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作品 - 20090518_541_3528p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


ピーマンの午睡

  りす


膨らみの
ほとんどが空洞であり
貧しい綿に巻かれ
眠るだけの空間がある
たえず青臭い思想に囲まれ
翠緑を振りあげても朝は
壁ごしに完成するだけだ

両の乳房を持ち上げる
持ち上げる
と思わなければ
計量できない幸福がある
いつしか重さの欠けた胸に
誰のものとも知れない欲望で接触し
耳を 傾けるようになった

調べるのが好きな あなた
右でも左でも
どちらでも好きなほうを
裂いていいのよ


ファルス
挽いた肉を詰め込まれた
無口な少年が食卓に並ぶ
どこをくぐり抜けて来たのか
油っぽい頭脳を光らせ 
青い胴体を割ってみせて
ここが家庭ですか、と
火の通った内部で笑う

ナイフとフォーク
を握って
いずまいを正す君に
肉食獣の明るい孤独が
つかみかかるとしても
習い覚えたテーブルマナーが
君の暮らしを守ってくれる

チッと音を立てて
ナイフと皿が出会うたびに
君は頬を紅潮させて
ファルスを口に運ぶ
冷めないうちそれを
君の乳房に運ぶのが
僕の仕事なのだ
弱肉をいつまでも
生かし続ける喜劇のために


ピーマン
チラシに載ってた 
バラ売りの
ピーマン
安いヤツでいいの
ピーマン


なにかを探すとき
その名前を繰りかえし呟いて
引き寄せる手応えに
飽いてはいけない


膨らみの
ほとんどが夢であり
夢を掴み出すと鋭い苦味が
こめかみを走るだろう
綿を剥ぎとると寒さで
目が覚めるだろう

平台に高く積まれたピーマンの
崩れそうで崩れない斜面を
僕は 遠巻きに見ていた

文学極道

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