引越をした日は、
青空だった。
近所の空き地の、
壁に、ボールをぶつけ、
グローブで受けとる。
ひとりで遊ぶわたしに、
アキラとリョウが、
笑みを浮かべ、声をかけてきた。
初登校の日、
授業が終わり、
放課後になる。
わたしは、
クラスの男子たちに呼ばれ、
体育館の横で、
列をつくって、
ドッチボールを投げ込まれた。
一人、二人目のボールは、
受けとった。
五人、六人目の、
ボールは、足にあたり、
指にあたり、
転がった。
つき指をして、うずくまり、
わたしは唇をかむ。
群がる同級生たちの、足しか見えない。
わたしは、壁に向かって、
ボールを投げつづけた。
白いボールが、音をたてて、
転がり、グローブに収まる。
近づいてくる、
アキラとリョウの、
三人で空気銃をもって、
林にでかけ、
駆けまわりながら、
夕方までうちあう。
雪の残る林の中、
三人で、貯水池に行き、
空に向け、ひきがねをひく。
リョウの父が亡くなり、
制服のまま、
通夜にアキラとでかけた。
顔もよく見えない夜、
引越をしていったリョウの、
言葉は暗がりに消えていく。
わたしは、白いネクタイをして、
何年もあっていなかった、
旧友の、
披露宴にでかけていた。
ビールを、つぎにくる、
友人の知り合いに、
愛想笑いを浮かべ、
少ない言葉を交わしながら、
席にだされた、料理を、口に運び、
新郎に拍手した。
わたしは、心の中で、
壁に向かって、
ボールを投げる。
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作品 - 20080603_542_2807p
- [優] 転校生 - みつとみ (2008-06)
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転校生
みつとみ