遠くなる花冷え
 
 
 

文学極道

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