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作品 - 20080704_124_2876p

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コントラスト・サンダーマン

  ぱぱぱ・ららら

平日の夕方、たかひこはテレビを観ている。隣には女が座っている。
外からは止まることの無い工事音が聞こえてくる。
ガガガガガガガガガッ。
 
『コントラスト・サンダーマン』
そんなタイトルの特撮もの。
昼間は家でのんびり、音楽を聞いたり映画を観たりしているひき籠もりがちな青年だが、夜は別人。コントラスト・サンダーマンに変身し、悪の怪人を倒していく。
そんな物語だ。
ちなみに武器はサンダー&サンダーロッド。昼間のうちに洗濯物と一緒に干しておいて、太陽光を貯めておき、夜、怪人に向かってサンダーを放つ。
太陽光。エコだ。
 
「今週も大活躍だね、たかひこ君」
と、隣の女が言う。
「そうかな、普通だろ」
と、たかひこは答える。
テレビの中のたかひこは怪人と戦っている。
 
『コントラスト・サンダーマン』が終わり、テレビはニュースを流し始める。
いくつかの事件、事故、それからスポーツ。
いつもと変わらず、進んでいくニュース。
 
「ここでたった今入ったニュースです」
と、女性アナウンサーがいかにも焦っていますといった感じで、冷静に言った。
「あと、三時間前後で世界が終わります」
 
「ねえ、どうしよう?」
と、テレビを観ていた隣の女はたかひこに聞いた。
「どうもしないよ、別に」
と、たかひこは答えた。
「世界が終わるのよ。どうにかしてよ、たかひこ君」
と、隣の女は言った。
「関係ないよ、そんなの。終わりたきゃ終わればいいさ」
と、たかひこは言った。
 
工事音が止み、静かになった。
隣の女は声を出さずに泣いている。
ベランダの洗濯物が風に吹かれて揺れている。
たかひこの服。
女の下着。
それからサンダー&サンダーロッド。
 
太陽が少しずつ沈み、空は少しずつ暗くなっていく。
カラスは家に帰る時間だ。
「心配しなくていいよ、もうすぐ夜が来る」
たかひこは隣の女の髪を撫でながら言った。

文学極道

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