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作品 - 20090427_183_3478p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


クロリス

  ゆえづ

君はエプロン姿の小さな確信犯だった
それはとても可愛らしい
庭で摘み取ったケシの実を
エプロンの前ポケットにたんまり詰め込んでは
買い物に出た先々で
気の向くままにひねり潰してゆく
膨らんだポケットでもてあそぶ
ごろごろとしたこどもの世界は
はち切れんばかりのまるこい手から
砂粒のようにこぼれ落ち
町中へパステルのざわめきをばらまいた
僕はそれを花束にして
いつかのこども部屋に飾ろう

クロリス、クロリス
そよ風にゆだねた君の裸体
たまらず僕は走りだしたんだよ
ナナハンにまたがり
雨の降りしきる田園地帯を
あのしたたかな秘密を引っ剥がし
横殴りの雨の中を走り続けたんだ
蕾のような吐息を抱いた
なまっちろい奇跡は
クロリスがそっと僕に口づけすると
ビニ本モデルの上気した頬よりも
艶やかに咲いたよ

雨宿りがてら立ち寄った給油所で
濡れたシャツにぽてっと止まったのは
上翅いっぱいに星を抱えたてんとう虫だった
黒光る半円形のフォルムが美しい
おまえも翅を休めに来たのかい
ああ見ろよ虹だぜ
吐き捨てるようにそう言い残し
てんとう虫は飛び去っていった
ヒンジの緩んだジッポで
しけった煙草に火をつけると
僕はまた煤色の風になる

文学極道

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