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作品 - 20090202_984_3307p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


ままごと

  古月

 /始めに線を引きます

「ここはおだいどころ
「ここはわたしのへや
「ここはげんかんね

思いつきのような約束事を
ひとつ ひとつ 確認していくと
なんだか不思議とそう思えてくる

 /同じことを何度も繰り返して

小さなテーブルを二人で囲んで
ひとり ひとり どこか遠くを見て
お互いに違う夢を見ている

 /ふたりで同じ嘘をつく

泥をこねてお皿の上に盛り付けて
口に運ぶまねをして美味しいねと笑う
君から見えないようにそっと捨てる

「あなた いってらっしゃい
「はやく かえってきてね
「こんやは あなたのすきな たまごやきよ

僕は手を振る君に背を向けたまま
ポケットから一つ飴玉を取り出して
口に含む 甘い

君はたいへんたいへんと呟きながら
お洗濯をしたり 掃除機をかけたり
お人形さんにおっぱいをあげたりして

 /たぶんそれは欠落した、君の

舌の上で転がす飴玉はいつまでも溶けずにいて
僕にはそれがずっと気がかりだったはずなのに
気がつけばざらついた舌の感触だけが残っている

「ばいばい
「またあしたあそぼうね
「ばいばい

 /どこまでも続かない、日常の風景

いつの間にか生まれていた僕と君の子供は砂場の片隅に埋もれていて
明日にはきっともう名前さえ思い出せない

もしかしたら名前なんて 最初からなかったのかもしれない

 /そんな遊びです

文学極道

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