ゆっくりと舞う
一つ、一つのどこからか
流れついた春を滑る
雨のたおやかな
手のひらを泳いで
*
垂直に立つ遠浅の空の真ん中を
黒い鳥が羽ばたいて尾をひく
痩せた桜の木の下で
発芽する
幼い夏の背中
まだ目を覚まさない
青い夕暮れ
*
夜に浮かぶ送電線は美しい
絶えまなく
運ばれてゆく言葉は
暖かく降りしきる
ひとひらの花片
*
去っていく春の横顔は
ふりかえらない
いつかの少女に似ている
*
塗りかえられていく今日を
そっと見守る夜の窓辺は
果てしなく地平線のようだ
降りつもったいくつもの
春と呼ばれたお前を燃やして
幼い夏の丸い背中の
小さな呼吸で伸びやかに
新しいお前がまた一つ、
静かな産声をあげる
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選出作品
作品 - 20090428_194_3481p
- [佳] 春の下 - 如月 (2009-04)
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春の下
如月