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作品 - 20090205_027_3313p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


月の見えない夜に羊は消える

  ぱぱぱ・ららら

雲が満月でも何でもない月を
隠している隙に
世界中の羊は一匹残らず消える
 
ポール・オースターの小説に出てきそうな
私立探偵エディは
謎の男から依頼を受けて
ひつじを探すことになる
 
やーい、ひつじやーい。
と、言いながらエディは
深夜の渋谷のスクランブル交差点を探しまわる
 
ひつじ飼いのエディは仕事を無くし
自らのアイデンティティーを
探し求め旅に出る
 
アフリカにある名前の無い国に
たどり着いたエディは
自らの名前を落としてなくしてしまう
 
ひつじについての詩ばかり書いていた詩人のエディは
創作意欲を失い
言葉を忘れ
自分のことをひつじだと思い込むようになる
 
エディはひつじの消えた
牧場に入り
メー、メー、メー。
と鳴いている。
 
前世がひつ
じだった風俗嬢のエディはとても長い黒髪がとても
素敵でとても人気があったの
だけれど
 
 
エディのはたらいていたお店はほうりつか何
かにいはんしてい
て営業てい止になってしまいエディはふ
つうのOLへと戻ることになってしまう
 
むかしむかし、ひつじなんていうなまえの羊なんていなくて、ひつじかいなんかもいなくて、エディなんてなまえのにんげんもいなくて、それがよかったのかどうかはわからないけど羊は羊だった。
あるよる、羊のもとにエディとよばれるにんげんがやってきて、羊のことをひつじとよび、それがわるかったのかどうかはわからないけど、ひつじかいはひつじをかうようになった。

文学極道

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